蓮ノ空のアイドルクラブのマネージャーの話   作:桜紅月音

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40.バスった動画の弊害

結局、慈と一緒に温泉に入る事は無かった。

 

それは置いておいて、ゆのくに天祥でのお手伝いの二泊三日も最後の日。

女将さんに挨拶を済ましてみんなの所に戻ってくると、慈とルリちゃんも合流していた。

 

「慈、編集お疲れ~動画見たけど良かったよ」

 

「あ~みく!」

 

僕が慈に声をかけると、抱き着いてこようとするので両手で制止する。

 

「うん、とてもよかった」

 

「女将さんも宣伝になるって、すっごく喜んでました!」

 

「是非また来てくださいね、って」

 

「そ、そお?まあ、私はちょいちょいのちょいってやっただけだけどね!」

 

「ほんとは昨日から~」

 

「はい余計なことはお口チャック!次言ったら、るりちゃんの小学校時代の恥ずかしい思い出ばらすからね!」

 

「なにそれそんなのお互い様じゃん!?ルリだってめぐちゃんの過去のメガ盛り知ってるし!」

 

「ぐぬぬぬ…」

 

「あははっ、いいですね、幼馴染って。梢先輩とみく先輩の関係も好きですけど」

 

「だってさ」

 

「あら、そう言ってもらえると嬉しいわね」

 

僕と梢がそう話し合っていると、綴理が_

 

「ボクも作ろうかな、幼馴染」

 

なんてことを言っていた。

 

「実は、そういうことが絶対できないのが、幼馴染なんですよ」

 

「そんな…さやでも…?」

 

「さやかさんでもよ」

 

「無理な物は無理だよ」

 

「そんな…」

 

「わたしにできることは、煮物を美味しく作れるぐらいですから…あ、いえ、さすがに他にもいろいろとありますけど!」

 

「さ、それじゃみんな。旅館の方にお礼を言ってから、チェックアウトしましょう、また蓮ノ空の生徒が呼んでもらえるように、最後までキチンとね」

 

「はーい」

 

「それではーー」

 

『お世話になりましたー!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

-場所は変わって-

 

「一年生は、迎えのバスが来るまで観光。その間、私たちはカフェでのんびり。優雅だけど…」

 

「子どもとお母さんみたいだよね」

 

「言うなっての、まだ高校二年生だから」

 

「戻ったらそのまま市内のライブ会場に向かうんだもの、私たちぐらいはゆっくりしていましょう」

 

旅館を後にした僕達二年生組はカフェでゆっくりしていた。

 

「梢…そのままで動かない」

 

「ごめんなさい…」

 

そんな中、僕は梢の髪を止める髪留めを付けていた。

 

「これで良しっと」

 

「ありがと未来」

 

「いいって。ライブ会場に行ったらやらないといけない事が多くて大変だし、慈はゆっくりしておいて」

 

「なら、肩貸して」

 

「なんで?」

 

「いいから」

 

急かされるように言われて、僕は慈の隣に椅子に座ると慈は僕の肩に頭を乗っけて目を瞑って寝息を立てて寝始めてしまった。身体をへたに動かせなくなってしまった。

 

「そのまま寝かせておきましょう。この二泊三日、いろいろと、手配をしてくれていたのでしょうから」

 

「慈なら、自分のいる高校で誰かが予選敗退はありえないから、みんなに気合を入れたいとかの理由とかで手配したと思うけどね。勝手にされたことに関しては言いたい事があるけど」

 

「ふふふ、そうね。さて、今年はどうなることかしら」

 

「もちろん、大会優勝にだって手が届くさ。今回は、めぐだって、みんなだっていうんだから」

 

「…ええ、そうね。ありがとう、綴理」

 

「本当にそういうのスラっと言えてしまうの素直に凄いと思う」

 

僕がそう言うと、綴理は頭を傾けて

 

「みくも凄いと思う。忙しいのにみんなの事見て、こうやって一緒に居てくれる」

 

「そりゃ部長だし。これぐらいはね」

 

「私は倒れないかだけ心配なのだけれど…」

 

「睡眠だけはしっかりと取ってるから大丈夫!」

 

「そういえば…去年、睡眠時間だけしっかりって言ってたね」

 

「なんか言ったような気がする」

 

「懐かしいわね、慈に、配信でもステージでも、自分の魅せ方について慈にたっぷりと指導されたわね」

 

「そのたびに、梢がスクールアイドルたるものはーー反発して止めるのにどれだけ苦労した事か…」

 

「ボクはそうなのかーって聞いてた。そういえば、最近はビックボイス選手権開催してないよね、こずとめぐ」

 

「あなた…口喧嘩のことを、ビックボイス選手権って呼んでいるの??」

 

口喧嘩の事をビックボイス選手権って…

 

「口喧嘩する事もなくなったって事だよね。なんていうか…大人になったというか…」

 

なんて会話をしていると、花帆ちゃんが走ってやってきた。

 

「せ、先輩ー!」

 

「どうしたの?花帆ちゃん」

 

「あの、あのあの!」

 

「一旦、落ち着いて」

 

「旅館が、大変なんです!」

 

「旅館が?」

 

「とりあえず来てください!」

 

慌てる花帆ちゃんを見て、寝ていた慈を起こして旅館の方へとみんなで戻る事にした。

 

「急に呼び戻されてみれば…」

 

「うるさっ。電話電話電話電話おぶ電話じゃん!」

 

ルリちゃんの言う通り、あっちこっちから電話の音が鳴り響いていた。

 

「いったいどういうこと…?」

 

「わからないですけど…お客さんが殺到しているみたいで…」

 

「…めぐ?」

 

「もしかして…」

 

「まさか…!?」

 

慈はそう言って、自分のスマホの画面を覗いた。

 

「朝にアップした動画!めちゃくちゃバズってる!」

 

『ええー!?』

 

「本当にバズってる…」

 

「動画ってほんとにバスるんですね!あたし、初めて見ました!」

 

「めぐちゃん、がんばってよかったね」

 

「すごーい」

 

「いやいや…そんな呑気な事を言ってる場合じゃ…」

 

「そう!このお気楽三銃士!」

 

「私たちのライブが約に立てたのはよかったけれど、困ったわね…明らかに、手が回っていないようだわ」

 

「とはいえ、わたしたちも、そろそろライブの準備に行かないと…」

 

「…」

 

市内でのライブ時間まで僅か…旅館の手伝いをしたいのはあるのだが…如何せん時間がない…

 

「めぐちゃん…?」

 

「あ…ううん、なんでもない…そうだね。行かなくちゃ。私たちには、私たちのやることがある。会場のみんなが、待ってるもんね!」

 

「…ええ、心苦しいけれど」

 

みんなで外に出ると、そこにはバスがやってきていた。

 

「って、もうバス来てますよ!」

 

「あれに乗らないと、遅れちゃうわ!」

 

「急いでください綴理先輩!」

 

「ほら、るりも」

 

「あっ、うん!」

 

みんながバスに乗り込んでいった。

 

そして__

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-バスの車内-

 

「ふー…なんとかなりましたね!」

 

「間に会ってよかった」

 

「あはは…。ふー…最後はちょっと、慌ただしかったですね…」

 

「旅館の様子を見ると、どうしてもね・後ろ髪引かれる思いだわ」

 

「でも、めぐちゃんの動画、すごい効果だったよねー…って!」

 

「へ?」

 

「め、めぐちゃん!?手繋いでたはずなのに、荷物にすり替わってるー!」

 

「それにみく先輩も居ません!!」

 

「えー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻って、旅館内

 

「なんでみく居るの!?」

 

「バスに乗り遅れた」

 

「…本当は?」

 

「っていうのは建前で…さっきの慈の反応を見て残ったっていうのが本音かな。あんな表情を見て放置できないし、後は女将に悪いから。みんなには『バスに乗り遅れた』って送っておいた。信用されるかは分からないけどね」

 

「みく…!」

 

「って電話かかってきた…」

 

「切っちゃえば?」

 

「…だね、こうなったのもある意味僕のせいでもあるし」

 

「そう!私たちの編集技術が完璧すぎたからね!」

 

「よっし、二人でお手伝いするか!」

 

「うん!」

 

 

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