ては、どうぞ。
ジオンの掃討部隊に苦戦していたオレたちを救ってくれたマゼラン型戦艦テオティワカンは、第3艦隊の母艦部隊を直掩するための1隻として、第一連合艦隊の左翼後方に位置していた艦だったらしい。
だが、ジオンのMS部隊、要はザクの奇襲によって早々に艦橋破壊、艦体へミサイル複数発の被弾により、戦闘・航行能力を喪って漂流するデブリの1つとなってしまっていたのだ。周囲の味方が次々と沈み、デブリが多くなる中で、テオティワカンの艦内は暴走しかけた核融合炉の修理や、遮密処理に追われていたのだという。
そして気付いた時には周囲に健在な味方は1隻もなく、また航行能力も殆んどないテオティワカンと、生き残ったその乗員58名は酸素を節約しながら約半日の間、交代で周辺監視をしながらもう助からないのではないかと言う不安とも闘っていたのだ。
我々からすれば、至近といって良い距離(といっても100キロ近く離れてはいたのだが)での戦闘も、ちょうど破壊された副艦橋側だったために気付くのが遅れ、ミンスクの爆発光によってやっと戦闘に気付けた程だった。
そこから大急ぎで低出力しか出せない主機を回し、砲撃をしたのが先程、という訳だったのだ。
とはいえ、そのお陰で無防備なムサイの横腹を撃ち抜けたのだから、助けられた我々が文句を言うべきではないだろう。
「仔細承知した。そこでだ、中尉。我々は所属こそ違うが同じ連邦軍だ。このまま合同しルナIIに撤退してはどうかと思うがどうだろう。所属については私の権限でどうとでもなるし今は非常時だからな。」
CICからモニター越しにそう言うクレッチマー司令と相対するのはテオティワカンで現在指揮を執るオルヘン中尉だ。こちらもモニター越しだが明らかに顔色が悪い。本来ならテオティワカンの次席航海士だったのが、副艦橋にいたために軒並み全滅したテオティワカン本来の上層部に代わり、生き残りとなった中で最高位ということで急遽指揮官となっている。まだ20代半ばの青年だ。
彼からしてみれば雲の上のような存在(司令)に、どうだろうと質問(という体裁を取った事実上の命令)を
突き付けられては生きた心地がしないだろうしこの顔色も仕方ない。
(せっかく友軍に合同できたのにこれは少々可哀想か)
先の戦闘の被害で受けた損傷への対処や切断したヤハギとの有線ケーブルの再接続などの指示を出しながら聞いていた司令と中尉の会話にそう感じたオレは助け船を出すことにする。
「司令、テオティワカン乗員はこのままでは全滅するのみです。そこは合同せよ、と仰るべきかと。中尉も最初から命令として指示された方がありがたいと思いますよ。」
「おっと、それもそうだな。よし、オルヘン中尉、テオティワカンを指揮し、我々臨時編成部隊に合同せよ。推進器の損傷が大きいテオティワカンは我々のサラミスで牽引するぞ。コープ少佐出来るかね?」
ハッとした表情のクレッチマー司令がそう言うと明らかに中尉はほっとした様子だ。
それに苦笑しつつもオレは気付かない振りですませることにする。
「ヤハギとのケーブル接続と併せ、本艦、ヤハギ、ウィンチェスターの3隻でテオティワカンを牽引する準備は進めています。テオティワカンの推進器が安定稼働出来るのは第一巡航速度までとのことですが、先のジオン部隊が援軍を引き連れて戻ってくる可能性もありますし、第三巡航速度、いや出来れば第一戦速までは上げたいところですから。」
「マゼラン程の質量を速やかに加速させるにはサラミス3隻かがりが必要か。よし、それで進めてくれ。
ミンスクの救助はどうなったかね?」
「残念ながら、ミンスク乗員の生存者は見つかっていません。主機に直撃だったようなので仮に投げ出された乗員がいても爆発の火に焼かれてしまったでしょう。ただ、周辺の友軍艦からは複数の生存者を救助できています。現在、18名。」
司令の質問に答えたのは現在、本艦の艦載艇発着司令所で5隻の艦載艇を統一指揮してミンスクと周辺のデブリとなった艦から救助作業を指図していた副長だ。
テオティワカンとの合同のために一時的に部隊の行き足を抑えていたので、短時間でも救助作業を効率的にするためにCICから移動していたのだが、やはりミンスク乗員は助けられなかったか。
「副長、テオティワカンとのケーブル接続完了は3時間後の◯三四◯の予定だ。それまでに艦載艇は戻してくれ。」
「了解しました、艦長。ただ、周辺の艦の状態からも、これ以上の生存者は可能性が低そうです。我々の物資にも余裕がありませんし、切り上げてもよろしいかと。言いにくいことですが。」
渋い表情の副長がそう報告する。確かに、先程の戦闘での消費もあり、物資の在庫はかなり少なくなっている。生存者を助けようとして我々も助からなくなっては本末転倒か。
「クレッチマー司令、いかがいたしますか?」
「厳しいようだが、まずは我々も生き延びねばならん。救助作業については現時刻をもって終了としてくれ。副長、ご苦労だった。」
「いえ、小官は出来ることをしたのみです。部下達が精一杯働いてくれたからです。」
「ああ、ありがとう。」
その司令の言葉を合図に、我々はまたそれぞれの仕事に掛かる。ジオンの掃討部隊にまた出くわす前になんとかルナIIへの加速を行いたい。
ジリジリと身を焼かれるような焦燥感に苛まれつつも、なんとか第1001巡洋艦戦隊は戦艦テオティワカンの牽引準備を整えることが出来た。
ピッツバーグはテオティワカンの右舷側、ペテルブルグは左舷側に位置して艦隊陣形を取る。
ルナIIへの艦隊加速を始めた時には安堵感と、ここまでの疲労感に思わずため息が出た程だ。
それからも時折、望遠距離にて戦闘の光を確認しながらもルウム宙域を脱出することに成功した我々6隻は
0079年1月19日、ルナIIの巨大な影と、そのそこそこに光る港湾や施設の光を前方に捉えることになった。
ルウム戦役から4日後にルナIIの管制宙域へと辿り着いたのだ。
オレを含めたミカサ、ヤハギ、ウィンチェスター、ピッツバーグ、ペテルブルグ、テオティワカンの6隻の乗員478名と、救助した将兵235名、合わせて703名のルウム戦役はこうして終わった。
遅くなりましたが、12話を投稿させていただきます。
しばらく仕事が忙しくなりそうで、不定期投稿となることをご了承ください。
また、ご感想や誤字のご報告もありがとうございます。
誤字についてですが、一点言い訳を。
本文中でザクの使用するミサイルを『ミサイルパンツァー』と表記しています。
この点を、「パンツァーファウスト」ではないか、とのご指摘を複数頂いています。
確かに、第2次大戦時にドイツが使用した対戦車兵器の名称は「パンツァーファウスト」なのですが、その名称をそのまま使用した場合、史実の兵器のことなのか、ザクの使用する兵器なのか分かりにくいのではないか、と筆者が考えたため、造語としての『ミサイルパンツァー』を使用しています。
お目汚しではありますが、この作品内ではそういう名前になった、ということでお許しいただけますと助かります。