蓮ノ空のアイドルクラブのマネージャーの話   作:桜紅月音

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67.村野さやか

梢と花帆は、再び校門前に戻ってきていた。

 

「あの、さやかちゃんは部屋にいませんでした」

 

「そう、綴理も未来もいなかったわ。どこにいったのかしら」

 

そう話している二人に、一人の生徒が声をかけてきた。

 

「お疲れ様でーす」

 

「あ、お疲れ様ー!」

 

さやかが声をかけてきたのに、花帆は気づかずに返事を返した。

 

「はあ、さやかちゃん、心配だなあ…ひとりでメソメソしちゃってたりしたら…」

 

「…今、いたわよね?」

 

「え?あっ!さやかちゃんだー!?」

 

梢に言われて、花帆はようやく気付きさやかに声をかけた。

そして、声をかけられたさやかは二人の元へと戻ってきた。

 

「どうかしましたか?」

 

「それはこっちのセリフだよ!なんで落ち込んでないの!?」

 

「あ、きょうは、その、確かに部活動はないという話でしたが、わたしはこれからフィギュアの練習があるので、少し体を温めてからいこうかと…」

 

「そうなの!?えっ、すごいね!」

 

「昨日は大会だけでしたので、オーバーワークになっていないと思うんですが…そういうことではなく…?」

 

「い、いえ…、ごめんなさい、少し驚いてしまって。さっきね、瑠璃乃さんと慈に会って来たの、ふたりとも、ラブライブ!の敗退が堪えていたみたいだったから、あなたのことも心配していたのよ」

 

「ああ、そういうことでしたか。もちろん、負けたことは堪えましたよ。ましてや今回は、みなさんと共に、一年に一度しかない大会に挑んだのですしね、でも、試合というのは、やってきたことの積み重ねの結果。やり直せるわけでもありません。だから、また粛々と練習の日々に戻るのです」

 

さやかは二人にそう話した。

 

「今まであたし、さやかちゃんのこと、誤解してたみたい…こんなのもう、村野さんだよ…」

 

「あれ!?どうして心の距離が開いているんですか!?」

 

「きっと、あなたの言葉がとても前向きで、立派に聞こえたからじゃないかしら…。すごいのね。さやかさん」

 

「立派、ですか…?ああ、ああ、なるほど、ようやく今、ちゃんとわかりました!」

 

「そうなの?村野さん」

 

「やめてください!」

 

花帆の悪乗りに、さやかはそう言って止める。

 

「あのですね。わたしは前向きでも立派でもありません。わたし、お姉ちゃんに憧れて、小さい頃からフィギュアをやっているんです。でも、お姉ちゃんと違って…あんまり、才能はなくて。始めての大会は、3位でした。お姉ちゃんは、ずっと1位だったのに。それが悔しくて、たくさん練習したんです。負けたのは、練習が足りなかったせいだからって思って。始めて自分でも『努力』と思えることをしました。その次の大会は、どうなったと思いますか?」

 

「…どうなったの?」

 

「残念ながら、表彰台には上がれませんでした。それ以降、勝ったり負けたり…っていうのは、ちょっと見栄を張りすぎですね。ほとんど、負けてばっかりなんです」

 

「さやかちゃん…!ごめん、あたし、からかうつもりとかじゃなくて…!」

 

「ふっ…いいんですよ。だからすっかり、慣れてしまいました」

 

「それでもあなたは、努力することは諦めなかったのね」

 

「はい。試合で結果を残せないことは、つらいし苦しいです。心が弱っているときは、それなりにちゃんと傷つきます。きょうは休んじゃおうかなって思う日も、あります」

 

さやかはそう言って、続けて言う。

 

「努力を怠って試合に臨めば、たとえ結果を得られたとしても、きっとわたしは満足できません。わたしが見てもらいたいのは、いつだって最前線に立つわたしなんです」

 

「部でいちばん努力をしている梢先輩になら、わたしの気持ちが、わかってもらえると思いますが…どうでしょうか?」

 

「…そうね。さやかさんはやっぱり、立派だわ」

 

「えっ、そうですか?」

 

「すごい、すごいよさやかちゃん!かっこいい!あたし、さやかちゃんのこともっと好きになっちゃった!」

 

「そ、そうですか!?でも負け方が上手だと褒められるのは、なんだがとても複雑ですね!?」

 

「それじゃあさやかさん、練習の途中で呼び止めてごめんなさいね。私たちは、次は綴理の様子を見に行ってくるわ」

 

「あの、梢先輩、ひとつ、お願いしてもいいでしょうか。綴理先輩のことなんですけど…綴理先輩は、わたしなんかよりずっとショックを受けているみたいなんです」

 

「…綴理が?」

 

「はい。けど、なにも話してくれなくて…どうしようかと、考えがまとまらなかったのですが、この学校で、いちばん長い時間を共有した梢先輩に…綴理先輩のことを、お願いしたいです」

 

「…なんだが、大げさな言い方ね」

 

「分かりました、ちゃんと綴理を元気な状態に戻して、あなたの元へと返品できるよう、未来を見つけて善処するわ」

 

「よろしくお願いします」

 

さやかはそれだけ言うと、走りさっていった。

 

「さやかちゃん、体を動かしていないと落ち着かなかったのかな…」

 

「そうかもしれないわね」

 

「そのきもち、なんだがわかるな…だって、あたしも…あれ?あたしも…?」

 

「さ、それじゃあ次は、未来のことを探しにいきましょう」

 

梢がそう言うと、花帆が聞き返した。

 

「でも、未来先輩ってどこにいるんでしょうか」

 

「私もはっきりとは分からないけど、なんとなく屋上に居る気がするわね」

 

「屋上ですか?」

 

「ええ、綴理も未来も屋上から見える空が好きって言っていたからね」

 

梢はそう言って、二人は屋上へと向かった。

 

 




この作品のあらすじにも書いてるんですが、瑠璃乃ちゃんと綴理ちゃんの小説も作成中ですので、暫しお待ちください。

また、告白シリーズの小説も良ければ見て頂けると嬉しいです。

そして、皆さん熱いので熱中症にはお気をつけて。

高校野球で屋外に行ってる作者より
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