そして、二人の元へと駆け寄った。
「二人とも、ここに居たのね」
「みく先輩、探しましたよ!」
「ごめんごめん」
僕は、花帆ちゃんにそう返した。
「全く…綴理ったら、なんで未来の膝で寝てるの…」
僕の膝でぐっすりと眠っていた綴理の事を起こす梢。
「…」
しかし、つづは全くと言っていいほど、反応が無かった。
「話を聞いてあげたら寝ちゃった」
「それでこうなったの?」
それは遡る事、数十分前_
ルリちゃんと遭遇した後、一番心配していたつづの場所までやってきた。
そこは屋上。空を眺めるのが好きって言っていたので恐らくここだろうと思って
「つづ、こんな所で何やってるの?」
「みく…」
「寝そべるの一旦…辞めようか…」
僕はそう言って、近くにあった椅子に座って綴理と話をする事にした。
「さやかちゃんに話したの?」
「…ちゃんとさやに、どういう気持ちなのか伝えようって、がんばったんだけど。喉を通った端から崩れていくんだ。ちょうど、今の雲みたいに」
「それをそのまま、さやかちゃんに言えばいいんじゃない?」
「ラブライブ!に出られて、幸せだったんだ」
「うん」
「さやが隣に立ってくれたんだ。ボクはもう、他にもなにもいらないと思ってた。なのに。どうしてだろう。ボクは、ぜんぜん満足できてないんだ。これじゃあ、さやに嘘のついてたみたいじゃないか。そんなの、だめだ。だから、さやにだけは、まだ…言えない」
「…うん、それで」
「みくは、わかる?」
「難しい話題だね…僕はつづじゃないから」
「そうだよね、みくがつづだったら…ふたりで空を見上げてたかな
「去年のつづって、今のような表情してなかったよ」
「え?」
「去年、こずと話をして、ラブライブ!本戦に出るわけにはいかないって言って、二人で出場を諦めたでしょ?それで、今みたいな表情してなかったって思って、楽しい事でもあったかなって」
「楽しいよ、去年が楽しくなかったわけじゃないけど、今年はもっと楽しい。かほとるりがいて、めぐとこず、みくがいて、ボクの隣に、さやが立ってくれてる。スクールアイドルになれたんだ。だから…」
「それで?」
「だから、ボクは…あぁ、そっか。そうなんだね」
「何か分かった?」
「うん、ボクは蓮ノ空が、好きみたいだ。ボクは…欲張りになっちゃったんだ…」
「なんでさっきよりも落ち込んでるの…」
「蓮ノ空が好きだから、ボクにとって蓮ノ空がいちばんだから。みんなにも、そう思ってほしかったんだ。ボクが優勝できると思っていたのはきっと、蓮ノ空がいちばんだっていう気持ちがあったからで。それを届けられなかったから…ボクは、悔しかったんで」
「つづ変わったなぁ~」
「何が?」
「だって自分の好きなものを、みんなに好きになって欲しいなんて、つづの口から聞けるなんてって思って」
「…おかしい?」
「ううん、とっても良いと思う」
「…そっか、うん、よかった。ボクは、さやに嘘をついてたわけじゃなかった。あれ…でも、ボクは欲張りで…どうしよう、どっちが悪いんだろう」
「そこはほら、さやかちゃんに聞いてみたらどうかな?」
「…うん、そうする。そうしたい」
つづはそう言って、さやかちゃんの所に行くのかと思ったら、つづは僕の膝に頭を乗せてきた。
「何やってるのつづ?さやかちゃんの所に行かないの?」
「うん、後で行く。今はこうしていたい」
「分かった」
そして、今に至る
******
「その後、ちょっと話してたら寝てた」
周りがそこそこ騒がしいのに、つづは起きる気配が無い。
「はぁ…でも、このままっていう訳にも行かないでしょう」
梢はそう言って、膝で寝ているつづを起こす。
「……う、うん?こず…?」
身体を動かされたことによって、目を覚ましたつづはそう言って、身体を起こす。
「おはよう、っていうのもおかしいわね…」
「ボク寝てた…?」
「それはぐっすりとね」
「そうなんだ、みくに話を聞いて貰ったら、気持ちが楽になって寝てしまったのかも」
「それは良かったわね
「うん、みく、こず、かほも話を聞いてくれてありがとう」
「えっ?あたしなにも」
「ううん、ここに居るってことは話を聞いてくれようとしたって事でしょ?だからありがとう」
つづはそう言って、どこかに行こうとしたが、一旦止まってこちらに振り向いた。
「次はがんばろうね、こず」
「…ええ、そうね」
そして、つづは走り去っていった。
「綴理先輩も元気になってくれて、よかったですね。さっすがみく先輩です。これでみんな、明日からまた練習がんばれますよね」
「ねえ、花帆さん、もうちょっとだけ、付き合ってくれる?まだ話したい人がいるの」
「いいですけど…えっ?それって、あたしのことですか?」
「部室に戻りましょう。未来も」
「了解」