強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
――安城ウイナは知っている。
安城コトが、本当は生まれてくることができない命だったことを。
生きてることが奇跡。
ウイナ自身もよくそんな言葉をコトに使う。
幼い頃のコトを知っていれば、誰もがそう思うはずだ。
だからこそ、コトは普段からしっかりしようとしている。
命を与えてくれたのは周りの人たちなのだから、それに報いるために。
だからこそ、周りの人達は思う。
無理はしなくていいのだ、と。
しかしコトはそれに聞く耳持たず、いつだって無茶をしているのだ。
仕方のないことだとは、思う。
そういう経験をしてきたのだから。
そしてそれを危ういと思うのは、当然のことだろう。
だが、だからこそウイナは思う。
――お姉は、こわい。
どうして? ――特別そのものだから。
コトはウイナの理想そのものだ。
誰かのために行動し、それを苦にも思わない。
それでいて隙があって危うくて、どこか守りたいと思ってしまう。
そんな理想の――
姉が教えてくれた、魔法を使って人々を守る正義の味方。
どんな困難も諦めず、優しさと正義で誰かを救う。
そんな魔法少女は、まさしくコトのようだった。
テレビの向こうで戦う少女達を見せられた時、ウイナは思ったのだ。
「――まるでお姉みたいで、すごい」
そして現実で、ウイナの前にコトは魔法少女として現れた。
だから、こわい。
コトはウイナの理想そのものなのだ。
まっすぐで、純粋で、すべてをまるっと救ってしまう。
だっていうのにコト自身はおっちょこちょいで、見ていて危うい。
気がつけば、魔法のようにすべてを解決してしまう神様のような存在。
そんな理想の具現のような存在だから、ウイナはコトを信仰している。
ウイナはコトを畏れている。
あまりにも理想的すぎて、こわい。
だからどうしても思ってしまう、――これは夢なんじゃないかって。
本当のウイナは一人っ子で、姉は幼い頃に亡くなっていて、こんな幸せで夢みたいな生活は送っちゃいけないんじゃないかって。
いつも一緒に寝ている姉が――消えてしまうのが、こわい。
だからウイナは、ずっと
どうか消えないで、これからもずっと、側にいて――と。
◯
飛び上がった竜はちらりと私たち全体を見た後、こちらに視線を向けた。
――竜がすっとんでくる!
「速いだけが取り柄のくせに!」
凄まじい高速ですっ飛んでくる竜。
それに対し私は、四方へレーザーをぶっぱなした。
この速度で突っ込んでくるのだ、置きレーザーでも十分に当たるはず。
だから向こうは、おっかなくて直線的に突っ込むことはできないだろう。
何度も直角に軌道を変えながら、レーザーの隙間を見つけてそこから突っ込んでくるのだ。
「んなろ!」
私はそれを、正面から受け止める。
すごい速度だったが、隙間をくぐり抜けるために速度が落ちているのでなんてことはない。
後、意図的に大きめな隙間を作っておいたところから突っ込んできてくれたのも、ありがたかった。
こういう戦闘センスは私にはないんだけど、上手くいくこともある。
そして、取っ組み合い。
魔力を高めれば、押し返せそうだけど――
『キィイイイイ!』
「おま、ビームは反則だろ!」
口がカパッと開いて、中から光が漏れた。
その瞬間――
「お姉!」
「ひいさま!」
ウイナとアリスが再起動して、攻撃を加える。
左右からそれぞれ、ケリと剣が突き刺さった。
『キイイ!』
途端、呻きながら翼竜は後方へ飛び退く。
「ふたりとも、助かった!」
「この人を守ればいいんだよね、任せて!」
「騎士と双剣の名にかけて、ここは必ず守ってみせます!」
「た、頼もしい! ……騎士と双剣?」
二人の言葉を受けて、私は翼竜に向き直る。
さてと、こっからはいい感じにあの翼竜を何とかするとしますか。
あまり時間はかけられない、魔物が復活してきそうだしな。
「ここは街の中じゃないからな、魔力の充満を気にしすぎる必要がない。おかげでようやく、私も全力で戦えそうだ」
しかも、洞窟をふっとばして外まで空間が広がったから、かなり広い。
アレだけチャージしてぶっ放しても、まだ余裕があるくらいには。
というわけで、私は無数のレーザーを同時に出現させながら、翼竜へと飛びかかった。
「待てよ!」
追いかけっこは、圧倒的に向こうのほうが速い。
しかし、こちらのレーザーは一発で向こうを消し飛ばす威力。
しかも一度に何発も連打できるから、露骨に翼竜は動きにくそうだ。
とはいえ、向こうには他にも攻撃手段があることは解っている。
翼竜の口が、大きく開いた。
途端――
「めんどくさっ!」
私はひょいっとそれを避けるが、問題はその後だ。
ちょうど、熱線が穿たれた地面は綺麗さっぱり消えてしまっていた。
なんだこいつ、地上で戦ってる連中に対する嫌がらせに特化しすぎだろ!
「お姉!」
「ウイナ、持ちこたえられそうか!?」
「物理的に無理、あんなの何度も連発されたらそのうち奈落に真っ逆さまだよ!」
見れば、スミカさんはウイナが抱えて、アリスが剣を構えてウイナとスミカさんを守る構えを見せている。
この状況から、魔物が更に復活してくる可能性もあるからやっかいだよな。
何にしても、あんまり長くは戦っていられなさそうだ。
「まぁでも……お前自体はなんとかなりそうだけど……な!」
速度を上げて、翼竜を追いかける。
同時に無数のレーザーを撒き散らしながら、翼竜を狙うのだ。
それに対し、翼竜はカクカクと器用に直角で移動しながら、レーザーを掻い潜っていく。
その最中に熱線を放ち、ウイナ達の足場を狙ってくる。
というか明らかウイナとアリスを狙ってるぞあいつ! 性格悪いな!
「逃がすかよ……!」
レーザーが、網のように翼竜を狙う。
すると翼竜はその場でピタリと静止して、レーザーをすり抜けた。
そして発射のタイミングで少しだけ効果が終わるのが早いレーザーに視線を向けると、それが効果を終えた瞬間、その隙間から脱出。
更に熱線を放ってくる。
けど、位置が悪いな。
「通すかよ!」
私は意図的に熱線へ自身をぶつける。
魔力で自身を強化して、その攻撃を正面から防いだ。
「無茶しないで、お姉!」
「あいにくと、無茶じゃないんだな!」
翼竜の熱線に使われる魔力量を、私は把握している。
それ以上の魔力で自身を強化すれば、ダメージになることはない。
どうやって? ――空を見上げれば、答えはわかるだろう。
――天眼の魔法陣が浮かんでいるのだ。
『キイイイイッ!』
閃光が走る。
途端、翼竜の体が錐揉み回転した。
熱線も周囲に散って、霧散する。
何が起きたか、空から天眼の魔法陣による狙撃を行ったのだ。
狙いは当然オートでつけたぞ。
ただ、決着には至らなかった。
翼竜が発射されてから回避したのだ。
結果は翼の一部を貫通するにとどまっている。
まぁ結果として、翼が二割くらい消し飛んでるんだけど。
もう少し身体側に当たってたら、決着ついてたな。
流石にこれで決着はつかないと思ってたけどさ。
『キイ! キイイ!』
ふらふらと飛行しながら、翼竜がこちらに鋭い視線を向ける。
明らか怒ってやがるな。
何度も叫びながら、その体はだんだんと赤みを帯びていく。
あの赤いやつ……魔力だ。
「ひいさま、お気をつけください!」
「こっから発狂モードだろ、解ってるって!」
アリスの警告が飛んだ後、先程以上の速度で翼竜が突っ込んでくる。
更に、翼竜の周囲には無数の火の玉が浮かんでいた。
こいつ熱線を口以外からも放つつもりだ!
『キイイイ!』
「流石にこれを連射させるわけにはいかないな!」
私は迫ってくる火の玉と翼竜を前に――動きを止める。
「お姉!?」
ウイナが叫んだ。
向こうは更に速いのに、動きを止めたら格好の的だろう。
たしかにそれはそのとおり、けど、私はこっちの方がやりやすいのだ。
『キイイイイイ!』
そうして迫る翼竜と火の玉に対し、頭上から無数のレーザーが降り注いだ。
絶え間なく連発されるそれが、勢いよく火の玉を撃ち落としていく。
だが、速度を早めた翼竜の突撃は健在である。
レーザーの合間をくぐり抜けて、一気にこちらへ迫っていた。
もう、避ける余裕はどこにもない!
――――つまり向こうも、私はこれを避けれないと判断するのだ。
「それが狙いだよ!」
だから、正面から受け止めた。
『ギッ! ギキィイイイイ!』
「よーやっと捕まったな!」
暴れる翼竜、私の体も四方八方へと振り回される。
しかし手を離すことはない。
ここで離したら、今までのやり取りが無駄になる。
「ウイナ!」
「な、なに!? っていうか大丈夫なの、お姉!」
「問題ない! ただ一つだけ言っておくことがあってさ!」
その間も、火の玉とレーザーはあちこちで打ち合いを続けている。
こちらのレーザーを躱した火の玉が地面をエグリ、消し飛ばす。
ウイナ達も、そんな中火の玉を弾いたりして、スミカさんを守りながら移動していた。
そんなウイナ達に、言わなきゃいけないこと。
ウイナが知らない私のこと。
今この瞬間の私はそれを端的に伝えることが出来る。
すなわち――
「今、私ふつーーーーに、
ぶんぶんと振り回されるそれは、さながら絶叫マシーンのようだ。
重力が上から下に行き来するたびに、ちょっと心臓がきゅっとする。
いやほんと、命を賭けた戦いってのは、怖いね!
「こないだのプテラノドンが衝突した時も、熱線を受け止めた時も全然そんな素振りなかったじゃん!」
「いや、だって妹の前で怖がったりできないじゃん! こちとらお姉ちゃんだぞ!?」
「見栄っ張り! それは知ってる! お姉絶対に無理って言わないもんね!」
「それでも怖いものは怖いんだ! だから――」
私は両手に力を込める。
その手のひらは、少しずつ光が漏れた。
翼竜の動きが更に激しくなる。
この距離じゃ、どうやっても回避ができないからだ。
そして――
「――もっと親しみを持ってくれる方が嬉しいよ、私は!」
私のレーザーが、勢いよく翼竜を貫いた。
一撃必殺、直撃させてしまえばこんなものだ。
そして態勢を立て直し、ウイナに向けて振り返る。
「どうだ、びっくりしたか? 実は怖がりなんだよ、お姉ちゃん」
「…………」
ウイナは、そんな私を見上げている。
その表情はどこか――
「……なぁに、それ」
嬉しそうに、笑っていた。
「あざとすぎだよ、ますます理想の魔法少女みたいじゃん」
「なんだよ、そりゃ」
「……でも、知れてよかった。お姉が理想的なだけのお姉じゃないって、お姉の口から聞けて嬉しかった」
「それは――」
「お姉……お姉はこれからも、ずっとアタシのお姉でいてくれる?」
私はゆっくりとウイナの前に降り立つ。
世界は少しずつ”溶けていく”かのように変化していく。
元の世界に戻りつつあるのだろう。
そして、同じ目線で向かい合うウイナに、私は――
「――当り前だよ、お姉ちゃんだからな」
同じように、笑顔で返した。
なにそれ、あざとすぎだよ、が個人的に好きです。