時期は巡りに回って3月。三年生の先輩達は寮を退去することになるので、ちょっとずつ整理整頓を始めていた。
「疲れたー」
「お疲れ様」
部室で、作業をしているとこずが紅茶をいれてそう言ってくれた。
「ありがとうね」
「そういえば、生徒会が蓮華祭何かしろって言ってきたんだけどさ、何かする?」
「丁度いいわね」
こずはそう言うと、部室に居た
「綴理、慈、ちょっといい?」
「どしたー?」
こずに話しかけられた二人は、僕達の方に振り向く。
「ちょっと三人に話しておきたいことがあって、三月末の…蓮華祭のことなのだけれど」
「その話って二年だけってこと」
「一年生に、サンライズ?」
「それはまた別の機会にね?」
こずは一旦、間を開けて話し続ける。
「未来が言ってたのだけれど、三年生。もとい沙知先輩が、卒業するでしょう?」
「…」
「おっけー、理解した。そうだね。三年生にとっては蓮華祭が、うちの生徒で居られる最後の日だもんね」
「何かお礼をしたいよね」
「ええ、だから、蓮華祭で、沙知先輩に何かを返したい。とはいえ、具体的な案があるわけではないのだけれど」
確かに、あくまで話だけの段階だから、仕方ないのかもしれない。
「まぁこればっかりは、私たち二年生が考えるべき問題だよね。んー…なんかプレゼントでも作る?」
「三人のこと見てたら、ちょっと思いついたよ」
僕達の事をジッと見てたと思ってたけどやるじゃんつづ。
「なんだよもー、やるじゃんつづりーん」
「聞かせてもらえる?」
「ん、…曲をね、作るんだ。新しい曲」
「新曲か~」
「なるほどね。でも、私たちを見て思いついたってなに?」
めぐがつづに対してそう聞き、つづはこう返してきた。
「去年の部室はいつも、こずがそこに居て、めぐが転がってて、それからさちとみくが入ってきてたなーって、思ったら、いつだったっけ…入ってきたさちが言ってたことを思い出したんだ」
つつはそう言って、続けて昔。沙知先輩が言ってたという話を続ける。
「歌は、こず。ダンスは、ボク。言葉は、めぐ。まとめる力はみく。だって。そして…さちが知ってるボクたちより、今のボクたちはすごいことができるはずだと思う。どうかな」
「つづの言う通り、凄い事出来ると思う」
「ふっ…やってやろうじゃん」
「それぞれ責任があって、それだけにやりがいもある…ええ、それでいきましょう」
僕達二年生の意見は決まった。
「私たちから、沙知先輩に贈る曲…あの余裕たっぷりなちっちゃいのを、感動でズタボロに泣かせてやるんだから!」
慈の言葉に、僕達は首を縦に振った。
後は、沙知先輩にバレないようにするだけ。だから_
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「あー…この荷物は、ちょっと大げさかしらね」
寮の自室で、梢はスーツケースに荷物を纏めていた。
そんな時、梢の部屋のドアを誰かが叩いた。
「あら?このノックは…花帆?どうしたのーー」
梢はドアを開けて、廊下に出るとそこには不安そうな表情を浮かべる花帆の姿があった。
「梢センパイ、どういうことですかー!?『実家に帰ります』って!」
今にも泣いてしまうのではないか。そんな表情で梢に迫る花帆。
「なにがあったんですか!?梢センパイ、蓮ノ空を辞めちゃうんですか…!?」
花帆の勢いに思わず、困惑する梢
「ええと…それは、お休みに実家に帰ろうと思っただけ、なのだけれど…」
「えっ?…はぁー…なーんだぁ…そうだったんですかぁ…」
梢からの言葉を聞いて、ホッと息を吐く花帆。
「ご、ごめんなさい。文面だとつい言葉足らずになってしまうのは、私の悪い癖ね。未来にまた怒られてしまうわね…」
普段から、言葉足らずながらもやりとりをやっている未来は分かるのだが、他人は分かる訳がないので…未来に彼女はかなり怒られているのだ。
「こちらこそ、誤解しちゃってごめんなさい。あと一歩で、危うく梢センパイの実家まで押し掛けるところでした…ほら、見てください!あたしの旅行鞄!」
そう言う花帆の隣には、小さいケースがあった。
「ふふっ…ごめんなさい。そうね、それはびっくりさせちゃったわね。別に隠すつもりはないの。沙知先輩のために、曲を作ろうと思って」
「あ…そうですよね。もう卒業ですもんね」
「せっかくだから、実家で集中的に作曲をするつもりだったの。ただ、それだけよ」
「梢センパイのご実家…!兼六園ぐらいありそうですね!」
梢の家を想像する花帆の目は輝いていた。
「ねえ、花帆。よかったら一緒に来る?」
「え?」
「ぜったいに、いい曲を仕上げたいの。力を貸してくれると、嬉しいわ、もちろん、あなたに予定がなければ、だけれど」
そう聞かれたら、花帆の答えはもう決まってるものである。
「はい!あたしのできることでしたら、ぜひ!!あたしだって、短い間でしたけど、生徒会長にはお世話になったので!!」
「ありがとう花帆さん! きっと、沙知先輩も喜ぶわ!」
そして、翌日。二人は梢の家へと向かった。