雨が降り始めた蓮ノ空学院。
梢と慈は部室前で合流していた。
「あ、慈」
「なにがイベント日和だよー!」
「急に雲行きが変わったみたいね。なんて間の悪い…」
「どうしよっか…。天気予報も晴れだったし、私の六号車グループは、傘なんて誰も持ってないよ」
「それは私のところも同じね。あら…みんな!」
二人がそんな会話をしていると、そこに一年生三人がやってきた。
「中学生のみんなは一応、屋内に案内終わりました!」
「実行委員さんたちが先導してくれて、今は繋ぎのために体育館のスクリーンで学校説明会の動画を流してくれてます!」
「でも、どうするの、このあと!実行委員の人たちも、なんかノープランらしいよ!」
「ノープランというよりは、もうほとんどのプランが終わってるからでしょうね…ちなみに、中学生の子たちは傘持ってた?」
「いえ、それが」
「誰も持ってなくて」
無理もない。朝、あんなに晴天だった上に、天気予報も晴れと言っていた。
天気が崩れる予想するのは難しいだろう
「なるほど…どうすれば良いのかしらね」
「あの、綴理先輩とみく先輩はーー」
さやかがそう問いかけると、綴理がその場に現れた。
「みんなここに居たの、良かった。今日来た子にたちに聞いたらね。一日ずっと、すっごく楽しかったって。案内してくれた人のおかげって言ってたから…みんなが凄かったんだ」
「それは嬉しいお話ね。でも綴理、今はそれよりーー」
「そうだね、ライブの準備をしないとね」
「わ、ライブできるんですか!?」
「するよ?」
花帆に聞かれ、そう答えた綴理の声はどこか弱弱しかった。
「うぉー、まじか。それならそれで気合入れ直さないとだー」
「綴理…大丈夫なの?」
「うん、このオープンキャンパスは、絶対に成功させる」
「…そ、分かった。じゃあどうすればいい?」
「色々探したいんだ。どうにかして、予定通りライブするための、なにか」
「ん、おっけ、悩むよりも行動だね。ちょっと実行委員の人たちに話してみようか。行こう、るりちゃん」
「分かった、最後までやりきりたいもんね!」
綴理の声を聴いて、慈は瑠璃乃を連れて去っていく。
「…ライブがしたいのは、私も同じ。体育館とか、他に使えそうな場所がないか聞いて回りましょう」
「あたしも行きます。それから、綴理先輩! 今日、みんなと色んな話が出来ました。凄く楽しかったし、ライブのことを楽しみにしててって言ったら、みんな本当に期待してくれて…あたし、約束したんです!みんなの心に、おっきなお花を咲かせるって!だから、最後まで絶対に成功させましょうね!」
「うん」
「行きましょう、梢先輩」
花帆は、綴理にそう話し、梢と共に去っていった。
「ボクたちも行こう、さや」
「…綴理先輩。沙知先輩が探してましたよ、綴理先輩のこと」
「っ…それは、雨のあと?」
「はい。振り始めてからのことです。具体的に、綴理先輩を探している理由までは聞きませんでしたけど」
「…きっと、ライブを中止にしろって話だ」
「えっ?」
「気にしなくていい、行かなければ、中止にしろとも言われない」
「ちょ、ちょっと待ってください」
綴理から出てきた言葉にさやかはすぐさま声をあげた。
「じゃあライブ決行の判断は、生徒会の許可が下りたとか、みく先輩に聞いたとかではなく、沙知先輩にはそもそも話を通していないと?」
「…なにか、ダメ?」
「ダメというか!もしも沙知先輩がライブを中止にするつもりなら、そこには何か理由があるんじゃないですか?」
「…雨は、いつ止むか分からないから。だったら雨が止むまで待つより、みんなが帰ってくれた方が、良い一日で終われるとか。たぶん、そういう、でも、ボクは雨の中だって踊れる!野外ステージだって、雨で溶けたりしない!」
「見に来てくれる皆さんもずぶ濡れですよ、先輩…」
「だから、それをどうにかしたいんだ。さやも…ボクがおかしいと思う?」
「わたしも、というのは、誰とわたしなんですか?」
「っ…、さや。ボクはただ、今回のイベントを最高のものにしたいだけなんだ。雨で中途半端とか、そんなの嫌だってだけなんだ。だからーー」
綴理が話を続けようとしたその時、校内放送のチャイムが鳴った。
『オープンキャンパス実行委員、夕霧綴理。オープンキャンパス実行委員、夕霧綴理、至急、生徒会長までー」
沙知から呼び出しだった。
「…ボクは、行かない」
「ライブをしたい気持ちは分かります。わたしだって、今日の一日を素敵なものにして終えたかった。でもこの状況で、手立てがないまま中学生の皆さんを待たせるわけにも…」
「だからその手立てを探す、じゃあダメなの。さや?生徒会長のところに行く時間がもったいないよ。探しに行こう?」
綴理がそう言って、歩き始めた時。
「綴理大丈夫、綴理の成功させたいって気持ち、ここで終わらせないから、沙知先輩の所へ行っておいで」
そこに、ずぶ濡れになった未来が立っていた。