「みく先輩~」
「よしよし」
「こずとさやの所に行く?」
「…はい」
めぐに言い負かされたるりちゃんをつづと慰めていた頃。レッスン室では_
「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイト」
梢とさやかの二人がダンス練習中で、梢がさやかに見て貰っていた最中だった。
「ふう。どうかしら、さっきと比べて」
「はい。今の方が安定していると思います。たぶん、立ち位置の問題ですね。具体案があるわけではないのですが、少し別の振りを挟むのはどうでしょう」
「そうね、このままだとずれるし…ここ、音を合わせてみましょうか」
「あ、良いですね。それなら綺麗に通ると思います。やってみましょう」
そして、二人で合わせる
『ワン、ツー、スリー、フォー』
そして、撮影していたカメラでダンスを見る。
「うまく当てはめられたかしらね、さすがはさやかさんと言ったところかしら」
「いえ、梢先輩のアイディアあってこそです。これで、良い感じだと思います」
「いつもと違うから、ちょっと物足りない?」
さやかの様子に気付いた梢は、さやかにそう聞いた。
「あ、いえ…そんなことは」
「少し、休憩にしましょうか」
二人は部室へと向かった。
******
「あ、この紅茶とっても美味しいですね」
「それは去年の春の紅茶なの。時間が経ったら経ったで、摘みたてとはまた違った、まろやかな味わいがあるでしょう?」
「勉強になります」
「ふふっ、時期が変わると、風味も変わる。きちんと保管されていれば、香りが飛ぶこともない。別の美味しさが熟成されて…私たちも、色々変わったのかもね」
「わたしたちも、ですか?」
「きっと去年の春頃なら、さっきのレッスンが出来れば満足だったわ。課題があって、それをこなすための答えを出せた。あとは、練習あるのみ、さやかさんは、違う?」
「ぁ…そうですね。わたしはとにかく、答えが欲しかったですし」
「去年の私たちが正しかったかどうかは、今となってはもう分からないけれど、今の私たちは、もっと違う味わいを知ってしまった。自分だけでは得られない…きらめきが欲しい」
「花咲きたい、ですね」
「ふふ」
「困ったわ。原因は分かっても、これじゃあ解決策はーー」
すると、部室のドアが開いて、
「わー!優雅なお茶会開催中だ!」
「美味しそう」
「二人ともお疲れー」
三人が入ってきた。
*****
「あ、綴理先輩、みく先輩。瑠璃乃さん、休憩ですか?」
「え、いや、休憩じゃなくてその」
「てーさつ」
「あら、それなら未来が好みの新作のフレーバーティーの味も、偵察してもらおうかしら」
「えっ?」
「あの時の買ったんだ」
「ええ」
「それじゃ、二人の分は僕が淹れるよ」
僕を含めた三人分のカップを取り出して、紅茶を入れる
「はい」
「ありがとうございます」
るりちゃんはお礼を言って、紅茶を飲み始める
「なにこれめっちゃ美味しい!ガムシロとか入れなくても甘い紅茶ってあるんだ!」
「おかわり」
「随分と気に入ったようで…」
二人にはとっても気にいったらしい。
「…気に入ってもらえてうれしいわ」
「お茶菓子もありますから」
さやかちゃんはそう言って、自作のお茶菓子を僕達の前に差し出してくれた。
「うおー、甘いに甘いとか最強じゃん。ありがとー。さやかちゃん。お菓子も作るんだ!」
「はい。梢先輩が教えてくれて、お菓子も日々勉強中です」
「さや美味しい」
「わたしを食べてるみたいですよー」
「ふふっ。お茶会というより、お菓子パーティーになったわね」
「偶にはこういうのもありかな」
「ふふっ、それもそうね」
僕とこずがそう話す中、ルリちゃんが話し始めた。
「ルリの知ってるお菓子パーティー、こんなお上品じゃないな?」
「瑠璃乃さん主催のお菓子パーティーはきっと賑やかでしょうね」
「そうかな、そうかも!みんながすっごく楽しい感じで盛り上がれるようにーー…あー、やっぱそう思います?」
『?』
「や、なんてゆーか…いえー!って盛り上がるのが正しいと思います?的な?」
「正しい…?」
「…私は、いえー、という柄ではないわね」
「ふふっ。でもちょっと可愛いですよ。梢先輩」
「こずかわいい」
「…そうじゃなくてね」
二人から言われて、照れるこず。
すると_
「もしかしてみくに言ってもらいたかった?」
紅茶を飲んでいる最中に、つづが変な事を言うからうせてしまった。
「大丈夫ですか!?みく先輩!?」
「大丈夫…」
「みくパイセン…ルリが摩ってあげます」
「ありがとう」
るりちゃんが背中を摩ってくれたおかげで、なんとか復活を果たした。
「それでやらないの?」
「…やってほしい…?」
「大丈夫よ」
こずはそう言って、咳をひとつして話し始めた。
「ひとつ思ったのだけど、シャッフルユニットを提案してくれた時から思っていたけれど、瑠璃乃さんは自分のこれからに悩んでいるのかしら」
「あ…えっと」
「ごめんなさい。先に言っておくけれど、私には正解は分からないわ」
「そーですよねぇ。こちらこそ、ルリの言い方が雑でして…これまで間違ってたとは思わないけど、これだけが正解なのかなって思っちゃって」
「この半年で、色々変わりました?」
ルリちゃんの言葉を聞いたさやかちゃんが、ルリちゃんにそう聞き返していた。
「そーかも、特に、ラブライブ!に出て、色々考えるよーになって、前は、みんなが嫌な気持ちにならなければいいなって感じだったのが、みんなに楽しい気持ちでいてほしいなって思うよーになったってゆーか」
「だとしたら、私からひとつだけ言えることがあるわ。その気持ちは絶対に、間違いではないということね」
こずの言葉を聞いたルリちゃんはハッとした表情を浮かべていた。
「ふふっ、そうですね。ただ…間違いではないというだけでは、正解でもないんですよね、自分が間違っていないと信じて頑張ることが、一番大変です」
「…信じて、頑張る、かあ」
「さやもこずもすごい、結局間違ってるかもしれないのにね」
「そうですね。自分の目指すものに何が必要なのか…それが分かるきっかけがあればと思います。わたしはその…そこにおいてズルをした自覚がありますので…」
「ズルじゃないよ?」
「偶然の出会いはズルですよ」
「探してたんだからずるじゃないよ?」
「もう…」
「探してたから、ズルじゃない…」
「瑠璃乃さん?」
つづとさやかちゃんのやり取りを見て、何かを思いついたのか様子が違うルリちゃんにこずが声をかける。
「ルリ、分かった気がする! 偵察って…ルリが綴理先輩を退屈させないためになんとか絞り出したことで、ルリはそれしか考えてなかったんですけど」
「…」
「でもそれが、綴理先輩には、ルリが何かを探してるように見えたんですよね」
「だって…ボクを楽しませようとしてくれてたでしょ?」
「~~!そっか!」
「…よく、分かりませんけど、瑠璃乃さん、きっと綴理先輩はその力になってくれますよ」
「がんばる。じゃあ、なんか見つけたみたいだから、行こう!」
「おー!じゃあ、失礼します!!みく先輩もありがとうございました!!」
「うん、つづと頑張ってね」
「はい!おじゃましゃしゃったー!」
ルリちゃんはそう言って、つづと二人で部室を後にした。
「さて…慈は、どう考えているのかしらね」
「仲直りさせてあげたいですね。…ふふっ」
「さやかさん?」
「あ、いえ、結局、他のメンバーのことも考えてしまうなと。わたしも、梢先輩も」
さやかちゃんがそう言うと、こずは一口紅茶を嗜んでから
「変わらない味もあるということで」