翌日。僕達四人はレッスン室に居た。
「…ふぅ」
綴理がダンスをしながら歌を歌う。
ただそれだけなのだが。
「これは…」
「えっ…とりあえず合わせてみただけだよね?」
「そうね、そのはずよ。みんなで集めたものを、合わせただけ」
「うん、ある程度、歌詞に合わせてテンポを取ったけど…」
「みんなすごい」
つづの言う通り、曲。歌詞。ダンス。全てにおいて細かい所はあるにせよマッチしており、完璧に近い状態だった。
「すっごい!私たち最強じゃん!できすぎ!!」
「できすぎじゃないよ。みんなすごい」
「つづが全肯定しか言わなくなった」
「でも、それぞれの持ち寄ったものの完成度が高かったからこそ、できたもの。綴理の言う通り、少しは誇っていいのかもしれないわね…成長の証として、披露できるものだと思うわ」
「やっぱり、私たち成長したよね!」
めぐの言う通り成長を感じられた。
「ええ、ただ…」
「ただ?」
「いえ…私は、花帆と未来に手伝ってもらったから、私ひとりの全力と言うには」
「?それが全力でしょ。ボクもさやにお願いしたよ。めぐは?」
「私も当然るりちゃんを巻き込みました!それも私の力!」
二人は自信満々にそう言い切った。
「…そうね。あなたたちが正しいわ。私も、全力を尽くしたのよ」
「今のボクたちの全力が詰まった曲になった。きっと、さちもすごく喜ぶはずだ。今日はぐっすり寝られる。昨日ちょっと寝付けなかった」
「寝れなかったんかい…」
「ぜひ寝不足は回避してほしいところではあるのだけれど。うーん…」
「まだ、なんか足したいとことかある感じ?」
「それで言うと…気になった点があるというか…」
「ボク、今日も寝れない…?」
僕とこずの言葉に不安そうになるつづ。
「思った事をそのまま言うんだけどさ…この曲ってさ、沙知先輩に寄りすぎてないかなって思って…」
「ええ、私も冷静になってそう思ったの…」
僕とこずの言葉に、めぐは理解したようだったが。
つづは?マークを浮かべていた。
「言われて、みると…先輩に貰った気持ち、優しさ…先輩に与えられたものに、嬉しかったって伝えたい…大好きだった…もしかして、これラブレターみたいになってない!?」
「そう!そうなのよ!」
「ラブレターだったとしても重めの…」
「うわー、なんか恥ずかしくなってきた!」
二人は恥ずかしさを感じる一方で_
「…えっと、ごめん。何がダメなの?すごくいいよ、これ」
「え~~~っとねえ?確かに私たちは120点…いや、沙知先輩に対して言えば150点のものを作れたと思う!それはとてもいいことなの!」
「うん」
「でも私たちが作るべきは、蓮華祭で発表する曲なの。沙知先輩への感謝の気持ち、はもちろんそうなのだけれど…」
「沙知先輩だけに届いて、周り全員がポカーンとしてたら、それはそれで沙知先輩が安心して卒業できないよねって話」
「そう、なんだ。ごめん。よく分からなくて。じゃあ、どうすればいいの?」
つづは沙知先輩に対して僕たち以上に強い気持ちがあるから。正直な事を言って_
「分からん!」
めぐと同じ反応になる訳で…
「…少し、手立てを考えましょうか」
「…さちにしか届かない曲、か」
その後、練習を切り上げて。お互いに各自の教室へと向かい、蓮華祭の準備を進めていった。
それと並行的に花帆ちゃん達に曲を事も相談しつつと言った感じで
-スクールアイドルクラブの部室-
「蓮華祭の準備は、これで大丈夫かしらね」
「はい!準備万端ですね!あとは、その。先輩たちが作っていた曲なんですけど」
「そうね…もういっそ、あれとは別に蓮華祭用の新しい曲を作ろうかしら」
「何度だってお手伝いしますよ!」
こずと花帆ちゃんの二人がそう話している一方で、部屋の隅ではつづとさやかちゃんが話をしていた。
「これだと、どうかな。さちのことは、それなりに好きみたいな」
「た、たぶん、変えない方が良いと思います。せっかく完璧に作れた振り付けですし…」
つづ…それなりに好きって…と思っていると、また違う隅では_
「るりちゃん、こっちきて」
「またー?はいはい、どーぞ」
めぐはるりちゃんに抱き着く。
「ぎゅー。もう一個絞り出さなきゃー」
「がんばれー」
めぐもめぐで疲れてんな…とは言うけど…僕も良い案は浮かんでいないから何とも言えないが…
その時、部室の扉が開いて沙知先輩が現れた。
「やー諸君。元気に……」
「あ、沙知センパイ。こんにちは」
「あ、ああああ。こんちゃー」
「沙知先輩、学校中を幽霊のように回ってるって聞きましたけど、今日はどうしたんです?」
「その噂元を知りたいのは置いておいて…キミたち一年生も、だいぶ部室に馴染んだなーって思ってさ」
「あ一分かった。卒業前でセンチになってるんだ、沙知先輩はカワイイなー」
「そうなの、さち?」
「こほん…去年あれだけ自慢してた大好きな幼馴染に、ぴったりくっついてる慈後輩もなかなか可愛いぞ」
「ま・ね♡ おかげさまで、一緒だよ」
「へいめぐ、ルリなんも知らね一話出てきた」
「知らなくていいよ☆」
すると、さやかちゃんは手を恐る恐る上げて、沙知先輩に聞いた。
「で、今日は部室に来たんです?見納めみたいな感じですか?」
「あはは、流石未来だね。その通りだよ」
沙知先輩がそう言うと、僕達は黙りこんだ。
「そうそんなに時間が経ったんですね…」
「時間と言うのは流れが早い物だ」
僕と沙知先輩がそんな会話をしていると、つづが
「留年すれば?」
「確かに」
どさくさに紛れてとんでもない事を言う二人。
「さらっととんでもないこと言うんじゃないよ」
「でもさち、寂しそう」
「…やれやれ、綴理というやつは相変わらず」
「沙知先輩。蓮華祭は出席されますよね?」
「ああもちろん。蓮ノ空の卒業は、卒業式よりも蓮華祭みたいな所あるからね。キミたちのパフォーマンスにも、心から期待しているよ」
「ええ、任せてください。スクールアイドルクラブとして、これまでの先輩方に恥じないライブをお届けします。私たちが沙知先輩以外の先輩を知らない以上、あなたに判断していただく他ありませんから」
「…そうだね。キミたちは、あたし以外の先輩を知らない…思えば、蓮華祭も未経験だったよねい」
確かに。僕はピアノで出たけど。三人は未経験だった。
今年が初めてか。
「沙知先輩?」
沙知先輩はしばらくの間、黙り込んで。息をゆっくりと吐き言う。
「生徒会長としての仕事は終わったとはいえ、蓮華祭でもあたしのやりたいことはあるんだ!あたしも一曲一緒に踊るとはいえ、キミたちには最高のステージを用意するよ!」
「最高の、ステージ…!?」
「最高とは…期待させていただきますね、沙知先輩!」
「じゃあ、あたしたちも最っ高のライブでお返ししますね!」
「ふっ…ああ、頼んだよ、キミたち!いよし!それじゃあ、また明日とか!」
「もう、見納めは良いんですか?よろしければ部室の鍵をお渡しするので、いつでも――」
「見納めは、キミたちスクールアイドルがいることが大事だったからね。べつに、まだ3月中は校舎中どこにでも生息してるから、また会う時もあるさ!」
「生息」
「あの噂本当だった…」
「それじゃ、私はその噂元の調査をしないとね。ばいばい」
沙知先輩はそう言って、部室を後にした。
部室には何とも言えない空気が流れるのだった。
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