「夜空先輩!」
「さやかちゃん、お疲れ様~」
職員室に向かう途中、さやかちゃんに声をかけられた。
「先輩に話があって声をかけました」
「話?」
「ここでは言いにくい事なので…部室でもいいですか?」
「うん」
なんだろう…
綴理関連かな…?
*****
「率直に聞きます」
「おう…」
「先輩って彼女って居ますか?」
「…えっ…急にどうしたの…」
まさかさやかちゃんからそんな言葉が来ると思っていなかったのでびっくりした。
「それで…彼女って居ますか?」
「うん、彼女は居るよ」
「そうですか…先輩って素敵な人ですからね…」
「何かごめんね…」
「いえ、因みに誰かとかって言えますか?」
「えっと…梢だね…」
「そういえば幼馴染って…」
「うん…」
いやぁ…振ってしまったみたいな感じになってしまったけど…さやかちゃん大丈夫かな…
「先輩!」
「うん?」
「私、諦めませんから!」
「えっと…」
「梢先輩よりも魅力的な女の子になって私を選んでもらえるように頑張りますから!」
さやかちゃんはそう言って、部室から飛び出していった。
僕が声を出す暇は無かった。
さやかちゃんとの一件があったりしたが、あれから花帆ちゃんは、色んな手伝いをしてくれた。
そして、気づけばライブを明日に控えたそんな日だった。
「はぁ…」
「どうしたの花帆ちゃん」
「何か心配事?もうライブは明日よ」
「そーですね…でも、あたしが出る訳じゃありませんし…」
「だったら出てみる?」
「梢…」
「えっ!?」
梢の言葉に驚く花帆ちゃん。
でも、花帆ちゃんがステージに立っている所を見たのは僕も思っているけど
「うふふ」
「じょ、冗談ですよね?」
「そうね、でも冗談かどうかは貴方次第」
「それは…?」
「これまでたくさん手伝ってもらったわね。でもそうしてくれたのは今までずっと、ただの親切だけ?」
「そ、そうですよ!梢先輩が困っていたから、だからあたしは、少しでもお役に立てたらって」
「本当に?」
「えっ…」
「本当に、それだけだった?」
「…」
「私はね、貴方胸の内に強い気持ちが眠っているように見えたわ。今でも飛び出したくてうずうずしている。そんな気持ちが。新しい世界を見せてあげる。貴方にそう言った事は、間違いじゃなかった」
「だけど、私にできるのはここまで、ここから先は、貴方自身が踏み出さなければ始まらない物語なの」
「あの…梢先輩、未来先輩…あたしの…友達の話なんですけど…」
「ええ」
「実は、まだ学校を辞めたいって思ってて…あたしはそれを止めたいのか止めたくないのかよく分からないんです…その子は、新しい世界に飛び出したくて。それは梢先輩に言ってもらったのとは、ちょっと違っているんですけど…」
「だけど、もしかしたらその子は、ただ逃げてるだけなんじゃないかって思ったりするんです」
「楽しい事がしたかっただけなのに…梢先輩の見せてくれた景色も、本当に眩しくて。その先があるなら、あたしは…あたしは…」
花帆ちゃんの話を僕と梢は何も言わずにずっと聞いていた。
「あたしは、どうしたらいいですか…」
「前にも言ったわよね。私の家系はみんな音楽をしているって、父も母も。祖父も祖母も」
「はい」
「…だからね、最初、スクールアイドルをやりたいって言った時はには、随分と反対されちゃったの」
「えっ、そうなんですか?あんなに凄いのに!?」
「ありがとう」
「でも、今までたくさんの習い事に通わせてもらったのに、私はその中からではなく、スクールアイドルを選んでしまった」
「あまつさえ、衣装作りの為に指に傷を作って針仕事をしているなんて知られたら、もしかしたら卒倒しちゃうかも」
「それじゃあ、どうしたんですか。やっぱり先輩も、親の反対を押し切って!?」
「いいえ」
「えっ」
「未来の説得もあって…ちゃんと親と話し合って、自分のやりたい事を正直に伝えたの」
梢がそう言って、梢の両親を説得しに行った事を思いだした。
「花帆ちゃんが言ってた事を、梢がしようとしたんだよね」
「それって…」
「うん、梢も両親の反対を押しきってやろうとしたんだよ」
「本当ですか?」
「もう言いたくない事だったのに…」
梢がそう言ってくるけど、ここまで言ってしまったのならもう言ってもいいと思うけどなぁ
「だって親の反対を押し切ってまでやったら、親に反発するためにやってる事になるでしょ。それを梢に言ったのよ。親の説得はしないとって」
「未来のあの時の言葉忘れていないわ」
「なんて言ったんですか?」
「う~ん…内緒かな…」
「ええええ…」
「でも、未来の言う通りだって思ったの…反発してやるのは、私が本当にやりたかった事ではないって事に…」
「その時に未来が、私の親に言ったの。スクールアイドル活動だって立派な芸術、音楽なんだって」
「そんな事言ったっけ…」
「言ったわ。それで私の親の表情が変わったの覚えているんだもの」
言った記憶が全くと言っていいほど覚えていないんだけど…
「それに、好きな事をやってる梢の事好きだって」
「まぁ…事実だからね」
「先輩達は、スクールアイドル活動、楽しいですか?」
「ええ、とっても」
「うん、梢と綴理のライブ見るの楽しいよ」
「ねえ、日野下さん、あなたのお友達が花咲くために必要なことって本当はどんなことなのかしら、他の学校に移る事?それとも」
「…それは」
「あの!」
「わっ」
花帆ちゃんの言葉を聞いて、梢はびっくりして椅子から立ち上がった。
「お話聞いて貰って、ありがとうございます。ただ、あの、もうちょっとだけ待って貰ってもいいですか?」
「ええ、それはもちろん」
「梢先輩のライブまでに全部気持ちの気持ちの整理を付けてきますから!だから、その、頑張りますから!」
「ええ、分かった。待ってるわ」
「はい!それじゃあまた明日、お疲れ様でした!」
花帆ちゃんはそう言って部室を後にした。
花帆ちゃんと入れ替わる形でさやかちゃんが部室に入ってきた。
「あの、乙宗先輩、夜空先輩、今、凄い勢いで花帆さんが出ていったんですけど、なにかあったんですか?」
「何かが起こるのは、これからかしらねぇ」
梢がそう言うと、さやかちゃんは?マークを浮かべていた。
「でも良かったわ」
梢はそう言って、ロッカーを開ける。
「未来と治した衣装が無駄にならずに済むかもしれないから」
-次の日-
「どうかしら?似合ってるかしら?」
「梢は何着ても本当に様になるよねぇ」
「そんな事はないわよ」
ライブ当日、僕と梢はステージの裏に居た。
「あっ、花帆ちゃんだ」
僕が視線を外した時に、こちらにやってくる花帆ちゃんを見つけてそう呟いた。
そして、彼女もまたこちらの存在を見つけるとここまで走ってきた。
「日野下さん」
走ってきた為、息を切らしていた。
「あたし、いっぱい考えて、それで、ほんとはどうしたかったのか、分かったんです」
「この学校を笑顔でいっぱいにしたい。あたしが楽しいだけじゃなくて、この学校で同じように退屈を感じてる子達を楽しませたい。あたしが梢先輩にそうしてもらったみたいに」
「ええ」
「だから、スクールアイドルやります!みんなを花咲かせるスクールアイドルになります!」
「不思議ね」
「何がですか?」
「不思議と、こうなる気がしていたの、貴方が私と一緒にスクールアイドルをやってくれるような気が」
「ステージの上に立って、あなたを見た時から。いいえ、もしかしたら貴方と初めて会った時から、だったのかもしれないわ」
「花帆さん、貴方を歓迎するわ。ようこそスクールアイドルクラブへ」
「花帆ちゃん、ようこそ」
「梢先輩!夜空先輩!ありがとうございます」
「それじゃ、僕と梢から花帆ちゃんへの最初の贈り物をあげるね」
僕がそう言って、花帆ちゃんに事前に作っておいた衣装を渡す。
「わあああ」
「その衣装で花咲かせる花帆ちゃんを見せてあげて」
「はい!」
「それじゃあいきましょう。貴方と私、未来の三人で新しい世界へ」
「はいっ!みんなの笑顔を咲かせに!」
梢と花帆ちゃんはそう言ってステージへと向かっていった。
2人のライブ…ううん、花帆ちゃんは花咲かせるスクールアイドルだった。
まだ、蕾かもしれないけど…でも枯れずに花を咲かすそんな気がした。
「何回見ても良いよね…最初のライブっていうのは…」
ライブを終えて、2人の場所に戻ると。花帆ちゃんの周りには友達がやってきていた。
「早速、応援してくれる人ができたのね。日野下さん」
「あはは、そうみたいです、でもこれからもっと頑張りますから」
「それじゃあ、明日からは本格的に練習だね」
「はい!梢先輩!夜空先輩!よろしくお願いします!」