それで最寄路線が事故りましたからね。
ラブライブ!予選も兼ねた竜胆祭当日がやってきた。
「みく先輩…来ませんね…」
「大丈夫、あの人が約束を破るなんてやらないから」
舞台裏で、僕は椅子に座って沙知先輩がやってくるまで待機中。
すると、外の方が騒がしくなってきた。
「すまない、待たせたね」
「約束時間ギリギリですよ…沙知先輩」
「あはは、ごめんね」
「生徒会長…」
「それじゃあ、見せてもらおうか」
「はい!」
さやかちゃんはそう言って、ステージの方へと歩いていき、さやかちゃんが作ったソロ曲の『Runway』を流した。
数分後、この曲を作った理由、さやかちゃんが竜胆祭の準備でぶつかった壁について話し始め、観客に挨拶をして、ステージ裏で着替えて、六人で再びステージに立った。
10月末という事で_ハロウィンを意識したステージ、衣装にさせて貰った。
「未来はやっぱり梢を見てるのかい?」
「何言ってんすか…みんなを見てるに決まってるじゃないですか。全く…後輩を揶揄うのも程ほどにしてくださいよ」
「あはは」
僕が呆れ半分に言う一方で、沙知先輩は笑っている。
本当にこの人は…
その後、ユニット毎にライブをして、次はいよいよラブライブ!予選用のライブなんだけど…
「…うむ、みんなに期待されている限り、それを成したい。だからキミは、スクールアイドルをやっている」
「はい、わたしは誰かが期待してくれるから、スクールアイドルをやりたいと思うし、やりたいと思うんです」
さやかちゃんと沙知先輩とステージの許可を貰う為の話し合い。
「…その気持ちは伝わったよ。十分にね」
「でしたら…わたしからは、それだけです」
「なるほど、なるほどねぃ」
「あの!合格貰えますか? さやかちゃん、今回ほんっとーに頑張ってたんです!!梢先輩とみく先輩がいない穴を埋めてくれて、練習もみんなの分までスケジュール管理してくれて!」
「そーですよ!そのうえライブやって答え見せるっつって、実際めっちゃ良かったし!それは生徒会長も見てた通りで!」
「おふたりとも…」
花帆ちゃんとルリちゃんからの応戦の声に感動するさやかちゃん。
「…合格、合格か…くくく」
「えっ?」
「なーっはっはっはっは!!」
「また悪い笑い声だ!」
「おいおい、そもそもなんのための試練だったい、さやか」
「えっ、それは…ステージの、使用許可…です。えっ、あ、じゃあ」
「ようやく気付いたね。ね、沙知先輩」
「そうだね。あそこであたしに啖呵切った時点できっとーー答え見つけたんだって、分かってたしねぃ」
「…な、なんだあ」
「まーでもそうさね、良いよ、言っておこうじゃないか改めて。ーーさやか、第三の試練合格!!」
「…は、はあ」
「気の抜けた返事だなぁ、まあ、それもしかりか。なーっはっはっはっは!!」
「う、うおおおおムカつくうううううう!!」
「この人やっぱり悪役だよー!!べーだ!」
「あらら、ごめんごめん、からかいすぎたかな」
「先輩…揶揄うのも程ほどにですよ…」
「あはは…沙知先輩」
「ん…?」
「ありがとうございました」
「…あはは、瑠璃乃や花帆みたいな反応が当たり前だと思うけどな」
「いえ…わたしに足りないものが何なのか…一年生に足りないものが何なのか…今回のことで、よく分かった気がします」
「…ま、それを見つけたんだとしたらそりゃキミのもんさ、あたしには関係ない。もうスクールアイドルクラブじゃないからね」
「だとしても、先輩にはかわりませんから」
「…そっか、参ったねどうも まー頑張れ。ラブライブ!、楽しみにしてる」
「はいっ。それでは、失礼します。沙知先輩」
「…なあ、さやか」
「はい?」
「キミの、みんなの期待に応えたいという意志は伝わった。でも、そのために選んだのが、どうしてソロライブだったんだい?」
「それは……」
「そういえば」
「わたし、期待に応えたかったんです。その重さ・・が欲しかった。誰かの気持ちを背負っていることが、わたしにとっての力になる……そう気付いたんです。だから」
「…ステージ上で一身に期待を浴びることが、1番分かりやすかった、か。なるほど、なるほどねぃ」
「はい」
「ん、実際凄く…そう。きらめいていた。時間を取らせたね、綴理たちのところへ帰るといい」
「…はい。ありがとうございました。沙知先輩」
さやかちゃんは沙知先輩にお礼を言って、花帆ちゃんとルリちゃんの方を向いた。
「あれっ?」
「ルリちゃん…充電切れたみたい…」
「…ふふっ。いきますよ」
さやかちゃんは、花帆ちゃんとルリちゃんを引き連れてステージの方へと向かっていった。
「ほんと、良い景色だねぃ」
「ええ、何回見ても良い景色です」
-寮内-
「えーと…みんな、改めて言わせてもらえる?この度は大変ご迷惑をおかけしました」
梢がそう言って頭を下げた。
「えー、いえいえそんな!風邪はどうしようもないですって!」
「どうしようもなくなんてないわ。自己管理が甘かった証拠。とてもではないけど許せた話ではないもの」
「うわー、ストイック」
「今に始まった話じゃないから…慣れたというか…」
「梢先輩マジリスペクトっす。マネできる生き方の気がしねーっす」
「なんですかその口調…」
梢の生き方にルリちゃんが感激を受けていた。
「とにかく!ごめんなさい!」
そう言う梢に綴理は『ん』と言って返した。
「いや、ん、って、受け取っていいの?この謝罪。次からは私たち風邪も引けなくならない?」
「受け取らないと、こずうるさいし」
「まあ、それもそうか。じゃあ梢を黙らせるために受け取ろう!」
「このふたりは…!」
「まあまあまあまあ!結果的に、ライブは大成功だったわけですし!!」
今にも手を出そうな梢を花帆ちゃんが慰める。
「そう、ね。それに関しては、さやかさん」
「え?あ、は、はい」
「ありがとう。あなたのおかげよ」
「!」
「あーうん、それはほんとにそう。ありがたやー、さやかさまー」
「おつかれ、おつかれ、さやかさま」
なんで拝むようにして言ってるんだ…
「ちょ、え、あの、どういうことですか!?」
二人の言動に困惑するさやかちゃん
「どういうも何もないよ!さやかちゃんがリーダー代理してくれたおかげで助かったのはほんとだから!」
「花帆さん…いえ、こちらこそありがとうございます」
「あれ?ルリたちのお礼も素直に受け取ってくれてもいいんだが!?」
「拝みを素直に受け取ったら神様か何かみたいじゃないですか!」
「ありがとうアマテラスさやか神」
「神様か何かになっちゃってます!」
三人のやり取りを見て、僕と梢は微笑む。
「梢先輩の居ないところで、色々あったんですよ」
「そうね。その話は、あとで聞かせてちょうだい。楽しみにしてるから」
「はい…それで、あの、聞きたいことがあるんですけど」
「なあに?」
「生徒会長と、先輩たちの関係がちょっと気になって」
「慈と綴理の反応でそう思ったのかな?」
僕がそう言うと、どうやら図星だった。
梢と目を合わせて、梢が口を開いた。
「まあ、ね。もうじき、あの人がスクールアイドルクラブを辞めてから1年、かしら、みんなあの人のことが好きだったから、辞められて悲しかったのよ」
「…」
「でも、そうね。逆に言うなら、きっとあの人、久しぶりに後輩ができて楽しかったんだと思うわ。そろそろ、私たち…向き合う時が来たのかしらね…」
梢がそう言うと、綴理の表情は曇っていた。