さやかちゃんは次の日も商店街で手伝いを無事に完了した。
花帆ちゃんが配信を行ったのもあって、更に人気になっていた。
「明日の放課後は休みです」
「ええええ」
僕の声に反応したのは、花帆ちゃんだった。
「気持ちは分かるけど…最近、みんな頑張ってるからね」
「と言いつつ、未来は打ちに行くんでしょ?」
「うん、最近は行って無かったからね」
「打ちに行く…?」
「バッティングセンターの事だよ」
さやかちゃんが疑問に思ったのか質問してきたのでそう返す。
「私も行ってみたいです!」
「だめです~しっかりと休む事!」
「ええええ~」
と言った感じで、今朝のミーティングは終わった。
そして次の日の放課後
「なんで居るの…?」
「私の配信で部長の休みの過ごし方という動画を作る為だよ」
と言って、スマホをこちらに向けてくる慈
誘った訳ではないのだが、なんか勝手に付いて来たんだよね。
「今は部員じゃないのに?」
「そんなの関係ないんですー」
「それで帰ってこないの?」
「うん、もういいかなって」
「まぁ…ね、でも、帰ってきたくなったらいつでも帰ってきていいからね」
「ありがと、それじゃ撮影開始~!」
慈は、そう言ってスマホの撮影ボタンを押した。
僕は止める事もなく、バッティングを開始するのだった。
*******
「村野さん、大活躍ね」
「凄かったですよ!きらきらしてて!さやかちゃん、本当に綺麗で」
「私も用事がなければ行きたかったわ」
部室に到着すると、梢と花帆ちゃんが先日、さやかちゃんがフィギュアで優勝した話をしていた。
「すみません、遅くなりました!」
「あら、主役ね」
「え、何?」
「綴理の話じゃないよ」
梢の言葉に、自分の事だと思ったのか綴理はそう言ってきた。
「…また村野さんに迷惑をかけて…大会の疲れもあるでしょうに」
「大丈夫です乙宗先輩、これも仕事ですから。ん?仕事?夕霧先輩を連れてくるのが…仕事…?」
さやかちゃんがそう言っている中、花帆ちゃんがスマホの画面を綴理に見せる。
「…これは?」
「さやかちゃんが優勝した記事ですよ!一昨日のフィギュアの大会で!」
「あー…さや、おめでとう」
「はっ!はい、ありがとうございます!といっても、夕霧先輩には昨日からたくさんのおめでとうをいただいてますけども」
「次は梢先輩も夕霧先輩、夜空先輩も一緒に応援に行きましょうね!」
「あ、宜しければ是非、お願いします!」
「そうね、私も楽しみだわ」
「そうだね~その日は予定空けておかないとだね」
僕がそう言うと、さやかちゃんは目を輝かせていた。
「ん、さや、また大会あるの?」
「はい、実は色々と連絡が来てまして。また来月にも県大会があります。なので今日も、練習後にリンクに行く予定です」
「頑張っているのね、応援しているわ」
知らない所で頑張ってるだね。本当に応援してあげたい。
「ありがとうございます!より一層。身が引き締まる思いです!」
「花帆さん、私達も負けていられないわね。そろそろまたライブイベントもあるのだし、頑張りましょう?」
「ライブ はい、さやかちゃんに負けないくらいに頑張りましょう!」
「そんな勝ち負けの話じゃ!」
「ふふふ、そうね。でも、こんなものを見せられてしまったら、私達も気持ちが入るわ。ね、綴理」
「次のライブイベント…ん、そだね」
「ええ」
「さや、今から練習だけど、疲れとかない?」
「はい。大丈夫です!今日もご指導のほど、よろしくお願いします!」
「頑張ってね。村野さん、今は忙しい時期でしょうけど、落ち着いたら、大会のお祝いをしましょう」
「色々と考えておくね。さやかちゃん!」
「…!はい、ありがとうございます!」
「…」
*******
それから数日後
「みく~日程が…」
「うわぁ…見事に重なってしまってるね…」
「どうしよう…」
「とりあえず、さやかちゃんには言ったの?」
「ううん…話してない。話すつもりもないかな…それにライブはずらせばいいからね」
「…そうは言っても、綴理凄く楽しみにしてたでしょ?フィギュアの方もさやかちゃんのお姉さんの引退試合もあるから…難しい話だけど…」
そう…綴理と相談したいとやってきて、聞くとライブとさやかちゃんのフィギュアの開催日がドッキングしてしまったとの事。お互いに大事な予定なのでなんとかしてあげたいのだけど…
「…綴理の気持ちを聞きたい」
「どうかなぁ…ボクだって…寂しい気持ちがない訳じゃないからね」
「…そっか…」
綴理の気持ちを聞いて、僕はそう言い口を閉じる。
そして、窓から外を見る。
「綴理…」
「うん?」
「去年は楽しかったよね」
「…そうだね。スクールアイドルクラブに居続けようと思ったのは、去年のあのライブがあったからね… でも…良いんだ。だたでさえ、さやは両方頑張ろうとしてるんだ。そんなさやに自分じゃどうしようもないような所で嫌な思いさせたくない」
そのタイミングでさやかちゃんが入ってきた。
「今の…何の話ですか?」
「さや…」
「綴理…」
僕が綴理に向けて声を出すと、綴理は首を横に振る。
「…今の話聞いてた?」
「聞いてしまったのは…ごめんなさい。でも、でも、お姉ちゃんの引退の日に…ライブがあるって…」
「…」
「それも…夕霧先輩にとって、大事なライブだって…本当なんですか…!?」
「うそだよ」
「夕霧先輩!!」
「…ごめんね、聞かせちゃって」
「っ~~!謝ってほしくありません!むしろ、謝らなきゃいけないのはーー」
「さやは悪くないよ」
「でも!」
「ライブも、フィギュアも、日程を決めたのはさやじゃない。どうしようもないことはある。ボクはさやのお姉ちゃんの引退の日をさやから聞いてた…それだけのこと」
「でも…夕霧先輩が次のライブを大事に思っている気持ちは、それとは関係ありませんよね…!?」
「…別に大した事じゃないよ。来年誰かと一緒にステージに立てたら…綴理もスクールアイドルだよ…って、先輩に言われただけ」
「っ…ご、ごめ…」
「だから、うん。 やっぱり、はっきりと言おうと思う」
「え?」
「市場に行ってから、さやは見間違えたと思う。それはきっと、自分を見つけられたからだった」
「今のさやは魅力的で、みんなは凄いって言ってくれるのは…僕自身も凄いなと思うのは…さやが、さやらしくあるからだ。さやがまた、何かを理由に押し込められるのは、なんていうのか意味がないんだ」
「先輩…私は…!」
「むしろもっ。わがままになっていいんだ。ボクのことこか、気にしないで、今回のことだって…こんなことでさやが凹む必要、ない」
「でもっ」
「さやは色んなことをしてくれたよ。ボクも、こずもかほもみくも…ライブや、配信に駆けつけたくれたみんなも、さやが頑張り屋で素敵な子だってことはもう分かってる。本当に…ボクは、さやと一緒にスクールアイドルが出来て嬉しかった。でもそれは、ボクだけの気持ちだ」
「やめてください。それじゃまるで…もう、終わりみたいな…」
「終わらせるか、終わらせないかは、キミ次第だ、でも、スクールアイドルは、誰かにやらされるものじゃない」
「っ…!」
「ボクは、キミが本当にやりたいものをやるべきだと…思う、そこに、ボクも、フィギュアの人達、関係ない。スクールアイドルを頑張らなきゃいけない理由は…どこにもない」
「そんな…そんなの…っ!」
さやかちゃんはそう言って走り去っていってしまった。
「綴理…」
「ライブはこずとかほに任せるよ」
綴理がそう言うと、窓から見える外は雨が降ってきた。
「綴理」
「ん?」
「綴理のライブ、そしてさやかちゃんのフィギュア…両方出来るかもしれないって言ったらどうする?」
「…出来るの?」
「うん、保証は出来ないけど、案はあるから」
「分かった。みくの事信じてみるよ」
「ありがとう」