花帆ちゃんの策略にハマって、昨日三人で綴理の家に泊まってから数日、梢と綴理のダンスは見違える程に息が合っていた。
「おぅ」
「…これは」
「これまでで一番合ってたね」
「今の、すっごく良かったです!」
「はい、以前よりずっと、息ぴったりって感じがしました」
僕の言葉を筆頭にして、花帆ちゃん、さやかちゃんがそう言って二人の事を褒めた。
「ん、これまでで一番」
「ばっちりです!」
「ん、ばっちり…まであと少し、ばっちぃ、くらい」
「それはむしろダメそうな感じが…」
「…私も…出来て、いたかしら?」
「はい!すっごくかっこよかったですよ。梢先輩」
「本当に良くなっています。録画もしていますので、是非確認してください」
「そう…そうなのね」
そう言う梢は、以前のように不安を感じているような表情では無かった。
『ふふっ』
「良い感じ、このまま頑張ろう。もうちょっと足りない感じもする」
「そうね。まだ完ぺきではないはず。しっかり後で確認させて」
「そうだね。でも、この調子でやっていこう」
「ん、このままやれば大丈夫」
「それから、花帆さんと村野さんの振り付けも考えないと」
「あ、それなんですけど」
「うん?」
「あたしたち、自分の振り付けを考えてきたんです。見て貰えませんか?」
「おおー」
「えっ?二人で考えたの?」
『はい!』
二人はそう言って、自分達で考えてきたというダンスを披露してくれた。
「凄いね二人は」
「ふっふっふ。驚きましたね先輩方」
「五人で頑張るって決めたんですから、あたしたちで出来る事はあたしたちで頑張ります!そういう事です!」
「ん、花帆凄い」
「やった!」
「あ、あの…わ、私も」
「ん、さやも」
「はい!」
「…ふーありがとう二人とも。あなたたちのおかげで、たくさん練習できるわね!」
「だねー」
「じゃあ、しっかりと合わせて…撫子祭までに、必ず完成させましょう!撫子祭を見に来る人達に、みっともないスクールアイドルクラブなんて見せられないわ」
『おー!』
梢の言葉で、みんなで士気を高めていると。学校内に、アナウンスの音が鳴った。
「あー二年の乙宗梢と夜空未来、乙宗梢。夜空未来。生徒会室まで来てください。いじょー」
沙知先輩の声だったな…今の。
それだけ言うと、アナウンスの音が鳴って静かな時間が戻ってきた。
「…何したのこずとみく」
「何かしちゃった前提ですか!?」
「そんな!あたしも一緒に謝りに行きますよ!」
なんで何かをしたという前提でいるんだろうみんな…
「何もしていないし、二人で行くから」
「そうだよ、ただの呼び出しじゃん」
「か、代わりに行ってきましょうか!」
「花帆ちゃん…大丈夫だから」
「綴理、少しの間、二人の練習を見てあげて」
「ん、なんだろうね。呼び出し」
「…なんとなくは予想付いてる」
「ええ、それじゃあ、後で」
綴理にそう言って、梢と二人で生徒会室へと向かい、帰ってくると花帆ちゃんとさやかちゃんが地面に横たわっていた。
「綴理…何をしたらこうなるの…?」
「ごめん、嬉しくて舞い上がった、二人とも、振り付け凄く良いよ」
「それはいいんだけど…」
「私もしっかりと見たかったのだけれど、今から出来るか怪しいものね…立てる?」
梢はそう言って、花帆ちゃんに手を差し出し、花帆ちゃんの梢の手を取って立ち上がる。
「ありがとうございます…!ぜぇ、ぜぇ…大丈夫です。まだやれます…!」
「すみません…この体たらくで…」
「気にしないで。綴理が喜ぶくらい素敵なものだったのよ。だから、二人は何も悪くないわ」
「ボクが悪いのか??」
「いや…綴理が悪いんじゃなくて…呼び出された僕達が悪いのか?」
「あ、呼び出し!梢先輩、未来先輩、大丈夫でした?」
「ああ、大した事じゃなかったから」
「うん、こっちの話だから」
「なんだったの?」
「ま、まあまあ、言いにくい事もありますよね?なにせ呼び出しですし…その、やらかされてしまったのでしょうか?」
「やらかされてしまっていません…!!」
「はぁ…本当に気にしなくていいのに。そうね、簡単に言うと」
「えっ?言うの?」
「別に問題はないでしょう?」
「梢が良いなら…」
梢は他校のスクールアイドルから、スカウトが来た事をみんなに話した。
『スカウトー!?』
「そ、それはつまり、別の学校に移るってことですか!?」
「そういう誘いが来ただけよ?」
「こ、この世の終わりだー!!あたしはここで蕾のまま萎れるんだー!!」
「誘いが来ただけだと言ってるでしょう?」
話の内容だけに、花帆ちゃんが大袈裟な反応をしてるけど…無理もないか
「行っちゃやだあああ!」
「大丈夫だから! もう。どこにも行ったりしないから大丈夫よ」
「本当に、その、慌てなくても良いのでしょうか」
「私とスクールアイドルがやりたい、と言って貰えたのは光栄だけど…受けるか断るかは私次第だもの。だから、誘いが来ただけでこんな風になる必要はないのよ」
「そういうもの、ですか…あ、だから呼び出しの予想は付いている、と?」
「お祭りでお店から席を外した時に、彼女達からお手紙を渡されていたの。だから、この話じゃないかと思っていただけよ。それにみくだってスカウトが来たのよ」
『えっ!?』
梢の発言した事により、みんなの視線が僕に飛んできた。
「はぁ…言いたくは無かったんだけど…」
「未来先輩…嘘ですよね…」
「大丈夫、さやかちゃん達をほって行くなんてしないから」
「というより…なんで未来先輩までスカウトの話が来てるんですか…?」
「梢がスカウトされた学校って、音楽にも力入れてて、僕がさコンクールで金賞を取ったり、ダンスで全国に行ってたりするんだけど、その能力を内の学校で伸ばせてみませんか?ってスカウトされてるんだよね。それで、二人でどうって言われたんだよね」
「未来先輩…?」
「気にしないで…蓮ノ空以外に行くなんてしないから」
「じゃ、じゃあ…先輩達がどこかに行ったりは…?」
「しないしない、大丈夫大丈夫」
「うん」
僕と梢がそう言って、二人が一安心していると、綴理が口を開いた。
「本当にそれでいいの?」
『えっ?』
「それでいい、というのは…どういう事?」
「だから、本当に断っていいの?」
「んん?それはつまり…私にスカウトの話を考えろ、という事?」
「ちゃんと考えた?」
「考えるも何もないわ」
「蓮ノ空から私と未来が抜けるなんて、あり得ない事よ。抜けられた側の気持ちも知っているつもり。花帆さんを誘って、今のスリーブブーケを作ったのも私。そしてなにより、この部活を引っ張っていくって決めているもの」
「…」
「それに今更この学校を離れて新しい場所に入っても。馴染めるか分からない、その学校のスクールアイドルとして胸を張れるか分からない。ほら、私がスカウトに乗る理由なんて、最初からないのよ」
「じゃあ、二人に聞きたいんだけど…スカウトしてきた学校のスクールアイドル部、蓮ノ空とどっちが有名なの?」
「まぁ…あっちの方が有名かな」
「そうね。過去の実績ではなく現状の話をするなら、未来の言うようにあちらの方ね。全国大会常連で、去年も結果を出しているし…」
そう言って、梢は自分のスマホを操作して、こないだのスクールアイドルの写真をみんなに見せた。
「この子達よ、真ん中の子が、私に会いに来た子」
「あっ、知ってます、この人たち。凄く揃ったパフォーマンス、っていうので有名な人達ですよね」
「そうね、素直に凄いと思うわ。向こうのスクールアイドル部についてはそんな感じね…それで?」
「つまり、ラブライブ!優勝するためにはそっちの方が近いってことだ」
「綴理…何が言いたいの?まるで私に出て行ってほしいみたいじゃない」
「そういう事じゃないけど」
「ちょ、ちょちょちょっと待ってください!!綴理先輩だって、乙宗先輩に出て行って欲しい訳ないじゃないですか!
「さや…」
「せっかく良い感じに練習成果が出てきている所ですよ!は、始めての文化祭でのライブが楽しみです!私!」
「れ、練習しましょうよ、先輩!!」
『…』
「そうだね。一旦、この話は終わりにして練習再開しよう!」
「分かったわ」
「…じゃあ、やろうか」