強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
私の妹、安城ウイナは天真爛漫で如何にも主人公気質な優しい女の子だ。
学校では友人も多く、ちょっとドジなことと勉強が苦手なことを除けばドコに出しても恥ずかしくない私のかわいい妹である。
特に、なんというか愛嬌がすごい。
ウイナは絶対に初対面の人には挨拶を欠かさないし、いつも相手の目を見て話すし、困っている人は見過ごせないし、背が小さくて背伸びしても届かないところにある物を取ろうとする姿がたまらないし、どれだけ苦手な勉強でも真剣に取り組もうとしているし、手先は器用だし、おしゃれだし、私と同じシャンプー使ってるはずなのに何故かいい匂いがするし、いっつも私に抱きついてきてくれるし、柔らかいし、怖がりなところがあるけれどそこがまたいいっていうか、ホラー映画を一緒に見ているとずっと隣で私の腕を抱きしめながら怖がっていて、それを見ていると癒やされるっていうか――――こほん。
ようするに、ウイナはかわいい。
今日はそんなウイナに、改めてアリスを紹介する日だ。
ここ数日、私はアリスにかかりっきりだったから、ウイナに寂しい思いをさせてしまっていたかもしれない。
なんて考えつつも、私とウイナの部屋にアリスを連れ込んだわけだが――
「じゃあ、改めて自己紹介するね。あたし安城ウイナ、よろしく!」
「よろしくお願いします。私はアリスと申します。安城家にてお世話になっております」
「どうもこれはご丁寧に……」
なんて、冗談めかして言うくらいだ、心配はなかったのだろう。
三人でウイナの好きなチョコのお菓子を広げて、それぞれの事を話し合う。
私は既にウイナもアリスもそこそこ知っているので、二人のフォローに周りつつのんびり優雅に紅茶をいただくのだ。
「じゃあじゃあ、アリスちゃんは外国の人なんだ。すごい!」
「ありがとうございます……ですがそのせいで、こうして日々の生活を送るのにも苦労する始末……安城家の皆様にはまこと多大なご迷惑を……」
「??? わかった!」
まぁ、ウイナは半分くらいアリスの言ってる内容を理解してないと思うけど。
とりあえずわかってなくてもわかったっていうのは、やめようね。
「それにしてもこのお菓子は……すごいですね、とても甘くて……食感はサクサクなのに、口の中で甘みがとろけていきます」
「ホワイトチョコのラングドシャだよ、アタシこれ好きなんだ」
「チョコ!? これがチョコなのですか!? 甘くて……固くて……しかも白い!?」
現代ギャップ!
あまりにも過去からのタイムトラベラーっぽい発言だ。
まぁ、ウイナはまったく気付いていないが。
「というわけでウイナ、アリスは色々とわかってないことが多いんだ。もしこれが何か解らないって言われたら、できるだけウイナの言葉で説明してあげてくれ」
「わかった!」
わかってないけど、聞かれたら実際私の言った通りに説明してくれるので、問題ないだろう。
ウイナに頼みたいのは、9歳の子どもとしての常識をアリスに教えること。
私だと前世の記憶もあって、年相応の考え方ってわからないんだよな。
そういう時、ウイナの存在は非常に助かる。
「じゃあえっと、アリスちゃんって何か困ってることはある?」
「困ってること、ですか……本当に色々なことが新鮮で、目が回ってしまいそうなことでしょうか」
「じゃあじゃあ――」
それから、私たちは三人で話をする。
ウイナがアリスへ矢継ぎ早に質問をして、アリスがそれに答え、私がフォローしていく。
時間というのはあっという間に過ぎていき、ウイナとアリスはどんどん仲良くなっていった。
さすがはウイナ、本当に相手の懐に入り込むのが上手い。
それでいて相手が聞いてほしくなさそうな部分は感覚的に察知して自然に避けるし、一気に入り込んだ後はうんうんと聞き役に徹している。
距離感を掴むのが上手い、こういうところは勉強になるなぁ、と私は思った。
「そうだ、アリスちゃんはアニメや漫画も知らないんだよね」
「ええそう……ですね、興味はあります。絵が動くのでしたか? とても不思議な現象です。まるで魔法のような……」
「そう、魔法!」
と、不意に話が別の方向に転がり始める。
アリス的には魔法少女としての感覚で、そういう発言をしただけなのだろうが……まずい!
ウイナはスマホを取り出して、ある画面をアリスに見せた。
「みてみて、これ魔法少女アルケミ・エミィっていうの!」
「ま、魔法少女!?」
ガバっとアリスが立ち上がって、こちらを見る。
うん、驚かせてごめんね、もう少ししたら話そうと思ってたんだけど……現代にはあるんですよ……魔法少女アニメ。
とりあえず、目配せして「大丈夫だから」とだけ伝える。
「魔法少女っていうのはね、素敵なドレスを身に着けて変身して、いろんな魔法を使うんだ」
「それは……なるほど、魔法少女ですね」
「うんうん。アタシね、魔法少女好きなの。お姉といっしょにずっと魔法少女アニメを見てたから!」
「……そうなのですか、ひいさま」
「ああまぁうん。……そのうち必要になるかと思って」
後者はアリスに聞こえる程度の小声で言った。
なんというか、ほら、アレなんだよ。
ウイナはどう考えても魔法少女になるから、今のうちに魔法少女を好きになってもらおうかなって……
それで色々見せてたら……ハマっちゃって……
「アルケミ・エミィはねぇ、とにかく作画がいいの。作監さんがすっごく気合い入れてて、一杯原画書いたんだって。アニメーターさんも熱量のある人がいっぱいあつまったから、もーどの戦闘もすっごくグリグリ動くの。声優さんの演技も素敵だし、特に十話で主人公の子が泣きながら演技するシーンはもーすっごく真に迫ってて何度も聞いちゃうっていうか……まずあのシーン自体名シーンすぎるし、アタシなんども泣いちゃってね……えぐ、えぐっ、ひぐぅ!」
「あ、あのあの!?」
「ああうん、とりあえずわからなくても大丈夫だから。むしろわからないほうがいいから」
思いっきりネタバレしてるし、語りながら泣いてるし。
ウイナは勉強は苦手だけど、熱中しているものに対する理解力の高さはとんでもないものがある。
好きなものを語ると早口オタクになるのは、なぜだか既視感があるんだけど、一体誰に似たんだろうな……
「ちなみに、そのアルケミ・エミィとはどういった物語なのですか?」
「えっと……七人の魔法少女がそれぞれの”クラス”を与えられて、殺し合いする話……? 勝つと願いが叶うかもしれない感じ!」
「????」
――そして昨今のハードな魔法少女アニメの設定に、アリスが宇宙猫となった。
まぁ……いくら自分も過酷な魔法少女世界の住人とはいえ、殺し合いまで行くとついてけないよな……
などと思いつつ、紅茶が切れたので私はおかわりを取りに行くのだった。
じょ、状況がカオス過ぎて逃げたわけではないぞ!
◯
――コトが飲み物のおかわりを取りに行った後、一通りアニメの説明を受けた後、アリスは改めてウイナを見る。
魔法少女のアニメに関しては人が変わってしまうけれど、ウイナはとてもいい子に見えた。
コトに愛されているのが伝わってきて、なんとなく微笑ましい。
魔人から人間に戻って、見知らぬ世界に放り出された。
きっと家は、もう残っていないのだろう。
寂しい、とは思う。
けれども同時に――今の自分は魔人に堕ちた身。
人としての新たな生を与えられただけでも幸運なのに、それ以上を求めるのは烏滸がましいのではないかとアリスは思ってしまう。
そしてアリスに、新たな生を与えてくれたのがコトなのだ。
だからふと、アリスはウイナに問いかけていた。
「妹君……ウイナ様は本当にひいさまのことがお好きなのですね」
「――うん」
その言葉に、何気ない様子でウイナが応える。
「だってお姉は、神様だもん」
その表情は、これまでと打って変わって穏やかなものだった。
穏やか
見ていると、吸い込まれてしまいそうな――虚無とか深淵とか、そういうものとはまた違うけれど。
広すぎる空白が、瞳の奥に宿っているように思えてならなかった。
アリスは、ゾクリと背筋を震わせる。
ちょっと家族のことを寂しく思って話しかけたら、なんか思ったものと違うものを引っ張り出してしまったのだ。
「お姉は絶対正しいし――お姉はみんなを守ってくれるし――そんなお姉を見ていると――アタシはどうしても目が離せなくなっちゃうの」
――信仰だ。
神に対する、狂信といっても差し支えない。
これまで、アリスはコトを間近でずっと見てきた。
周囲の少年達は、コトの無防備さに
そしてアリス自身も、無自覚ながらコトに新たな扉を開かれてしまった。
安城コトという少女は――どうしてこうも周囲の人間を狂わせてしまうのだろう。
そしてそう考えた時、未だにアリスはコトの奥にあるものを見ていない。
そんなことを、どうしても考えてしまうのだった。
そらコトを間近で浴び続けたらそうなるよ、みたいなお話。
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ちょっと色々変えた結果アリスが苗字を名乗っていた展開が変更になった際の修正し忘れを修正しました。