強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
私とウイナは双子の姉妹だ。
顔も似ているし、誰がどう見ても私たちを双子だと思わない人間はいないだろう。
少なくとも、私とウイナだって自分たちは双子だというのを、強いアイデンティティに感じている。
生まれた時からずっと一緒で、きっとこれからも同じ道を歩いていく。
私はウイナのことが世界で一番大事だし、ウイナは私を尊敬してくれている。
理想的な姉妹、良好な関係の双子。
誰にとっても、そう見えるはずだ。
でも、だからこそ――私たちはただ仲の良い双子というわけでもないのだと、私とウイナはよく知っている。
「――ほ、本当に全部……ふっとばしてる……」
「まぁあんだけチャージしたからなぁ」
私たちの視界は、それはもう開けていた。
それまであった壁という壁はどこにもなく、天井すらもどこかへ消し飛んでいる。
更地となったダンジョンは、それはもうダンジョンではなく世紀末の荒れ地を思い出すような有り様だ。
そして天井は、ぐるぐるとなんとも言えない異様な雰囲気の光景。
異界化した結界の中、と言われるとまさにそんな感じだ。
「しかし……天井を吹き飛ばすとこうなるんだな、完全に異界化してる」
「あ、あたしも初めてみました……っていうか、そもそも異界に飲み込まれるのも、初めて……」
「まぁ危険な分、こういうことができる魔物の数も少ないからなぁ。スミカさんのことは、絶対守るから安心して」
「うう……子供に言われて、なさけない」
私とスミカさんは、同じ様に異界へ巻き込まれていた。
元魔法少女だった頃の経験からか、異界に飲み込まれた瞬間スミカさんは正気に戻り、色々と周囲の分析をしてくれている。
で、出した結論はこうだ。
あまりに適当すぎるその結論は、しかし妥当といえば妥当な話だ。
私はエイムがクソ、この狭い迷宮内で無数に魔物が居ても命中率が6割程度にしかならない。
無駄打ちもいいところだ。
だったらいっそ、誰も避けれない規模と威力でレーザーをぶっ放せばいい。
そこで考えたのがチャージだ。
レーザー一発一発を何重にも重ねて、それをまとめてぶっ放す。
一発当たったらそのまま消えてしまう仕様なら、何発も連射すればいいのだ。
魔物は倒しても倒しても復活する仕様のようだから、前みたいに連射ではなく一撃必殺を狙ってみた。
ちなみにチャージ中に迫ってくる魔物にも適時レーザーで対処したぞ、ほぼゼロ距離だから流石に外さん(命中率八割)。
結果は――大成功である。
「あ、あっちにウイナとアリスが倒れてる。ふたりとも無事でよかった」
「……多分、倒れてる原因はコトちゃんだと、思うんだけど」
「そこはまぁ……うん」
ふたりとも、私がこういう事するって解ってるからね。
……後で思いっきり謝ろう、はい。
「ボスも倒せてるか?」
「……どう、だろう」
今のところ、竜――とダンジョンに取り込まれたときの気配とシルエットからそう判断した――の姿はどこにも見えない。
しかし、異界化が解除されていない以上、まだどこかに竜が生きている可能性もあるだろう。
気をつけながら、私はウイナとアリスの方に視線を向けた。
「まずはウイナとアリスに合流しなきゃな」
「……五百年前の魔法少女、ごくり」
私は早速、スミカさんを抱えながらウイナとアリスの前に滑り込む。
二人は地面に顔をつっぷしたまま、その場でぺたーんと倒れていた。
「ふたりともごめん! 大丈夫か!?」
「…………お姉」
「だ、大丈夫ならよかった」
「…………後でケツバット」
「ごめんなさい」
怖い。
「……とりあえず、色々説明しなきゃいけないことはあるんだけど、この人を守ってもらえるか?」
「あ、えと、久藤スミカ……です、よろしく」
「それは構わないのですが……」
「うん」
「ちょっと今、顔を見せられない状態ですので、少し待っていただけると……」
はい。
「ウイナは立てるだろ、ふっとばしたところ悪いが、頼めるか?」
「…………」
「ウイナ?」
「……ケツバットは勘弁してあげる」
「ウイナ!?」
何、ウイナも起き上がれないの!?
しかも罰が軽減される感じなの!?
ちょっとウイナ!? お姉ちゃん知らないんだけど!?
「な、なんだよウイナ!? ウイナまでアリスみたいに目覚めちゃったのか!? それはごめん! ほんとごめーん!!」
「……だ、大丈夫だよ、お姉。私、今のでは目覚めてないから……」
「そっか……よかった……」
私、てっきりウイナまでそっちの道に引きずり込んじゃったかと、めちゃくちゃ焦ったぞ。
「あの……”今のでは”……って」
「しっ、今は触れないでおきましょう」
後ろでアリスとスミカさんがなにか言っているが、私には聞こえてこない。
とにかく、ふたりとも無事を確認できた、竜の姿は相変わらずどこにも見えない。
倒された……のか? そんな感じもしないけど。
ああいや、多分まだ”いる”な。
畜生面倒なところに隠れやがって、そこに隠れたらチャージしてブッパができん。
「…………お姉」
「どうした?」
「ちょっとだけ……いい?」
「いいけど……その格好のまま話するのか?」
そのタイミングで、突っ伏したままのウイナに声をかけられる。
ウイナは私の言葉を受けて、背を向けたまま起き上がって座り込む。
「……お姉ってさ、全然魔法少女として活動してて、楽しそうじゃないよね」
「そこはまぁ、人それぞれだろ。危険なことなんだし、楽しめないヤツもいるのは当然だろ?」
いいながら、私はスミカさんに視線を向ける。
スミカさんは明らかに、魔法少女であることを嫌がりそうなタイプだ。
仕方なく、お金がもらえるからやっている、なんて。
そういう、ありふれた理由で魔法少女を義務的に続けているタイプ。
「――でも、お姉は嫌がりもしないじゃん」
「……ああ」
そして、言われてみると確かに。
私は魔法少女を楽しいと思ったことはないけど、面倒だとも思っていない。
それが私に出来ることだから、という責任感だけでやっている。
「お姉がさ、小さい頃に病気でみんなに迷惑かけて、その恩返しをしたいから頑張ってるのは、知ってるよ」
「そうだな」
「私、そういうお姉をすっごいと思う。尊敬してる、憧れてる。――でも」
ウイナの言葉は、どこか絞り出すようだった。
そして――
「なんだか、そんなお姉は――神様みたいで……怖い」
畏怖しているかのよう、だった。
神様みたい、か。
私は確かに人とは違う経験をしている。
新しい生を授かるなんて、まるで神に与えられたかのようだ。
自分と神を同一視するつもりなんてさらさらないけど、人とは少しものの見方が違ってくるかもしれない。
それをウイナは、多分誰よりも間近で感じているはずだ。
「うーん、なんていうんだろうな。別に何の感情もなく、魔法少女をしているわけじゃないんだよ」
「……そうなの?」
「基本的に、私はアリスと近いスタンスでやってるつもりだよ。上手く行ったら達成感があるし」
決して、機械みたいに何の感情もなく、すべてをあるがままに処理してるわけじゃないぞ?
「ウイナがいいたいのは、私に責任感だけで無理してほしくないって話だよな」
「……うん」
「でも私は無理なんてしてないぞ? 無理してるって言われたらちゃんと改善するし……まぁ、結果やらかしたりするけど」
恒久的に空へ浮かぶ事となった魔法陣とか。
まぁ……色々。
「私とウイナは双子で、ずっと一緒で、すごい仲良しだった。だからどうしても、ウイナには私が見えちゃうんだろうな」
「……」
「そのせいで心配かけたり、迷惑かけるのは本当にごめんって思うし、その分ウイナが望むなら私は何でもするつもりだ」
「……そういうとこだよ」
「でも――」
私はちらりと振り返って、ウイナに笑みを向ける。
「ウイナだって知らない私っていうのも、あるんだぞ? それを今から――ちょっとだけ見せるよ」
そういい終えると同時。
痺れを切らした翼竜が地面をぶち破って現れる。
私がチャージをしていると、こいつはダンジョンを通して知っていただろう。
だから、発射のタイミングで地面に隠れたんだ。
地面を消し飛ばすと、あのよくわからない空間にウイナやアリスが飲み込まれてしまう。
だから私が地面を吹き飛ばさないと、こいつは解っていやがった。
「よおし、いいところに来たな! 妹の前でかっこいいところ見せるための踏み台として、少しばかり役立ってもらうぞ!」
だが、問題ない。
だって私はこいつに負けることなんてないのだから。
なんでって?
――まぁ、お姉ちゃんだからだよ。
どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!