強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
どうしてこうなった――
予言の魔法少女にして魔人ミシェルは頭を抱えていた。
九年前からそうだ、何もかも上手くいかない。
全ては、安城コトに原因が在る。
計画は、全て上手く行っているはずだった。
五百年前から姿を隠し暗躍、予言の成就に全神経を尖らせてきた。
魔法少女として正体を偽り潜入し、裏から情報を改竄する。
自身が遺した予言を成就するよう行動し、予言に対する信頼性を高めていく。
そして最後の予言だけを外すことで、予言を人々の意識から逸らす。
すべてがすべて、緻密に練り上げられた計画の上に成り立っている。
それが全部――台無しになった。
そもそもミシェルの魔法は、正確には予言ではなく
そして選択した未来が訪れるかどうかは、込めた魔力と予言を信じる人間――あるいは予言の魔法少女を信じる人間――の数によってきまる。
だからミシェルは予言を成就させて、予言と自分自身の信頼性を高めた。
そしてもう一つ、予言に込める魔力は予言の経過日数でも増加する。
予言の成就するのが、予言した日から遠ければ遠いほど、魔力が込められその効果は絶大なものとなる。
そしてミシェルは、自身が望んだ未来が五百年後に起こる可能性があることをしった。
だから、計画を立てて予言を遺したのだ。
全ては、予言が成就するその年まで上手く行っていた。
あの、とんでもないバグのようなイレギュラーが産まれるまでは。
まずそもそも、どうしてよりにもよって運命の魔法少女が双子なんだ。
ミシェルはそこを頓着していなかった。
結果がアレだ。
しかもなんで生まれてすぐ魔法少女になるんだよ、おかしいだろ!
結果、最後の予言は成就したと周囲に思われてしまった。
これはただ予言が外れたと思われるよりも、予言の効果を減衰させてしまう。
ただ外れただけなら外れた分の効果減衰しかないが、成就したと思われてしまうと通常の外れた分の効果減衰に加えて”予言者に対する信頼”がブレる。
二重の効果減衰が発生するのだ。
更に、運命の魔法少女が発生したと魔法少女が認識しているため、目眩ましの効果も薄くなってしまう。
更にまずいのは魔物の消滅だ。
魔人は魔物を操作できるのだが、操作する魔物がいなくなってしまった。
ミシェルはこの魔物の存在を計画に組み込んでいたため、計画が一時凍結してしまう。
仮に魔物が消滅していなければ、魔物を使ってウイナを攫い、強引に計画を進めることもできたのに。
加えて九年も滞留し続けた魔力のせいで、魔法少女の魔力も有している魔人は街に近づけなくなってしまった。
とはいえ、ここは気を取り直して九年をさらなる準備に費やすこととした。
もともと計画の実行はウイナが大きくなって、魔法少女に覚醒してから行う予定だったのだ。
それくらいなら、多少遅れても何ら問題はない。
今度こそ魔物がコトの魔力に引き寄せられないよう、ちびちび魔物を集め続け。
九年後、いよいよミシェルは動き出す。
はずだった。
が、何の因果か準備が大変すぎて、うっかり外に出ないよう閉じ込めていたアリスに逃げられてしまった。
魔人となってしまった相棒を、ミシェルはこっそり捕獲していたのである。
他者に被害を出してほしくなかったためだ。
なのに肝心なこのタイミングでアリスは外に出てしまった。
そして当然、マシになったとはいえそこそこ魔力が溜まっているコトの住む街へと一目散。
結果――
どうしてもとに戻っちゃうんですか、どうして――
アリスがもとに戻ったのを知った時、そんなことある? とミシェルは素で口に出していた。
いや本当に、どこまでおかしいんだあのモンスターロリは。
何を食べればそんなことができるんだよ。
それからしばらく色々考えて、なんとかコトを排除することにした。
魔人を魔法少女に戻せるバグな上に、死ぬほど強い。
仮にウイナを連れ去ろうとしても、コトを排除しないことには間違いなく取り返される。
しかしそこからも状況は芳しくなかった。
いくらなんでも強すぎるのだ、コトが。
それだけでなく、アリスとウイナも無視できない戦力である。
特に、平和な今ならそこまで強い意志で覚醒できないだろうと判断していたウイナが、アリス並の魔力を持って覚醒してしまった。
しかも原因がコトへの愛情なのだからやってられない。
またお前か!!
とはいえ、アリスとウイナは空が飛べず遠距離攻撃手段を持たない。
空を飛ぶプテラノドンであれば、この二人は完封できる。
加えてコトはちょっと可愛そうなくらいエイムがクソなので、素早く動くプテラノドンで翻弄できるはずだった。
正面衝突で打ち勝たないで――――
そして最後の作戦。
迷宮に引きずり込んでしまうのだ。
言うまでもなくこの翼竜は、ミシェルが抱える魔物の中では最強。
こいつがダメなら、もうどうやってもダメかもしれないっすね、というレベル。
とはいえ、他にも作戦は考えてある。
迷宮にコトを閉じ込めている間に、ウイナを回収してしまうのだ。
しかしこれも一緒にアリスがいたこと、コトが迷宮をまとめて薙ぎ払ったことで失敗した。
特に後者はダメだ、迷宮に迷ってるドサクサで回収する選択肢が消えてしまったのだから。
でまぁ、結局翼竜もだめでした、と。
しかもアリスが自分の存在に気付いてしまった。
更に魔法少女組織も予言の魔法少女が魔人化していると知ってしまったのだ。
終わりだ――
まぁ翼竜に関してはダメな気はしていたけれど、あそこまで実力に差があるとは思わなかった。
これ、もし仮に自分が直接コトと戦って勝てるか?
……無理じゃね?
いやでもここまで来たらやるしかないし、上手くやったら勝てるかも知れないし。
なにせコトは、戦闘センスに関しては幸いなことに低めなのだ。
エイム以外も結構雑で、アリスやウイナのような天才性は感じない。
というか地味にウイナが天才すぎる、アレもコトの影響っぽいけどどうなってんだあのモンスター。
そこまで考えて、ふと思いついた。
思いついてしまった。
予言の成就に必要なのは、魔力と楔だ。
予言に在る通り、運命の魔法少女が魔法少女を終わらせる以上、運命の魔法少女――すなわちウイナは楔として必須。
そこに、予言で溜め込んだ魔力を使えば、ミシェルの計画は成就する。
ようするに、つまり。
楔と魔力さえアレばいいのだ。
具体的に言おう。
予言で溜め込んだ魔力は、コトを撃破するために使う。
コトを撃破した後、コトの魔力を予言成就に使用する。
コトさえなんとかしてしまえば、ウイナの確保は容易のはず。
そう、コトだ。
コトさえなんとかしてしまえば、この計画は十分軌道に戻せる。
むしろ、コトが予言をバグらせたせいで、本来の想定より減ってしまった魔力より、コトの底しれない魔力を利用したほうが確実だ。
これだ、これしかない。
早速ミシェルは準備を始めた。
無論、これは言うまでもないことだが――コトの魔力はバグっている。
そんなものを使ってどうなるか、ミシェルも決して阿呆ではない。
どうなるか解らないことくらい解っているのだ。
それでも、やるしかない。
他に方法がないのだから。
残った魔物を利用して、拠点内に罠を用意する。
これで、コトと魔法少女たちを一網打尽だ。
なにより、拠点はまだバレていない。
準備には、じっくりと時間が取れるだろう。
さぁ、これが計画の最終段階だ。
ぐっだぐだ極まりないが、それでも最終段階には変わりない。
盛大なもてなしの準備をして待ち受けてやろう。
そう考えながら作業に取り掛かったミシェルだったが――――
――突如として、やばい勢いの爆撃を受けて、本人はなんとか生き残ったものの手駒としていた魔物が消滅した。
拠点の入口には、
終わりだ――――
というわけで次回から終盤です。
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