梢を寝かせて、僕達は部室に戻り、今後の作戦を練る事にした。
「えっと…どうしましょう」
「竜胆祭は今週末。梢は全力で風邪を倒してくるとして…」
「あ、あたし、梢先輩の看病頑張ります!」
「それなら、花帆ちゃんと僕で梢の看病する感じで行く?」
「でも、そうなると…」
「部長業務を誰かにやってもらう必要があるけど…」
「そうなると…この数日の練習スケジュールについてと…他の部活や学校とのやり取りについてですね」
さやかちゃんがそう言うと、綴理が声をあげた。
「…うん、分かった」
「綴理?(綴理先輩?)」
「ボクが部長代理だ」
『えー!?』
みんなが驚く中、僕は綴理の意思を呑んであげる事にした。
「分かった、綴理の気持ち受け取ってあげる」
「みく…ボク頑張る」
「数日間だけだけど頼んだ」
「待った」
綴理と話が纏まりかけた時、慈がそう声をかけてきた。
「めぐちゃん? あ、なにか言うか分かったぞぅ?」
「もしも部長代理ーーつまり、次のリーダーが必要だと言うのなら、それは私じゃないかな!」
慈がそう言うと、花帆ちゃんとルリちゃんがこそこそ話をして、慈が怒った。
「ええい!もう少し『おおー!』とか、『そうだよね!』とか、歓迎のリアクションをしなさい、そこのふたり!」
「めぐ。負けないよ」
「…むっ。綴理も、ここで折れないなんて。昔とは違うね」
「成長したからね」
綴理と慈がバチバチとし始めた。
「これはどうすれば良いんでしょうか…」
「んー確かにリーダーってことなら、めぐちゃんで間違いないと思うんだけど…」
「だけど?」
「梢先輩、みく先輩の代わりってことは、部長としていろいろお仕事をするってことでしょ?…めぐちゃんかあ」
「るりちゃん!?」
「そこまで言うなら、綴理と慈の二人でやってもらって…それに花帆ちゃんも僕と梢のお仕事、見てたし、なんとかなるでしょ」
「はい!ある程度分かりますので!」
「いいよ。受けて立つ」
「どちらがリーダーに相応しいか見せてあげようじゃないか!」
「え、これ勝負なんですか!?」
「勝負のつもりじゃなかったんだけど…」
「みく先輩…大丈夫なんですか…これ」
「大丈夫でしょ。竜胆祭と期限のない書類分けておいたからね」
と言って、机の上を指さした。
「あの…期限のない書類多くないですか…」
「あーね…色々と頼まれるからね…あっちはやらなくていいから。それとさやかちゃん」
「は、はい」
「あの二人が暴走しそうになったら止めてね」
「えっ?それはどういう?」
「そういうことだから」
僕はさやかちゃんにそう言って、部室を後にする。
「あっ、みく先輩、待ってください~!」
その後_
「おかしい」
「間違ってる」
「まずめぐちゃんは、もっと漢字読めるようになろうね…」
「漢字なんてこの世に要らないんだよ!るりちゃんだってアルファベットさえあれば良いでしょ!?」
「うぇ!?あ、あー、た、確かに英語さえあればベリーせんきゅーあんだすたん?」
「綴理先輩も…さすがに、練習スペース貸し出し理由が『れんしゅう』じゃ通りません」
「『じゅうれん』にするべきだったか」
「ぐぬぬ、じゃあ誰に二人の代わりができるっていうの!」
「思ったよりも苦戦してるみたいだね…」
さっきの会話_扉の外から聞こえてきて、口を挟んでしまった。
「みく!?」
「なんで戻ってきたの?」
「いやぁ…仕事が無くて梢が寝ているとやることがないもんで…そっちの書類だけで終わる仕事を取りに来たんだけどね…」
「みく、ごめん…ボクはみくみたいにはなれないみたいだ」
「…どこで躓いてるの…」
「これ…」
「どれどれ…」
綴理から渡された書類を見た。
本当に『れんしゅう』って書いてあった。
「綴理らしいね。理由はともかく」
「みく!もっと簡単なのないの!」
「いや…簡単って言っても…そんなのないよ…」
「因みになんですが…そっちの書類ってなんですか?」
「うん?気になるなら見てもいいよ」
さやかちゃんに聞かれたので、そう答えるとさやかちゃんは竜胆祭と違う方の書類を確認する。
「…花壇の修理…経理の仕事…って生徒会の仕事じゃないですか!これ!」
「あはは…沙知先輩に頼られると断る事が出来なくて…」
「笑いごとじゃないですよ!」
「そんな事はどうでもよくて」
僕がそう言うが、さやかちゃんは『どうでもよくない事はないです』と返してきたけど、無視して…
「綴理と慈の二人にやらしてみたら面白そうと思ったのは事実で_」
「みく!?」
「さやかちゃんやってみない?部長代理?」
「わたしがですか?」
「うんうん、二人はどうかな?」
「さやかちゃんがやってみたいなら」
「ん。さや、いつでもなんでも手伝う」
「皆さんがそうおっしゃるなら…不肖村野さやか、部長代理の臨時リーダーを務めさせていただきます。頑張ります!」
******
あの後、仕事を持っていこうとしたけど、みんなに止められたので、一旦自室に戻って、本を持って梢の部屋に戻ってきた。
「うぅ……未来…?」
「随分と寝ていたね」
「なんでここに…?」
「梢が風邪引いてるのに、自分の部屋に入れる訳ないでしょ」
「部長の仕事…」
「それは、さやかちゃんが代理部長で、みんなに代わってもらってる」
「それは申し訳ないわね…」
「梢は、風邪をしっかりと治す事」
「分かってるわ。竜胆祭までにはどんな手を使っても」
「はいはい…何か食べる?」
「そうね…今は背中を拭いて欲しいかも…」
「了解」