1月のとある日、噴水前で悩む少女の姿があった。
「うーん、うーん、うーーん」
「悩んでるねい、一年生」
そこに、通りかかった沙知が少女_もとい、花帆にそう声を掛けた。
「うわっ!せ、生徒会長。びっくりさせないでくださいよ…」
「ごめごめ。でも、どしたん?なんかすっごい眉間にシワ寄せてたよ」
「それが、その~なにか忘れてる気がするんですよね~…すごく、大事なことのような~…」
「ほうほう、勉強?人間関係?それともスクールアイドルのこと?」
「それはたぶん、スクールアイドルの~…ああっ、そうだ!」
沙知のアドバイスによって、花帆は何かを思い出した。
「地方大会の『テザLink!ライブ』を手伝ってくれた人たちに、落ち着いたらなにかしたいなーって思ってたんですよ!ドタバタしてて、すっかり忘れてました!」
「へー、いいことじゃん、なにするの?」
「ん~…とりあえずは、お礼…!いっぱい、お礼を言いたいです!地方大会の件もそうですし、こと1年あたしたちを支えてくれた人にも、ありがとうございまーす!って。ほんとは優勝できたら、もっとちゃんとお礼になったのかなーって思うんですけど…!」
花帆は、自分の思っていた事を沙知に言った。
「あーねえ」
「でも、いいんです!それは来年、成し遂げてみせますから!うおおー!」
「へー…もっともっと落ち込んでるかと思った。やる気満々だねい。いいぞいいぞ」
「あ、生徒会長、それで心配して声をかけてきてくれたんですか?優しいところありますね~!」
「でも、同じように考えてる人、たくさんいるんじゃないかなーちゃんと元気な姿を見せてあげたら、応援してくれた人も、安心すると思うよ」
「元気な姿…ってことは、ライブですね!?」
「お、おお?そうだねい?」
「わかりました!あたし、みんなにお礼のライブしたいって言ってきます!ありがとうございます、生徒会長!」
花帆は、沙知にそう言って部室に向かって走っていく。
「ははっ、元気すぎー」
******
-部室-
「いいこと考えましたー!」
部室に戻った花帆は、元気よく入ってそう声をあげた。
「あら、どうしたの、花帆」
「えっ、あ、そーですよ、花帆ですよー…えへへ…」
「コホン、ど、う、し、た、の?」
梢が圧をかけるような言い方で聞く。
「そ、そうでした!あのですね!閃いたんです!お世話になった人たちに、お礼のライブをしませんか!?あたしたちがそもそもラブライブ!の全国大会に出場できたのも、皆さまのおかげなので!」
花帆がそう言うと、この場に居た皆が微笑んだ。
「えっ、なに!?」
「今その話してたんだよ、花帆ちゃん!」
「えっ?」
「考えることは、みんな一緒だねー」
「うれしい」
「やりましょう、ライブイベント、今年度の私たちを支えてくれた方々のために、ぜひ」
「はいっ!」
「後は、みく先輩に伝えるだけですね」
「それなら、ルリが伝えてくるね」
「お願いするわね。瑠璃乃さん」
「任されました!」
********
そう決めた翌日_また、噴水前で悩む花帆の姿があった。
「うーん、うーん、うーーーーーーん」
「あれっ!?また悩んでる!」
そこに、またまた通りかかった沙知が声をかけた。
「実は~~~…」
花帆は、話し合いで決まった事を沙知に伝えた。
「へー。応援してくれた人にお礼の言葉を伝えたいから、自分が作詞するって言っちゃったんだ。いいことじゃん」
「なんですけどー!あたし、ひとりで作詞したことないんですよ!」
「へー…じゃあ、なんで言った?」
「かっこつけたかったからですよぉ!!」
花帆がそう言うと、沙知は盛大に笑った。
「あっははは!」
「だってだって梢先輩のこと、ラブライブ!で優勝させるって、宣言しちゃったんですもん…それなのに、作詞のひとつもできなかったから、これまでと変わらないじゃないですか…梢先輩は優しいからなにも言わないと思いますけど!『やっぱり花帆、相変わらずダメダメなのね…これは来年も優勝はムリね…』ってガッカリするに決まってますよー!」
「…で、進捗はいかほど?」
「……ノート一冊ダメにしました…」
「うーん。努力賞はあげよう!よくがんばりました!」
「がんばるだけじゃだめなんですよぉ!」
「まあまあまあ、ほら、アレだ。気分転換とか、大切じゃないかな!部のみんなと話してみて、インスピレーションをもらったりとかね?みくに聞いてみたらどうかな?」
「そうですね…見栄を張って自爆してるミジンコの花帆は、一度。部に戻ります…」
花帆は、そう言って部室に戻っていった。
「充電切れたダンボールちゃんみたいになってるねえ……」
そして、沙知はそんな花帆の後を付いていくのだった。
*******
部室に戻ってきた花帆と沙知。
そこには梢一人だけの姿があった。
「おつかれさまでーすー…」
「やぁ、梢」
「あら、花帆と一緒に、どうしたんですか?沙知先輩」
「いやー、みんなが応援してくれた人にお礼のライブをやるって聞いてさ、これはぜひとも生徒会長として激励したいと思って、ほら、あたしも無関係じゃないし!」
「ふふ、それはありがとうございます。そうだ、聞いてください。沙知先輩」
「なになに?いいことでもあった?」
「今回は、花帆が作詞をするんですよ。それも私の力を借りず、たったひとりで」
「へーー!そいつぁいいねぇ!」
「普段は私が先に曲を作ってから、二人三脚で作詞をしてるんですけれど、今回は花帆の作詞が先なんです。この形式で曲を作るのは久しぶりなので、ふふっ、とっても楽しみで」
「そういや、未来が先に曲を作ってから作詞をしていたね。いやあ、大した後輩だね。花帆!」
「私とみく先輩を一緒にしないでくださいって」
沙知にプレッシャーをかけられた花帆はそう返した。
そんな花帆に、何か違和感を感じた梢はこう聞いた。
「…花帆、本当に大丈夫?もしなにか困っていることがあったら、なんでも相談してね」
「こーこまったことなんてあるわけないじゃないですか!すっごく順調ですよ!アイディアがタンポポみたいに咲き誇っちゃって、候補を絞り込むのに苦労してるぐらいです!あたしにドンと任せてくださいね。梢先輩!」
ここに来て、また見栄を張ってしまう花帆。
「まあ…さすがだわ、花帆」
そんな所に、部室のドアが開いて入ってくる姿があった。
「こずこず先輩ー!ルリも招待状、書き終わりました!」
「あら、ありがとう、これで全員分揃ったわね」
「ほう、招待状?素敵な響きだねぃ」
「ええ、せっかくなので、直接声をかけた方々には招待状を送ろうと思いまして。できれば時間を見つけて、手渡しで届けたいのですが…」
「それじゃルリはいそいそステージ制作に戻ります!ビシッ!」
瑠璃乃はそう言って、部室から去っていく。
「見ての通り、準備に大忙しで」
「あ、あの!あたしもなにかお手伝いを~…」
「あら、いいのよ花帆は。その代わり、作詞をがんばってちょうだい。みんな、あなたの歌詞を楽しみにしているんだから」
「ふぐぅううぅ~!」
「じゃあ、その招待状は、あたしと花帆で届けてくるよ!」
「えっ?」
「ええっつ!?」
未来君、吹部に居ながら3ユニットの曲を作ってるハイスペックお化けです。
今は、花帆ちゃん達が入部したのでそれぞれのユニットに大半は任せていますが。