強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ   作:暁刀魚

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二十四 隠された真実

 異界の中は、それはもうものの見事に更地と化していた。

 中央にだけ、おそらくミシェルが守ったのだろう祭壇のようなものが残っている。

 それ以外は完全な空白。

 そんな中で、私とミシェルは空を飛びながら激突していた。

 私は魔法で、ミシェルの場合は背中の翼で、どうやら飾りではないようだ。

 

「それで、あの祭壇にウイナを捧げるとどうなるんだ!?」

『へぇー、自分が運命の魔法少女じゃないって気づいてるんだぁ』

「そりゃなあ、色々と心当たりもあるし!」

 

 正直にいうと、私とミシェルの相性差は最悪である。

 

「というか、余波で壊れそうだけどいいのか、祭壇!」

『別にあの祭壇自体は、作り直せるものだしぃ♪ でも面倒だからできれば壊さないでおいてほしいかなァ?』

「無理だろ!」

『そっかあ!』

 

 私のレーザーは全く当たらないのに、向こうの弾丸は百発百中。

 あまりにも理不尽だ。

 ただでさえ当たらない攻撃が、ほぼ確実に当たらないのだからやってられない。

 まるで鏡のようだと私は思う。

 絶対当たらないレーザーと、絶対に当たる弾丸。

 二つの魔法は全く関係ないはずなのに、こんなにも対照的な結果をもたらす。

 ああ本当に、全くもって理不尽極まりない。

 

「……と思うんだが、どうだろうなあ?」

『それさあ、目の前の光景見ながら言ってよ!!』

 

 目の前の光景?

 迫り来るマスケット銃の弾丸を全部魔力で弾きながら正面突破する私と、それから逃げながらやたらめったら銃弾乱射するミシェルって光景かな……?

 

『こっちは全部当たってるのに全部弾かれてるんですけど!? 全くダメージ通る気配すらないんですけど!? これを見たらどっちが理不尽かなんて一目瞭然だと思うけどなあ!』

「んなこと言って、そっちも私のレーザー全部避けてるじゃないか!」

『そもそも未来見てません! 見なくても当たらないってわかるの相当だよ!? もっと練習しなよ!』

 

 言いながらも、四方八方から銃弾は襲いかかる。

 更にはミシェル自身も接近してきて、蹴りと巨大な拳を織り交ぜて来た。

 弾丸自体の威力は正直そこまで大したことはないが、当たると少し衝撃があるので、その隙をついてもっと威力のある物理攻撃が御見舞されるのだ。

 まぁ、それらを私は難なく回避できているわけだが。

 

『ああもう、こっちは遠距離攻撃が全然効かないのに、そっちは一発でも当たれば詰み一直線なのおかしいでしょ!』

「その代わり、一発も当たらないけどな」

『当たらないように動くと、こっちも窮屈極まりないの! 遠慮ってものをしらないのかなぁ!?』

 

 両者は実質的な膠着状態にある。

 私は攻撃が当たらず、向こうは攻撃が通らない。

 このままずっと続けていても埒が明かないな、なにせお互いほとんど魔力は消費していない。

 

 ――何より、先程のアリスとの戦いで、私はミシェルがどういう存在かを垣間見た。

 アリスの奮戦もあって、だいたいは掴めたと思う。

 けど、最後のピース、ミシェルの底にあるものだけが読み取れない。

 そのピースを、ここで引きずり出すのだ。

 ならば、こちらから動くのが手っ取り早いだろう!

 

「つかまえ、……た!」

『こっちの蹴りを、正面から受け止めた!? 物理攻撃すら意味ないの!? 嘘でしょ!? 魔人の力と、予言の魔力つかってるのに!?』

「だったらもっと、全力込めて打ってこい……よ!」

 

 私はミシェルの足を捕まえたまま、レーザーをぶっぱなした。

 空に天眼を浮かべて、流星のごとく。

 

『……こんな、ものっ!』

「んなっ!」

 

 それをミシェルは体をひねって――私が掴んだ足と背中の翼にだけヒットさせるだけでダメージを最小限に抑えた。

 恐ろしいのはそこからだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『ぐ、ああ! こんな、の! どうってこと! ないッッ!!』

「再生するのか、そりゃそうだよな、人やめてるんだもんな!」

 

 慌てて、私はレーザーを増やして追撃。

 ミシェルはその中をひたすら逃げ続ける。

 

『クソ、あの天眼……アレさえなければ! アレさえなければ!!』

「悪いな、私は天眼の魔法少女なんだ」

 

 空からの連打、私自身はそれをしている間無防備になるが、私の周囲には無数のレーザーが飛び交っている。

 ほとんどカーテンのように、隙間なく存在しているのだ。

 今の回避に専念するしかないミシェルでは、到底太刀打ちできそうにない。

 

『アンタのそれに九年前ふっとばされて、それからずっとここからそれを恨めしく睨んでたんだ! 一生そのままとか正気!? あんなもの見てたら頭パーになっちゃうよ!』

「やっぱふっとばされたんだ……そりゃ悪かったな」

 

 ミシェルから強烈な焦りが感じられる。

 未来を予知し、ギリギリを回避しているからだ。

 だが、その焦りも――必死の回避ももうすぐ終わる。

 なぜなら――

 

『……なん、で。体が、重い……!』

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『ぐ、ああああ! 何、この……!』

「さっき自分でもやっただろ! 魔法少女は魔法少女の魔力を受けると圧でその場から動けなくなる!」

『な、あ、あ……こ、この! バカ魔力っっっっ!!』

 

 ミシェルもまた、予言の魔力という強力な魔力を有している。

 しかし、私の魔力はそれ以上。

 ここまでやっても、底と言える底すら見えてこない。

 

『なんで……! なんで、こんな……イカれてるの! 魔法少女の魔力じゃない、こんな!』

 

 ミシェルが嘆く。

 

『どうして……どうして、あとちょっとなのに。あとちょっとで全部うまくいくところだったのに。なんで……』

 

 そして、それは――

 

 

『どうしてよ! アタシにはもう、()()()()()()のに!!』

 

 

 ミシェルの本質に踏み込むための鍵だった。

 おかしい。

 あまりにもそれは、矛盾している。

 他のやつが言ったのなら、抽象的な感情の断片でしかない。

 でもその一言は、ミシェルがミシェルである限り、普通なら絶対出てこない言葉だ。

 すなわち――

 

「どうして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ?」

『あ、しまっ……』

 

 ようやく掴んだぞ、ミシェル。

 お前の底にあるものを!

 

「なるほど、つまり今のアンタは……」

『……っ! ふざけないでよ!』

 

 その時、ミシェルから魔力が溢れ出す。

 魔力の圧によって身動きすら取れない状況で、どうすればいいか。

 答えはアリスが教えてくれていた。

 ――魔力暴走だ。

 

「なあミシェル、お前の魔力暴走はどんな効果だ?」

『黙れ!!』

 

 突っ込んでくるミシェル、私はレーザーをミシェルにぶつける。

 しかし、()()()()

 確率を操って、テレポートのように自由自在に弾丸の場所をいじれるなら、魔力暴走によって強化されれば――()()()()()()()()()()()()()()()()なんてことすらできるだろう。

 それまでのミシェルが1の確率を99にする能力なら、これは100を0にする能力――!

 

『逃げるなああああ! この! この期に及んで……!』

「魔力暴走には二つの特性がある。一つは魔力を格段に増やす。そしてもう一つは、本来の魔力の効果を増幅する」

 

 アリスはこの二つがほぼイコールだったからわかりにくいが、ミシェルはわかりやすい。

 それまで1の確率を99にする効果だった魔法が、1を100にする魔法に化けた。

 けどそれって、副次効果だよな?

 ミシェルの本領は、予言だ。

 であれば当然、予言に関しても効果が増幅されるはず。

 

「副次効果ですら現実に介入できるんだ。なら本命は……』

『違う! やめ……!』

「未来に()()()()ことじゃないか?」

 

 返事はない、だがその沈黙こそが何よりの答えだ。

 未来に介入するというと伝わりにくいが、言ってしまえばミシェルは未来という仮想世界の中で自由に行動できるのだろう。

 そして仮に今未来を予測したとしても、それはあくまで仮想世界の未来でしかない。

 魔力暴走を戦うために使っている以上、仮想世界に潜ったところで意味はないのだ。

 だから今は、未来予知を使えない。

 それに、おそらく――いや、これは今は置いておこう。

 

「その中でアンタは最良の予知を手にしようとした。なぁ……一体何回魔力暴走を起こしたんだ、ミシェル」

『…………回数なんて、覚えてない』

 

 迫るミシェル、レーザーが意味をなさなくなれば一直線に私を攻撃できる。

 逃げようにも、向こうはどこにでもいてどこにでもいない。

 他者に干渉することはできないようだから、突然ミシェルの腕が私の心臓を掴むなんてことはないみたいだが――目前に迫ったミシェルが、私の首を掴むなんてことは余裕だ。

 

「っぐ、ぅ!」

『アンタには解らないだろうけどさ、昔の人って、簡単に死ぬんだよ。魔法少女は、誰かを守りたかったり、誰かのためになりたいっていう、正義感の強い子が目覚めるものなの。――そんな子が、魔法少女を引退しても穏やかな人生を送れると思う?』

 

 首に力が込められる。

 こっちからの攻撃は、絶対に届かない。

 このまま息の根を止めればミシェルの勝ち。

 詰みだ。

 ――普通なら。

 そんな状況で、ミシェルは私に最後の言葉を吐露する。

 

 

『私が出会ってきたあの時代の魔法少女は――()()()、あらゆる未来で若くして死ぬ女の子だった』

 

 

 誰一人例外なく、死ぬ未来を見せつけられた。

 それが、ミシェルの始まりだったのだろう。

 そう、口にすると同時――ミシェルは一気に私の首へ力を込めた。

 

『……安城、コトォ!』

「わた、しは……」

 

 ああなるほど、そりゃあ確かにつらいよな。

 何度も何度も人が死ぬ未来を見せつけられて、何度やり直しても未来はよくならなくて。

 魔力暴走自体が精神に負担をかける上、絶望しきればそのまま魔人と化してしまう。

 なのにミシェルは、何度もそれを繰り返してきた。

 今でこそ魔人になってしまったけれど、それは魔人になるまでに、すべてを救う算段がついたからだろう。

 そもそも魔人であるのに自我を維持している以上、この魔人化も特異なプロセスの末に行ったもののはず。

 やり遂げたのだ、一つを除いて。

 それは、素直にすごいと思う。

 

「わたし……だって……!」

 

 でも、だとしても――

 

 

「ひとが簡単に……死ぬって、ことは……私も……よく、知ってるんだよ……!」

 

 

 瞬間、私は全力で魔力を放出した。

 魔力暴走?

 否、ただ持っている魔力を周囲にぶちまけただけだ。

 結果、どうなるか。

 

『う、あああっ! この……バカクソ魔力ぅううう!』

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 未来の改変には魔法が必要で、魔法少女同士の魔力は干渉する。

 魔力暴走によって起こされた魔力以上の魔力を撒き散らせば、その魔力が蔓延している場所にはミシェルも近寄れないのだ。

 これで、仕切り直し。

 

「一つだけ、聞かせろ。どうしてアリスの魔人化を許容した? アリスこそ、お前が一番救いたかった存在だろう」

『魔人化は、許容できることだったからだよ』

 

 そして私は、ずっと気になっていたことを問いかけた。

 返ってきた答えは――

 

『だって、アタシの方法なら魔法少女と魔物は世界から消えるけど()()()()()()()()()

「……なんだと?」

『そして、魔人を魔人足らしめる原因の魔力がなくなることで、魔人は人に戻るの』

「………………えっと」

 

 想像もしていなかった答えだった。

 ええと、それって……つまり……

 それは、もはや、口にするまでもなく――

 

 

『…………なんで魔人を魔法少女に戻せるのよ、バカぁ』

「…………ごめん」

 

 

 全部全部、私のせいですね、はい。




はい。
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