強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ   作:暁刀魚

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十四 やらかし魔法少女の憂鬱

 実は私は、アリスに私が九年前から魔法少女であることを伝えていない。

 機会がなかったというのもあるし、普通ならあり得ないというのは私でもわかるから、という話。

 ウイナが知っているかは……なんとも言えない。

 あの子は勉強こそできないけど地頭はいいほうだし、何より妙に鋭い時がある。

 私が時折抜け出してなにかしている事は知っていただろうし、それを魔法少女と結びつけてもおかしくない。

 

 で、問題は現代の魔法少女に対する説明だ。

 私は九年前にも魔法を使って行動を起こしていて、そして今も同じ様に行動している。

 そして九歳、これは流石に隠しきれないだろう。

 けれども、だからといってそれを信じてもらえるかは別の話だ。

 

「……つまり、現代の魔法少女はそのマギホで連絡を取り合ってるんだ」

「そ、そう。でも、うん、えっと……マ、マギホが出る前もスマホではやり取りしてた……から、現代の魔法少女はだいぶデジタルになって、ます」

 

 んで、まぁ。

 スミカさんも聞かなかったことにしたいのか、一旦話を脇に退けて色々と説明をしてくれた。

 マギホのこと、九年前のアレで魔物が一時的に殲滅されたこと、それによって最近の魔法少女は実戦経験がないこと。

 ……九年前のアレで魔物が一掃された!!!?!!?

 途中、聞き捨てならないことがあったが、努めて冷静に話を聞く。

 幸い、違和感は持たれていないようだ。

 いやでもあれ、そんな……え、そんなに!?

 

「しかしそれにしても、魔法少女って大変だよな。いくら便利な専用スマホがあっても、命の危機も在りうる戦場に何の見返りもなく突入しないと行けないんだから」

「え? お給料……出るよ? 魔物の強さに応じて……バイト代くらいの額だけど」

「マジか。……それ財源どうしてるんだ」

「子供が夢のないこと聞くなぁ……あ、じゃなくて、ごめん。えと、今この世界で放映されてる魔法少女のアニメや、グッズ。そういうのの売上が……ちょっとずつ魔法少女に還元されてる」

 

 ははぁ。

 どうやら、この世界は魔法少女アニメが前世より多い気がしていたが、気のせいじゃないらしい。

 そもそも魔法少女のアニメや漫画を流行らせたのが、元魔法少女とその協力者らしい。

 元々この世界は、都市伝説レベルに魔法少女の存在が囁かれているから、流行は簡単に作れたとか。

 しかし、昔から都市伝説レベルに囁かれてて、今の情報社会でバレてないのはすごいな。

 

「やっぱ記憶処理とかしてるのか?」

「そ、そういうこともしてるけど…………上の人が…………死ぬほど頑張ってる……」

「そっか……」

 

 めちゃくちゃ……大変なんだろうな……

 私が想像している――前世で経験した以上のブラック環境が、きっとそこにある。

 

「それで、えっと」

「……はい」

「……………………………………九年前って?」

「……………………………………ええと」

 

 どうしよう。

 ……そうだ!

 

「ええと、その……なんか、私さ……赤ん坊の頃に覚醒したみたいなんだよ、魔法少女」

「いや、それは……でもその魔力量は確かにそういうイレギュラーがないと……」

 

 とりあえず私は、自分がTS転生者であるという事実だけ隠して、なんとかそれっぽく説明を試みることにした。

 何故かわからないけど、薄ぼんやりとした意識の中で、自分が魔法少女になったことと魔法を使ったことは覚えている……みたいな。

 いや、これでごまかせるのか? まぁ転生なんてよっぽど突飛な思考を重ねないとたどり着けないだろうし……いいんだろう、多分。

 

「……な、なるほど、それなら納得できる……かも」

「お、おお」

 

 ほら!

 そうやって、やっぱり私は間違ってないと顔を明るくさせた直後――

 

「そうでもないと……あのクソエイムは説明つかないし……」

「うぐっ」

「あんな無闇矢鱈と無差別な魔法爆撃もありえないし……」

「ひぐっ」

「魔力が飽和しすぎて魔法少女が中で活動できないなんてこと、然う然う起こらないし……」

「えぐっ」

「た、確かにそれなら全部納得できる! あ、赤ん坊の頃から魔法少女なんて、す、すごいね……コトちゃん! ……コトちゃん?」

 

 ――スミカさんの無慈悲な言葉に、私は打ちのめされるのだった。

 事実だけどさ、何も間違ってないけどさ! クソエイムは未だに改善してないんだよ!

 突き刺さった針によって、その場でうずくまってスミカさんに心配された私は、なんとか起き上がる。

 

「と、まぁだいたいそんな感じ……かな……」

「わ、わかった……えと、マギホの探知計によると……コトちゃん以外にも二人魔法少女がいるんだよね?」

「あ、うん。一人は妹のウイナ。私達が戦闘してるところに出くわしちゃって」

「ああ……たまにあるよね、そういうの。しょうがないよ、コトちゃんまだ九歳だから……うっかりしてて」

 

 ごめんなさい、元成人男性でちゃんと気をつけてるつもりでしたッ!

 まぁなんにしても身内が現場に居合わせて覚醒、っていうのはウイナに限らずそこそこあるみたいだ。

 

「それで、もう一人は……」

「ええと……」

 

 これも、その……言うべきではないのかもしれない。

 でも、でも、だって……一発でバレるじゃん!

 今の魔法少女は行政と結構べったりだから、私がアリスをどこからか見つけてきて保護してることはすぐにバレる。

 どうしたって、隠すことは……無理!

 というわけで、言うしかない。

 

 

「――魔人からもとに戻しました」

「…………おえっ」

 

 

 えずくほど!?

 そのままスミカさんはごほごほと吐き気を抑えるように咳をした。

 私に手でごめんなさいのジェスチャーをしながら顔を背けて、口元を押さえながら。

 

「…………やだ!」

「えっ」

「無理無理ぃ……あ、あたしこんな情報……抱えきれない……!」

「そ、そこまで!?」

 

 赤ん坊の頃から魔法少女でした、って最初にいった時も顔を真っ青にしてたけど、スミカさんはストレス耐性が低いみたいだ。

 いや、私のやったことを真面目に受け止めてくれってのも、難しい話だけど。

 

「やだやだやだ、むりむりむりぃ……」

「そこまでヤバい情報なんですか?」

「い、今まで魔人って、誰一人としてもとに戻せなかったんだよ!? 人類の数万年以上の歴史の中で……誰も!」

「そ、そんなに……」

 

 いやまぁそりゃ、私が戻せたのもおそらくバグによるものだ。

 普通の魔法少女には見えない、瘴気のようなものが見えたからこそ。

 しかし、アリスはここまで狼狽しなかったのに、スミカさんはどうして……?

 

「どうやって戻したの!?」

「え、えっとそれは……なんかできちゃったっていうか……」

「あああああああもうやだあああああ!」

 

 ついにスミカさんは、その場で頭を抱えて丸くなってしまった。

 ごめんなさい、でも流石に瘴気のことは喋れない。

 どう考えてもスミカさんにさらなるストレスを与える情報――元男のTS転生者って部分に繋がりかねないからだ。

 だったらもう、理屈はわからないけどできた、とするしかないだろう。

 

「特に最近は、魔人を魔法少女に戻せないかって研究が盛んで、でもやっぱり無理だって……みんな諦めかけてて……」

 

 なんとなく解った、アリスの時代は魔人を魔法少女に戻そうと考える余裕がなかったからだ。

 あるいは私がやらかしていく中で、まぁそういうこともあると納得したか。

 どちらにしても、現代で長年研究を続けてきて、諦めムードに満ちている現場をみていたスミカさんとは温度感が違うのだろう。

 

「ほ、他に何か隠してることはない!?」

「ええと……話をことの発端に戻すんですけど」

「……あの天眼の魔法陣だよね」

「…………」

「…………」

 

 私たちは、互いに一瞬沈黙した後。

 

 

「――恒久的にあのままだと思うっす」

「ママァアアアアアアア!」

 

 

 私の言葉に、ついにスミカさんは幼児退行を起こしてしまうのだった。




ママアアアアアアアアアア! ママァアアアアアアアアアア!
お気に入り5000、総合評価10000ありがとうママアアアアアアアアアア!!

また、コトのイラストを水霞様よりいただきました!(急に落ち着く)
https://www.pixiv.net/artworks/141834188
素敵なイラスト、ありがとうございます!
ウイナが大変なことになりそう!
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