日時はあっという間に過ぎて、さやかちゃんの大会の日になった。
「あ、いたいた、綴理先輩ー!」
「かほ?」
「こんにちは、綴理。村野さんの応援なら、一緒に来れば良かったのに」
「そうそう綴理ったら、1人で行ってしまうんだから…」
会場に着くと、花帆ちゃんのおかげで綴理を発見する事が出来た。
「…え、でも今日、二人はライブ」
「忘れたの?今日のライブはオンラインよ。17時までに配信でパフォーマンスを映すの」
「そっか…そうだったね」
「…村野さんが間に合わないのは残念だけれど。私達は後で撮影するわ」
「ん」
「あの…さやかちゃんとは…」
あの一件があってから、僕は
「…始まるよ」
タイミングが悪いなぁ…知りたかったんだけど…仕方ないか…
「!凄い歓声!みんな、さやかちゃんを観に来たんだ…」
「あ、出てきた!!さやかちゃーん、頑張れー!」
「…さや」
そして、フィギュアをするさやかちゃんはとても輝いていた。
「観に来られて良かったわね」
「凄い凄いすごーい!さやかちゃーん!」
「ふぅ。さて、私達はそろそろ行かないとね」
「あ、時間!」
「でも、さやかちゃんのスケート見られてほんとに良かった!…綴理先輩!どうでした!?」
「そうだね、本当に綺麗だったと思う」
「で、ですよね!えーっと…!」
「…ね、綴理?」
「なんだい?」
「貴方はいつも、あの子のスクールアイドルとしてのパフォーマンスには、水色のきらめきがあると、私に自慢してきたわね」
「…」
「フィギュアで培ったものが、村野さんのスクールアイドルとしてのきらめきを生み出していたのだとすれば…今の村野さんのフィギュアスケートの演技にはーー」
梢が更に話そうとした時、会場の電気が落ちた。
「梢先輩梢先輩!」
「ちょっと…なあに?停電?」
「さやかちゃん…やる事派手だねぇ…」
「未来…?」
「分からないですけど…何か、始まるみたいですよ!」
僕は何をするかさやかちゃん本人から聞いて、知っているから驚きはしなかったけど、何も知らないみんながこうなるのは仕方ないね
「あーあー。まいくです…まいくです。本日はたくさんの人に起こしいただき、ありがとうございます!姉妹ともども、本当に嬉しく思っております!そして、こうしてお時間をいただいた事に感謝します。とある人、そして皆さんが快く背中を押してくれました。なので少し、聞いてください」
「…とある人…?」
そう言いながら梢は、僕の事を見る。
確かにちょっとやったけど…大きな事ではない。
「私は、誇らしいお姉ちゃんを持って、幸せで、それだけでした。でも、だからこそ、お姉ちゃんがリンクに立たなくなって、私がお姉ちゃんの分まで頑張らなきゃって思ってからは、本当に大変だったんです」
「一年以上なかなか結果が出ないまま、何をどうすればいいのかも分からないまま。お姉ちゃんの分まで頑張るって言ったのに、そのお姉ちゃんに合わせる顔がないくらい。だめだめでした」
「でも…素敵な出会いが私を変えてくれました。こうして皆さんの前に胸を張って村野つかさの妹だと自己紹介できる、そんなフィギュアスケータになれたのは…あなたのおかげ」
「貴方にあの日会えたから、頑張ろうと思えたんです。貴方が教えてくれたから、私は今ここにいる。でも…わがままになっていいってなんですか?フィギュアを続けることは無理ですか。スクールアイドルを辞める事が、わがままなんですか」
「フィギュアも楽しい、スクールアイドルも楽しい!どれが正しいわがままなんて、貴方が隣に居なきゃ、もう分かるものも分からない!」
「さや、なにを」
「私をこの場に立たせてくれたあなたには、私にわがままになれといってこの場に置き去りにした!」
「ちが、ボクは」
「違うと言うならこの場に出てきて!!ここで!!私と!!ライブをして!!スクールアイドルの大会に、私と貴方で出してください!!ーー夕霧綴理!!」
「行かないの?」
「行っておいで綴理」
「いってらっしゃい!」
「…うん、行ってくる」
そう言って綴理はさやかちゃんの元へと向かっていく。
「未来…これが狙いだった?」
「ううん…さやかちゃんに協力はしたけど、ここまでやるとは思ってなかった」
さやかちゃんからも二人でライブがしたいと聞いたので、この会場の人に無理なお願いをしてしまったけど…
「梢はライブがあるんだから、もう行かないといけないでしょ」
「分かったわ、後はよろしくね」
「はいよ」
そして、二人が何か話しているか分からないけど…良い方向に向かっている事だと信じたい。
二人はその後、アイドル衣装に着替えて出てきて、ライブを行った。
そして、ライブが終わるタイミングで僕も近くまで行った。
「みなさんありがとうございます!私、フィギュアもスクールアイドルも、両方頑張って、凄い人になるので!これから大会とか、スケジュール融通利かせてくださーい!」
「…わあ、凄いわがままだ」
「凄いわがままな事を言ってるよさやかちゃん」
「もっとわがままになって良いんだって言ったのは、夕霧先輩ですよ?」
「…さや、わがままついでになんだけど」
「はい?」
「さっきみたいに…いや、さっきみたいだとアレだけど。綴理でいいよ」
「さっき…あっ…」
「さっき呼び捨てで呼んでたもんね、綴理出てこいって」
「あれはその!勢いで出たと言いますか!」
「苗字はいちいち呼ばなくていい」
「えっ…いや、それは」
「だめ?」
「…わ、分かりました!少し照れ臭いですけど…綴理先輩」
「先輩要る?」
「流石に要ります!」
「ふ…そっか」
「はい」
「凄かったねー」
「お姉ちゃん!」
「お姉ちゃん」
二人に声をかけたのは、二人の会話の内容的にさやかちゃんのお姉さんなのかな
「やーお姉ちゃんだよー」
「ゆう…綴理先輩にお姉ちゃんって言われたのツッコみなよ…」
「二人とも、凄かったね。ほんと…また、元気貰っちゃったー」
「ありがと。ボクも見たよ。きみの動画」
「昔の?ちょっと照れるなーあははー」
「初対面の会話のテンポじゃない…」
「あのさ!ありがとね。凄いパフォーマンスだった…こんな事言うとあれだけど…二人を見てて私、もう一度滑ってみようかなと思った!!」
「えっ…でも」
「リハビリ重ねてー…アイスダンスに転向しようかなって。今日の二人見てたら、それもすっごくいいなって!」
「お姉ちゃん…!うん、応援するよ、私!」
「アイスダンスって、二人でやるやつだよね」
「そう!だから本当に…貴方達に負けないくらいの選手になりたいって、そう思えたんだー」
「そっか。ボク達も頑張らないとだ」
「はい、頑張りたいから、頑張りますよ?」
「ん」
「ふふっ。本当に良い人に会えたね。さやか」
「うん」
「本当にありがとね。君も」
「えっ…あ、はい、こちらこそ」
「君の事はさやかからたくさん話を聞いてるよ」
「ちょっとお姉ちゃん!?」
「良い話だといいんですけどね…」
「心配しないで、良い話しか聞いてないから」
「それなら良かったです」
「それじゃあ、私、みんなに伝えてくる!もう一度、復帰目指して頑張るって!!アイスダンスでーー貴方達にも負けないステージを作る!」
「おー」
「気が早いんだから…」
「あ、そうだ!」
「?」
「貴方達の事も…これから応援したいなって。良かったら、ユニットの名前を教えてほしいな」
「ボク達の名前はーー」
『DOLLCHESTRAです!』