蓮ノ空のアイドルクラブのマネージャーの話   作:桜紅月音

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70.夢を信じる物語

 

「すみません、先輩方ーー」

 

花帆ちゃんが戻ってきた。

 

「花帆ちゃん、どうしたの?」

 

「…梢、先輩?今、泣いて…」

 

いやぁ…見られてしまったか…こずは、僕の制服で涙を拭いて、僕から離れていつも通りに振舞う。

 

「ごめんなさい、なんでもないの、大丈夫だから。心配、しないで」

 

「それは無理あると思うけど…」

 

僕がそう言うのと同時に、花帆ちゃんが言う。

 

「…梢先輩。あたしじゃ、だめですか?」

 

「違うの。これは、人に話しても、仕方のないことで」

 

「でもあたし、聞きたいです。先輩がどうして泣いているのか。あたしじゃ、だめですか…?」

 

「話してあげたら?一緒にユニット組んでるんだからさ」

 

僕の言葉に、こずはしばらくの間考えてから、口を開いた。

 

「悔しいの、あと、少しだったのに、ラブライブ!優勝に、手が届いたのに!」

 

「梢先輩…」

 

「幼い頃から、ずっと目指していたの!夢だった。ようやく叶えられるって、思ったのに!私はまた、ダメだった…!」

 

こずはそう言いながら、その場に倒れ込む。

そんな彼女を僕はしっかりと支える。

 

「ダメだったの…私は、いつもそう…!本当に欲しいものだけ、手に入らないっ…!みんな、スクールアイドルで『なにか』を見つけて、輝いてる…それなのに、私だけ、私にはなにもない…優勝できなければ、私には、なにも…!」

 

「そんな、なにもないなんて、どうして…先輩は、なんでもできるじゃないですか!」

 

「それだけじゃ、だめなの…!だって、夢を叶えるために、なにもかも懸けて、ここにいるんだから…!」

 

「なにもかも…」

 

 

それは、幼い頃の梢の話_

 

「ねえ、みく!私、スクールアイドルになるわ!」

 

「こずならきっと凄いスクールアイドルになれるよ」

 

「うん!ラブライブ!で、あの子たちみたいにーー私も、ぜったいに、優勝してみせるんだから!」

 

「なら、僕もこずのために頑張るよ」

 

「ええ、お互いに頑張りましょう!」

 

「約束だよ!」

 

「ええ、約束」

 

その時、梢と未来の指は固く結ばれた。

 

_________

 

「憧れたスクールアイドルに、私もなりたかった…そのために、がむしゃらに走り続けて…みくにもたくさん迷惑をかけて…でも、なれないの…私には、もう、なにも…」

 

こずの涙は収まる所か、酷くなっていく一方だった。

僕の制服は、こずの涙でかなり濡れてしまっていた。

 

「こず…」

 

「梢、先輩…」

 

その時だった、花帆ちゃんが目の前までやってきた。

 

「花帆ちゃん…?」

 

「ーー優勝しましょう!」

 

「…え?」

 

「だったら優勝しましょう!来年こそぜったい、梢先輩の夢を叶えましょう!」

 

「花帆さん…?」

 

「先輩がどんな決意でラブライブ!に臨んでいるのか、あたし、ぜんぜんわかりませんでした。わかった気になってただけだったんです。ずっと先輩のそばにいたのに、先輩が何度も夢を話してくれたのに…」

 

「花帆ちゃん…」

 

「ユニット失格です。だからーー今度こそ、あたしたちで先輩の夢を叶えましょう!」

 

「どうして…」

 

「そんなの、決まってます。あたしをスクールアイドルに誘ってくれたのは、梢先輩です。この学校を辞めようっかって悩んでたあたしを救ってくれたのは、梢先輩なんですよ。花咲きたいっていうあたしの夢を、助けてくれたのも梢先輩なんです」

 

そんな事もあったな…花帆ちゃん、本気で辞めそうだったもんね。

 

「あたしはこれからもずっと、梢先輩に笑っていて欲しいんです!スクールアイドルとして過ごした日々が、悲しい思い出になっちゃうなんて、そんなの、ぜったいにだめです! あたしも、もっともっとがんばります。朝練だって、サボらず毎日来ます、文句も…たまには、言うかもしれませんけど…!」

 

言うのか…ううん…このくらいは許してあげよう…

 

「でも、いっぱい努力して、きっと、花咲いたスクールアイドルになりますから!梢先輩のことだって、あたしが、花咲かせてみせます!」

 

「花帆さん…」

 

「ひとりでがんばるのが大変だったら、すぐそばに、あたしやみく先輩がいますから。くじけそうなときでも、今度はあたしが支えますから。だから…なにもないなんて、言わないでください」

 

「梢先輩には、未来先輩には一緒に居た時間では負けますけど、みく先輩だけじゃなくて、日野下花帆がいるんだって、そう信じてもらえるように、がんばりますから」

 

「一緒に、夢を信じてくれる…?」

 

この時には、こずの涙は止まっていた。

 

「もちろんです!」

 

「あたしたちでーー夢を叶えましょう!」

 

「ありがとう、花帆さん…」

 

 

 

 

______

 

放課後、みんなを集めて、高台までやってきた。

 

「なんでみくはジャージ姿なの?」

 

「どこかの誰かさん達が泣きじゃくるわ、よだれするわで洗濯に出したから」

 

僕がそう言うと、本人たちは目を逸らした。

別に気にしてないからいいけど、

 

「それにしても」

 

「すっげー!この季節に、雪ひとつないじゃん!」

 

ルリちゃんが言う通り、高台から見える景色は、雪一つなかった。

 

「私たちの日頃の行いがいいから、だよ!」

 

「夕焼けが街並みを照らして…とてもいい眺めですね」

 

「みんなが見えるね」

 

「よく見えるね」

 

「観光にきたわけじゃないのよ」

 

「わかってます!来年の誓いですよね!」

 

「ルリは!スクールアイドルでもっともっと『楽しい』を見つける!」

 

「私はもちろん、無敵のスクールアイドルになって、世界を夢中にさせてやること!」

 

「ではわたしは……心堅石穿(しんけんせきせん)。これからも今の自分に甘んじることなく、たゆまぬ努力を続けたいと思います」

 

「蓮ノ空さいきょー」

 

「僕は、良い曲を作ってスクールアイドルクラブのみんなの事を支えていきたい!!」

 

「あたしは花咲く自分になれるようにがんばる!それと、たくさんの人の笑顔を花咲かせる!それと、100万人でライブをする!基礎練もしっかりする!夜のお菓子はなるべくガマン!」

 

「いや多いなキミ」

 

「あとはね、あとはね」

 

花帆ちゃんは、そう前置きを置いて_

 

『ラブライブ!優勝っ!』

 

『おおー…』

 

花帆ちゃんが言った言葉に、僕とこず以外のみんなからそう声が漏れた。

 

『ふふっ』

 

そして、そんなみんなを見てくすっと笑う僕とこず

 

「みんな、来年こそは必ず、全員で願いを叶えましょう」

 

こずがそう言うと、みんな返事を返す。

 

 

「蓮ノ空学院スクールアイドルクラブ、今この時を大切に Broom the smile!」

 

『Broom the droam!』

 

 

 

「頼りにしているわね、()()

 

「ーーはい!」

 

二人のやり取りを僕は穏やかな表情で見るのだった。

 

 

 

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