強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
それから、祖父を説き伏せてアリスを祖父の家で保護してもらえることになった。
説き伏せてっていうのは、何も言わずにOKしそうになったのを、ブローチの代価って名目にすることだな。
私にダダ甘なのはいいんだけど、だからと言ってよくわからない出所から子どもを拾ってきて保護してくれなんて頼み、子供のおねだりだけで決めていいもんじゃない。
祖父と、なんならアリスにもやんわり真面目すぎるって言われたけど、そこはまあ性分ってことで。
で、あとは祖父に頼んでアリスの戸籍を用意してもらう。
アリスはある日倒れていたところを私が発見。記憶喪失で行くあてがないというカバーストーリーを徹底してもらった。
さらに祖父の伝手で医者からいい感じに診断書を出してもらい、警察にもうまく説明。
下手すると施設送りになるからな、数百年前の令嬢を施設に一人で放り込むとか絶対できない。
なので、色々と頑張って特例を認めてもらったわけだ。
アリスを拾ってから翌日には色々と手続きをすませたが、ここからが長い。
身元不明の子供が新たな戸籍を作る就籍には、半年くらいの時間がかかるのだ。
そしてその間に現代生活のチュートリアルを済ませ、アリスは学校に通うことになる。
アリスはここまで私の記憶喪失という無茶振りにも耐えてくれたからなんとかなるだろう。
その間に両親やウイナにアリスを紹介したら、なんか普通に受け入れられた。
こ、これは魔法少女もの特有のやさしくてのほほんとした家族……!
過酷なこの世界にも温かみはあったんだなあ。
いやまあ魔法少女がいる以外は普通の世界だから、暖かいところは暖かいしひどいところはひどいんだけど。
強いていうなら魔法少女の存在があったからか、前世における魔女狩りみたいなことは行われなかったとかそんな感じ。
悪いことではないな。
ちなみに、当然ながら祖父や両親にもアリスは記憶喪失として紹介しているぞ。
一つだけ気になるのは、アリスを記憶喪失として紹介する関係上、アリスは家名を名乗れないということだ。
それはアリスが誇りに思っているだろう家の名を、アリスに捨てるよう頼むのと同じ。
アリスはそれを、少しだけ複雑そうに引き受けてくれた。
それはアリスが生きていた時代から500年経っていると告げた時と、同じ反応だ。
だからきっと思うところはあるのだろうけれど、流石にそこへ土足で踏み込むわけには行かない。
もっと仲良くなってから、アリスの口から語られるのを待とう。
あと、アリスは実際には十歳らしいけど、九歳ということにしてもらった。
私と同じ学年で通ったほうが何かと話が早いですからね。
何にしても、こうしてアリスが暮らしていく土台は整った。
それから私とアリス、たまにウイナや祖父も加わって現代における生活の準備を整えつつ常識の話をする。
「ここが、私とウイナの通う学校だ」
「学校……今では一般の庶民にすら教育が行き届いているのですね!」
「それは……うちの国だと300年くらい前には、寺子屋っていう教育機関があったけど……」
「!?」
なんて、現代ギャップと日本文化へのギャップにアリスが驚いたりしつつ、今は学校を案内しているところだ。
通うのは半年くらい先になるけど、アリスも通うことになるのだから今から知っておいても悪くはない。
当然教師には根回し済みである。
「あ、コトだ。おーい、コト!」
「ん、お前らまだ学校に残ってたのか?」
と、そんな時私に声をかけてくる男子が複数名。
クラスメイトの学友だ。
今の時刻は放課後、まだ残っている生徒がいてもおかしくはない。
「それがサッカーしてたんだけどさぁ……って、そいつ誰だよ」
「そいつ、じゃない。えーと……」
「アリスです。よろしくお願いいたします」
ぺこり、とアリスは騎士の一礼。
男子達がおお……? と驚きながらもぺこりと頭を下げる。
それから私は、アリスが私の家で面倒を見ていて、少ししたらこの学校にも通うことを話す。
おおー、と男子は謎のノリでアリスに拍手をしたあと円陣を組んでヒソヒソと話し合う。
「やばくね? めっちゃ可愛いんだけど」
「安城クラスじゃね? やべー」
聞こえてるぞ、君たち。
アリスもなんかきょとんとした顔をしている。
……と思ったら一瞬ハッとした顔をして、それから少し怒った様子で男子達に近づいていく。
え、何? なんか怒ることあったか?
「お待ちいただきたい。容姿の可憐さであれば
「……ひいさま?」
「妹君……? 安城のことか?」
うわあなんか色んな呼び名が渋滞している!
というかなんか、私も可愛いだろってキレてらっしゃるアリスさん!?
ってか男子どもはこっちみんな。
「そもそも、どうしてひいさまは呼び捨てなのに妹君は姓で呼んでいるのですか」
「え、いやだって女子の名前呼ぶのは恥ずいだろ……」
「ひいさまは!?」
「コ、コトはそういうんじゃねーし!」
言いながら、なんか視線を逸らす男子。
「私だけ呼び捨てなのは、私が女だと思われてないからだろ。いつも男子に混じって遊んでるし。あと単純にウイナとかぶってややこしい」
「そ、そーだぞ。コトみたいな男女、誰が好きになるかよ!」
「ひいさまは立派なレディかと思いますが……」
いやね、割と男子と遊ぶのって楽しいんだよね。
最初のうちは大の大人が子供の遊びに混じるなんて……と思ったけど、これがなかなか童心に帰ると楽しくて仕方ない。
あと、今の時代は外での運動だけじゃなくて家でのゲームも遊びのうちだしな。
それで女子の家に複数人で遊びに行くのは前世の子供の頃でもあったことだ。
ちなみに、案外女子とも私はそこまで仲が悪くない。
こういうので男子に囲まれると嫉妬されるものかと思ってたんだが。
まあ十中八九、コミュ力おばけのウイナが常に隣にいるからなんだけど。
ウイナさまさまだな。
「そ、そーだ。コト、ちょっと助けてくれよ」
「ん、どうしたんだよ」
「サッカーやってたんだけど、ボールが木に引っ掛かっちゃってさ」
「あー」
そういえばさっき何か言いかけてたな。
アリスの発言で色々飛んじゃってた。
どうもこの時間まで男子が残ってたのは、そのサッカーボールが取れなくて苦労してたかららしい。
放置したら教師に怒られるし、学校に残っていても怒られる。
どっちにしてもやばい状況で焦っていたんだろう。
「んー、アリス。少し男子の尻拭いしてもいいか?」
「構いません。民草が悩んでいるのであれば、手を差し伸べるのが貴族の……」
「こほん」
「……私のえーと、矜持ですから」
「きぞ……なんだって?」
「気にすんな、ほらいくぞ」
まだまだ現代に慣れていないアリスのことを気にかけながら、サッカーボールを取りに行く。
辿り着くとそこには、子供どころか大人が手を伸ばしても取れない位置にボールが突き刺さっていた。
「こりゃいかん」
「そうなんだよなー、なんとかして取れねえかな」
「そうだなあ」
「……ひいさま」
トントンと、アリスが私の肩を叩く。
この状況、私の飛行魔法を使えば簡単に解決は可能だ。
とはいえ、無論そんなことをして魔法少女とバレるような真似はしない。
あと、ちゃんと考えはあるぞ。
「よし、こうしよう。おい雄太」
「な、なんだよ」
私はうんと一つ頷くと、男子の中で一番背の高いやつを指差した。
そいつは何故か目を逸らすが、構わず私は続ける。
「肩車する、肩貸せ」
「え?」
その言葉に、何故か不思議な反応を示すのはアリスだ。
なんだよ、肩車で足りない身長を補う。
合理的な案だろ?
「いえあの、ひいさま?」
「なんだどうした。ほら雄太、さっさとかがめ、いくぞー」
「お、おう」
男子は顔を伏せて、屈んで見せる。
そこに乗り込む私。
上げろと合図を出して、持ち上げさせる。
「ひいさまー!? あの、ひいさまー!?」
「なんだよ、これじゃあまだ手が届かないって話か? まあ見てなって」
私は立ち上がった男子の上で頑丈な木に手を伸ばすと、よっと飛び乗る。
木にぶら下がって、それから体を揺らして遠心力で木の上に登った。
「ひいさまー!? ダメです! いけません! あー! いけません! それは! あー!」
「いやだからなんだよ。よっこいしょっと」
そこからさらに同じ要領で木を登り、引っ掛かったサッカーボールを落とす。
男子が回収したのを見てから、木の枝を鉄棒みたいな感じで掴んで降りて、最後は低い枝から地面に着地。
うむ、我ながらなかなかの体捌きである。
幼い頃は病弱だった私も、最近は魔力のおかげか下手な男子より身体能力がいい。
だからこうやって、高いところのボールも取れるわけだ。
「おーい、ボール取れたぞ」
「う、うん」
「……あの、皆様……ええと、ひいさまはいつもこうなのですか?」
「う、うん……」
「…………心中お察しいたします」
「うん…………」
そして何故か男子達とアリスが分かり合っていた。
何なんだよ一体……
え、今の服装? いつも通りウイナとお揃いのワンピースだけど?
TSしたら男子を惑わせる必要があります。
あくまで作者のイメージだとビジュアルはデレマスの結城晴(紫髪)です。