強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ   作:暁刀魚

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六 こいつほんまに魔法少女か?

 夜、私とアリスは二人で街を見下ろしていた。

 時刻は既に日付をまたぎ、街の灯りはほとんどない。

 眠りについた街を眺めながら、私はアリスを抱えて飛んでいるのだ。

 

「これは……なんとも壮観な光景ですね……数百年で……世界はこうも変わるものですか」

「ここまで急速に変わったのは、百年とかそのくらいの話なんだよ。……そして多分、これからも急速に変わり続けていくと思う」

 

 アリスと出会ってから三日。

 諸々の手続きを終えて、アリスのあれやこれやは一段落を迎えた。

 そうなると、当然次に問題となるのは、魔法少女のこと。

 数百年前で知識が更新されていないアリスと、ぼっち魔法少女の私。

 どちらも魔法少女としての知識が少なすぎる。

 加えて、私が九年前にふっとばして以来見かけることのなかった魔物が再び姿を見せ始めているから、それをどうにかしないと行けない。

 そこで私たちは警備も兼ねて、お互いの魔法を見せ合うことになったのだ。

 他にも、こうして魔物を討伐することで外部の魔法少女に私たちの存在を察知してもらう狙いもあった。

 

「にしても、こんな高くを飛んでて怖くないか? 私は自分の力だって体が解ってるから、全然怖くないけど」

「いえ、なんということはありません。このくらいの高さなら落ちても私は無事ですから」

 

 なんとそれはまた、騎士というのは頑丈なのだなぁ。

 今のアリスは、甲冑付きドレスを身にまとった少女騎士という装いである。

 頭を全然守れてないカチューシャみたいな兜がワンポイントで可愛らしい。

 

「それにしても、平和なものですね。魔物の姿も見えませんし、私が力を振るう機会はないかもしれません」

「え? いやいや、あちこちに魔物の”種”みたいなものが渦巻いてるだろ」

「え?」

「え?」

 

 ん、私とアリスでは見えているものが違うのか?

 私には街のあちこちから、魔物が生まれる予兆――黒いモヤのようなものが見えているというのに。

 アリスは全くそれが見えていないという。

 

「これも私の固有魔法だったのか」

「いえ……ひいさま、私はそのような話、今まで一度もきいたことがありません」

「……今まで一度も? 魔物は人々のストレスや負の感情から生まれるものだろ? じゃあ、この黒いモヤがストレスや負の感情だと思うんだが、違うのか」

 

 少なくとも、アリスから魔物がそういったものから生まれることは確認済み。

 だったら、黒いモヤの存在も知られているとばかりおもっていたんだが。

 

「ひいさま。我々が魔物を感知する方法は魔力です。ひいさまのおっしゃるそれは、まだ魔物になっていないのですよね? でしたら、それに魔力は存在しないかと」

「ああ……それは確かに。今少し感知してみたけど、魔力が全然流れてない」

 

 今まで考えたこともなかった。

 見かけたら適当にぶち抜いて終わりだったし、魔物との違いも区別したことはない。

 というか、そうなるともしかして私が黒いモヤを見れるのって何かのバグみたいなものなのだろうか。

 私の方法で魔人を魔法少女に戻せるあたり、バグの可能性は結構高い。

 

「でも、どっちにしても黒いモヤを退治した方がいいのは事実だろ」

「それは……そうですね」

「だから今から、私の魔法でそれを何とかするよ」

「は、はい」

 

 いいながら、私はアリスを抱えていない手を拳銃の形にして、黒いモヤを狙う。

 なぜだかアリスがごくりと喉を慣らして、私の魔法の発動を待った。

 

「そら!」

 

 そして光が私の指先から放たれ――黒いモヤに命中しなかった。

 はい。

 

「……」

「……ひいさま?」

「……もう一発!」

「ひいさま!?」

 

 それから私は光を乱射して、なんとか黒いモヤに命中させる。

 ええい、面倒なことをさせおってからに!

 

「くそ、やっぱり私が砂なんて担ぐべきじゃないんだ! こうしてやる!」

「ひいさま!? なんですかこの膨大な量の魔力は!? え、これ全部ひいさまの魔力なのですか!? ま、まってくださいひいさま!?」

 

 私がいやになって手をかざし、九年前に開発した流星群の魔法を起動させる。

 街のいたるところにある黒いモヤにむかって、それを降り注がせるのだ。

 天から――裁きの光が降り注ぐ。

 それが黒いモヤを消し飛ばしていくのをみていると、なんだか無双ゲーで雑魚を薙ぎ払っている時みたいな爽快感がある。

 思わず笑みも溢れてくるというものだ。

 

「ははははは! いいぞー、かっこいいぞー! ……しまった。ガラにもなくはしゃいでしまった。そうだアリス、この黒いモヤなんだが、ただ黒いモヤって呼ぶのはなんだか締まらない気がするんだ。だから呼び方を瘴気ってことにしようとおもうんだが――」

 

 それから、光が収まったのを見て腕の中にいるアリスへと声をかけるのだが――

 

「……アリス?」

 

 アリスはいつの間にか消えていた。

 一体どこへ言ってしまったのだろう、と思って周囲を探すと――なんか地面に頭から突っ込んで倒れているアリスを見つけた。

 

「アリス、大丈夫か!?」

「……ひいさま、よいですか? この世界の魔法少女はアレほど膨大な魔力を普通は持っていません」

「……そんなに?」

「そんなに、です」

 

 地面に顔を突っ伏して、おしりだけ上げるポーズのままアリスから説教されてしまった……

 

「そして魔力は魔力を持つものにしか効果はありません……実際にはひいさまのいう黒いモヤ……」

「えっと、瘴気……って呼んでもらっていい?」

「……こほん、瘴気も効果はあるようですが……逆に言えば、魔法少女は魔法少女の膨大な魔力を浴びると、勢いよくふっとばされてしまうわけです」

「ダ、ダメージはないよな?」

「はい。ただ魔力があまりにも満ちてしまうと、その魔力にふっとばされるようになるわけですから……実際今も、ひいさまの魔力がすごすぎてこの状態から起き上がれませんし」

「…………ごめん」

 

 ――――――――――――――――――――――――というか。

 私がこの九年間、魔法少女と出会えなかったのは私が暴れまくったことで、魔力がこの辺り一帯を覆ってたからでは?

 私……やらかしたな?

 

「ただまぁ、変身を解除してしまえば普通に行動することはできますから」

「あ、ああなるほど……」

「なので次にやる時は、もっと強い魔力でお願いします」

「わかった……ん?」

 

 いやわかったじゃないぞ?

 今アリスはなんていった?

 なんかすごいこと言わなかったか?

 ……聞き返せない、怖くて聞き返せない!

 そしてアリスは、変身を解除して起き上がった。

 

「とりあえず……ひいさまの魔法については、概ね把握できました。とはいえ、ひいさまが魔物の種となる瘴気を払ったことで、私の出番はなさそうですね」

「あ、一応あと一つ魔法があるんだけど」

「…………とはいえ、これほどの魔力に満ちた空間、魔物にとっては格好の餌場のようなもの。おそらく周囲の魔物がそのうちこの街へやってくることになるでしょう」

 

 スルーされた!?

 

「魔法少女は魔法少女の魔力で弾き飛ばされるのに、魔物は魔法少女の魔力に引き寄せられるのか?」

「魔法少女と魔物の魔力は、先日ひいさまに教えていただいた磁石のN極とS極のようなものなのです」

「あ、アレ覚えてたんだ……アリスは物覚えがいいな」

「んひゅっ」

 

 ぽんぽんと、頭を撫でる。

 するとアリスは嬉しそうに吐息をこぼした。

 

「要するに、魔法少女と魔物は引き寄せ合うけど、魔物と魔物の魔力は反発しあい、魔法少女と魔法少女の魔力も反発しあう……と」

「ふひひ……そうですね、加えて魔物同士の反発は魔法少女同士の反発と比べると小さいという特徴もあります」

「面倒だな……」

 

 要するに魔物は群れやすいってことだろ。

 とはいえ、この世界の魔法少女的にはそれがデフォルトなんだから、私の気にするところではないか。

 

「……ところで、ひいさま」

「なんだ?」

「明日もやりますか?」

「……………………考えとく」

 

 なんでそんな、恍惚とした表情で聞いてくるんだアリス!

 もっとやってくれ、みたいな目でこっちを見るんだアリス!

 本人も自覚なさそうだけど、もしかして何か変なことを経験してこうなっちゃったのか!?

 そんな変なこと――(西洋甲冑魔人をボコボコにした時のことを思い出す)――わ、私は知らないぞ!?




魔法少女にあるまじき雑さと、罪深さを兼ね備える悲しきモンスター(クソエイム)
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