蓮ノ空のアイドルクラブのマネージャーの話   作:桜紅月音

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33.合宿と慈

 

「ん、私だって…練習じゃ、できるのにな…」

 

「慈、今日もやってるね」

 

「みく…そっちから来るなんて珍しいじゃん」

 

「そんな喧嘩腰に言わなくても…今日は慈に話があって来たの」

 

僕がそう言うと、慈はさっきまでのテンションとは一転して元気よくなった。

 

「遂にめぐちゃんの魅力に気づいて、私に乗り換えたくなっちゃったとか?」

 

「それはない」

 

「酷いっ!」

 

「それはいいとして…」

 

「私は良くない!」

 

慈からの言葉を遮るようにして、梢と綴理の二人がやってきた。

 

「…げ。梢に綴理も」

 

二人の姿が目に入った慈はそう声を漏らした。

 

「いくらなんでも『げ』はないでしょう こないだのライブ、見にきてくれていたのよね。気になる?瑠璃乃さんのこと」

 

「…ぜんぜん、私はもうスクールアイドルクラブとは関係ないし。あの子がやることに、いちいち口出す筋もないし」

 

「るり、今度ひとりでライブをするんだよ」

 

「えっ!?早くない!?さすがにまだ体ができてないんだし、もうちょっと基礎練に力を入れたほうが!」

 

慈はそう言って、ハッとなった。

そんな彼女を見て、僕と梢はふふっと笑う。

 

「ま、まあ、私には関係ないけど!」

 

「瑠璃乃さんたっての希望なの。どうしてもライブを見せてあげたい相手がいるんですって」

 

「…ふうーーん」

 

「ねえ、めぐ。ボクとこずは、一緒のステージに立ったよ」

 

「そうみたいだね」

 

「ラブライブ!の全国大会を辞退しようって、4人で話し合って決めたときに、約束したよね。もう、ボクたちはお互いに関わらないようにしようって。めぐも、自分のリハビリに付き合わせて、ボクたちに時間を使わせたくないからって」

 

「うん、誰もそんなこと言ってないけど」

 

「え?言ったよ?」

 

「くぅ…えぇと」

 

「言ったよね?こず。めぐは泣きそうだったのに笑って。もう私のリハビリにーー」

 

「ああもう!なんなの!こいつなんとかしてよ、梢!みく!」

 

「無理」

 

「そうね、あなたがいなくなってから、未来が部長で居ない時もあったから、実質私一人で綴理の相手をしていたのよ」

 

「それはごめんだけど!じゃなくて!謝る義理とかないし!つまり、3人は何が言いたいわけ?」

 

「率直に言うと…」

 

「あれから1年経って、私達の約束は、もう、破られてしまったってこと」

 

「そう言う事」

 

「んっ…そんなの勝手すぎ どっちみち、ムリだよ。だって、私はまだ」

 

「ねえ慈、いつかみんなで海に合宿に行こうって、話したわよね」

 

「え?いつの話ーー」

 

「覚えてないならいい。その合宿、来週行かない?」

 

「……はぁー!?!?」

 

 

 

 

*****

 

そして、やってきた合宿の日。部活のみんなは先に向かった中、僕はというと

 

「私は嬉しいけど…みくは梢と行かなくて良かった訳?」

 

みんなに遅れて、慈と一緒に向かっていた。

 

「梢から、慈と一緒に行ってって言われたんだから仕方ないでしょ」

 

数日前、梢から『未来は慈と一緒に来て。後、信じているけど慈に手を出さないようにね』と言われた。

 

「ふ〜ん…梢ったら随分と余裕そう」

 

「敵に塩を送るって言いたいの?」

 

「敵に…塩を送る…?何を言ってるのみく」

 

「…マジか…」

 

慈が勉強を出来ないのは知っているけど、敵に塩を送るという意味を知らないのか…

 

「知らない物は知らないもん…」

 

「まぁ…困っている敵を助けてあげるって意味だよ」

 

「確かにみくのことでは困っているけど、梢に助けてもらう必要ないもん!別れて欲しいのが1番の助けだよ」

 

「おい…」

 

なんて事を言うんだ慈は…

 

「後、去年、準備したのに着れなかった水着持ってきたしね」

 

とウィンクをしてそう言った慈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

その後、慈に先生の態度だとか、なんで勉強しないといけないのだとか愚痴を聞かされまくって、気付けば合宿を行う場所までやってきていた。

 

「げっ…」

 

「げっって何?」

 

「あの子達も居るの…」

 

「そうでしょ。合宿だって言ってるのに居ないのはおかしいでしょ」

 

「せっかくみくと2人きりになれると思っていたのに…」

 

慈はそう言って、頭を抱えていた。

そんな事を言っていると、ルリちゃんに見つかったらしく。ルリちゃんが大声を出した。

 

「あーっ!めぐちゃん!」

 

「はっ」

 

「花帆ちゃん、さやかちゃん!とぅーきゃーっち!」

 

「りょーかいっ!」

 

「逃がしませんよっ!」

 

ルリちゃんに指令を受けた二人が目の前に立ちはだかった。

そして、二人は慈に飛び掛かった。

 

「う、うわー!なんなのキミたちー!」

 

慈は、あっけなく捕まった。

僕と一緒に居る時点で逃げ道は無かった。

 

「…まったく、私は上級生なんだぞーそれに襲われるならみくが良かった」

 

「めぐちゃん、どうしてこんなところにいるの!?」

 

「え?そ、それはーせっかくの休みだし、みくと海見にいこっかなーって思ったら、たまたま…みたいな?」

 

「えっ、偶然…!」

 

「なわけないよ!嘘だよ、嘘!」

 

「嘘つくにしても、もうちょっとマシな理由があるだろ…」

 

ルリちゃんは、慈に騙されそうになってるんだけど…

 

「そーだよね。めぐちゃんの言うことだから、ついつい信じちゃった…」

 

「瑠璃乃さんを騙して心が痛まないんですか、慈先輩」

 

「梢とみく、なんかこの一年生ふたり、私に当たり強くない!?」

 

「仕方ないと思うわ」

 

「だよね…慈が悪いと思う」

 

「というわけでね、慈は私達三人で呼んだの。瑠璃乃さんの練習を見てもらおうと思って」

 

梢がそう言うと、僕達三人以外の四人が叫んだ。

 

「ちょ、ちょっと梢、私そんなの聞いてないよ!」

 

「そうだったかしら。てっきりみくが説明してると思っていたのだけれど」

 

「説明した筈…」

 

「こずもみくもたまにうっかりなところがあるからね」

 

文句を言ってくる慈に、僕達三人はそれぞれそう返事を返す。

 

「慈先輩、やってくれるんですか!?あんなに優しくなかったのに!」

 

「ぐっ」

 

花帆ちゃんの言葉が慈の心に突き刺さったようだった。

何をやったんだ慈は

 

「でも仕方ないのよね。花帆さん。私はスリーズブーケで、綴理はDOLLCHESTRAがあるでしょう。どうしても手が足りなくて」

 

「それは仕方ないね。ほんとに仕方ない」

 

二人で外堀を埋めていく。

 

「みくだっているじゃん。なんで私なの!?」

 

「慈にしか適任は居ないよ。僕が踊る訳じゃないし」

 

「ぐぬぬ、おまえらだましたなー…」

 

「勝手に勘違いして、付いて来たのは慈でしょ…」

 

ここに来る最中の笑顔だった時の慈とは大違いな表情になっていた。

 

「そうだけど…」

 

「どうかしら、慈」

 

「めぐちゃん…ルリにスクールアイドルのこと、教えてくれるの…?」

 

完全にビジターな雰囲気になっている。

味方は誰も居ない慈。

 

「…私、もうほとんど練習なんてしてないんだけど」

 

「でも、スクールアイドルのことは、ずっと見てきたんでしょう」

 

「めぐちゃん」

 

「…わ、かったよ!どうなっても、知らないんだよ!」

 

まぁ…ここで逃げる選択肢は無かったか。

 

「わーい!めぐちゃん、大好き!」

 

「むむむ…」

 

「…仕方ありませんね。誰より、瑠璃乃さんが嬉しそうなんですから」

 

さやかちゃんが言うように、慈に抱き着いているルリちゃんは嬉しそうにしていた。

 

「…もう!梢先輩、早く練習しましょう!」

 

「あら、珍しい」

 

梢がそう言う通り、花帆ちゃんから言うなんて珍しい。

 

「ボク達もいこっか、さや」

 

「はい!」

 

気付けば、僕と慈、ルリちゃんの三人になっていた。

 

「それじゃあめぐちゃん!よろしくね!」

 

「先に言っておくけど!」

 

「え…?な、なに?」

 

「…こないだは、あんな言い方して、ごめん。それと、蓮ノ空入学、おめでと」

 

「うんっ!」

 

こないだ…ルリちゃんが部室を飛び出して行った日の事かな。本当に何をやっているんだが…

 

「じゃ、僕は荷物を置きにいくか」

 

「待って私も行く」

 

「そうかい…ルリちゃん、もうちょっとだけ待っててね」

 

「はい」

 

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