強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
魔物にも、色々と能力を持つものがいる。
最上位の魔物ともなれば、自身の甲羅を飛ばして攻撃するなんて曲芸をするものもいるのだ。
だから、もっと特殊な能力を持つ魔物も居たって不思議じゃない。
というか最上位の魔物の強さは、ほぼその能力によって決まる。
最上位の中でも、能力の有無でその強さに天と地の差が発生することも多々。
と、アリスから以前教えてもらった。
中には、魔物が一種の結界を作ってしまうときもあるという。
その中に閉じ込められたが最後、魔物を倒すまで外には出られない。
言ってしまえば、
あまりにも規格外の存在だ。
加えて、今回の場合魔物はそろりそろりと私たちの背後に忍び寄っていた。
おそらくはあのプテラノドンは陽動だったのだ。
私たちに魔物を退治したと認識させるための。
そのことに私は、遠見を使って探知したためいち早く気付いた。
しかし、どこにいるか視認できない。
そこで私は発想を転換。
向こうの居場所がわからないなら、向こうが狙ってきそうな相手を守るべきだと考えた。
そう、魔力を微細に放つ眼鏡などを所有し、かつ戦闘能力を持たないスミカさんを守るのだ。
結果、その考えは成功して、私はダンジョンに取り込まれた。
おそらく同じくらいのタイミングで、ウイナとアリスも取り込まれることになるだろう。
こっちは最悪私がバカすかレーザー撃ちまくればなんとかなるんだけど、向こうが心配だな。
……んでこういうダンジョンを形成する魔物は、特定の姿をしている事が多いそうな。
それは現実に存在する動植物を元にしていない。
幻想の中に存在する、しかし故に誰もがその強さを認める存在に成るのだ。
――すなわち、ドラゴン。
最強の魔物が、私たちに牙を剥いた。
◯
「……ふん!」
「そい!」
アリスとウイナは、勢いよく壁に攻撃を仕掛けた。
しかし返ってくるのは硬い手応え、ふたりとも近距離型の高スペック魔法少女なのだが、それでもなお壁を破壊することは難しそうだ。
「ど、どうしようアリスちゃん!」
「今は動揺を抑えることが先決です、ウイナ様。おそらくこの迷宮にはひいさまも取り込まれています。まずは合流を目指しましょう」
「ち、違うのアリスちゃん、こ、こいつら……!」
ウイナの言葉に、アリスは視線を周囲へ向ける。
そこには、無数の魔物がいた。
ダンジョンの中には、魔物が自動生成されるものがある。
出てくる魔物は、これまた現実には存在しないファンタジー系のものばかり。
スライム、ゴブリン、それからうにょうにょとする――
「アリスちゃん……こいつらえっちな魔物だよ!」
「ですからウイナ様はそういう情報をどこから手に入れるのですか!?」
――触手、とか。
明らかにファンタジーはファンタジーでも、同人RPGに出てきそうな魔法少女の敵ばかり。
これ大丈夫か、とおませな(ではすまないところまで行ってしまった)ウイナは心配する。
「というか、何をどうやればえっちになるのですか! 子供は大人同士がキスをしてつくるものですよ、ウイナ様!」
「その認識はそれはそれでどうかと思う……」
そしてアリスの知識は年相応だった。
ちなみに、魔物は純粋な魔力のエネルギー体なので、どんな姿でもエッチなことはしない。
悪意や敵意は混じっているため、魔法少女をいたぶって楽しんだりはするが。
「と、とにかくまずはこいつらを片付けましょう」
「う、うん!」
というわけで、気を取り直して二人は魔物に襲いかかる。
硝子の双剣を構えたアリスと、今回は迷宮が狭いことを考慮してか、光のコトを自身に憑依させる選択をしたウイナ。
互いに、手近な魔物へと飛びかかる。
「そりゃ!」
「この程度!」
互いに、一発で魔物を討伐することができた。
相手の強さは、どうやらそこまでではないらしい。
しかしそこからしばらく戦って、アリスとウイナは気付いた。
「こいつら……全然数減ってなくない?」
「……おそらくですが、倒した魔物の魔力は回収され復活するのではないかと」
「それじゃどうやっても勝てないじゃん!」
「核であるこの迷宮の主を倒せば、自ずと迷宮も消えるはずです」
「そういうことなら……さっさと場所を変えないと!」
というわけで、二人は魔物を倒すのは最小限にとどめて、場所を移動することにした。
迷宮の主か、コト。
どちらかを見つければアリスとウイナは勝利条件を満たすことが出来る。
前者を見つけた場合は危険だが、問題ないだろうとアリスは考えていた。
「……ウイナ様は、本当に筋が良いですね」
「そう? ずーっと頭の中で考えてたんだ。こうやって魔法少女として戦う時、どうすればいいかって」
ウイナは戦闘センスが抜群に高い。
魔法少女になってからまだ一週間も経っていないというのに、難なく魔物と渡り合える。
その点で言うと、コトは戦闘センスがそこまでではなかった。
鍛錬を積めば戦闘にも慣れてきたが、最初のうちは自分が弾丸を放つ時すら、目を閉じていたほどだ。
まぁ、目を閉じていてもいなくても、コトのクソエイムは治らないが。
「……こうしてみると、ひいさまの魔法少女としての能力は、魔力以外は突出したものがないのですね」
「お姉、魔法少女向いてないもん」
「ウイナ様が言ってしまうのですね!?」
「事実だしー」
少し意外だった。
基本的にウイナはコトにべったりで、コトの言うことは何でも聞くからだ。
それと信仰心から、そういう言い方をウイナがするのは意外だと思うのも無理はない。
「――アリスちゃんはさ、お姉が魔法少女になったことを喜んだの、見たことある?」
「いえ……普段から魔法少女としての責務は全うしておりますし、その御姿は大変立派かと思いますが……」
「楽しそうとか、嬉しいとか、そういう感じじゃないよね」
――楽しい、嬉しい。
そういう意味ではアリスも、魔法少女を楽しいと思ったことはない。
だけど、魔法少女であることを誇りには思っている。
人々を守れた時に嬉しいと感じることは、たしかにあるのだ。
「お姉はどっちでもないんだよ。楽しそうじゃないけど、つまらないってわけでもない」
「義務感だけでひいさまが動いている、というのはわかる気がします。そこに私情を持ち込んでないといいますか……」
「あたしそういうお姉がさ――ううん、なんでもない」
アリスは、一層ウイナのことがわからなくなった。
この姉妹は、見ているものが姉も妹も違うのだろう――そんな気がして、ならないのだ。
そこから二人は、会話なくダンジョンを突き進む。
そして、ある場所へとたどり着いた。
「広い……ここが主のいる場所かな」
「おそらくは……相手はドラゴンですから、開けた場所でないと戦闘が不利になりますし」
迷宮は、石でできたゴツゴツとしたものだった。
開けた場所も、洞窟系の人の手が入っていない感じの迷宮である。
「お姉見つからないねぇ」
「こちらはかなり動いて、痕跡も遺していたはずです。それでもなおあちらの痕跡が見つからないということは……向こうは動いていないのではないかと」
「んー、なんでだろ」
「……解りかねます」
二人は、慎重に周囲を観察していた。
決して油断はしていない。
慢心も、何も。
ただ一つだけ、彼女たちに落ち度があるとすれば――
「んぐおっ」
相手が速すぎたことか。
「ウイナ様!?」
勢いよく、ウイナが転がった。
吹き飛ばされたのだ。
パリン、と何かが砕ける音がする。
ウイナが纏っていた光のコトが、消えた。
「び、びっくりしたー! ちょっと痛い、けど光のお姉は大ダメージを身代わりしてくれるから……平気!」
返事をしながら、ウイナは光のコトを張り直す。
その間にウイナを強襲した魔物は、今度はアリスを狙っていた。
「……そこかぁ!」
刃が、迫りくる影と交錯する。
完全な不意打ちだったウイナと違い、こちらはギリギリで対応が間に合う。
しかしその間に合わせた刃ごと――アリスもまた、影に吹き飛ばされた。
「ぐっ!」
「アリスちゃん!」
「この、程度……!」
アリスは冷静に、これは正面から受けていたら危なかったな、と判断する。
無論死にはしないが、ダメージ肩代わりが可能なウイナと違って、自分は後に引きずるだろう。
運が良かった。
「こいつが……!」
「迷宮の主です!」
そして、アリスとウイナは二人で見上げる。
そこには、翼竜がいた。
見た目としては、前回のプテラノドンもそう遠くはない。
しかし今回はそれ以上に、凶暴さと獰猛さを増した面構えで、二人は強い威圧感を竜に覚える。
厄介な相手だ。
先日のプテラノドンと同じく、飛翔するタイプの魔物。
まだ狭い屋内だからなんとか戦いにはなるだろうが、あの速さは正直言って対応できるのかアリスですら疑問だ。
加えて、通路からは魔物が押し寄せてきている。
もうまもなく、自分たちがスルーしてきた魔物もここまでやってくるだろう。
そうなれば、逃走すら不可能。
絶望的な状況だ。
――が、そんな絶望的な状況は、突如として壁をぶち破って横薙ぎに放たれたビームによって粉砕された。
当然のごとく、アリスとウイナもそれによって吹き飛ばされる。
しかし、どこの誰がやらかしたのか一発でわかる超絶ビームに、二人の顔はどこか恍惚としていた――
すごい、99%真面目な回だ!