瑠璃乃の言葉を聞いて、慈の部屋にやってきた三人。
「メンタルやばいって、どういうことでしょうか…?」
「…わからないけれど、慈はこういうとき、荒れるのよね」
「あ、荒れ…!?」
「こんな時に、未来が居てくれたらいいんだけど…」
梢がそう言うのと同時に、瑠璃乃が慈の部屋のドアを叩く。
「め、めぐちゃ~ん…ちょーし、どぉー…?」
しかし、部屋の中から反応は無かった。
けれど、それで諦めるような瑠璃乃ではなく、再び叩く。
「めーぐちゃーん…抹茶ドーナツもあるよ~…あーけーてー…」
しかし、それでも反応は無かった。
瑠璃乃は梢の方に振り向いた。
「こほん、慈。私はいいけれど、ユニットの仲間があなたのことを心配して来てくれているのよ。せめて顔ぐらいは、見せてあげたらどうかしら」
梢がそう言うと、ようやく慈が三人の前に姿を現した。
「…なに」
明らかに髪がボサボサで機嫌が悪い慈だった。
「や、やっほーめぐちゃん、ルリちゃんだよー」
「な、なんだが8月に初めて慈先輩の部屋に来たときみたいですね…!」
花帆がそう言うと、慈は花帆の事を睨んだ。
「こらこら、後輩を威圧しないの」
「別にしてない。きょうはこういう顔ってだけ。入って」
慈がそう言うと、三人は慈の部屋へと入っていく。
そして、瑠璃乃が部屋に入ると、パソコンのモニターに目が入り、慈に聞いた。
「…ごめん、るりちゃんのこと気にしてる余裕なくて」
「それで、なにをしていたの?」
「帰ってきてから徹夜でずっと本戦の動画みてた。むかつきすぎて」
「ええっ…!?」
「なんで負けたのか、意味わかんなかったから」
「…それで、わかったの?」
梢がそう聞くが、慈は首を横に振った。
「ぜんぜんわかんないよ!だって私たちが世界最強だったじゃん!めちゃくちゃ大きな失敗とかがあったならわかるけど!みんなちゃんと力を出し切って、それなのにさあ!確かに、終わってから繰り返し見てたら、もっとできることがあったのかもしれないって思うよ!歌もダンスもこうすればよかったってさ!でも!こっちには私とルリちゃんがいたんだよ!だったら負けるのはおかしいじゃん! むかつく~~~~!!」
慈はそう言いながら涙を流した。
「…慈」
「めぐちゃん…でもルリは、みんなと一緒にステージに立てて、楽しかったよ……?ね、めぐちゃんはむかついた、だけ…?」
瑠璃乃は慈にそう聞いた。
「違うの!それはそれ、これはこれ!私だって、るりちゃんと大きな舞台に立てて、楽しかった! また踊れるようになって…いろんな人に名前を憶えてもらって、嬉しかったけど!」
慈はそう言って、続けて言う。
「だったら、勝ったらもっと楽しいじゃん!」
「それ、さっきの瑠璃乃ちゃんの…」
「うん、そうだよね!やっぱり、勝ったほうが楽しいよね!だからさ、次は勝とうよ!」
「もちろん!次は勝つっての!」
「絶対に!私とるりちゃんと、スクールアイドルクラブが最強だって、世界に知らしめてやるんだから!もうね!ただ勝つだけじゃ許さないよ!他のスクールアイドルが『参りました~!』って頭下げに来るぐらいのパフォーマンスで、勝つ!」
「おー!そんなにハードル高くしすぎちゃうなんてめぐちゃんかっけー!」
「だからやるの!私たちをナメたやつら全員の墓に、みらくらぱーく!のアクスタをお供えさせてやる!」
「ほら、めぐちゃん!いったん甘い物食べて!好きでしょ、抹茶ドーナツ!」
「うん!はーむ。んん~!おいひい!おいひくてむかちゅくー!」
慈は瑠璃乃のおかけで立ち直る事が出来た。
「あの、これは…」
「…慈はね、いっつもひとりで落ち込んで、それから怒って、結局は勝手に立ち直るのよ。でもまあ、今回は、ずいぶんと早かったみたいね」
梢はそう言って、さっきまでと違う慈の事を見るのだった。
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