「まったく、なんなの急に…」
「ね」
部室にて、梢と綴理の二人がそう言いながら居た。
「梢先輩、綴理先輩」
そこに、瑠璃乃がやってきた。
「あら、瑠璃乃さん。いえね、さっき慈が来て、急に『私物を処分してくれ』だなんて言ってきたの。おかげで、大倉庫までいくはめになっちゃったわ」
そう言う梢の前には、慈の私物が入った段ボールが置いてあった。
「それって…めぐちゃん、もう、スクールアイドルクラブに戻ることはない、ってこと…?」
「かも、しれないわ」
瑠璃乃の問いに、梢はそう返事を返した。
「ルリのせいだ…ルリが、めぐちゃんを、追い詰めたから…」
「…。なにか、あったみたいね」
「あれ…?あの靴」
瑠璃乃は、机の上に置いてあった靴の入った段ボールが目に入ってそう口に出した。
『え?』
「気づかなかった…ルリが、めぐちゃんにプレゼントした靴だ。サイズ違いだけど、同じもの…こんなに、ボロボロにして…いっぱい、練習してたんだ」
瑠璃乃は靴を手に取りながら言う。
「知らなかった…」
「慈は、誰よりも努力する女の子だったわ」
「そういえば、聞いたことあるよ。めぐに、どうして靴を取っておくの?って
「…そうしたら?」
梢の問いに、綴理は答えた。
『私さ、この箱を見るたびに思うんだ。ずいぶんと遠くまで走ってきたなー、って。もしも、こんなところまで追いかけてきてくれる子がいたらーーそんなのもう、世界中を夢中にさせるような無敵なユニット組んじゃうしかないでしょ?」
と
「ルリ、ちょっと行ってきます!」
綴理の言葉を聞き、瑠璃乃は走りだす。
「え?どこに」
綴理の言葉も虚しく、瑠璃乃はあっという間に姿が見えなくなってしまった。
「行っちゃった」
「あなた、またよく覚えていたこと」
「ずっと…ずっと、楽しかったんだ。覚えているさ」
綴理は、自分の胸に手を当ててそう言った。
そんな綴理に梢はふと思い出したかのように聞いた。
「それで…未来はいつになったら来るのかしら…」
「多分…めぐの所だと思う…」
「なんでそう思うの?」
「みくは、ボクたちよりもめぐの事を気にしてたから…合宿の時も踊るめぐの事見てた」
「そう…でも、慈を戻すのは未来と瑠璃乃さんかもしれないわね」
*****
部室でそんな事があったと知らない僕は、慈と屋上に居た。
「みく、私物は処分して、梢達に言ってきたよ」
「…本当にそれでいいの慈は…」
「いいって…私がそう決めた事なんだからさ、スクールアイドルもこれでお終い」
そう言う慈の目は、後悔をしているような目だった。
「世界中を夢中にさせるような無敵なユニット組むって言ったの覚えているんだけどさ…それはどうするの?」
「……よく覚えているねみく…」
「あんなことを言われたら覚えているものだよ」
「みくって本当は、私の事好きだよね?ここまで私の事見てるんだし」
「そうかもしれないね」
「えっ?」
「なんていうと思った?」
「私を揶揄ったなぁー!」
慈はそう言って、僕の事を叩いてくる。
「そうそう慈は、そうやって笑ってくれ。悲しむ慈なんて慈らしくないからさ。どうせなら、楽しい事をすればいいんだよ」
「それって」
「それだけ言っておこうと思って、後、やらなくて後悔をするくらいなら、やって後悔をした方が良いからね、後、ルリちゃんの事を呼んだからしっかりと話す事いいね?」
「みく…」
僕はそう言って、屋上から去る事にした。
-ライブ当日-
ルリちゃんは1人でライブを行っていた。
「みく!」
「慈、待ってたよここに来る事をね」
僕はそう言って、衣装を慈に渡す。
「早く着替えてルリちゃんの元へ行ってあげて」
「うん!」
慈は僕から衣装を受け取ると、着替えてステージ上まで走っていった。
バランスを崩したルリちゃんを支えに入った。
「あっ、めぐちゃん……。エヘヘ、あんなこと言っておいて、カッコ悪いね……」
「ううん、そんなことない。すっごく、カッコよかった!!」
「めぐちゃん…来てくれてありがとう!」
「違う。来てくれたのは、るりちゃんだよ!!」
「っ!…やめてよ。泣いちゃうじゃん!!」
「ふふっ、じゃあ、やろうか!るりちゃん!!」
「っ!うん!!」
そして、ルリちゃんと慈は観客の方を向いた。
「みんなーー!いつものやっちゃうよーー!!みんなー!ハロめぐーー!!」
『ハロめぐーーーーっ!!』
「そして、ルリたちは……蓮ノ空学院、最後のユニット!」
「私たちの名前は!!」
『みらくらぱーく』
慈が無事にスクールアイドルとして、復活した事によってライブは成功で終わった。
-ライブ後-
「はぁー…もーへとへとぉ…」
「瑠璃乃ちゃん!やったね!」
「ぐぇっ」
「ライブ、大成功ですね!」
「舞台袖からずーっとエネルギー送ってたかいがあったね」
「た、たんまっ、今バッテリーないから!密着されると!しんど、しんどい!」
疲労困憊のルリちゃんに、花帆ちゃんとさやかちゃんがくっ付く。
「復帰おめでとう、慈」
「ん…今までいっぱい心配かけちゃったね、ごめん、梢、綴理、みく」
「それから……。ーーただいま」
「…べ、別に、待ってなんかいなかったわ、あなたの私物、部室に置きっぱなしだから、今度は自分で大倉庫に戻してちょうだいね」
「そう言いながら本当は嬉しい癖に」
「おかえりめぐ」
「……。う、うん…あはは、やっぱりこういうのは、恥ずかしいなー…」
「あーっ、慈先輩照れてるぅー」
「案外かわいいところもあるんですね」
「だ、だから!私は上級生なんだから、敬いなさいってば!まったくもー」
花帆ちゃんとさやかちゃんに揶揄られる慈。
「めぐちゃん!ぐっじょぶ!きょうはほんとにほんとに、よくがんばりました!」
そう言って、ルリちゃんは両手を広げた。
「ん、んー…!んっ…」
慈はそのままルリちゃんの胸へと飛び込んでいく。
「うん…。あのね、るりちゃん…ずっと意地張ってて、ごめんね。ほんとは、るりちゃんが来てくれて…すっごく、すっごく、嬉しかったんだよ、心から、ありがとうーー」
「め、めぐちゃん。あわわわっ!」
「だから!次は、最初からステージに立とうね!ふたりで、一緒にーー!」
慈の言葉にルリちゃんは頷いた。
「よし、さっさと片付けするよ~」
僕がそう言うと、慈が速攻で声をあげてきた。
「ちょっとみく!もうちょっと浸らしてよ!」
「気持ちは分かるけど…時間ないのよ…」
「なんでそんな事になったのかしら…?」
「知らないよ…今日はそんなに時間が取れなかったの…だから、片付け始めるよ」
僕がそう言って、ステージの方へと向かおうとすると、手を掴まれた。
「どうしたの?慈」
「こないだはありがとう」
「あの時は僕の気持ちを言っただけ。行動に移したのは慈だから」
「そんな事ない!みくの言葉があったから行動に移せたんだよ。だからありがとう」
「感謝されるような事でもないけど…まあ、いいや。おかえり慈」
「うん、ただいま。それと…」
「ん?」
「みくの事、やっぱり好き」