強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
私がえちえち魔法少女赤ちゃんとかいう誰が得するんだか考えたくもない存在になってから、九年。
特に何事もなく、私は過ごしていた。
いや、案外何も起きないもんだね。
正確に言うと小学校に上がるまでは死にかけてたんだけど、現在は至って元気である。
あのあとすぐ魔法少女がすっ飛んでくるかとおもったけど、そんなことはないし。
魔物の類もあれから見かけてはいない。
人目につくわけにもいかないし、私自身の体が弱かったのもあって最初の数年はおとなしく過ごした。
途中から少しずつ魔法少女に変身してできることを試すようになったけど、正直想像の域を出ることはなくて少しがっかりだ。
空から下界を見下ろせる。
飛べる。
魔力を弾丸にして放てる。
私の基本魔法はこんなところだった。
どう考えても砂構成なんだけど、私のクソエイムが足を引っ張りすぎだろ。
他に特にできることはなく、これが器用な方なのか不器用な方なのか、私には判別がつかない。
まあ、練習の際に
そんなこんなで経過した九年。
私はすっかり女子小学生としての生活に慣れ始めていた。
「お姉ー、おいてかないでよー!」
「置いてってないだろ、ウイナがぼーっとしてて遅れてるだけじゃないか」
「だってえ、猫かわいかったんだもん」
ランドセルを背負って、双子の妹であるウイナと並んで歩く。
なんとなくその方が収まりがいいだろうという安易な理由で揃えられた双子コーデ。
紫のセミロングとピンクのポニーテール以外は上から下までそっくりな私とウイナは、二人で自宅を目指していた。
「ほんっと、猫さん可愛かったなぁ、うちでも飼いたいなぁ」
「随分とご機嫌だな、母さんに頼んでみるか?」
「ダメって言われるに決まってるよー、アタシには無理だって」
「ウイナは十分頑張ってると思うけどなぁ」
ついさっきまで、路上で寝転がっていた猫をウイナが可愛がっていて、私はそれを遠巻きに見ていた。
猫は私からなんか逃げるからな、ウイナの楽しみを邪魔してはいけない。
それからウイナが概ね満足したところで私が先に行く素ぶりを見せ、ウイナがついてくる。
いつもと変わらない光景だ。
車が行き交う道の歩道を、私が右、ウイナが左に並んで手を繋ぎながら歩く。
側から見れば、仲のいい姉妹にしか見えないだろう。
実際その通りである。
「帰ったら宿題からやろうな」
「えー、アタシ、ポテチ食べたい」
「食べながらでもできる。それに今日はウイナが苦手な算数が多めに出てるんだ。早めにすませておいた方が楽だろ?」
「そうだけどぉ……あうっ!」
「おっと!」
二人で話をしていると、ウイナが何もないところで躓いて転びそうになる。
こうなることを見越して、ちょっと恥ずかしいけど手を繋いでいるんだ。
さっと手を引いてウイナが倒れないよう支えた。
「ご、ごめんねお姉!」
「いいんだよ。ウイナがドジなのはいつものことだから」
「うー、ドジじゃないもん!」
ウイナは考え事をしていて前が見えていなかったり、テスト用紙に名前を書き忘れて0点を喰らったりすることがたまにある。
これを一般的にドジと言うので、私はウイナから目が離せないのだ。
実を言うと、これは私が魔法少女としてあまり行動を起こさなかった要因でもある。
まず、子供だから一人で外に出ることは難しい。
私は飛べるんだから、飛んでいけばこっそり外に出て、帰ってくることもできるだろうけど、見つかるのは避けたい。
どうも、魔法は人には見えないみたいなんだけど魔法少女姿は普通に視認できるっぽいんだよな。
赤ん坊の頃のウイナが明らかに見えてる反応だったし。
そこに加えてウイナのドジだ。
本当にウイナは放って置けないおっちょこちょいで、それでいて本人は好奇心旺盛であっちへフラフラこっちへフラフラしてしまう。
幼い子供なんて一瞬目を離した隙に、どこかへ行ってしまうのである。
それでウイナがいなくなったりしたら耐えられない!
ただでさえ幼い頃は私の方が体が弱くて両親や祖父に心配をかけたのに、今度はウイナまで……となったら、もう!
それにウイナは世界一可愛い、愛嬌があって素直で優しくて可愛いのである。
だからそんな世界一可愛いウイナから目を離すとか犯罪以外の何物でもないのでは!!!?!?!!!!?
「お姉?」
「はっ、ごめん少し考え事してた」
「お姉はあたしに気をつけろって言ってるのに、お姉がうっかりしてちゃダメだよー!」
「ぬああ……」
むうっと膨れるウイナ。
私は思わず唸ってしまった。
な? 世界一可愛いだろ?
というわけで、ウイナから目を離せなかった私は、定期的に色々と練習するにとどまった。
あと、これも大事な要因の一つなんだけど。
ウイナってめちゃくちゃ
ピンク髪、優しくて素直、ちょっとドジ。
な? 主人公だろ?
魔法少女になるべくして生まれてきたかのような存在だ。
だからウイナがいつ魔法少女になってもいいよう、私は目を離さないことを選択したのだ。
本当は魔法少女にならないのが一番いいんだけど、割とポンと魔法少女になってしまうのは赤ん坊の頃の私が証明している。
とにかくそばでウイナを見守ることが肝心だと、私は考えていた。
そんな時、ふと私の感覚に懐かしい気配。
これは……九年ぶりか。
「ウイナ、早く帰るぞ」
「え、あ、ど、どうしたのお姉ー!?」
私はウイナの手を引いて歩くスピードを少し上げながら、振り返る。
◯
それから家にウイナを置いて、いい感じに言いくるめて外へ出る。
ウイナを一人にするのは心配だけど、かと言って現場に連れて行くわけにもいかない。
自宅に置いて一人で出るのが、一番ベターな選択だ。
「こいつは……
たどり着いたのは人気のない公園。
人がいないのは本当に助かる。
あの衣装、あんま人に見られたくないしなあ。
それはそれとして、現れたのは以前見かけた魔物とは少し雰囲気の違う存在だった。
明らかに人型なのだ。
人型である以外は、人間らしい姿はしていない。
ベースは西洋の騎士甲冑みたいな感じだが、腕が何本もあったり、後ろ足みたいなものが付いていたりする。
すぐにピンと来た。
「こいつ……元魔法少女か!」
魔法少女がストレスを溜めたりすると、異形の怪物になってしまうのは某魔法少女アニメの衝撃的な設定だった。
こいつも似たような経緯でこうなってしまった可能性は……正直ある。
困ったな、以前の魔物みたいにポンとやって終わりとはいかないぞ。
『オオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!』
「……っ、くるか!」
私は即座に意識を切り替える。
体内に宿る魔力を、自分の身に纏うようなイメージ。
手を翳して、少しポーズみたいなものを取る。
そして、私の体を光が包んだ。
それから変身バンクみたいなのが流れて私は変身する。
衣装は黒と紫を基調にして、ヘソと横腹が空いててレオタード。
これ、魔法少女のクールライバルっぽいデザインだよなあ。
人前に出るには覚悟のいるハイレグが如何にもそれっぽい。
頼むからウイナのデザインは正統派主人公であってくれ……!
というのはさておいて。
「流石に、このまま退治するわけには行かないよな、元人間っぽいしこいつ……!」
迫ってくる西洋甲冑に、手で銃のジェスチャーを作って向けながら、こぼす。
ただの魔物ならともかく、元人間っぽい相手を倒すってのは少し躊躇いが生まれてしまう。
「だったら……試してみるか!」
私は、ある魔法を使うことにした。
それは”非殺傷”の魔法だ。
私が放つ光線の魔法に、相手を殺さないという意志を載せて放つ。
正確に言えば、魔物が発生する原因である禍々しい気配――黒いモヤのようなものだけを排除する魔法だ。
練習によって得られた
実戦で使うのは初めてなんだが、まぁ多分大丈夫だろう……というか、これが効かないといよいよもって普通にぶっぱしかやることがない。
なので、どっちにしろこれしかやることがないわけだ。
「そら!」
そうして放った弾丸は――普通に外れた。
「いや当たらん!」
なんだよもおおお!
私のクソエイムは、九年経っても改善しなかった。
そりゃまぁ前世でも改善しなかったんだから、そう簡単に改善するわけないけども。
「くそ、この!」
結果、九年前と同じく連打によって何とか当てる戦法へと切り替える。
二発、三発、四発と外し、向こうが私に接近するギリギリで何とか直撃――
『オオオオオッ!? オオッ!?!?!?!?』
勢いよく西洋甲冑は吹き飛んで、動かなくなった。
――――生きてるよな?
「お、おーい、生きてるかー……?」
『オ……オオオオッ……オオオオオオッッ』
「よかった、生きてた……」
せ、セーフ。
めちゃくちゃ体をビクビクさせて、今にも死んでしまいそうだけど、確かに生きている。
しばらく様子を見ていると、何とか痛みが収まってきたのか、明らかに息を荒らげながらもなんとか西洋甲冑は起き上がろうとしていた。
「えいっ」
『グオオオッ!!!!!!!』
いや起き上がらせちゃダメなんだわ。
私は近くまで歩み寄って、外さない距離からもう一発叩き込む。
一発外して、二発目が直撃した。
ちょっと私のエイム力くん????
「えい、えい」
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!』
それから何発も当てると、西洋甲冑は明らかに最初の気合入った咆哮よりもヤバい声をあげながら、びくんびくんとのたうち初めた。
んで、最初のうちはただ痛みに悶え苦しんでいるだけだったが、途中から様子が変わってくる。
「……なんか、テクスチャみたいなものが剥がれ落ちてるな?」
あるいは、殻が破れようとしている。
これってもしかして……もしかしなくても、アレか?
「魔法少女に、戻ろうとしている……?」
いや、完全な思いつきなんだが。
でも根元が同じならなんとかならないかなぁ、とか考えてしまう。
やるだけやってみるなら、誰も文句は言わないだろう。
「……本当に戻していいのか?」
とはいえ、そう考えてしまう自分もいる。
相手が闇堕ち魔法少女なら、その絶望はあまりに大きかろう。
そんな絶望を経験した相手にもう一度生きろなんて、傲慢だと言われればその通り。
「……いや」
そう考えた私は、しかしすぐにその考えを拭い去る。
私自身がわかっていることだろう。
「生きてるだけで……偉いだろ!」
かっこよくそう言って――しかしそこからの絵面は酷かった。
「えいえいえいえいえい」
『ンオオオオオオオオオオオオッッッッ!』
無慈悲なまでの非殺傷連打。
逆にこっちのほうが残虐じゃないかってレベルで連打して――しかし、効果はあった。
だんだんと全長二メートル以上はある巨体が崩れていく。
後ろ足のようなものが消えて、チリになっていくのだ。
そして中から、意識を失った少女が現れた。
よし、と思いながらその少女に視線を向けると――私は気づいてしまった。
「お姫様……!?」
その姿が、一言で言うなら西洋の数百年前のお姫様みたいな格好をしていたからだ。
絵画とかで、よくみるやつ。
ええと……そっちは想定してなかったなあ!?
えいえい(非殺傷なだけのクソ痛いレーザー)