旧型サラミスで生きる1年戦争   作:カズkaz

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一撃を喰らったミカサは果たして生き残れるのか。そして主人公達は無事にルナIIへ辿り着けるのか。では第11話どうぞ。


11話 ルナII撤退戦③

緊急アラートと赤い警告灯の光に意識を取り戻す。

どうやら被弾の衝撃で一瞬意識が飛んでいたらしい。

 

「っ!!被害報告!副長っ!砲術長っ!」

 

「・・・っこちらCIC、私も司令も無事です。本艦の右舷第2・第4レールガンに直撃1、残り2発はピッツバーグとペトロブルクが迎撃してくれたようです。第2レールガンは全損、第4レールガンも発射は不能のようです。ただし発射直後だったお陰で誘爆などはありません。更に弾片被害で右舷対空砲も沈黙。周辺ブロックにも被害が及んでおり、既に自動隔壁にて遮密処理は済んでいます。負傷者は判明している範囲で砲術科の4名と、救助していた将兵に複数名、ただ詳細はまだ確認中です。」

 

「艦橋要員、軽傷者が数名いる程度で戦闘継続可能です。私は頭をしこたまぶつけましたが鉄頭なので平気ですっ!」

 

「っ副長、接近しているMSの迎撃は!?」

 

副長と砲術長の返答に少し安心したがまだザクは接近してきている筈だ、と気付いて叫ぶように確認する。

 

「ミサイルパンツァーを撃った3機は一度下がりました。残り5機のうち、ミサイルの迎撃放火にまぐれ当たりをした一機も同じく撤退。また残り4機のうち2機はウィンチェスターの下へ回り込もうとしたところで主砲ショットガンの直撃で撃破に成功しています。あと2機は距離を取りつつもまだ諦めていません。」

 

報告してくれたのはウィンチェスターのリューデッツ艦長だった。どうやらオレが前後不覚に陥った瞬間、咄嗟に指揮をしてくれたらしい。わずかな時間でも隙が出来なかったのはリューデッツ少佐のお陰だったか。

 

「リューデッツ艦長、恩に着る!副長、応急指揮を任せる。砲術、残りのレールガンで敵ムサイに引き続き射撃を!火を吹いた1隻は捨て置け。健在な艦から優先だ。」

 

被弾したとはいえ、ミカサはまだ戦闘継続が可能なようだ。レールガンの頑丈な発射機構がミサイル被弾の衝撃を上手く受け止める盾として機能してくれたらしい。

さすが対艦戦闘用の大型弾頭を打ち出すだけのことはある。とはいえ、もともと4門だったレールガンが半減し、しかも右舷側に撃てなくなったのはなかなかに辛い。それでも艦体に直接被弾した時に比べれば被害が抑えられたのはレールガンのお陰なのだから贅沢は言えないだろう。

敵のザクはとりあえず残り2機を警戒すれば良いだろうし、状態は悪くない。ミサイルパンツァーの3機は追加で撃ってこなかったところを見ると既に残弾がつきていたか?それとも確実に当たるところを狙っているのか?

 

「艦長、無傷のムサイ級2隻の接近速度が上がりました。距離を詰めて撃ち合うつもりのようです!現在距離150000!」

 

航海長が計器を見ながら報告する。モニターを確認すれば火が出ている1隻は回頭して撤退しつつあるが残りの2隻は一気に速度をあげたようだ。メガ粒子砲も撃ちまくっている。戦闘の影響でデブリや微細なガスも出ているのに撃ち合いをするとは。ザクが複数機撃破されて焦っているのか?

にしても艦の数ではこちらが圧倒しているのに接近戦を挑む?それとも、メガ粒子砲でこちらの注意を惹いてザクにその隙をつかせる気か?

 

「全艦に通達、接近するムサイ級に対しての砲撃は第1001巡洋艦戦隊が担う。それよりも敵のMSがその隙をついてくる可能性がある、迎撃の砲火を緩めるな。」

 

サブモニターに映るザクは、下がった3機と様子を伺っていたらしい2機が合流した。やはりこちらをまた狙っているな。距離は約70000から80000、といったところ。体勢を整えるためか、かなり離れてくれた。

 

「レールガンの統制射撃を再開します。第8斉射、目標ムサイ級α、撃ち方始め」

 

落ち着いたらしい砲術長の声を聴きつつ、意識はザクに向けたまま。どうやらミサイルが直撃したのにミカサがさほどの被害を出していないことに気付いているな。再びこちらを狙うような機動を取っている。ミサイルパンツァーもまだ弾が残っていたか。

 

更に先程からムサイ級の砲撃もこちらを狙っている。航海長がこまめな変針を指示してくれているがいつ当たるかは分からない。いかにサラミス型とはいえ、当たりどころが悪ければ一発轟沈もありうる。レパント型は言わずもがなだ。ミカサ、避けてくれよ。

 

「敵MS5機、再び接近してきます!今度も右舷側より近づく!」

 

「主砲、対空砲、右舷へ指向出来るものは全て撃て。主砲の射撃レートは維持できそうか?」

 

「右舷レールガンへ回していたエネルギーも使いますので本艦は余裕があります。ヤハギ、ウィンチェスターは残り10分程でレートを落とさねばジェネレーターが焼き付きます。」

 

「結構、それまでにやつらを撃退してやろう。航海、面舵15度、アップトリム3度。MSに正対させる。砲術、被弾面積が大きくなるがなんとかレールガンで敵ムサイ級を撃退してくれ。」

 

「「アイサー。」」

 

急速に右舷へ艦首を向けていくミカサ、そして僚艦たち。相変わらずムサイ級からの射撃は当たらないが進路を大きく変えた以上、被弾面積は増え当たる可能性は大きくなるだろう。まして相手が急速に接近してきているのだから。

だが、それを言えばこちらのレールガンだって当たりやすくなる。しかも左舷側ならミカサの生き残ったレールガンも使える。3隻合計6門を指向できるのだ。なんとか先に当てることが出来れば。それより脅威はやはりザクの方だろう。

 

「航海長、こまめな変針は引き続き頼むぞ。」

 

意識はザクに向けつつも、ムサイも注意は怠らず。

やってやる。なんとしてもルナIIまで撤退してやる。

 

メガ粒子砲の射撃光に顔を照らされながらメインモニターに映るザクを睨み付けていたオレは、だからその瞬間に気付くことが出来なかった。

 

「敵ムサイの射撃来ます!近いっ!?」

 

航路を調整するため、最もムサイを意識していた航海長の、だからこそ最も早く気付いたその叫びを認識するのとほぼ同時、ミカサの艦体が下から突き上げられた。

まさか被弾か!?

 

「ミンスクに直撃っ!!!ミ、ミンスク爆沈っ!」

 

「直撃っ!?ムサイのメガ粒子砲か!?」

 

恐らく、ミンスクの破片だろう。大小様々なデブリが下から飛んできている。くそっ、変針した直後のタイミングで照準されていたのか?変針のアップトリムをもっと大きく取っていれば良かったのか!?

応急修理が出来たと喜んでいたライエン艦長の顔が思い浮かぶ。

 

「ヤハギ、本艦との有線ケーブル断絶!ただ、ウィンチェスターとのケーブルは残存。ウィンチェスター経由での情報やり取りは可能です。本艦、ヤハギ、ウィンチェスター共に大きな被害はありません。ピッツバーグとペテルブルグからはまだ返信なし。」

 

思考が落ち着かないオレを他所に副長からの報告があがる。その声に咄嗟に指示を出す。

 

「対空迎撃そのままっ!砲術、ミンスクの仇うちだ。レールガンでムサイを沈めてやれ!」

 

ミンスクには救助兵も含めれば90名以上の人員が乗っていた。それだけの人数があの一撃で喪われたのだ。(無論、ノーマルスーツを着けていたから生き残っている人員もいるかもしれない。だが戦闘中では助けることも出来ないのだ。)その仇はなんとしても取ってやる。

 

そう思ったのはオレだけではないようだ。第221防空戦隊の唯一の生き残りとなったペテルブルグはたった一門の主砲をムサイ級に向けて撃ち始めた。ピッツバーグも変針によって射角が取れるようになった艦後方のメガ粒子砲をムサイに撃ち始める。(どうやら至近で僚艦が爆発したとはいえ、2隻の被害はそこまでないようだ。)

これでムサイを撃沈出来れば、補給を絶たれるザクも別の遊撃部隊に合流するために撤退してくれるかもしれない。

 

ザクへの対処を次々と指示しつつ、今度はムサイの方を映したサブモニターを注視していたオレは、今度は遅れること無くその変化に気付くことが出来た。

 

急に接近しているムサイのうち、左舷側(仮の名称をβと付けていたヤツだ)の1隻が爆発したのだ。ムサイ後方からの射撃によって。

 

後方。そう、後方だ。味方の艦が生きていたのか?

戦闘中とはいえ生存していそうな艦があれば監視員からの報告にありそうだが。

 

「敵ムサイ級後方より射撃あり!?これはっ、マゼラン型です!艦籍照合・・・第3艦隊、第33戦隊の戦艦テオティワカンです!」

 

映し出されたマゼラン型は、だがとても生きているようには見えない。名前の通り、密林に埋もれたボロボロの遺跡のようだ。

主艦橋と右舷副艦橋は潰れ、艦体も穴だらけだ。推進機にも火は見えない。死んでいるように偽装していたのか?

 

だが、そのボロボロのマゼランの艦首主砲がゆっくりと動き、また火を噴いた!

そして至近距離を横腹を見せて航行していた健在のムサイを撃ち抜く!また撃沈だ!

 

 

こちらへ接近していたザクも母艦2隻が立て続けに沈んだことに動揺したのか、機体を翻して先に撤退しつつあった被弾したムサイ級の方へと退避していく。

 

だが、そのムサイにもマゼラン型は主砲を向けつつある。そして・・・撃った!

 

だが、さすがに距離を取りつつあったからか、残りの1隻のムサイには当たらず、そしてそのムサイから発光弾が打ち上げられた。撤退信号か?

 

 

 

そうして我々の戦闘はマゼランの登場によって急に終わったのだった。

 

「・・・戦闘終了。艦隊の速度を落とせ。ミンスク撃沈地点へ艦載艇を発進、救助作業に当たるように!

それとあのマゼラン型に、テオティワカンにも連絡を取れ!

救援を謝す、とな。」

 

オレの指示に、急展開にしばし茫然としていた艦橋要員が思い出したように動き出す。

その声を聴きながら、オレの視線はまだ射撃を続けるマゼラン型の艦影に向けられていた。

 

 

 

救援は謝す。救援は。だが、あと5分早く救援してほしかったぜ。マゼランさんよ。

恨みがましい目付きでモニターに映るテオティワカンを見つめるオレは90名の命が一瞬で喪われた揺れがまだ続いてるように感じていた。




はい、ということでルナIIへの撤退戦③です。
せっかく合流出来ていた味方が1隻、喪われてしまいました。レパント型は小型のミサイルフリゲートなので、格上のムサイ級軽巡洋艦の射撃が当たれば一溜りもありません。
個人的にはミンスクのライエン艦長を退場にするかどうか悩んでいたのですが、ネームドキャラが多すぎるとややこしくなるので(既に艦名でややこしいと言われそう。)
撃沈、退場とさせていただきました。
また、ミンスクを沈めたムサイの射撃ですが、実はミンスクを狙ったのではなく、無傷のヤハギを狙った物が逸れて、後方のミンスクに当たってしまったものです。
ムサイ側からすれば、レパント型よりサラミス型、更に言えば被弾損傷したミカサより無傷のヤハギを狙うのはある意味で当然ですからね。(ウィンチェスターは面舵を取ったことでヤハギやミカサの影に隠れています。)

そして今話最後にはマゼラン型も登場です。
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