「えーでは、改めて_」
僕が言うと、中庭に集まっている六人が息を呑んだ。
「ラブライブ!地区予選、全ユニット突破しました!!」
「やったー!!!」
「よっし!」
「よ、良かったです…!」
三つのユニットが無事、地区予選を突破することができた。
本当によかった。
「なんだがすっごく気持ちいいね!合格発表みたい!」
「高校の、ということですか?確かに自分たちのパフォーマンスに対する評価が下される。という意味では、間違ってはいないかもしれませんね」
さやかちゃん…そんな話をすると…
「やめろやめろ!せっかくの楽しい気分を、テストとか受験とか苦々しい記憶に引き戻すんじゃなーいー!」
ほらね…
「ふつうそんなに苦々しい記憶ばかりじゃないんだよ、めぐちゃん…」
「~~♪」
「ご機嫌ね、綴理」
慈とは違い綴理はすっごく期限が良さそうだった。
「こず、みくも」
「それはもちろん」
「でも、あなたにはなにか、別にご機嫌の理由がありそうね?」
「まあね。…ここ」
綴理は指を指しながらそう言った。
疑問には思いつつも、僕と梢は綴理の隣に向かう。
「学力テストなんて人類の敵でしょ!?」
「じゃあそれを作ってる人は人類の敵…?」
「さやかちゃん、これ何の話?」
「わたしに聞かないでくださいよ!」
いや…本当に何の話をしてるんだろう…
「…良い景色」
「綴理の言いたい事が分かる」
「みんな楽しそうだから?」
「ラブライブ!で勝つことも、大事だけど。それが大事なのは、スクールアイドルクラブが誰も欠けずに、スクールアイドルクラブで居られるからかな」
「去年とは、違うものね。あなたの機嫌が良いのも、分かる気がしてきたわ」
去年の今頃は、本当に色々とあったからねぇ…この時期に平和なのはいつぶりだろう…覚えていないや
「ねえ、綴理、竜胆祭では、沙知先輩もなんだかんだ色々と手伝ってくれたように思うけれどーー」
「生徒会長は、関係ないかな。あれはさやが頑張ってくれたんだ、ボクも、さやが誇らしい」
「…そうね」
こっちの関係もどうにかしてあげたいんだけど…
僕がそう思うと同時に、綴理はさやかちゃんに体当たりをしていた。
本当に何をしてるんだろう…まぁ、その時が来たら動いてあげたらいいかな。
******
その日の放課後、僕は梢と書類に向き合っていた。
例の一件から、お互いに一緒にやって負担を減らそうという経緯もあるけど
「お疲れ様です。先輩方、きょうは忙しそうですねぇ」
「また学校で新しいイベントがあるのよ」
「そうそう、だからスクールアイドルクラブも参加表明だけはしようって話をしてたんだよね」
「新しいイベント?」
花帆ちゃんがそう言うと、部室のドアが開いてさやかちゃんが入ってきた。
「オープンキャンパスですよ、花帆さん」
「あれ?そんなの去年あったっけ?」
「今年から、学校説明会がオープンキャンパスに変わるんです。蓮ノ空を目指す中学生に、単に説明会を開くだけでなく、学校の楽しさを経験してもらおうというイベントだそうで」
「へー!学校の楽しさを伝えるって、素敵ですね!スクールアイドルクラブでも、ぜひなにかやりましょうよ!」
「はい、なので…みく先輩、こちら、必要書類のリストです」
「ありがとねさやかちゃん」
さやかちゃんから紙を受け取りながら僕はお礼を言う。
「こういうのは私達がやるのに…助かるわ」
「いえ、わたしも先輩方の立場を経験して、大変さも分かりましたし、みく先輩の手助けになればと」
「僕は大丈夫って言ったんだけど…さやかちゃんが手伝わせてくださいって強く言ってくるからね…」
「おお…」
僕の言葉に花帆ちゃんが感心していると、再び部室のドアが開き、ルリちゃんが疲れ果てた顔で入ってきた。
「みくー地方予選用の提出物って、みらくらぱーく!の分もやってくれてたりするー?」
「まだやってなかったの?」
「仕方ないわね。私が受け持つわ」
梢がそう言うと、さやかちゃんが手を挙げて言ってきた。
「じゃあ、わたしがやりますよ。DOLLCHESTRAの分はもう終えましたから、やり方は分かっています。梢先輩はお忙しいでしょうし」
さやかちゃんがそう言うと、梢と慈の二人は驚いていた。
「さや、いる?」
そんなタイミングで綴理が入ってきた。
「はい、おります」
「さっき、れいかさんから連絡来たけど」
「あっ、はい。あとでお話ししようと思ってたんですけど、また綴理先輩と一緒に、近江町市場に来て欲しいってお願いされていて。今週のどこかで、ということですり合わせしてくれるそうなので、綴理先輩に聞いてからと思っていました」
「ん、わかった。今日でもいいよ」
「きょっ…っ…わ、分かりました。じゃあそうしましょう!」
そう言って、さやかちゃんはスマホ画面を操作し始め、再び梢が驚いていた。
「…その調整も、さやかさんがやったの?」
「へ?あ、はい、やったというほどのことをしたわけではありませんが」
「さやかちゃん、なんかつよくない?」
「つよいとはて…?でも、そうですね。竜胆祭のステージで、少し分かった気がするんです、自分の気持ちが。誰かの期待に応えたい。きっとそれが、スクールアイドルでもフィギュアスケートでも変わらない、わたしがやりたいことなんだって」
さやかちゃんがそう言うと、ルリちゃんが圧倒されていた。
すると、慈が綴理にそっと近づいて
「ちょっとちょっと、どうしちゃんですか、お宅のさやかちゃん」
「?誇らしい」
「いや誇らしいったって、この前からちょっと凄すぎますわよ奥さん。まずい、さやかちゃんが6人いれば良いんじゃないかなとか言われないようにしないと」
「さやが6人…ダメ?」
「なにがいけないの?みたいな顔!」
「そしたら蓮ノ空学院スクールアイドルクラブはさやかちゃん6人グループだからね!」
慈がそう言うと、綴理はハッとした表情を浮かべた。
「綴理先輩!今日で良いそうです!」
「さや6人は良い。でもボク0人はダメ…」
「綴理…?」
「綴理せんぱーい?置いていっちゃいますよ?」
「置いて、いかれる…!そ、それはだめ!」
綴理はそう言って、さやかちゃんにくっ付いた。
くっ付かれた事によってさやかちゃんは驚いていた。今日はみんな驚いてばっかりな気が
そして、さやかちゃんは部室から出て行き
「置いていかれるのは、だめだ。こうなったら、ボクも何かーー!」
「綴理…?」