強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
有史以来、この世界には魔法少女と魔物という存在が自然発生的に誕生し、両者は互いに争って来た。
この世界の根底たるガイアや集合無意識がなんたらという理屈によって、それらは誕生する。
ざっくりいうと人の悪意や負の感情から誕生するのが魔物で、人の希望や願いによって生まれるのが魔法少女だ。
魔法少女と魔物は、人類が文明を築いた時から誕生した存在で、人類が発展する裏で魔法少女は魔物という脅威から人類を守って来たのである。
しかし魔法少女も決して万能というわけではない、まず魔法少女になれるのは十代前後の少女だけ。
しかもある程度歳をとると魔法少女としての力の根幹、魔力を失ってしまう。
さらにこれは一部の魔法少女の間でしか知られていないが、魔法少女が精神を疲弊させ魔物に取り込まれると、魔女という更なる脅威になってしまうのだ。
そんな世界に、ある魔法少女の遺した一つの予言が存在する。
「星が空に満ちる時、運命の魔法少女が誕生する。運命の魔法少女は、魔法を終焉に導くことになるだろう」
そして、その予言が指し示す時が、まさに今。
ちょうど安城コトとウイナ姉妹が誕生する今年である。
なお、魔法少女たちは誤解しているが、この誕生とはこの世に生を受けるという意味であって、魔法少女として覚醒するという意味ではない。
原因はこの予言を遺した魔法少女が
結論だけ言えば、この年、運命の魔法少女の誕生は確認されないはずだった。
予言は嘘だったのか? そんな疑念とともに、何事もなく一年は過ぎていくはずだったのだ。
どっかのバグがいなければ。
ある時、とある地方都市の夜空に魔法陣が展開された。
巨大な――あまりにも巨大な瞳のような模様の魔法陣。
十万人近い人口を誇るそこそこ大きな規模の地方都市を、
言うなれば――天眼の魔法陣。
こんなものを展開できる人間が、果たしてこの世にいるのか?
そんな疑問を、この世すべての魔法少女が、コトただ一人を除いて抱いた魔法陣。
使用者であるコト本人だけが認識できないこの魔法陣は、街全体を俯瞰している。
最初に気付いたのは、この街で活動しているとある魔法少女だった。
日課のパトロールをしている最中、空に突然魔法陣が現れたのである。
何事かと思っていると、直後――街全体を閃光が覆った。
気がつけば、その魔法少女は吹き飛ばされていた。
光自体は、どうやら魔物だけを攻撃する魔法のようだ。
しかしあまりにも膨大すぎる魔力に、魔法少女は耐えきれなかったのである。
結果、肉体的にはダメージこそないものの、一瞬にして地方都市の外へ押し出されてしまった。
混乱する魔法少女が、その後見た光景は――
一言で言えば、
天眼の魔法陣から断続的に降り注ぐ光、光、光。
一筋の閃光が、地面に断続的に着弾していくのだ。
それら一つ一つが、魔法少女の魔力としてはアリえないほどに強烈で、魔物であればこれを耐えられる魔物はいないだろう。
圧倒的なまでの暴力が、そこにはあった。
何より恐ろしいのは、これほどの暴力が
なにせコトが狙う人の悪意のような黒いモヤは、コトにしか見えていないのだから。
とはいえ魔法少女の魔法は、原則的に魔法少女が受けても吹き飛ぶだけでダメージはない、だからこれをやっているのは魔法少女だ。
だから悪意はないのだろう。
どれほど威力が馬鹿げていても、余波だけで魔法少女が街一つ分くらい吹っ飛ぶ破壊力だとしても。
とはいえ、遠くから見ていて一つ思うことは――
エイム力、クソ――――
魔法陣から放たれる光は”何か”を狙っている、それは状況を目撃した魔法少女にも理解できた。
しかしどう考えても、一発目を外してから焦って二発目、三発目を連打している。
そりゃ空からぶっ放してるから多少エイムが甘くなるのは解るんですけど、明らかに途中から精度甘くなってますよね?
その魔法少女はオタクで、ヘタなりに陣地塗り系TPSも触ったことが在るから解る。
最初はエイムがよくても、集中力が切れてだんだんエイムが悪くなってくるのだ。
この魔法少女の魔法からは、それと同じものが感じられた。
それはあまりにも膨大すぎる魔法と魔力、一体どんな魔法少女ならこんなことができるのか。
観察していた魔法少女はピンと来た。
運命の魔法少女だ。
ぶっちゃけ詳しくは知らないから、運命の魔法少女がどんな魔法を使うのかとかさっぱりだけど。
そう判断した魔法少女は即座に知り合いの魔法少女へそれを連絡した。
世界を揺るがす騒動の引き金を、自分が引いたとも気付かずに。
それは、思い込みだった。
後から振り返ってみれば、この思い込みが事態をややこしくする要因の一つになったのだろう。
なにせこれが運命の魔法少女だ、とは誰も確信が持てないのである。
だというのに、最初の一人がこれは運命の魔法少女であると断定したことで、多くの魔法少女はそれを信じた。
中には予言を研究していて、疑問を呈する魔法少女もいたけれど、大抵の魔法少女は日々を気ままに過ごす十代の少女である。
魔法少女の世論は、この天眼の魔法陣の魔法少女こそ、運命の魔法少女であるという方向で固まっていく。
予言に「星が空に満ちる時」という一文があったのも、よくなかっただろう。
とにかく、魔法少女業界に運命の魔法少女誕生の報が流れ、事態は一気に混迷を極めて行く。
天眼の魔法陣からの砲撃は、翌日以降も続いた。
意図が読めなかった。
この場に魔物なんて存在しないのに。
正確には、それを生み出す元凶と思われるモヤをこの魔法陣は攻撃しているのだが、魔法少女はそれを視認できない。
一体何のつもりでこんな事をしているのだ、この魔法少女は。
そう考えながらも、手をこまねく日が続いた。
いや、わからなくはない。
誕生したばかりであれば、他の魔法少女が存在を把握していない可能性が高く、自分が何になったのかすらわからない可能性が高いのだ。
だからこそ、一刻も早くこの魔法少女を見つけ出さなくては行けない。
多くの魔法少女はそう考え――しかし見つけることは叶わなかった。
理由は単純で、昼に変身した形跡が一切ないから。
変身さえすれば、魔力が衣装という形で放出されるから、それを使って探知することが出来る。
しかし夜は魔法陣からの連打によって近づけない、だから昼に探さなくてはならないのだが、見つからないのだ。
魔法少女になったばかりなら、夜だけではなく昼も変身したりして状況を確認するのが普通だろう。
だというのにどういうわけか、その魔法少女は昼に変身しない。
まるで、昼は常に人の目があって、変身することすらできないかのようだった。
その間に、状況へ変化が起きた。
魔物が街に出現し始めたのである。
魔法少女の魔力は、魔物を引き寄せる特性を持つ、アレだけ連打していれば魔物が現れてもおかしくはない。
であればあの魔法陣の攻撃は、魔物を引き寄せるためだったのか!?
魔法少女たちに激震が走った。
そこから考えられる可能性は二つ。
片や悪意をもって魔物を集めているか、あるいは持てる限りの魔力を使って、集めた魔物を狩るためにこんなことをしているのか。
前者であれば、どうにかしなくてはならない。
後者であれば、あまりにも無茶だ。
ここまでの魔法連打でも、膨大な魔力を消費しているだろうに、これ以上だなんて。
とはいえ、どっちにしろ魔法少女たちに打てる手はほとんどなかった。
運命の魔法少女の魔力が、街に充満してきていたからだ。
魔法少女の魔法は魔法少女を吹き飛ばすが、膨大すぎる魔力が重力のようにのしかかって魔法少女を拘束することもある。
そんな普通なら知る由もないことを、この時世界の魔法少女は初めて知った。
緊張しながらも趨勢を見守っていた魔法少女たち、天眼の魔法陣のガス欠を警戒していたが――驚くほどその兆候は見られなかった。
魔物が出現してからは、クソエイムに磨きがかかり、明らかに無駄玉を連射しまくっているにもかかわらず。
あれ、これこのまま行けるんじゃね?
魔法少女たちは、誰も口にはしなかったけど薄々そう感じ始めていた。
しかしそうは問屋が卸さないのが、魔法少女業界。
あまりにも連日の魔法ぶっぱで、ついには世界中の魔物が一地方都市に集結し初めた。
結果、昼にも魔物が出現するようになってしまったのである。
普通、魔物は夜にしか現れない。
どうやら魔物は太陽に弱いらしいのだ。
そのうえで、昼に魔物が出現するということは、その魔物は太陽に耐えられるくらい強いということ。
それが、無数に。
魔法少女達はこれを緊急事態と判断し、即座に行動を開始する。
下手すると、街一つが魔物の被害によって壊滅しかねない状況だ。
代わりに、この魔物を排除してしまえば、この世から一時的に魔物が根絶されるとすら予測が立っている。
魔物が全て消えれば、後はこの世界に数十体しかいない魔人を相手にするだけでいい。
正念場だ、運命の魔法少女は昼に活動することができない。
ならば、ここは私たちがやるしかない、いや、やるのだ。
予言の名の下に出現し、世界から魔物を根絶せしめんとするかの魔法少女の頑張りに報いるため。
世界中の魔法少女が出撃し――
眼の前で巻き起こる
昼であるにもかかわらず、空に展開された天眼の魔法陣。
そこから降り注ぐ、これまでの狙撃が児戯であるかのような光の雨あられ。
魔物は成すすべもなく蹂躙され、塵となって消えていく。
ああ、自分たちは思い違いをしていたのだ。
運命の魔法少女とは、理屈の通る相手ではない。
まるで、この世のバグのような存在なのだ、と。
その日、世界から魔物は根絶された。
実質的な上位種である魔人は未だ健在であるものの、普段から魔法少女の悩みの種であった魔物が、消え失せたのである。
それから、九年。
多くの魔法少女は、命がけの戦いから開放され平和を謳歌し、引退していった。
中には自分こそが魔物を殲滅するのだと意気込んで、しかし何もすることなくしょんぼりして引退したものもいたけれど。
とにかく、時代は移り変わった。
魔物が存在しなくなったからか、運命の魔法少女による砲撃もあれ以来、発生していない。
時折天眼の魔法陣が展開されることはあったものの、そこから破滅の光が放たれることはなかった。
だがそれは、あまりにも致命的な九年だった。
魔法少女は予言が成就した気になって、それ以上運命の魔法少女を深掘りせず。
魔法少女達を嵌めるために予言という罠を設置した
更にはその後、件の魔法少女を発見できず。
というかもし仮に近づいたら、おそらく魔物と同様に殲滅されるため近づけず。
世界は――とんでもないことをやらかす安城コトというバグは、九年の歳月でりっぱなモンスターロリへと成長するのだった。
エイム力は永続的にクソです。