強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
「……というわけで、これが、魔法少女専用スマホ……マギホ」
「ほー」
「お姉! お姉! スマホだよスマホ! やったー!」
「ええと……これが……こうで……? ピコピコは難しくてわかりません……!」
戦いが終わった後、私たちはいつもの公園でスミカさんから現代魔法少女に対するレクチャーを受けていた。
ウイナは自分で持てるスマホに大喜びだ。
家で使ってるのは、家の中でしか使えないからな。
アリスは電子機器の操作で苦戦している。
スマホやテレビの操作は、未だウイナや私任せなのだ。
そのうち慣れていこう。
「予備のマギホそこそこ持ってきててよかった……あ、い、一応言っておくけど……年齢に応じてフィルターがかかってるから……ね?」
「えっちな動画見れないの!?」
「何見る気だったの!?」
いやそれはほんとに何見る気だったんだよ。
すっかりいつも通りのウイナに苦笑しながら、私はスミカさんに奢ってもらったジュースを一口。
いや、3人分も奢ってもらってほんとすんません。
私だけでも断ろうと思ったんだけど、私が断ったら他二人も断わることが目に見えているのでできなかった。
「ととと、ところでえっと、あ、アリスちゃんって……き、騎士と双剣の魔法少女……なんだよね?」
「……? はい、そうですが」
「本物の騎士と双剣の魔法少女!?」
んで、話が終わるとスミカさんはアリスに声をかけに行った。
そういえばさっき、アリスのことを少し気にしているようだったな。
「アリスってそんなに有名なのか?」
「ゆ、有名なんてものじゃないよ! 騎士と双剣の魔法少女と予言と運命の魔法少女って言えば五百年前の伝説的な魔法少女コンビなんだから!」
「……そうですか」
「二つ名被りとかじゃないんだな」
「……騎士と双剣の魔法少女は、確かに被ることもあるでしょうが、五百年前で
二つ名は、通称を二つつけていてもたまに被る。
でも魔法少女は基本十年で引退なので、現役に被りがなければ問題ないそうだ。
「魔法少女コンビかぁ、あたしもお姉とそういう感じにコンビで有名になれるかな!」
「ウイナはまず、二つ名をもらうところからじゃないか?」
「あー、それ! 私も早く二つ名欲しい!」
「私はもう貰ってるけどな。運命と天眼の魔法少女」
「ずるいずるい! お姉そういうところばっかり手が早いんだから!」
ずるい。
その言葉が以前よりすんなり口からこぼれていることに、ウイナは気付いているだろうか。
「にしても、アリスはすごい魔法少女なんだな。五百年前なのに歴史に名が残るなんて」
「……あの子と組んでいたから、だとは思いますけどね」
「え、えと……でも、アリスちゃんも十分伝説になってるよ……? 特に最後、ダンジョンに一人で突入して命と引換えに主を倒したんだから」
「まぁ……結果として魔力暴走で自分が魔人になってしまいましたから、本末転倒ではあるのですが」
ふうむ、なるほど。
アリスはさっきのドラゴンみたいなやつと相打ちになって魔人になったのか。
あのドラゴン、私でも倒すのに一工夫必要なくらい強かった。
それを相打ちとはいえ一人で倒すってのも……とんでもない話だよな。
ちなみに、魔力暴走ってのは魔力を意図的に過剰消費する技術のこと。
一時的に全体のスペックを極限まで向上させるものの、一度発動すると魔力が枯渇するまで止まれなくなる。
さらにはこの状態で魔力が枯渇すると、通常の数倍以上の確率で魔人になる危険性が在るとか何とか。
まぁ、よくあるリスクあり強化ってやつだな。
「ん、一人? その予言の魔法少女はどうしたんだ?」
「ああ、それは――」
「えと……」
アリスとスミカさんが、ふたりとも言いにくそうにする。
ああ、なるほど、なんとなく読めてしまった。
悪いことを聞いてしまったな。
そんな風に考えたのだが、返ってきた答えは予想外のものだった。
「――あの子は、
「予言の魔法少女は――
――――ん?
「食い違ってるな?」
「え?」
「……まってください?」
三者三様、顔を見合わせる。
ウイナが交ざりたそうにこっちを見てきた。
私の膝の上にのせたら暴れた。
「よ、予言と運命の魔法少女は魔物との戦いの中で命を落としたと、確かに記録ではそうなってる……よ!?」
「――いえ、確かに魔人となったあの子を、私はこの目で見ました」
まさかアリスが嘘をついているということはないだろう。
とすると、間違っているのはスミカさんの方……というわけでもないはずだ。
多分、スミカさん”は”間違っていない。
「……そもそも、その予言と運命の魔法少女ってのはどういうやつなんだ? 私と二つ名が半分被ってるけど」
「私の親友で、共に魔法少女として多くの魔物を打倒してきました。相棒、と言い換えてもいいかもしれません」
「……その特徴は、なんといっても魔法。予言と運命の魔法少女には――未来を予知する力があった」
なるほど、それで予言。
どうも予言の魔法少女が予知した未来は、必ず的中するという。
現役時代からしてそうであり、現役時代に遺した未来の予言も、その尽くが的中してきたそうだ。
「北方大迷宮の出現、二大魔法少女の派閥争い、東方大崩落の示唆、――
「そりゃあ……とんでもないな」
特に最後。
歴史を調べたら、ないなぁとは思ってたけど。
まじかよ、とんでもない話だ。
「そんな予言の魔法少女が最後に遺した予言――そこに登場するのが、運命の魔法少女」
曰く。
「星が空に満ちる時、運命の魔法少女が誕生する。運命の魔法少女は、魔法を終焉に導くことになるだろう」
――なるほど、それで私が運命の魔法少女なわけか。
……待てよ?
「えーと……」
「……待ってください。その予言は、あの子が魔人になる時に遺した予言のはずです。他の予言は別の魔法少女にも話していますが、アレを聞いたのは私だけのはず! あの子が魔人になったことが隠蔽されているなら、なおのこと誰も知らないのが自然です!」
おっと、アリスの方が先だな。
ええとようするに……アリスは確かにその運命の魔法少女に関する予言を聞いている。
しかし、聞いたアリスはその直後にダンジョンで魔物と相打ちになったらしい。
すると本来、誰もこの予言は知らないはず。
でも知っているということは――誰かが広めたってことだ。
「……じゃあ、誰が?」
「一人だけ、心当たりがあります」
「それは……?」
アリスに、私たちの視線が一斉に向けられる。
「……そもそも、違和感はあったのです。今回の意図を持った魔物の襲撃。あまりにも最初からこちらの対策が厳重でした」
「ああまぁ、そうだなぁ」
「加えて、魔物を操作できるのは一般的に
ええっと、それってつまり。
私も、なんとなく一人該当しそうなやつに心当たりが生まれた。
「――予言の魔法少女”ミシェル”は、理性を保ったまま魔人に成り果てました」
黒幕は、どうやらはっきりしたようだ。
なんとなくだが、アリスが最初に私を襲撃したのも無関係ではないのだろう。
おそらく、黒幕にとって最も信頼の置ける戦力だったから、最初にアリスが投入されたのではないか。
結果は、想定をがっつりひっくり返された感じだろうけど。
――というか、アレだ。
思ったんだけど……というか、さっき言おうとして言えなかったんだけど――
この状況、全部私のせいで黒幕の意図したところからまるっきりそれてないか?
まず、
だって本来なら死んでるはずだったんだから。
でも、赤ん坊の時に魔法少女になったことと、予言と私の魔法が合致してしまったことで、私が運命の魔法少女だと誤認された。
多分本命は――ウイナの方だ。
「……どうしたの? お姉」
「い、いや……なんでもない」
「っていうか、そろそろ離してよー! 暑苦しいよー!」
「えー、もう少しだけこのまま……」
そして当然、アリスがもとに戻ってしまうことも、そこから自分の正体が露呈することも全て、想定外のはず。
えーと、あーっと……でもそれを指摘すると私が
……………………
…………
……
よし。
黙っておこう!
私はそう、強く心に決めるのだった。
はい。