蓮ノ空のアイドルクラブのマネージャーの話   作:桜紅月音

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90.過去の自分

 

あの後、めぐとるりちゃんと共に、金沢市内にやってきていた。

 

「というわけで本日は、金沢市内の映画館に来ています」

 

「来ていまーす!スクールアイドルの映画とかやってるの?」

 

今は…棒有名なアニメの映画がやっていたような…ってそうじゃなくて…

 

「…。普段ならそれでじゅうぶんパワーをもらえるんだけどね。今回は、限界を超えなきゃいけないんだ、るりちゃん。つまり…!」

 

「つ、つまり……!?」

 

「葬り去った黒歴史…。藤島慈の、第1回配信を見る…よ!!」

 

「…んえ?」

 

「そうだと思ったけども…」

 

配信を見るだけなら、寮の部屋でもいいはずだが…

 

瑠璃乃「どゆこと?」

 

「一年の頃の藤島慈の配信アーカイブは、今やほとんどがネットに残ってないんだよ。怪我をしたときに、ほとんど非公開にしたんだけど。もう1個理由があって。なぜかわかる?」

 

「いやぁ…あれは酷い物だった…」

 

「いや、そうじゃなくて…」

 

「そう、あまりにも出来が悪くて、藤島慈、自らが封印したんだよ」

 

「あの頃のめぐはねー色々とやってたからね~」

 

「映画館まで来なくても、家のパソコンで見ればよくね!?」

 

「るりちゃんの言う通り、わざわざ映画館まで来る必要ないよね」

 

「パソコン叩き割っちゃうかもしれないじゃん! だから、覚悟を決めるためにスクリーンを貸し切ったんだよ!」

 

「お金の使い方あ…めぐちゃん、ルリがめぐちゃんのお財布管理しよっか?」

 

「その話は後々、ね。さ、始まるよ!」

 

めぐよ…るりちゃんにお金管理してもらった方が良いと思うよ僕と思っていると、映像が流れ始める。

 

 

【あ、えっとぉ…どーも(笑)】

 

 

既に痛い。

めぐの心に槍が刺さり、本人は既にきつそうだし

 

【これでぇ、映ってますかねぇ~?私、機械のこと、あんまりわからなくてぇ】

 

「へらへらしてんじゃないよ!1日6時間スマホ触ってるだろお前!」

 

キレためぐ。

 

「一旦落ち着け」

 

「そうだよ、落ち着いてめぐちゃん!」

 

二人で今にも暴れそうになるめぐを慰めに走る。

 

【いや~個人配信とか、したことないんですよねぇ~、今回はぁ、たまたま暇だったから、なんとなくぅ?みたいな~(笑)】

 

「ハキハキ喋れ!配信ナメんなよ!」

 

「めぐちゃん!めぐちゃん!」

 

「これは…想像以上に、きつい…!なにより『私、ほんとタレントですから☆』って態度を表に出して、予防線張りまくっているのが、いちばんきつい!」

 

「なぜ見たし!」

 

めぐの言葉に、るりちゃんが突っ込む。

 

【あ〜。なんで今回配信やろうかって思ったかっていうとお。先輩に、向いてるんじゃない〜?って、何度も何度も言われて〜…スクコネのアプリを入れてみたわけなんですけど〜意味あるんですかね?こんなの(笑)

私、大きなカメラに囲まれるのに慣れてて〜。こんなちっちゃなカメラじゃ、撮られてる気にならないかも~☆】

 

この頃のめぐって本当に、凄い事を言ってんなー

 

「すっげーこと言ってる…こりゃ非公開にするわけだ…」

 

【ま、そりゃ、私に向いてるとは思いますけどね。喋りも上手で、なにより顔面がいいですから、ね〜!】

 

そう言う過去の自分の言葉を聞いて、めぐはそっとこう呟く。

 

「…違うよ」

 

「めぐちゃん」

 

「沙知先輩が、私に向いてるって言ってくれたのは、そういうことじゃない。  

 

「私は確かに、みんなを夢中にさせたくて、タレントにもなった。なったからには、とにかくかわいさを振りまけばいいと思ってたけど…でも、配信をやって初めてわかった。私はみんなの「楽しい」って声を近くで浴びたかったんだ、って。スクールアイドルも同じだよ」

 

めぐは過去の自分に向けてそう言い、続ける。

 

「スクールアイドルは、みんなが楽しいって声をあげてくれる。コールして、私たちの名前を呼んでくれる。レスポンスをリアルタイムでくれる。相思相愛なんだって、ちゃんとわかる。それが本当に楽しかったから。スクールアイドルは新しい、私の『夢』になったんだ」

 

「めぐ…」

 

めぐの言葉に、僕はそう呟く。

 

【それでね〜、こないだ初めてライブをしたんだけど〜】

 

「今は配信ナメてるかもしんないけど。あんただって、すぐに気づくからね。沙知先輩が教えてくれたんだよ。私に、新しい夢を」

 

「うん…めぐちゃんの手、あっついね。パワー、たまってきた?」

 

「うん、かなり!私をこんな風にした責任を、取ってもらわないとね!ズタボロに泣かせてやるからな!覚悟しておけよ!大賀美沙知!

 

めぐはそう言い、席から立った。

 

「よっしゃ!帰るよ!るりちゃん!みく!もうその雑魚に用はない!」

 

過去の自分を雑魚って…

 

「せっかく2時間も貸し切ったのに!?」

 

「今なら書けそうな気がするー!おうりゃりゃー!」

 

めぐはそう言って、この場を後にしてしまった。

 

「相変わらず、破天荒と言うか…なんというか…」

 

「でもほんとは、ルリの知ってるめぐちゃんは、ずっとこっちだっただけどなあ。…あ」

 

その時、めぐの配信に沙知先輩が乱入してきた。

 

【げ、沙知先輩!?】

 

【やー、後輩の初めての配信だからねー? 心配で見に来ちゃった】

 

【ちょっとちょっと、私を誰だと思ってるんですかー?】

 

そのやり取りを見たるりちゃんは言った。

 

「知ってるよ。置いてかれちゃいそうなほどに、全速力で走り続けてる、ルリの大好きで憧れの、藤島慈だよ。沙知先輩。これからは、ルリがめぐちゃんの夢を支えますから、だから、めぐちゃんののことますますかっこよくしてくれて、ありがとうございました!」

 

「るりちゃん」

 

席でグズグズをしていた僕達に、めぐが声を掛けてきた。

 

「るりちゃん!みく!早く!待ってるんだからね!」

 

「やれやれ…わがままお嬢様はどこまで言ってもわがままですねーるりちゃんいこ?」

 

「うん!最強の歌詞、作ろうね!」

 

「当たり前!!」

 

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