蓮ノ空のアイドルクラブのマネージャーの話   作:桜紅月音

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34.僕と慈

 

「ねぇ、みく、後ろ止めてくれない?」

 

「なんで僕に頼むの…」

 

「だってみくしか居ないから」

 

梢の別荘に行った僕と慈は、着替えをしていたのだが、何故か慈から水着のホックを止めるように言われた。

僕は、近くにあった鏡を持ってきて、慈のそばに置いた。

 

「鏡持ってきたから、見ながらやったら?」

 

「…ケチ」

 

「ケチでもなんでも構わないよ」

 

「…みくのバカ…」

 

それから、僕と慈は砂浜まで戻ってきた。

二人でルリちゃんのダンスを見る事になった。

 

「はい、ワンツー、ワンツー、よーし、そこまで」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、どうかな、めぐちゃん。みく先輩」

 

「うん、体力ついたね、るりちゃん。ダンスも、上手になってる」

 

「えへへっ、いっぱい修行してきたし」

 

ルリちゃんは、慈から褒められて照れていた。

 

「みくはどう思う?」

 

「そうだね、やっぱり踊っていた人に教えて貰えると変わるんだね」

 

「そう言うみくもダンスで全国に行ったのによく言うよ」

 

「今はやってないから、流石にみんなには負けるけどね、それは置いておいて…ルリちゃんは修行してきたって言ってたけど、慈と一緒にスクールアイドルをやる為って事?」

 

「うん」

 

「…そっか、るりちゃんは昔から、私のこと大好きだったもんね」

 

「相思相愛ってヤツだねー」

 

「私がいないと、すぐに充電切れになってたし」

 

「むぐ、武者修行してきて、だいぶバッテリー長持ちするようになったもん!大容量ルリちゃんだよ!」

 

「どーだかねー」

 

「会った頃に比べたら、一緒に居る時間増えたよねルリちゃん」

 

「ですです!」

 

そんな会話をしていると、背後に忍びよる二人の気配を感じた。

 

「それで、キミたちはさっきからなにをしているのかな」

 

『ぎくっ』

 

慈が後ろに振り返って、花帆ちゃんとさやかちゃんはそう言った。

 

「私がちゃんとコーチできているかどうか心配で、様子見に来た?」

 

「それは…いえ、申し訳のないご指導だったと思います」

 

「…でも、ほったらかしにしたら、また瑠璃乃ちゃんに冷たいこと言うんじゃないかなーって思って」

 

「え?あ、ああ、そー…」

 

本当に何をしたのか…

 

「みくには関係ない…ふーん、るりちゃん、ちゃんと友達作れてるじゃん…まあ、あの態度はちょっと大人げなかったかなって、反省したよ。ごめんね。ほらほらぁ、仲直りしよ、ほーら☆」

 

慈がそう言うと、花帆ちゃんとさやかちゃんが小声で何かを相談し始めた。

さーてどうするのかと思っていたら、ルリちゃんが話かけにきた。

 

「あ、花帆ちゃん、さやかちゃん!どうしたの?」

 

「え!?いや、ちょっと慈先輩にご挨拶をと!」

 

「ええ、ええ!そうなんですよ!」

 

さっきの慈しかり、ここの二人しかり誤魔化すの下手…

 

「…なんか、距離ある?」

 

「め、慈せんぱぁい!今度あたしにもぉ、コーチしてくださいねぇー♪」

 

「はい!ぜひぜひ、ぜひ、お願いします!」

 

二人は、慈にそう言って甘えたい後輩ムーヴをし始めた。

 

「うーん♪かわいい後輩めー!」

 

結果は良いほうに向かった。慈、あーいうの好きそうだし。

 

「いつの間にそんなに仲良くなっちゃってぇ…!?」

 

「私の人徳、かな☆」

 

うん…そういう事にしておこう。言っておくけど…ルリちゃんの為って事にしておこう。

 

「…慈先輩って、梢先輩や綴理先輩と一緒にスクールアイドルをやっていたんですよね」

 

「うん、そうだよ、私と梢、それに綴理の三人はね、かつて蓮ノ空スクールアイドルクラブに輝く希望の星ということで、蓮ノ大三角って言われてたんだ」

 

「蓮ノ大三角!」

 

「かっこいい!」

 

「久しぶりに聞いた。その異名」

 

すると、梢と綴理がやってきて続けた。

 

「…同じように『問題児』とも呼ばれていたわね」

 

「むっ」

 

「そうだね~こずもめぐも、手のかかる子だったぁ」

 

「綴理が言わないで!/綴理が言うな!」

 

「綴理が言えた事ではないな」

 

綴理が発した言葉に僕達三人が速攻で声をあげた。

 

「そうだよ、いっつも先輩に食ってかかったのは、梢でしょ!『こんな練習で本当にラブライブ!優勝できるんですか』ってぇー!」

 

「梢先輩が…!?」

 

慈の言葉に、花帆ちゃんが驚きの声を出した。

 

「慈の方こそ、本当に目立ちたがりで、先輩を困らせてばっかり、『この曲はもっと私を推したほうが、ぜったいに人気出ますよ☆』だったかしら?」

 

「めぐちゃんがー!」

 

今度はルリちゃんが花帆ちゃんと同じ反応になっていた。

 

「はぁ…特にこの二人は本当に大変だったのを思い出して頭が痛くなってきた…」

 

「それが今じゃふたりとも、こんなに立派になって」

 

「…そうね、綴理もちゃんと時間通り練習に来るようになったものね」

 

「綴理が…!?!?」

 

「そうだよ、あの綴理がって言ったらそうなるよね」

 

「ぴーす」

 

手をチョキにして言う綴理

 

「さやのおかげだよ」

 

「よかった、自覚があって本当によかったわ」

 

自覚があってやってるとしたら達が悪いって…

 

「そんな、わたしはなにも…って、本来なら言うべき場面なんですが」

 

「いいのよ、さやかさん。嘘をついてまで上級生を立てる必要はないわ」

 

「じゃ、さやが上級生ってことにする?」

 

「それはどういう!?」

 

「さや先輩」

 

「いやです!わたしは後輩のダンスを見て、自身を打ち砕かれたくないです!」

 

「さやせんぱーい」

 

「やめてください、綴理ちゃん!ではなく!」

 

「ここは僕も乗った方が良かった?」

 

「ミク先輩まで辞めてください!」

 

綴理とさやかちゃんのやりとりを見てたら乗りたくなってしまった。

 

「あなたたち、仲がいいこと…」

 

「それを言うなら、梢たちもだよねー?」

 

「なにが」

 

「前に金沢ライブのリハーサルで、みくが花帆ちゃんの事を庇って、私がお見舞いにいったときさ、もうずーっと『花帆さん、花帆さん…!』って、泣きじゃくっちゃって」

 

「泣いてはいなかったでしょう!」

 

「確かに、僕に抱き着いてきたずっと言ってたようなぁ…」

 

「みくまで…」

 

「私は最初から知ってたよ。梢は同級生や上には厳しいけど、下級生には激甘になっちゃうだろうなーって」

 

「そんなことないわ。私はちゃんと鬼って思われてますから。ねえ?花帆さん?」

 

「根に持ってるー…!で、でも!あのときは大変でしたね!あたしをかばったみく先輩が大怪我したんじゃないかってすっごく心配しちゃいました」

 

「今は動けるし、もう心配しなくていいよ。大事にならなかったし、花帆ちゃんも怪我しなかった。これで良かったよね。不幸中の幸いって事」

 

「あ、もしかして、ずっと怪我に気を付けてって言ってたのって…」

 

花帆ちゃんがそう言うと、梢と慈が気まずそうにした。

 

「そう言う事」

 

「仲間を失うのはもう、懲り懲りだもの」

 

「あ、あの!慈先輩って、もう、ダンス出来ないんですか!?」

 

「花帆さんーー」

 

花帆ちゃん…ここは本人が答えるのがいいか…口を挟む必要はないか

 

「うん、そうだよ」

 

「でも、瑠璃乃ちゃんに教えているときは、できてましたよね?」

 

「ステージ上じゃなければね」

 

「…でも、それって、治ったりとか」

 

「しなかった。あるいは、いつか治るのかもしれないけれど、それがいつになるかわからないかな。みくも頑張って探してくれたけど」

 

「…慈」

 

「スクールアイドルをするのは、楽しかった。私にとっては、いい思い出だよ」

 

「だったら、ダンスができなくても、スクールアイドルにはなれますよね!?」

 

「花帆さん、さすがにそれは!」

 

「でも、でも、だって…」

 

「人にはそれぞれ、その人にとってのスクールアイドルがあるんだよ。もちろん、ダンスをしないスクールアイドルがいてもいいと、私は思うよ。けどね、それは私の思い描いた夢の形じゃないんだ」

 

そう言うと、慈は僕達の方を向いて

 

「梢、綴理、そしてみく、素敵な後輩が3人も入ってきてくれて、よかったね。ずっと心残りだったのはさ、私がいなくなったら華もなくなっちゃうでしょ?それで新入生が来なくなって、蓮ノ空スクールアイドルクラブが廃部になっちゃうんじゃないかーって」

 

「…なに言っているの。そんなわけ、ないでしょう」

 

「うん、梢も綴理も仲直りしたみたいだし、よかったよかった。これで私が思い残すことも、もう、あんまりないかな、ふふっ」

 

慈がそう言うと、ルリちゃんが口を開いた。

 

「まだ…まだ、ルリは諦めてないんだから!いくぞー!メラメラー!」

 

そう言って、ルリちゃんは走っていった。

そして、そんなルリちゃんに続くようにして、花帆ちゃんとさやかちゃんも走っていった。

 

「ふふ…みんな本当に、素敵な後輩なのよ」

 

「…そうみたい、だねえ」

 

 

 

******

 

「みく、何を見てるの?」

 

「ん?夜の海も綺麗だと思って」

 

「そうなんだ~ボクも綺麗?」

 

「なんでこのタイミングでそれを聞くんだ…」

 

「だって、みく、ボクの事を綺麗って言ってくれた事ないから」

 

「なんじゃそりゃ…」

 

「いいや、ほら帰ろ?遅すぎるとこずにまた、怒られる」

 

「それは綴理だけの話だと思うけど、そうするか」

 

先に歩き始めた綴理の後を追いかけて、僕も歩き出す。

 

「慈…後悔のない選択をするんだよ…」

 

砂浜で踊る慈を見て、僕はそう呟いた。

 

「みく、何か言った?」

 

「ううん、何もない。早く帰ろう」

 

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