蓮ノ空のアイドルクラブのマネージャーの話   作:桜紅月音

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54.アンブレラスカイ

綴理が生徒会室に入ると、そこには沙知の姿があった。

 

 

「…来てくれたねぃ」

 

「…中止?」

 

綴理は恐る恐る沙知にそう問いかけた。

 

「まぁ、そうだよ」

 

「っ…」

 

沙知から言われた言葉に落ち込む綴理に、沙知は続けて言った。

 

「綴理、中止という言い方はよくない。実際、ここまで綴理のおかげで最高の催しになったと思うよ。天候というものはどうしようもない、胸を張って、みんなを送ろう」

 

「…今ならみんな、満足して帰れる?」

 

「ああ、十分すぎるほどにね」

 

「それとさっき、未来が来て」

 

「みくが?」

 

「そう」

 

 

 

それは遡って数十分前_未来以外のみんなが部室まで話をしていた最中の事である。

 

 

「ライブは無理そうですか?」

 

「ああ、天候はどうしようにもないからね」

 

未来は、沙知先輩の元を訪れていた。

 

「そうですよね。今から()()()()()()()ですよね。足元も悪いですし」

 

「ああ…ん、今、なんて言った?」

 

「さぁ?知りませんよ、沙知先輩が何か聞こえたんじゃないですか?」

 

「いやいや、聞き逃す訳…今、今から晴れるって言ったよね?こんな雨なのに」

 

「…やっぱり聞こえていましたか…夕虹は晴れってやつです」

 

「なんだいそれは」

 

夕虹は晴れ(ゆうにじははれ)

夕方に東の空へ虹が出るのは、西側の空がすでに晴れて太陽が輝いている証拠。

雨雲が東へ去り、回復に向かう確かな兆しと言い伝えである。

 

「今朝みたいな快晴とまでは行かないでしょうけど、ライブできるくらいには回復するみたいですけどね」

 

僕がそう言うと、沙知先輩は驚きの表情を浮かべた。

 

「未来…この天気でやろうって言うのかい?」

 

「どうしても無理な時は、僕だって諦めますよ。雨が止むまで待ってられるかって話ですよ」

 

「分かった…綴理とも話すから、ちょっと待っててくれ_」

 

そんな話をしたと沙知は、綴理に話した。

 

 

-時は戻って-

 

 

「綴理も、良い同級生を持ったね」

 

「みく…」

 

「あはは、私が同じような事をさせたら惚れていたかもしれないね」

 

と冗談であるが、そう話す沙知に綴理は口を開いた。

 

「さち」

 

「ん?」

 

「ひとつ聞かせてほしい、今までボクは怖くて、聞くこともできなかったけど」

 

「綴理?」

 

「生徒会長はさ」

 

綴理はそう前置きを置いて、深呼吸をして

 

「…ライブができるなら、やりたいと思ってくれてる?」

 

「なっ…」

 

「ボクたちのこと、どうでもいいって思ってない?正しければなんだって良いわけじゃ、ない?ボクたちを置いていった時、あっさりじゃなかった?」

 

綴理は思っていた気持ちを沙知にぶつけた。

 

「そっ、そんなの…バカだな、あたしは。そんな、機械みたいに思われていたのか。そのことに気付きもせずに…あたしは嫌われて当然、って、蓋をして…あたしは……ライブができるならやりたい。今までだって正しいことを、しなきゃいけないからやってた。スクールアイドルクラブのことは今でも大好きだ。……去年辞める時、部室で一人泣いてた。一年生には内緒だぞ?」

 

「っ…」

 

「今日だって、できることなら、みんなに最高の一日を届けたい。キミたちに…最高の一日を作ってほしい。キミたちの全てがうまく行ってほしいと、いつも思ってるよ」

 

「…そっか」

 

「ごめんねぇ…勝手に、いなくなったりして。置いて、いったりして」

 

「ボクはただ、わかんなかったんだ。さちがどんな気持ちだったのか」

 

「あたしがバカだったんだ…あたしの気持ちなんて、言う資格ないと思ってたからさ、結局離れるのに、つらいなんて…ムカつくだろう?」

 

「ううん。それが……それが聞きたかった。ボクはそんな簡単なことも、聞けなかったんだ」

 

「…気付いてやれなくて、ごめんね」

 

「それも、いい。ボクも気付けたのは、ついさっき。さやが、教えてくれたからだから。離れるのは、誰だってつらいことだって。今は、さちのことすごいと思う。ボクだったら、離れることを選べない…」

 

「そっか…ありがとう、綴理」

 

「…ねえ、さち。ボクは、このまま終わらせたくないよ」

 

「その気持ちは、分かるけど……でも」

 

「今はもっと強く思う。みんなに伝えたい。雨は、止むものなんだって……違うな。――みくと同じで止むまで待たない。ボクたちの気持ちで、どうにでもなるんだって!」

 

「綴理?」

 

「一緒に来て。さち」

 

「うわわっ! 綴理!?」

 

その後、綴理は沙知を部室まで引っ張っていった。

 

「ボク、追いつけた?」

 

「はい、待ってました」

 

「綴理先輩、聞いてください。色々考えたんです!」

 

「名付けてーー野外ステージにデカい傘計画!!」

 

「生えるの?」

 

「生やす!ほら、アンブレラスカイ!!」

 

「アンブレラスカイっていうのは、たしか晴れた日にやるものだったはずだけど、でも発想はそこから。花帆ちゃんがね」

 

「はい! あたし、思ったんです! みんなの心に、大きなお花を咲かせるって約束したんだから――どうせなら、傘も大きな花みたいにしちゃおうって!」

 

「たくさんの傘を繋ぎ合わせて、屋根みたいにしようというお話です」

 

「お花ね、お花!」

 

「花帆さんのアイディアには賛成だし、実現できるのなら素晴らしいものができると思うのだけれど…」

 

「どうですか?沙知先輩」

 

「当たり前みたいに聞くけど…ふつうは中止だよ、これ」

 

「だったら綴理と一緒に来ないでしょ、ま、それ以前に、『綴理先輩が必ず沙知先輩を説得してきますー』って言って回ってた子が居たからなんだけど」

 

「だ、誰でしょうね…!」

 

「大量の傘と、それを繋ぎとめる人手が欲しい。そうだね?」

 

『はい!』

 

「あい分かった。実行委員会を動かそう。そして、学院事務に傘のストックが山ほどあったはずだ。それを使いたまえ!」

 

「…すごいなあ。未来といい、みんなは、これじゃ1人で中止を考えてたあたしがバカみたいだねぃ」

 

「ううん。スクールアイドルクラブのみんなのおかげ。……スクールアイドルクラブが、残ってたおかげ」

 

「そっか。……そっか」

 

「……行っておいで、綴理。キミたちの手で、最後まで……最高の日を作りに!」

 

「ん!」

 

沙知先輩は、ポケットから一枚のCDを出してきた。

 

「それから、もしよかったらなんだけど。……これ、持って行って?」

 

「これは?」

 

「随分前に作ったんだけど、結局渡せなかった。あたしが、キミたちのために作った曲。あたしが好きな……雨が止むやつだ」

 

「そうだよ……?」

 

「! ありがとう、さち!!」

 

沙知先輩と綴理のやり取りを見て、この二人の関係は以前のように戻ったと確信した。

その中で、沙知先輩が声をかけてきた。

 

「それにしても、今回は未来にしてやられたねぃ」

 

「いつもやられてるんで、一回くらいはやり返しておかないとなんで」

 

「もしかして、キミぃ、私に恨みとかある感じ?」

 

「さぁ、どうなんでしょうかね」

 

「その笑顔、怖いよ」

 

 

その後、一時に比べて収まった中でのライブ『アンブレラスカイ』は大成功に終わった。

 

そういえば、吟の事すっかり忘れていたけど、大丈夫だったのかな。

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