梢と花帆は、再び校門前に戻ってきていた。
「あの、さやかちゃんは部屋にいませんでした」
「そう、綴理も未来もいなかったわ。どこにいったのかしら」
そう話している二人に、一人の生徒が声をかけてきた。
「お疲れ様でーす」
「あ、お疲れ様ー!」
さやかが声をかけてきたのに、花帆は気づかずに返事を返した。
「はあ、さやかちゃん、心配だなあ…ひとりでメソメソしちゃってたりしたら…」
「…今、いたわよね?」
「え?あっ!さやかちゃんだー!?」
梢に言われて、花帆はようやく気付きさやかに声をかけた。
そして、声をかけられたさやかは二人の元へと戻ってきた。
「どうかしましたか?」
「それはこっちのセリフだよ!なんで落ち込んでないの!?」
「あ、きょうは、その、確かに部活動はないという話でしたが、わたしはこれからフィギュアの練習があるので、少し体を温めてからいこうかと…」
「そうなの!?えっ、すごいね!」
「昨日は大会だけでしたので、オーバーワークになっていないと思うんですが…そういうことではなく…?」
「い、いえ…、ごめんなさい、少し驚いてしまって。さっきね、瑠璃乃さんと慈に会って来たの、ふたりとも、ラブライブ!の敗退が堪えていたみたいだったから、あなたのことも心配していたのよ」
「ああ、そういうことでしたか。もちろん、負けたことは堪えましたよ。ましてや今回は、みなさんと共に、一年に一度しかない大会に挑んだのですしね、でも、試合というのは、やってきたことの積み重ねの結果。やり直せるわけでもありません。だから、また粛々と練習の日々に戻るのです」
さやかは二人にそう話した。
「今まであたし、さやかちゃんのこと、誤解してたみたい…こんなのもう、村野さんだよ…」
「あれ!?どうして心の距離が開いているんですか!?」
「きっと、あなたの言葉がとても前向きで、立派に聞こえたからじゃないかしら…。すごいのね。さやかさん」
「立派、ですか…?ああ、ああ、なるほど、ようやく今、ちゃんとわかりました!」
「そうなの?村野さん」
「やめてください!」
花帆の悪乗りに、さやかはそう言って止める。
「あのですね。わたしは前向きでも立派でもありません。わたし、お姉ちゃんに憧れて、小さい頃からフィギュアをやっているんです。でも、お姉ちゃんと違って…あんまり、才能はなくて。始めての大会は、3位でした。お姉ちゃんは、ずっと1位だったのに。それが悔しくて、たくさん練習したんです。負けたのは、練習が足りなかったせいだからって思って。始めて自分でも『努力』と思えることをしました。その次の大会は、どうなったと思いますか?」
「…どうなったの?」
「残念ながら、表彰台には上がれませんでした。それ以降、勝ったり負けたり…っていうのは、ちょっと見栄を張りすぎですね。ほとんど、負けてばっかりなんです」
「さやかちゃん…!ごめん、あたし、からかうつもりとかじゃなくて…!」
「ふっ…いいんですよ。だからすっかり、慣れてしまいました」
「それでもあなたは、努力することは諦めなかったのね」
「はい。試合で結果を残せないことは、つらいし苦しいです。心が弱っているときは、それなりにちゃんと傷つきます。きょうは休んじゃおうかなって思う日も、あります」
さやかはそう言って、続けて言う。
「努力を怠って試合に臨めば、たとえ結果を得られたとしても、きっとわたしは満足できません。わたしが見てもらいたいのは、いつだって最前線に立つわたしなんです」
「部でいちばん努力をしている梢先輩になら、わたしの気持ちが、わかってもらえると思いますが…どうでしょうか?」
「…そうね。さやかさんはやっぱり、立派だわ」
「えっ、そうですか?」
「すごい、すごいよさやかちゃん!かっこいい!あたし、さやかちゃんのこともっと好きになっちゃった!」
「そ、そうですか!?でも負け方が上手だと褒められるのは、なんだがとても複雑ですね!?」
「それじゃあさやかさん、練習の途中で呼び止めてごめんなさいね。私たちは、次は綴理の様子を見に行ってくるわ」
「あの、梢先輩、ひとつ、お願いしてもいいでしょうか。綴理先輩のことなんですけど…綴理先輩は、わたしなんかよりずっとショックを受けているみたいなんです」
「…綴理が?」
「はい。けど、なにも話してくれなくて…どうしようかと、考えがまとまらなかったのですが、この学校で、いちばん長い時間を共有した梢先輩に…綴理先輩のことを、お願いしたいです」
「…なんだが、大げさな言い方ね」
「分かりました、ちゃんと綴理を元気な状態に戻して、あなたの元へと返品できるよう、未来を見つけて善処するわ」
「よろしくお願いします」
さやかはそれだけ言うと、走りさっていった。
「さやかちゃん、体を動かしていないと落ち着かなかったのかな…」
「そうかもしれないわね」
「そのきもち、なんだがわかるな…だって、あたしも…あれ?あたしも…?」
「さ、それじゃあ次は、未来のことを探しにいきましょう」
梢がそう言うと、花帆が聞き返した。
「でも、未来先輩ってどこにいるんでしょうか」
「私もはっきりとは分からないけど、なんとなく屋上に居る気がするわね」
「屋上ですか?」
「ええ、綴理も未来も屋上から見える空が好きって言っていたからね」
梢はそう言って、二人は屋上へと向かった。
この作品のあらすじにも書いてるんですが、瑠璃乃ちゃんと綴理ちゃんの小説も作成中ですので、暫しお待ちください。
また、告白シリーズの小説も良ければ見て頂けると嬉しいです。
そして、皆さん熱いので熱中症にはお気をつけて。
高校野球で屋外に行ってる作者より