強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ 作:暁刀魚
空からすべてを薙ぎ払って、数日。
私とアリスは、何度か夜のパトロールを続けていた。
瘴気に関してはアリスが視認できない以上、私が消し飛ばすしかない。
そして私のクソエイムにより連射されるしねしね光線(仮)は一発一発がとんでもない魔力だ。
結果、少しずつ私たちが住む街に魔力が満ち始めていた。
すると当然、魔物が街に寄ってくるわけだ。
「……ようやく、私の出番ですね」
「うむ」
そんな中、アリスは嬉しそうに笑みを浮かべてそう宣言した。
ところでこの笑みは、出番が来たことの笑みなんですか? 今もなお街に充満している私の魔力を受けての笑みなんですか?
……とは、流石に聞けなかった。
怖いし。
「魔物は出現時、人間以外の動植物の姿を模倣すると言われています」
「前に見た時は狼みたいな形だったな。今回は……カラスか?」
「魔物の強さは概ねサイズに比例します。魔力がそれだけあるということですからね」
そんな私たちの前に立つのは、一メートルサイズのカラス。
赤ん坊の頃に見たのは、もっと大きい狼の魔物だったはずだ。
赤ん坊だったからサイズ差が当時と今じゃ違うというのもあるかもしれないが、それにしてもこれは流石にカラスの方が小さい。
額に宝石のようなものが在り、あれも魔物の特徴だという。
「そして私は――騎士と双剣の魔法少女! 今、その魔法をひいさまにお見せいたしましょう!」
「何かあったら、フォローにはいるからな!」
「はい。私ごとお願いします!」
「待って?」
私ごと、じゃないんですけど!?
あと、騎士と双剣――というのは、魔法少女としての通り名らしい。
その魔法少女の魔法、姿、性格、他にも様々な要因で二つまで称号を付けるのが一般的だとか。
魔法少女になったばかりで人に知られていないタイミングだと、一つだけの場合もあるらしい。
現代だとどうなってるか、まではわからないけど基本的にはそのままだろう。
そしてアリスは、その中でも特に通り名の理由がわかりやすい魔法少女だ。
「――参ります」
そう言って構えた彼女の手の中に、美しい双剣が出現した。
透き通る水晶のような、半透明の刀身。
現実にはあり得ない、硝子細工の剣。
そんな剣を両手に構え、勢いよくカラスに向かって斬りかかる。
「はあ!」
『カァ――!』
けたたましい鳴き声を上げて飛びかかるカラスを、片手の剣で受け流すようにしてからもう片方の剣で斬りかかるアリス。
一太刀を浴びせて、動きが鈍ったカラスへさらなる連撃。
一手一手がとにかく早い、速度で戦うタイプのようだ。
「これで――トドメ!」
そして最後に双剣を同時に振り抜きつつ突破、決めポーズを取ってカラスは四散した。
うーん、淀みない。
「おみごと!」
「ありがとうございます、ひいさま!」
二人してちょっとテンションが高くなって、笑顔で言葉を交わす。
それからも、私たちは出現した魔物を狩っていった。
共に戦っているとよくわかるのだが、アリスの戦闘は非常に洗練されている。
私の攻撃は……無駄が多いのだ。
隙が多いのもそうだが、向こうの攻撃が飛んでくると目を瞑っちゃったりするし、何より慌ててほとんど反撃できてない。
対するアリスは、戦術の組み立てが完璧だ。
剣をどの様に振れば戦闘が有利に進むのか、よく解っている。
――剣技、というやつなのだろう、これが。
が、それはそれとして。
「えーと……大丈夫か……アリス」
「傷はありません……心臓は……高鳴っております……」
「そっか……」
死の恐怖を感じさせてしまったからだろうな……
というのも、私が戦闘スキルクソカスなせいで、攻撃が飛んできた時に目を瞑ってうっかりビームを発射したりしてしまうのだ。
結果――起きてしまった――同士討ち――なお魔物も一緒に消し飛んだ。
「……とりあえず魔物がいない時は……特訓に付き合ってくれるか……」
「かしこまりました!」
申し訳なさで死にそうな私と、嬉しそうなアリス。
君が嬉しそうにしてる時点で私の申し訳なさが加速していくんだよーーー!
というわけで、朝は学校、放課後はアリスに現代知識の講義、夜は魔物退治と修行という三足のわらじ生活が始まった。
アリスは非常に聡明で、現代知識をみるみるうちに身に着けていく。
ウイナといっしょに魔法少女アニメを見ている影響か、オタクの道へ引きずり込まれているところがちょっと心配。
私も身体能力は悪くないので、基本的な立ち回りはそこそこさっくり解決しそうだった。
ただし、クソエイムだけはどうにもならない、空間把握能力が壊滅的なのだ。
その間にも魔物は出現し、だんだんとその強さをましていく。
そうなってくると問題なのが――このままだと九年前の二の舞になりかねないということだ。
元々、魔法少女を呼び寄せるという目的もあったのに、これでは完全に本末転倒である。
今ですらアリスがマ……過酷な状況に身を置くことに興奮を抱くようになっていなければ、戦うのが大変なくらい私の魔力が充満しているというのに。
「ふああ、というわけで、なんとかして対策を考えないと行けないよな」
「あの……ひいさま、今日は休憩にしませんか? 魔物の出現もないようですし……」
「ん? いやちょっと眠いけど、私は大丈夫だよ」
対策を立てようと夜にアリスの部屋へ行ったら、アリスから休憩を提案された。
時刻は夜の十時を過ぎたところ。
ここから普段、日付が変わるくらいまで修行をしたりパトロールをしたりするのが最近の日課。
確かにそう言われると、睡眠時間が足りないとは思ってたんだけど、そこまで心配されるほどだろうか。
「……ひいさまに助けられてしばらく、ひいさまの生活は常にお側で拝見させていただいてきました」
「……そう言われるとなんかハズいな」
「あ、いえこれはその……」
しまった、真面目な話の腰を折ってしまった。
私はこほんと咳払いをして、話を戻す。
「と、とにかく! 拝見させていただきましたが、ひいさまはとても聡明で面倒見がよいと私は思います」
「そうか……? 普通にしてるだけのつもりなんだけど」
「少年たちが取れなくなったボールを取ったこともそうです、普段の生活でウイナ様に勉強をわかりやすく教えていることもそうです! なにより、私がこうしてこの時代で生活できているのはひいさまの尽力あってのことです! 感謝してもしきれません!」
あ、う、うん。
そうね、たしかにそうだわ。
普段何気なくやってることだから、全然気にしてなかった。
「だというのに、自分のことに関しては頓着がなさすぎます! 少年達を助けた時のこともそうですし、お風呂上がりにシャツ一枚で動き回るところもそうです! アレでは少年たちやウイナ様があまりにも……あまりにも!」
「男子たちがなんだよ!? シャツ一枚は家の中だからいいだろ!?」
「そして魔法少女としての戦いが大雑把すぎます!」
「それはほんとに何も言えませんね!」
ド正論だったわ! じゃあ普段の生活も大雑把なんだろうな……
初めて指摘されたけど、反省しよう。
「と、とにかく……対策ね、対策! 私考えたんだよ、この方法なら私も寝れるし一石二鳥だと思うんだ」
「…………………………………………聞きましょう」
すっっっっっっっっっっっっっっっごい間!
「ええと、まずこの街に魔力がたまりまくってるのは、私の無駄打ちが原因だ。でもまだ臨界点には届いてない。そして臨界点に届かなければ、そこまで魔力がたまり続けるわけではないみたいなんだ。ようするに、これ以上膨大な魔力を撒き散らさなければ、そのうちなんとかなる」
「はぁ……」
「だから無駄打ちせず、的確に魔物を排除できれば問題ないんだよ」
「それができないから苦労しているのでは?」
それは……そうなんだけど。
あとあれだ、理由は不明だが九年前と比べても魔物の数が減っている。
これなら完全に魔法少女が中に入ってこれない、ということはならなさそうだ。
そのうえでもう一つ、やれることがある。
「だから
「というと……?」
「ちょっとやってみるな……よっ、と」
「あ、はい……いえ待ってください? 先に説明してください!?」
「え?」
――その瞬間。
私の視界は空に移った。
久々に、魔法越しで見下ろす夜の町並み。
最近はすっかり飛行して見下ろしてたからな。
私たちの家も、よく見える。
そしてアリスが私の隣で――
「今なんかすごい光りましたよ!?」
と言ったかと思うと、外に出てきた。
なんかこう、空を見上げてあんぐりと口を開けている。
そしてまた祖父の家の中へと戻っていく。
「ひいさま!? 空に浮かんでるあのでかい魔法陣はなんですか!?」
「でかい魔法陣? 何のことだ?」
「見えてない――!」
え、アリスは何の話をしてるんだ?
私は視界を空に移して、下界を見下ろす魔法を使っているだけなんだが――
「その魔法が、とんでもないでかい魔法陣として空に出現しているのです!」
「マジか」
私は一旦、魔法の効果を中断して外に出る。
中断はしていても、魔法とのパスは繋がっていていつでも視界をもとに戻せるようにしたのだ。
ちょっと試してみたら、できた。
んで、空を見上げると――
「クソでっかい魔法陣が空に浮かんでる――!」
「でしょう! あと言葉遣い気をつけてください!」
「ごめん!」
え、何あれ!
他人から指摘されてこなかったので、気づく機会がさっぱりなかったのである。
「…………ちなみに、ここからどうされるのですか?」
「ええと……この瞳は私の目みたいなものだから、この瞳に狙ってもらう」
「それで命中率が向上するのですね?」
「するする。んで、発射もオートにしてもらうんだよ」
こうすれば、私が狙う必要もない。
魔力も最低限で済む。
なんなら九年前みたいに、昼のうちに魔物がでてきてもそれを殲滅することが可能だ。
魔法を展開しつづければ。
「……それだと結局、魔法を展開している最中はひいさまも起きていないといけないのでは? 魔法少女は変身していないと魔法を使えませんし、変身を解除すれば魔法も解除されてしまいます」
「それは魔法に込めた魔力が少ないからだろ? もっと言えば、
だから、霧散しないくらい魔力を込めればいい。
実際九年前は、私が一瞬だけ魔法を起動させて、それを維持することで魔物を殲滅している。
同じように、魔法を維持し続ければいいのだ。
――――そこまで考えて、私はふと気付いてしまう。
おそらくアリスも、ほぼ同時に。
「…………つまり、あの魔法陣がこれから空に浮かび続ける、と?」
「…………まぁ、そうなるね」
「…………あの死ぬほど目立つ魔法陣が?」
「…………魔法少女以外には見えないし、いいじゃん?」
そうして説明を終えると、アリスは幾つかの質問をする。
なんとなくその質問は、真綿でこちらを締め付けるかのような圧迫感があった。
アリス自身の緊張が、そうさせているのだろう。
やがて、核心を突く質問に至るための、質問へと、駒を進める。
「…………もしかしなくても、既に魔法は起動済みですね?」
「…………はい」
「…………効果時間は?」
「…………多分、
へなへなと、二人して空を見上げたままへたり込む。
現在、魔物は街の中に居ないのか、魔法陣が起動する様子はない。
そして最後に、ぽつりとアリスは問いかけ、私は答えた。
「――解除は」
「――できましぇん」
さっきから何度も、解除しようと意識を向けているのに、全然解除されましぇん。
な、なんでぇ……
はい。