強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
コトがスミカの部屋に張り付いているちょうどその頃。
アリスはコトとウイナの部屋を訪れていた。
時刻はそろそろ日が回ろうかという頃。
おそらくウイナは眠っている時間だろう、だからダメで元々という気持ちで部屋を訪れたのだ。
コンコンとノックをして、小声でウイナに呼びかける。
「ウイナ様、ひいさまを見ていませんか?」
目的はコトの捜索。
どうも、コトが夜中に出かけたまま戻ってこないようなのだ。
いなくなる前の様子から、おそらく外部の魔法少女を探しに行って、そして見つけたのだろう。
しかしそれにしたって帰ってくるのが遅い。
そうなるとアリスは心配になってくるのだ。
「ひいさまが、また何かをやらかしているかもしれません」
――アリスのコトに対する理解度は日に日に高まっていた。
さて、そんなアリスだが、扉の向こうウイナからの返事がないので、できるだけ音を立てず中を覗こうとする。
まぁウイナが眠っていることはほぼ間違いないのだから、あくまで確認のためだ。
そう思っていたのだが――
「……ウイナ様?」
ウイナは窓から外を眺めて、祈りを捧げていた。
なぜか魔法少女に変身している。
――というかこれは、アレか。
「……祈りを捧げているのですか」
空の魔法陣に、信仰を捧げているのだ。
ウイナはコトを信仰している。
それは狂信の域にまで達しており、端から見ればどこか危うさすら感じられるものだ。
とはいえ、普段の私生活では全くそんな素振りを見せていないから、問題は起きていない。
多分コトは気付いてすらいないだろう、ウイナをちょっと魔法少女オタクな普通の女の子として見ているはず。
そう見てもらえるよう、ウイナが努力してきたとも言う。
「ウイナ様は、どうしてそこまでひいさまのことを信仰するのですか?」
「……」
「ひいさまが他者を惹きつけるカリスマ性があることは解ります。私も、それに魅せられた一人なのですから。でも……ウイナ様がそこまで盲信する理由がわかりかねるのです」
ウイナは、きっとアリスの言葉を聞いていない。
今のウイナにとって、祈りこそが最優先事項なのだから。
だから一方的にそう問いかけただけのアリスの言葉に、しかしウイナは意外な返答をした。
「お姉が生きてくれるだけで――奇跡だからだよ」
「……奇跡、ですか」
ウイナはそう言いながら、魔法少女の変身を解く。
そうすれば魔法陣が見えなくなって、気持ちの切り替えが利くようになるからだろう。
「アリスちゃんも聞いてるよね? お姉が死にかけてたこと」
「……お見通し、ですか」
ウイナは時折とてもするどい。
アリスが心に秘めておこうと思っていた思い出を、簡単に当てて見せる。
そしてその生きていることが奇跡であるという言葉は――確かに信仰を見出すには十分なのかもしれない。
アリスもかつては、神に祈りを捧げた身だ。
その祈りも、一度通じなかったことで今はそこまで神に捧げてはいないが。
「お姉がいなかったら、アタシはどんな人生を送ってたんだろうね?」
「きっと、多くのことはあまり変わらないかとおもいます。ウイナ様の優しい心根は、ウイナ様が自ら築き上げたものですから」
「……ありがとね」
コトはウイナを「典型的な魔法少女の主人公」という。
実際それはアリスも間違っては居ないと思うし、本来ならそういう少女に育っていたのかもしれない。
でも今のウイナは、あまりにもコトの影響が大きすぎる。
とてもではないが、ただ主人公気質なだけの少女では、決してない。
「お姉がいなかったら、あたしもっとダメダメな人生を送ってたと思う。何も無いところで転んで、勉強もできない。友達は……今みたいに作れてたかな」
「そんなことはないと思いますが……」
「でも、どうしても
なんだか、ウイナらしくない弱気な言葉だ。
アリスは結局、ウイナの真意を測りきれない。
理屈としてはわかる、生きていることが奇跡なのは本当にそのとおり。
でも、それだけか?
――アリスは、まだウイナとコトの関係、その根底にあるものを理解できていないのである。
「それに――」
「それに?」
「……んーん、お姉が
そしてウイナは何かをいいかけて、そしてそれをやめた。
アリスは踏み込むべきか迷い――しかし、答えを出す前に。
「……っ! ウイナ様!」
「――また魔物!?」
二人の感覚が、魔物の到来を告げる。
魔法少女は変身していなくても、魔物を察知することが出来るのだ。
そして、二人が慌てて外へ視線を向けた時。
◯
スミカさんが幼児退行してからしばらく。
私は今――
「ママぁ……ママぁ……」
「はーいよしよし」
――スミカさんをあやしています。
どうしてこうなった。
「だぁ……だぁ……」
「よーしよしよしよし」
いや、わかる、わかりますよ。
限界を迎えたスミカさん。
その元凶は、間違いなく私だ。
その責任は取らないといけない。
ただ、結果として家に帰れなくなってしまったのは事実である。
流石にスミカさんをこのままにしておけないし、魔法陣の説明もしてないし。
なんだけど……
「えへへ……まま……まま……!」
「…………スミカさん? ちょっとお聞きしたいんだけど」
「きゃっきゃっ」
「……なんか手つきおかしくない?」
「……きゃっきゃっ」
今の間はなんだよ!
なんか明らかに人の太ももとか狙ってない!?
手つきが怪しいんですけど!?
しかしなんかこの手つき、どこかで覚えがあるような……
「そうだ、寝てる時のウイナの手つきに似てるんだ。いやでもウイナは寝てるし、そんな邪念あるわけないしなぁ」
基本的に私たちは二段ベッドで寝ているが、たまに寝ぼけてウイナが私のベッドに入り込むことがある。
そういう時は、なんか私に抱きついてこんな感じですりすりしてくるんだが。
まさかウイナに限って、そんな邪念があるわけないしな。
仮にあったとしても、私も妹が間近にいる喜びで正気じゃないから気付けないけど。
「まぁ……気のせいか……」
「ふへへ……ぐへへ……」
「気のせいか?」
「きゃっきゃっ」
「…………」
やめておこう、触れるのが怖い。
まぁ何にしても、帰れない理由ってのは他にもあるんだ。
具体的には――
「……ところでスミカさーん、最近この街に出てる、明らかに誰かが人為的に生み出した魔物……心当たりないっすか」
「ばぶぅ」
「ないかぁ」
黒幕の存在。
一体誰が何を狙ってあんなことしてるのか知らないが、間違いなく意図があってそうしていることは事実。
であれば、このまま放っておくわけには行かない。
その点、何かスミカさんに知らないか聞かないといけないんだけど、このままじゃどうにもなぁ。
もっと言えば、今の反応でなんとなく答えが読めた。
邪念のある私へのセクハラとちがって、完全に幼児退行した返事をしたからだ。
多分スミカさんは知らない、そして「ありえない」みたいな反応をする。
これは幼児退行によるストレスが発生する時と同じリアクション。
「……いやなんで私は、人が幼児退行してるギャグみたいな状況から真面目な考察をしてるんだよ……」
まぁ、それは一旦置いておこう。
私がここから帰れない一番の理由は――ここで帰ったら大変なことになるから。
「
虚空に、声を掛ける。
正確に言えば、そこにいる魔物の気配に。
同時に、スミカさんを抱えたまま私は魔法少女に変身し――
「かかってこいってか、上等だ」
私を飲み込む魔物の”魔法”に向けて、そう言い放った。
この流れからかっこいいムーブする女がコトです。