強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ   作:暁刀魚

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二十七 キモイ

 終わった――――

 どう考えても終わっていた。

 悪魔は一瞬にして出落ちして、私の横暴だけがこの異界へ一生刻まれ続ける。

 まぁいいもんね、ミシェルさえ救い出せればこの異界はおしまいだ。

 この魔法陣も異界とともに消滅するはず。

 ……するよね? すると言ってくれ。

 

「――――ん?」

 

 そんな時、ふとあることに気付いた。

 天眼の魔法陣で空から戦場を見回していると、一部の瘴気で作られた手におかしな動きが見られたのだ。

 このクソみてぇなレーザーの暴雨を掻い潜って、外に出ようとしている?

 手が折り重なって黒い球体のようになり、雨の隙間にある空白を縫って進んでいるのだ。

 複数の手が同時に動いているから、レーザー一つくらい受けたところでは消滅しない。

 そしてこのまましばらく進んでいけば――レーザーの射程外に出る。

 異界のすべてを射程圏内にしているわけじゃないからな、こいつは。

 

「……まてよ、瘴気に逃げられるとどうなる?」

 

 普通に考えれば、ミシェルが魔人のままになってしまう。

 しかも瘴気がどこに行ったか解らないから、探すのも非常に手間だ。

 魔物なら魔力に集まる習性があるが、こいつらには意思があるらしく、普通に逃げるからな。

 いや待てよ、瘴気は負の感情――悪意から産まれるんだから意思はあって当然だ。

 つまり――こういうこともできるってことだ。

 

「意思から、直接狙いを聞き出してやる!」

 

 私は崩れ行く本体へと飛びかかった。

 そこがこいつの意思が最も集合している場所だからだ。

 こいつに突っ込めば、こいつの意思を確認できるはず。

 ただそれは、ミシェルが数百年抱え続けた上に、抑圧されたことで濃縮しまくっている負の感情に飛び込むということ。

 さっき掴まれた比じゃない意志の暴力が、私に襲いかかるだろう。

 何よりミシェルは、あまりにも絶望を抱えすぎた。

 その言葉のナイフは、いくら私が大雑把だからって、影響を受けないとも限らない。

 だが、それでも――

 

「やらないよりは、ずっとマシだろ!」

 

 ――私は私の信念に基づいて、本体に手を突っ込んだ。

 そして――――悪魔の意思を、読み取った。

 

 

 ――()()()

 

 

 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ん?

 

 ――キモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイ! マジこいつキモすぎる! ヤバイヤバイヤバイヤバイ、こんなキモイヤツにころされたくない! ニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロ!!

 

「……ええと」

 

 どす黒く、真っ黒に染まった意思から。

 ガチで気持ち悪がられているという事実が、如実に私へ注ぎ込まれた。

 

「…………ごめん」

 

 普通にちょっと泣きそうだ。

 なんだよ、完全に心折られてるじゃねぇか。

 ちょっと戦っただけなのに心折れてるんじゃねぇぞ、本体のミシェルは最後まで頑張ったぞ!

 悪感情の塊だから、信念もないし堪え性もない?

 まぁうん、はい。

 

「クソ! そんな理由で瘴気を取り逃がしてたまるか!」

 

 少しずつ、魔法陣の射程外に到着する手のひらが増えてきた。

 私は慌てて、恒久的に浮かべたクソデカ魔法陣とは別の魔法陣を生み出して、射程外の手のひらを爆撃する。

 しかしここで問題が発生。

 

「――――当たらない!」

 

 畜生、クソエイムだッ!

 最後の最後で、私のクソエイムが足を引っ張る。

 オートでロックオンするタイプの魔法陣は、作るのに一秒程度の時間がかかる。

 その間に、クソエイムでも手のひらを殲滅できるくらい暴力的にレーザーをぶち込んだ方が早い。

 しかしそうなると、今度は厄介なタワーディフェンスを強要される。

 そして多分ないだろうけど、私の魔力が尽きる可能性も捨てきれない。

 残り二割程度で、まだそれなりに余力はあるんだけど、微妙に信頼できない量だ。

 

「何か方法は……方法はないのか!?」

 

 人の手を借りないと、こいつらはどうにもならないだろう。

 しかしそんな都合よく、借りられる人手があるわけ――

 

「……いや、いるじゃん」

 

 私は気付いた。

 いる、()にいる。

 都合よく、この状況で役に立ちそうな人手が!

 

 

「ウイナ! 手を貸してくれ!」

 

 

 私は異界の入口まで急ぐと、そこから顔だけを出してウイナに呼びかけた。

 ただ、目は閉じている。

 異界の天眼に視界を移しているからだ。

 それによって逃げようとする瘴気を殲滅しつつ、ウイナと話をしようって算段。

 

「お姉ちゃん!? いきなりどうしたの!?」

「周りの状況を教えてくれ、()()()()()()()()()()()()()()()は全員その場にいるか?」

 

 そう、私が借りようとしている手。

 ――それは、この場に集まった魔法少女達。

 

「い、いるよ! でもそれが一体……」

「説明は後だ、まずは魔法を使って、光の私を憑依した状態で異界に顔だけ突っ込んでくれるか!?」

「え、それ大丈夫なの!?」

「大丈夫じゃなかったら、そもそも異界に壁みたいなものがあって、入れないようになってるはずだ」

 

 とはいえ、問題が一つ。

 彼女たちは異界の中に入れない。

 私の魔力でやばいことになってるからだ。

 でも、ウイナが作り出す光の私って――ようするに私だよな?

 だったら――

 

「え、ええい!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あ、入れた。お姉ちゃんの肢体が真横に! おひょっ!」

「肢体言うな。じゃあ顔を出してくれ、説明する」

 

 これなら、ウイナが中に入れるはずだ。

 そしてウイナじゃなくても、ウイナの魔法で光の私を付与すれば、誰でもこの異界に足を踏み入れることができるはず。

 

「……というわけなんだが、もう一つ問題があって、足場がない」

「派手にやったもんね……でも思ったんだけど、光のお姉ちゃんが付与された人って、要するにお姉ちゃんなんだよね?」

「まぁ、理屈の上ではそうなるが――」

()()()()()()()()()()()()()()()、だよね」

「っ!」

 

 私は慌てて、ウイナの体に飛行魔法をかける。

 自分にしか効果はないけど、光の私を付与したウイナが私の一部になってるなら、効果があるはずだ。

 するとふわり……とウイナが浮かび上がった。

 

「でかしたウイナ! さすがは自慢の妹だ!」

「んぐぅ!」

「あ、やべっ」

 

 ウイナが喜びで意識を失った。

 待て待て、倒れないでくれ、ウイナだけが頼りなんだよ!

 それから何とかウイナの意識を叩いたり揺さぶったりして覚醒させ、準備をしてもらう。

 最後の懸念は、魔法少女達が私の作戦を受け入れて危険な異界へと飛び込んでくれるか、なのだが――

 

「やります!」

「やらしぇてくらしゃいいいいいいいい!」

 

 半数は元気よく返事をして、もう半数はウイナみたいに返事をしてくれた。

 ミシェルの言葉を思い出す。

 魔法少女は、強い正義感を持つ少女が目覚めることが多い。

 ここにいる子たちはみんな、魔法少女の資格を持った優しい子たちなんだ。

 ちょっとおかしい子もいるけど。

 待ってくれよ、私のことはほとんど外部の魔法少女に伝わってないはずなのに、なんで半数もウイナみたいになってるんだよ……

 ともあれ、こうして逃げ出す瘴気に対する対処の目処も立った。

 後はさっきからレーザーでボコボコにされてる本体なんだけど、流石にこのままさっくり倒れてくれたり……はしないよなぁ。

 破れかぶれに行うだろう最後の攻撃に対応するため、私は他の魔法少女たちとともに異界へと再び舞い戻るのだった。

 

 

 ◯

 

 

 ――魔法少女達は、正義感が強い。

 更に半数は、コトの傍若無人っぷりに脳を焼かれて、ほとんどコトの事を知らないにもかかわらず信仰を抱き始めてるアホの集まりだ。

 だから、初めての戦場にたつことに対するモチベーションは高かった。

 

 安城コトは凄まじい。

 自分たちよりずっと強い魔法少女であるはずのアリスに勝ったミシェルを、ほとんど完勝といってもいい形で倒したという。

 しかもそのミシェルを救うために、今度はミシェルの体を蝕む魔人としての力をどうにかするそうだ。

 そんな魔法少女と戦場をともにすることの誇らしさも、どこかにはあった。

 

 

 実際の現場を目にするまでは。

 

 

 そこは地獄だった。

 一生降り注ぐばかみたいな量のレーザー。

 そこから飛び出した黒い手のひらみたいなものが、追い打ちのレーザーでずたずたにされていく。

 思ってしまった、思ってはいけないことを。

 

 ――キモッ。

 

 この時、コトとウイナを除いたすべての魔法少女と、逃げ回る手のひらが、感情が完全に一つになった。

 コトを信奉し始めている連中も、流石にまだウイナのレベルには到達していなかったのだ――




次回決着です。
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