強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
『安城コト……安城コトォオオッ!』
「まぁ、結果はどうアレ私たちは敵同士だ……最終的な結論は変わらない。――やるぞ」
『せめて……せめて謝らないでよ!』
いやそれはホントスマン!
と、口に出すのもそれはそれで失礼なので心の中だけで謝って、戦闘を再開する。
私は飛行魔法が自分の体を覆う事を応用して、飛行魔法に強めの魔力を注ぎ込む。
とりあえずこれで、直接私の体に触られた状態で出現されることだけは避けられるだろう。
これで飛行魔法に他者を飛行させる能力があれば、それを応用してミシェルに触れられたんだろうが、できない以上はただ干渉を防ぐだけだ。
『アンタ、ほんっと何なの!? アタシの予言は全部無茶苦茶にする! アリスは魔人からもとに戻す! 何よりそんなクソみたいな雑さでバカみたいに強い!』
「そんなこと言われてもな、私は別にやろうと思って予言をめちゃくちゃにしたわけじゃねぇよ」
この状況、お互いの勝利条件は明確だ。
ミシェルは普通に私を殺せばいい。
ただし、私の防御力を突破する必要があり、この難易度が高い。
私はミシェルが魔力暴走で魔力を尽きるまで耐えればいい。
ただし、予言の魔力は普通の魔法少女なら魔力だけで制圧できるくらいあるので、長期戦になるだろう。
それに――その勝ち方は弱気がすぎる。
「誰だって阻止できるなら、するだろ。魔物と魔法少女をなくそうって大義は結構だが、それに必要以上の犠牲をだされちゃな!」
『やり方がおかしいって言ってんの! どうして当たり前のことを、当たり前にできないの!』
「できるなら何でもいいだろ!」
『その雑さが……一番嫌い!!』
ただ、やはりミシェルの未来改変はやっかいだ。
対処法は先程みたいに膨大な魔力をぶち込むことだが、難しい。
私のメイン火力であるレーザーは、ある一定の量までしか魔力を注ぎ込めない。
普通ならそれであらゆる魔物を薙ぎ払えるんだが、今回ばかりはそれだけじゃダメだ。
そんな事を、あらゆる場所から出現するミシェルのケリや巨大な拳を回避しながら考える。
「あっぶないな!」
『やっと自分が殺し合いをしてるっていう自覚が出てきたかなぁ! どう!? 痛みが発生する攻撃が飛んでくる味はさぁ!!』
「どうもこうも、普通に怖いよ。でもそれは、痛みを感じる前から感じてることだ」
『もっと怖がれっての……!』
ミシェルの攻撃は厄介だ。
マスケット銃の攻撃は私のレーザーと同じく注げる魔力が限られるのか、戦い方が近接に寄っている。
どんな場所からでも攻撃を仕掛けられて、かつ常に最高速最高火力で身体の間近に出現するのだ。
出現した瞬間に攻撃が飛んでくる場所に魔力を集中させて防御する形で耐えているが、少し痛い。
そして一瞬でも判断をミスると他の部分は防御が脆いので即死だ。
やばいね。
「んで、対するそっちは態度の割に真面目だよなぁ。やらしいくらい面倒な正攻法だ」
『だから何? 強い戦い方を押し付けて、強く勝つ。やってることはアンタと変わんないでしょ。っていうか、やらしいって言うな!』
「自分で言う事じゃないが、ゴリ押しと正攻法は違うだろ」
『ほんっっとに自分で言わないでほしいなぁ!』
――ああほんと、正反対だ。
最初に姿を見せた時から、ずっと思っていたことでは在る。
私とミシェルは正反対なんだ。
真面目にやろうとしてるけど雑な私と、口が悪いメスガキ態度を取ってはいるけどクソ真面目なミシェル。
アリスが言っていた通りだな。
「なぁミシェル」
『あぁ!?』
「どうしてそんな、誰に対しても攻撃的な態度なんだ?」
『……それが、なんだっていうの!』
ミシェルの攻撃は、どんどん苛烈になっていく。
向こうも、こんな戦い方をするのははじめてのはずだ。
それが、どんどん適応していっているが故に、鋭さがましている。
――強者のセンスってやつだろう、私にはないものだ。
『だいたい、そんなこと聞いてどうするつもり!? ――
「まぁ、そうだな。アリスのことを考えれば直ぐに想像がつく」
アリスは真面目で、優しくて、そして何より理想に生きるタイプだ。
周囲の悪意に対抗するには、隣りにいるミシェルが強くあらねばならなかったのだろう。
そんなところまで、私と逆なんだな。
『そういうアンタは、何だってそんな誰にでも優しいのよ』
「そうか?」
背中に迫る拳に壁のように魔力をぶつけて、その衝撃で吹き飛ぶ。
こうすることで距離を取って、向こうに考える情報を増やすのだ。
移動せずにその場にとどまるよりはずっと、考えることが加速度的に増加する。
んで、優しい――か。
「私は、周囲に優しくされたから、それを返したいだけだよ」
『ああそう、妬ましい答え! ――アタシの周りには、そんな優しさほっとんどなかったんだから!』
今よりずっと過酷な時代に一人で生きることを強いられて、優しくしてくれるのはアリスを始めとして魔法少女だけだったんだろう。
そのことは、同情に値する事情だ。
『アンタが嫌い、アンタが憎い! なんで、アンタは全部持ってるの! アタシがほしかったもの、全部!』
「……アリスの時はただの強がりだったっていうのが、よく分かるな」
『アンタがアリスの名前を口に出すなッ! そういうところが嫌いッ!』
あえて正面を選んで、ミシェルがケリを叩きつけてくる。
私もそれを、両手を交差させて防御した。
一瞬だけ、両者が停止する。
ミシェルは、顔を伏せていた。
『だのに、なんで、なんで……!』
顔を伏せていたミシェルが、私を見上げる。
その瞳は――
『なんでアンタは、アタシに説教の一つもしないの!』
今にも、泣き出してしまいそうだった。
「……」
『何かいってよ! 正しいのはアンタで、間違ってるのはアタシでしょ!? だったら言えばいいじゃない、こんなことに何の意味がある……って!』
ああ、それは――ミシェル自身の、本音なんだろうな。
私たちは正反対だ。
こんなところまで、何もかも。
「……私はさ、思うんだよ」
お互いがお互いを弾きあって、距離を取る。
「――魔法少女って、クソだろ」
『はぁ?』
「子供に命がけの戦いをさせて、報酬は誰かを守れたっていう自己満足だけ。今は給料も出るらしいけど、殺し合いの報酬としては見合わなすぎるだろ」
『だからアタシのやってることは正しいっていいたいわけ!? アリスがあんなこといい出したのは、アンタの影響だったわけだ! いやらしい!』
いやらしいは違うだろ!?
ともかく、ミシェルが再び襲いかかってくる。
私はそれを、耐えながら言葉を返す。
「別に正しいとは思ってない。でも実際アンタだって思うだろ! でなきゃこんなことやってないはずだ!」
『そうだね、それだけは認めてあげる! 魔法少女なんてクソ! そんなものがなければ――アタシはこんな思い、しなくて済んだのに!』
私はただひたすら、耐える。
耐え続けて、そして叫ぶ。
「私はアンタの気持ちはわからないけど、アンタがそう願う理由は理解できる! 私はかつて、多くの人に命を救われた。その結果ここにいる!」
――病弱だった私を、家族が救ってくれた。
祈り、願い、想ってくれたんだ。
「その人達の想いを……願いを! 死んで無駄にするかもしれない魔法少女なんて、いらない!」
そして、手を挙げる。
ここまで耐えてきたのは、すべてこの時のためだ。
耐えて、粘り勝ちをするためじゃない。
自分で勝ちを掴み取るために、耐えた。
「だから私は――」
『……ッ!』
ミシェルに攻撃を通す方法は、一つだけ。
より膨大な魔力で押し流す。
先程は吹き飛ばすことしかできなかったが、
私のレーザーは、一定量までしか魔力を注ぎ込めない。
けど、チャージはできる。
以前翼竜の異界を薙ぎ払ったときのように。
だから――
「――私も、魔法少女と魔物が存在しない世界を作る!」
そして天眼の魔法陣から、世界を覆う膨大すぎる量の魔力が溢れ出した。
視界は白に染まり、終わった後には――もうミシェルが改変できる未来は、どこにもなかった。
◯
『……ほんと、バカみたい。そんな無茶苦茶なことを言い出すの、世界でアンタくらいだよ』
「実際に行動を起こすバカは、アンタくらいかもしれないけどな」
身動きの取れなくなった状態で、ミシェルはこぼす。
異界を完全に覆った魔力は、きっと何年かかってもこの世界から消え去ることはないだろう。
それくらい、でたらめな魔力を私はこの世界に注ぎ込んだのである。
それでもまだ総魔力量の五割も使っていないのだから、我ながら恐れ入る魔力量だ。
『負けた、アタシの負け。いいよ、好きにすればいいじゃん。魔法少女が死なずに普通の人間に戻れるなら、アリスだって助かるんだから』
「そうだな。けど――」
私はそんなミシェルの隣に降り立って、ミシェルを見下ろしていた。
言葉のさなかに膝を折って腰を下ろし、そしてミシェルに手を差し伸べる。
「――願いは一緒なんだ、ミシェルも一緒に魔法少女をこの世から消し去らないか?」
『――――』
その時、ミシェルは本当に意外そうな顔をしていた。
「なんだよ、別に不思議なことじゃないだろ? アリスだって同じことを言ったんだから」
『でも、だって……』
「そもそも、アンタは私のことが嫌いかもしれないけど、私は別にアンタのことが嫌いじゃないぞ?」
『……やめてよ、気色悪い』
むしろ、普通に好感が持てるんだがな。
目指すところは一緒だし、何よりミシェルの世界を敵に回しても目的をやり遂げる強さは、尊敬に値する。
礼を返すと決めた私には、持てない強さだからだ。
けど、ミシェルはそんな私の言葉を、首を横に振って否定する。
『でも、ダメ。アタシは――アンタといっしょには行けない』
「それは、心情的な理由か?」
『
「制約?」
初めて聞いた言葉だ。
でも、推測はできる。
それがあったから、ミシェルは自我を保ったまま魔人になれたのだろう。
『魔人化には、魔力の枯渇と絶望が必要。だけどその絶望に至るまでの願いがあまりにも強すぎた時、魔法少女はその願いを叶えるための妄執に成り果てる。それを意図的に起こす現象を、アタシは制約って呼んでる』
――未来を仮想世界で演算する中で、魔法少女についての研究を行うこともあったのだという。
その中で見つけた、自我を保ちながら魔人に成る方法。
それが、制約の付与。
『ただし、その願いを諦めた時、制約を付与して魔人となった魔法少女は――消滅する』
諦める。
そう口にした時、ミシェルの体がゆっくりと透け始めた。
魔力ももうほとんど残っていない。
魔力暴走と諦観、二つの要因がミシェルを消滅へと導いているのだ。
『でも、なんていうか……よかった』
「よかった?」
『アリスは魔人という牢獄から、ようやく解放された。めちゃくちゃ気に食わないけど、私の願いを継いでくれるヤツも見つかった。結果として、魔法少女が死ななかった分本来の想定よりむしろ上々な終わりじゃない?』
ミシェルが、ゆっくりと私に手を伸ばす。
魔力がなくなったことで、逆に魔力の圧を受けなくなったんだろう。
まるで、魔法少女の変身が解かれた時のように。
『ねぇ、アタシはアンタが嫌いよ? でも、最後がアンタで良かったと想ってる。アリスにこんな顔、見せられないし。だったら、何の因縁もないヤツよりは、アンタの方がずっとマシ』
「……」
『ありがとね。アンタのことは大嫌いだけど、それだけ恵まれて、与えられて、それでも
本当に――私とミシェルは正反対だ。
正反対だから、憧れるんだ。
そうして伸ばした手のひらの先にいる、自分の半身にミシェルは言葉を向ける。
『ねぇ、アリス。これからは、もうちょっとだけ人を疑って生きるのよ? でないと悪い女に、騙されちゃうんだから――』
そう言って、ちらりと私に視線を向けたミシェルは、それまで浮かべたことのない年相応の無邪気な微小を浮かべて消滅――
「いや、させんが?」
する前に、私は非殺傷のレーザーをしこたまミシェルに叩き込んだ。
はい。(禁断の二話連続)