強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ   作:暁刀魚

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二十六 ハッピーエンド以外認めない

 ――私は、色んな人から与えられて生き延びてきた。

 救いも、幸福も、命さえも。

 だからそれに報いたい、返したいと思うのだ。

 けれども同時に、無茶をして、自分を殺して世界を救うような自己犠牲は馬鹿らしいともおもってる。

 

 だから、このまま消滅なんてさせるわけないだろ?

 

 なぁミシェル。

 私はわがままなんだよ。

 救えるやつは、全部まとめて救いたい。

 そこだけは、私とミシェルは似てるのかも知れないな。

 ああでも、根底にあるものが一つだけ違うか。

 私がすべてを救いたいのは、ただ返したいから、だけじゃない。

 

 

 そうやってすべてを救って、みんなで笑えたら最高に気持ちいい。

 

 

 そんな、とても傲慢で――人間らしい感情があるからなんだ。

 

 

 ◯

 

 

 ミシェルに非殺傷のレーザーをしこたま叩き込んだら、やがてミシェルが動かなくなった。

 しかし消えかけていた体はもとに戻っているし、何よりミシェルの体からは瘴気が山のように吹き出している。

 制約とは、言い換えれば抑圧だ。

 制約によって特別な魔人となったモノの絶望、すなわち瘴気はどれほど強大に膨れ上がっていることだろう。

 少なくとも――瘴気そのものに防衛本能のようなものが宿るくらいには、イカれた量になっているはずだ。

 

「ようするに――お前がラスボスってわけだ」

 

 膨大な瘴気におされて、私は後退する。

 その間にも絶え間なくレーザーは降り注いでいるが、瘴気はそれを耐えながら一つの形を作り上げていく。

 宿主であるミシェルを取り込み、一つの生命へと昇華しようとしている。

 いや、堕落か? どちらにせよ――

 

 

 現れたのは、羊頭の天使だった。

 

 

 全身が黒く染まった、天使の翼を持つ人型の羊頭。

 その翼は、よく見るとただの翼ではなく人の手が折り重なるようにして出来上がっている。

 気色の悪い、天使を模倣した怪物だ。

 

「悪魔、と呼称するのが正しいだろうな」

 

 やがて完全に形をなした悪魔の全長は、優に数十メートルはあるだろう。

 天使を思わせる古代のローブのようなものを身にまとった、深淵の獣。

 最後の敵が、現れた。

 

「悪いが、ミシェルは返してもらうぞ。だから――どっからでもかかってこいよ」

 

 私がそう口にした瞬間。

 足元から、手が伸びてきた。

 

「おっと!」

 

 慌てて上に飛び上がるが、手はそれを追いかけてくる。

 追いかけてくる手は一つじゃない。

 無数の手が、触手のように私へ襲いかかるのだ。

 

「効くかよ!」

 

 天眼に意識を向けて、流星群を降り注がせる。

 迫る魔の手は、その多くがレーザーによって焼き尽くされた。

 狙いなんてあったもんじゃない乱射だが、数が多いのでどっかしらでは当たってくれる。

 しかしこの魔の手、一本の腕が伸びているのではなく、一つの手のひらからもう一つ手が生えて、それが数珠つなぎみたいに繋がっているのだ。

 結果として、レーザーでは一つしか焼けない。

 こいつに知能があるのかはわからんが、私対策としては完璧だな。

 

『――――』

「本体も来るか!」

 

 そしてそれらを相手していると、ついに本体も動き出す。

 ゆっくりと緩慢な、けれども威圧感を感じる動作で祈るように重ねていた手を開く。

 それから、私を叩き潰すかのようにその手が私に向かって迫るのだ。

 当然、回避しようとするが――

 

「体が……動かない!?」

 

 雰囲気からして、これは私の未来に干渉しているようだ。

 自分を生み出した存在の影響を受ける、ということか。

 こいつは、他者の未来を改変することができるみたいだな!

 さけられない、叩き潰される――!

 

「だったら……強引に何とかするまでだ!」

 

 私は迫る手のひらに向けて、レーザーを放つ。

 それも一つや二つじゃない、手のひらを完全に破壊し尽くすまで、全部だ。

 悪魔の身体は、どうやらこれもまた手が折り重なってできているらしい。

 悍ましい造形な上に、厄介極まりない性質。

 けど、それでもレーザーを連射しまくればいずれはすべて焼き尽くせる!

 

「……動けるようになった!」

 

 手が半分くらい消し飛んだところで、私の体が再び動き出す。

 どうやら、未来を改変できるのはあの手のひらが私を攻撃する時だけらしい。

 まぁそれでも、厄介なことには変わりないが。

 なにせ――手のひらの対処に手一杯で、迫りくる手の触手を始末しそこねたからだ。

 

「っぐ!」

 

 足を掴まれる。

 凄まじい力だ。

 そのまま握りつぶされそうになり、その上何かおかしなものが私に流れ込んできた。

 負の感情。

 胸の奥に渦巻く言葉にできない圧迫感。

 それが、私の喉元からせり上がってくる。

 更に、掴まれたことで一瞬動きが止まった私に、手のひらが殺到する。

 体の至るところに巻き付いてきて、私自身から恐怖を引き出そうとしてきた。

 けど――

 

「悪いな。こんなの、死の恐怖に比べたら、ただ()()()()だ!」

 

 物理的に振り回されたほうが、よっぽど怖い。

 こいつらにとっては心理的な恐怖の方が正攻法なんだろうが、物理的に攻めたほうが良かったな。

 私は魔力を込めて、絡みついた触手にレーザーを叩き込む。

 

「ってか気持ち悪いっての!」

 

 なんか普通にえっちだぞ、魔法少女だからってそういうサービスシーンを用意する精神を発揮しなくてよろしい!

 レーザーが触手を焼き切り、その場を離脱する。

 本体の方を見れば、手は完全に再生していた。

 そしてこの戦闘中、私は悪魔に向かってずっとレーザーを叩き込んでるんだが、いかんせん効果があるように見えない。

 一つ一つが瘴気から生まれた手のひらで、しかも再生する。

 

「このままじゃジリ貧だな」

 

 こちらも何とか対応はできているが、決定打に欠ける。

 迫りくる手の触手は、私の移動速度より速いからレーザーでやかないと対処が間に合わない。

 捕まったら、そのまま握りつぶされる可能性もあるな。

 んで、時折未来改変で動けなくなり、そこに手のひらによる叩き潰しが迫ってくる。

 手のひらの対応に追われていると触手の対応がおろそかになる上、動けなくなるから回避もできない。

 さっきから数回このやり取りを続けているが、二回に一回は触手が私に絡みついてきていた。

 まぁ、最初みたいな全身絡みつきまでは行ってないが。

 

「――強い」

 

 当り前だが、強い。

 こっちの魔力にはまだまだ余力があるとはいえ、いかんせん向こうの規模がでかすぎる。

 レーザーに注ぎ込める魔力は限られてるし、飛行魔法は飛ぶことしかできない。

 前者は普通なら十分強いし、後者はないと未来改変で死んだことにされて終わってるだろうけど。

 ん、いや、待てよ?

 私は空を見上げて、もう一つの私の魔術について意識を向ける。

 

「――天眼の、魔法陣」

 

 アレなら――

 いやでも――

 まてよ――?

 

「……よし」

 

 私は再び手を天にかざす。

 そこで、未来改変が来た。

 身動きが取れなくなり、周囲から無数の触手が迫る。

 対処は……しない。

 手のひらに叩き潰されるまでには、数秒かかる。

 触手が完全に私を絡め取るまでにも、数秒かかる。

 だが――数秒もあれば十分だ。

 私は先程から空に浮かべていた天眼の魔法陣を――

 

 

()()()する!」

 

 

 ここは異界だ。

 おそらく、ミシェルの手によって作られたもの。

 ミシェルが魔人から解放されれば消える。

 だったら天眼の魔法陣を、()()()()()()()()()()()ものに改造したって、何ら問題はない。

 そして天眼の魔法陣は、この異界を私の魔力で埋め尽くせるだけの魔力を、注ぎ込める!

 

 魔法陣が光を帯びた。

 

「こいつで――吹き飛べ!」

 

 直後――

 

 

 バカみたいな量のレーザーが降り注ぎ初め、私に迫るすべての触手と手のひらを、根こそぎ消し飛ばした。

 

 

 その光景は、ひどいもんだった。

 すべてが白に染まっている。

 ミシェルを倒した時は一本のごんぶとレーザーだったが、今度は一条の閃光だ。

 壮絶な光景に、この世の終わりすら感じてしまいそうである。

 

「………………やりすぎたな」

 

 白に染まった視界の先で、悶えながら体をボロボロに崩壊させていく悪魔を見ながら、私はぽつりとそうこぼすのだった。




一応まだ終わりじゃないです
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