次の日、用事があって部室に来るのが遅くなった僕が部屋に入ると
「何これ…」
「みく…」
「構わない作戦やってるのか…」
「ルリが思ってたのとぜんぜん違う」
「違う…!?そっかぁ」
「やっぱり、だめじゃないですか…」
「だから昨日、この作戦は無理だって言ったのに…」
「いいのいいの、じゃあ、次の作戦はねー…」
「て、ていうか!なんなんですかね、これは…」
「ルリちゃん…僕も聞きたい」
花帆ちゃんが若干暴走気味の中、困惑するルリちゃん。
とはいう僕も困惑していた。
「ほら、今日一日しかチャンスがなかったから、手当たり次第に試してみようと思って。瑠璃乃ちゃんがスクールアイドルクラブでも居心地よく過ごせるように!色んなアイディア考えてきたから、期待してて!」
その行動力は尊敬しないといけないなぁ。
「え、ええー…?なんで、そこまで」
「だって、ひとりで考えてうまくいかなくっても、みんなが考えたらもしかしたら、抜け道とかあるかもしれないじゃん!」
「ボクたちも、そうだったもんね」
「…そうね、その通りだわ」
「瑠璃乃ちゃんが辞めに済んで、バッテリーが切れなかったり、あるいはバッテリーが切れても気にしないでいいような、そういうの!ね、もっとあたしたちに、瑠璃乃ちゃんの事、教えて」
花帆ちゃんがそう言うと、ルリちゃんは過去の話を始めた。
「ルリは…小学校の頃ね。ルリ、楽しいだけの空間が好きだったんだ。周りのみんながニコニコしてて、ずっと楽しいことだけ続いていく、でも、それってほんとうはすっごく難しくて。誰かがイライラしたり、不機嫌になったりするたびにね。ルリ頑張って、みんなの空気を和らげようとしてたら…最初は楽しい事を守る為だったのに、すっかり、それが癖になっちゃってた」
「いつでも気になっちゃうんだ…グループで、誰かつまんなそうにしてる子はいないかな、疲れたりしてないかなって。もしそういう子がいたら、ルリが絶対楽しませてやるんだぞーって思ってた」
「そんな事を続けていたら、瑠璃乃さんのほうが…」
「うん…ルリの方が先にへたっちゃうよね。だから、徐々に独りでいる時間が増えていって…」
「分かります…大変ですよね、人間関係って…」
「そんなある日ね、気付いたの、え、ヤバ!独り、めっちゃ楽しいじゃん!って!」
「え?思ってた展開と違う…」
さやかちゃんの言う通り、想像してた展開とは違った…
ルリちゃんもなんか重い過去があったんだな…
「誰にも気を遣う必要がなくって、全部自分の好きなように出来る!地平線の向こうまで広がるような自由!ここには楽しい事しかない!いっつもわんだふるわーるど!以降ね、ルリは我慢するのやめたんだ。ルリが好きなのは楽しいこと。だから、楽しい事を追い求めて、そして!」
「そして、スクールアイドルクラブに来てくれたんだよね!」
「いや、それは」
「ありがとうね、瑠璃乃ちゃんのこと、いっぱい聞かせてくれて。あたし、昨日までは瑠璃乃ちゃんのこと、ぜんぜん知らなかった。だから、いっぱい新しく知れて、嬉しい」
「そ、それは、でもでも。今から知ったって、もう手遅れっていうか。ルリ…昨日、花帆ちゃんにも嫌な事、いっぱい言っちゃったし…」
「あたしはそんな事ないと思う」
「楽しそうって感じたから、スクールアイドルやってみようって、来てくれたんだよね。だったら、続けれる方法、一緒に考えようよ!」
「…で、でも」
「あたしね!もうちょっとで学校辞めるところだったんだ!」
「えっ?なんで!?」
「この学校じゃ、あたしの夢が叶えられないって思ったから。でも大丈夫だった。大丈夫になったの!」
花帆ちゃんはそう言って、僕の方向を向いて来た。
うん、懐かしいなあの頃…とは言っても4月の話だけど
「えっと」
「そういうことでしたら、わたしももう少しで部活を辞めるところでした。今は、フィギュアとスクールアイドルの両立を、頑張っています」
「先輩達なんて、つい最近まで半年くらいずっと喧嘩してたんだよ!」
「喧嘩ではありません」
「そうそう、ちょっと仲違いをしてただけだから…」
喧嘩って簡単に終わらせないでほしいのだけれど…ってこれじゃ梢みたいだ…
「こずのステージ、すっごくかっこよかったもんね」
「あなたそれ一生それ言うつもり?」
「梢、これ以上言っても無駄だと思う」
「…どうして」
「え?」
「さっきから聞いてたら、やっぱりみんなの個性えぐくて、でもおんなじ方向を向いて、スクールアイドルを続けられているのって、なんで!?どうやってるの!?今までは、ルリが頑張らなきゃだめだったのに…みんなはどうして、そんな事が出来るの!?」
ルリちゃんの疑問に、梢と花帆ちゃんが答えた。
「それはね」
「みんながスクールアイドルだから」
「スクールアイドル、だから…?」
「うん!スクールアイドルはね、凄いんだよ。なんだっていいの、凄く自由なんだ。自分の為にやってもいいし、応援してくれる人のためでも、ラブライブ!優勝のためでも、楽しいからやっててもいいの。違うから、ときにはぶつかったり、喧嘩することしれないけど。でも、同じだから、お互いを認めて、一緒に手を取り合えるんだ。やりたいって気持ちがあれば、どんな個性だって受け入れられるのが、スクールアイドルなの!」
「瑠璃乃ちゃんはどう?スクールアイドル、やってみたくない?もしやってみたいんだったら、あたしたちみんな、もちろん協力するよ!だって、同じスクールアイドルが大好きな、仲間なんだもん!」
「ルリ、ルリは……やってみたい」
「バラバラなのに同じ方向を向いて、みんなで楽しい事が出来る、そんな蓮ノ空スクールアイドルクラブだから、憧れて、ここにやってきたから…ルリも、スクールアイドルを、やってみたい! カリフォルニアにいた頃から、ずっと見てたし!楽しそうだなあ、って!同じだけど、ぜんぜん違うみんなと一緒なら、ルリと同じだから、できるかもって思ったんだ。ルリにも出来るかなあ、スクールアイドル…」
そう言うルリちゃんに対して、みんなはそれぞれ答えた。
「絶対大丈夫です!私にも出来るんですから」
「きっと出来るよ。みんながいるから」
「なりたいと思ったら、いつでもなれるのよ。スクールアイドルには」
「うん、ルリちゃんがスクールアイドルやってる所を見たいかな僕は」
「でも、人と一緒に居るとすぐ充電切れちゃうし、練習サボってサボってどっかいっちゃう失礼なミジンコだし…」
「でもでも、みんなと一緒にいるのも楽しいんでしょ?もう知ってるもん、瑠璃乃ちゃんのこと!」
「…ルリが居ても、迷惑じゃ、ない?」
ルリちゃんの問いに対して、花帆ちゃんがどんどんと答えてくれる。
これじゃ、部長の出る幕がないなこれ
「ぜんぜん!充電が切れた瑠璃乃ちゃんだって、個性だよ!お花畑には、色んなお花が咲いているんだから、きれいなんだもん!あたし、瑠璃乃ちゃんと一緒にスクールアイドルをやりたい!」
「…うんっ!ルリも!ありがとうね、花帆ちゃん、みんな…」
この後、花帆ちゃんの秘訣である段ボールが出てきたことに僕はまた困惑するのだった。
-後日-
「という訳で、よければ正式入部させてもらいたいんですけど…ど、どうでしょうか?」
「意義無し」
「充電切れに関しても、大丈夫よ。コミュニケーションが取れるだけ、十分すぎるほどありがたいわ。ねえ綴理」
「ボク取れてるよね?コミュニケーション」
「さやかちゃんが頑張ってるからだね」
「私は最近もう慣れてきたので、大丈夫ですよ」
本当、慣れって怖い。
とはいうけど、ルリちゃんには受けていた。
「受けたよ良かったね」
「そういえば瑠璃乃ちゃんって、どうするんですか?蓮ノ空って、みんなユニットごとに活動するんですよね」
「それは、梢先輩か、綴理先輩、もしくはみく先輩がする形になるんでしょうか?」
「教えるのは出来るけど、ステージには立たないよ?僕は」
「ルリは、めぐちゃんと組むよ!だって、その為に日本に帰ってきたんだもん!」
『…めぐちゃん?』
ルリちゃんの言葉に二人は分かって居なかったようで
「どちら様ですか?」
と聞き返し、ルリちゃんはびっくりしていた。
さて…この三人にどう伝えるべきか…