季節は10月_
ここ蓮ノ空で行われる祭りの一つ、竜胆祭が来週に迫っていた。
「ーー来週はついに、三大文化祭りのひとつ…竜胆祭よ」
梢が凄く張り切っていた。
「な、なんてものものしいふいんきだ…」
「雰囲気、ね、るりちゃん」
「『ふん』と『いき』って両方口から出てる音っぽいよね」
「今、真面目なところですよ。綴理先輩」
「いいんじゃない、いつもらしくて」
「…もっとみんな、気を張っているものかと思ってけれど」
「梢先輩、竜胆祭って何か特別なことがあるんですか?」
「そう、ね。説明すると難しいのだけれどーー」
「まー、私が怪我したのが去年の竜胆祭だからねー」
慈がそう言うと、一年生の三人は気まずそうな表情を浮かべた。
「ふふっ、そんな顔をしなくてもだいじょーぶ!一年生諸君もだけど…梢もね?」
「…慈。 そうね、昔は昔、今は今。去年の私たちじゃない。そうでしょう、綴理、未来?」
「ん、色々とありすぎた。めぐ居なくなってから」
「本当にね。急に部長やってって言われたし」
「そう、ね。ともかく!私たちにとって、今回の竜胆祭はリベンジでもあるれけどーー加えて、大事なことがあるわ!」
梢がそう言うと、ルリちゃんが食いついた。
「おおー!それはいったーい!?」
「きたるラブライブ!地区予選!年に一度の晴れ舞台へとエントリーするため、竜胆祭でのライブを使うのよ!」
「その季節がやってきたね」
「ええ」
「とびっきりの、スクールアイドルの祭典!」
「ついに、そんなところまで来たんですね…」
「あたしたちも…ラブライブに…!」
「すごい…」
「なんで貴方まで一年生に混ざって、リアクションしてるよ…」
「でも、梢先輩。竜胆祭のライブを使うって、いったいぜんたいどういうオハナシ?です?」
「そうね、もう少し詳しく説明しましょうか」
「そうですね、お願いします」
さやかちゃんがそう言うと、梢は僕に目を合わせてきた。
これ、僕が説明しないといけないのか…
「えっと…ラブライブ!は地区予選、地方大会、全国大会があって。みんながやっていく地方予選は、動画が応募することになるね」
「動画…ですか。ああ、なるほど、それで」
「そういう事、スクールアイドルの数数えきれないくらい多いからね。会場も限られてくるし、だからオンライン応募になるんだよね」
「そうだね、ラブライブ!はスクールアイドルがたくさんだからね」
「綴理の言い方だと、ただ楽しいだけのお祭りみたいに聞こえるけど、そんなに甘くないからね!言いたくないけど、去年の私は突破できてませんからね!」
「怪我したからでしょー!」
「まあね。もちろん私は常に私を信じてるけど」
「でも、怪我がなかったら絶対突破出来てたって胸張って言えるほど、地区予選は簡単じゃないのもホントだよ」
「むぐ、そこまで言うのか…」
「慈の言う通り地区予選は甘くないし、正直な話。どこか一つのユニットが突破すれば、蓮ノ空は北陸大会には進めるのだけれど…でも、ここにいるみんなで予選を突破したい。去年出来なかったことを果たしたいの」
「…となると、北陸大会以降はどうなるんですか?」
「そんときはそんときだよ!」
「えっ…?」
「今はそれを考えても仕方ないからね。目の前に集中する事かな」
そんな先の事を考えて、予選敗退しましたとか考えたくない…
「とにかく、私たちは何が何でも、予選を突破したい。だからこその、竜胆祭なのよ!」
「…そっか!撫子祭のライブが、すっっっごく楽しかったみたいに!」
「そう!竜胆祭という大舞台に臨むこの熱を最大限に活かしたライブをして、その想いを予選に叩きつけたい。そういうことよ!」
「おおー!じゃあ、文化祭使えるルリたちめっちゃ有利じゃん!竜胆祭に遊びに来た人たちみんな会場に連れてくる!?」
「それ良いね!よーし、一緒に全力で集めようね!」
「うん!…うん?あれ?そんなことしたらルリ、きっとライブじゃ使い物にならなくなってるな!でも言い出しっぺだから責任取る!」
「無理はしなくていいからね!?」
「大丈夫、ステージにダンボール置いといてね、めぐちゃん!」
「甘くないって言ったばっかだよね?私、藤島慈feat1ダンボールでライブするつもりないからね?」
「賑やか」
「あ、あはは…」
「そこ、寛がない!みんな注目!」
最近、梢の方が部長らしいと思ってきたなぁ…
「瑠璃乃さんに限らず、竜胆祭に向けて体力はきちんと管理すること!今日からしっかり練習して、完璧なライブをするために!」
梢はそう言って、僕達全員を見た。
「大丈夫そうね、全ユニットで予選突破…最高の竜胆祭ライブ。必ず、成功させましょう、そろそろ寒い時期になってくるから、体調管理には気を付けること!」
『おー!』
「絶対に風邪なんて引いたらダメよ!」
『おー!』
それから、二日後_
「なんでこうなったんだろう…」
「本当にごめんなさい…」
「はいはい…ゆっくりとね…」
風邪を引いたらダメと言っていた本人が風邪を引くという事態に…
「まったく…梢が1番はりきりすぎだったってことだね。私たちに隠れてひたすら練習でもしてたの?」
「くっ…申し開きの言葉もないわ…でも、練習はいつも通りよ?」
「練習”は”」
「…竜胆祭関連で仕事が増えた未来の部長業務を少しでも手伝おうと思って…後、曲作りと振り付け変更もしたくなって…」
「僕は良いって言ってたんだけどね…」
「よくわかんないけどなんかめちゃめちゃ仕事多そう…」
「つまり練習量は変えないまま、やる事だけは増やした、と。そりゃこうもなるか。私たちも。部長業務っていうのがどのくらい大変なのか知らないから、みくに頼ってたけどさあ」
慈がそう言うと、温度計の音が鳴って、僕が確認する
「ん、何度?」
「39度…高熱だ…」
「40度超えてないのね。なら、セーフだわ」
そう言って動き出そうとする梢を花帆ちゃんは止めた。
「あの、みんなも出ててください!うっつちゃったら大変ですから!」
「くっ…確かに、みんなにうつすわけには…」
「そうですよ、だからほんと、ゆっくり休んでてください!あたし、色々看病しますから!できますから!」
「じ…」
「じ?」
「自分が許せない~~!!」
梢はそう言うと、正気を失ったのかそのままバタンとベットに倒れた。
「梢センパーイ!!」