旧型サラミスで生きる1年戦争   作:カズkaz

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犠牲を出しつつも無事にルナIIへと撤退することに成功した主人公たち。今話ではルウム戦役での総括と主人公たちの取った戦術について、連邦軍がどういう反応をするのか、について書いてみようと思います。
では、13話どうぞ。


13話 対策会議

ルナIIへと我々が辿り着いたU.C.0079年1月19日時点では、ルナIIには連邦軍の第一連合艦隊が敗北した、という情報は連邦に入っていても、実際の撤退艦はまだそう多くなく、会戦の詳細についてはまだまだ判明していないタイミングだった。

 

『連邦軍が負けたらしい。』

『1週間戦争での痛手に続けて艦隊戦でも敗北するだなんて、ジオンはそこまで強大なのか?』

『ルナIIにもジオンが攻め込んできて、ここも陥落してしまうのではないか。』

 

情報が限られることから来る疑心暗鬼に苛まれる最中、

そこに損傷が大きかったり、所属がバラバラだったりするとはいえ、マゼラン型1隻・サラミス型4隻・レパント型1隻の計6隻から為るそれなりの規模の艦隊が帰着したのだから、ルナIIに配属された将兵たちの関心は高かった。

そこに第4艦隊司令のクレッチマー准将が座乗しているとなれば尚更だ。

 

管制との通信が出来るようになると矢継ぎ早にされる質問、というか最早尋問のそれに応えつつ、ミカサ始め6隻の艦艇はルナII第4ポートに案内された。

 

ルナII。連邦軍にとって宇宙空間最大の拠点にして、今や殆んど唯一の宇宙における拠点となったこの大要塞はその名の通り第2の月と呼ばれる程に巨大な小惑星をくりぬいて作られた小惑星基地だ。

元々は宇宙世紀の開幕直後、多数のコロニー群を建造する為の材料を採取するために火星以遠の小惑星帯から移設された小惑星ジュノーがその前身となる。全長180kmというその巨体は、重金属を採取した後とはいえ圧倒的な質量と広大な内部空間を有しており、単体でも長期間に渡って戦力を維持し続けることが可能な基地として連邦軍の宇宙戦略の要石であり続けた。

 

数十もの港湾区画が設置されているそんなルナIIだが、第4ポートは特に重要な艦艇、例えば艦隊旗艦や試作艦たるペガサス型などの艦艇が多く係留される港湾区画だ。

 

普段、我々第1001巡洋艦戦隊が係留されていた2桁台の港湾区画と違い、1度に3隻から4隻ずつ入出港ができるほど広々とした入港トンネルを抜けたそこには、多数の出迎えがおり、なんとその中にはルナII基地司令の職にあるアムンゼン中将の姿まであった。

 

これにはさすがのクレッチマー司令も驚いた様子で、ミカサの係留が完了するのもそこそこに中将のところへ向かうために艦橋基部のハッチへと移動している。

 

最も、アムンゼン中将の側でもクレッチマー司令がサラミス型のミカサから出てきたことに驚いた様子だ。

いくらボロボロとはいえマゼラン型が同航していたのでてっきりそちらが座乗艦だと考えていたらしい。(入港指示の際に、ミカサに乗艦されていることは伝えていたのだが)

 

頭の片隅でそんなことを考えつつも、ミカサを始めとした各艦は救助した将兵のうち怪我をしている人員の輸送や、補修・補給物資の手配、更に戦闘記録の報告などに大忙しとなった。艦長であるオレもその指示にバタバタでしばらくはクレッチマー司令のことを気にする暇も無さそうだ。

 

特にテオティワカンは損傷が酷すぎて、修理ではなく部品取りにされるかもしれない、という話も港湾区画の管理責任を担う少佐からは伝えられた。所属が第3艦隊なので、詳しくはそちら側の後方勤務部隊が決定することになるようだ。

オルヘン中尉からすればせっかく連れ帰れた乗艦がそんな扱いをされるのは悲しいだろうが、これから更にたくさんの損傷艦がルナIIへ撤退してくることを考えれば仕方ないのかも知れない。

 

ともかく、ミカサも右舷側の損傷修理と補給を進めなくてはいけない。特に難物なのが完全に破壊されてしまったレールガンだ。ミカサにとっては強力な対艦兵器なのだが、現行のサラミス型マゼラン型には搭載されていないせいで量産されていない装備だからだ。いくらかあった先行量産の同型艦から取り外されたレールガンはルナIIの外壁面に取り付けられている筈だが、そちらをわざわざミカサに回してくれるとも思えない。ヤハギやウィンチェスターと任務を行うことを考えれば、装備は出来るだけ統一しておきたいのだが。

 

そんなことを考えるうちに三々五々、我々以外にもルウム宙域を脱出した艦がルナIIに辿り着き始めた。艦隊を組んで撤退してこられたのは稀で、殆んどは単艦だ。損傷が大きい艦もかなりおり、中には沈んでいないのが不思議なくらいのものもいる。

ミカサの修理については、やはり損傷したレールガンの代わりは手に入らないらしく、左右のバランスを取るために左舷側のレールガンを一門、右舷側に移設することになった。純粋な対艦打撃力が低下することを危惧してなんとかならないか、とごねてみたのだが、

 

『戦力的に優る通常生産型のサラミス型を優先するのでお前らは早く補修ポートを空けろ』

 

と遠回しに言われてしまっては仕方がない。直してもらえるだけ良しとしなくてはならないと考えよう。

ヤハギやウィンチェスターは弾片被害による損傷の修理がほぼ終わり、明日には修理ポートから一般の港湾ポートへ移る予定だ。一方で第35巡洋艦戦隊の生き残りピッツバーグはレーダー系の再装備とその調整に時間が掛かるようで、まだしばらくはミカサと舳先を並べて修理することになるらしい。そしてミタス大尉は正式にピッツバーグ艦長に任じられることになった。今は修理の手配に大忙しだ。

第221防空戦隊のペテルブルグはルナII駐留のレパント型を僚艦とし、第221防空戦隊を再編、その旗艦になる事が決まった。とはいえ、ルウム戦役でレパント型の脆さが露見した以上、今後は警戒監視くらいにしか使えないのではないか、と噂も出始めている。

それでもルウム戦役を生き残った幸運艦扱いをされていて困る、とはペテルブルグ艦長の言だ。

 

そういえば、昨日、1月28日にジオンからサイド6を経由して休戦条約の申し入れがあった。地球連邦への事実上の降伏勧告となるようだ。

尤も、ルナIIでは降伏なんて認められない、と言う意見が大きい。特にルウム戦役から生き延びた艦の将兵は雪辱を晴らしたい、と考える者が多いからだ。だが地上、特にジャブローでは休戦やむなしの声が上がっているようで、宇宙との温度差はかなりある。

 

そしてオレは、というと内心ではレビル将軍の演説から戦争継続となることを知っているので、必死になって乗艦修理に当たっているという訳だ。

 

だがその思惑とは別に、修理の手配が一通り済んだ頃から第4艦隊司令部に何度も呼ばれ、その司令部区画に缶詰めにされている。オレが考えた色々な戦術のうち、有効なものはどれか、他の艦に応用できる策はあるか、検討するためで、ここ2日ほどは艦の修理も副長に任せっきりだ。

 

「ですから、修理時の測定でも出ているように、メガ粒子砲のショットガン運用は、緊急時のみとするべきだと考えるのです。ルウム前に換装したばかりの前部第2主砲が帰還時には内径が4センチも広がり、使用に耐えないほどだったんですよ。記録では第2主砲の発砲数は80回。通常の砲身命数の2割も使わないうちに限界が来てしまったのですから。通常時からこんな射撃をしていてはいざというときに主砲が使えなくなってしまう可能性が高いです。実際に最後のムサイ級3隻との遭遇戦では、射撃の精度がかなり落ちていました。」

 

修理と並行して徹底的に行われている調査で分かったショットガン運用の弱点。想定以上に砲身の消耗が激しいことを力説するも、相手側もそれ以上のゴリ押しで戦術教本に載せたい、と言ってくる。

 

「とは言え、だコープ少佐。現状のマゼラン、サラミス両型の防空性能では敵のMS兵器、確かザクIIだったな。それに容易く取りつかれてしまうのだ。そういった意味で貴官らのショットガン運用は誠に魅力的な対策。例えば砲撃数を制限するとかすればどうだね?」

 

「敵が迫ってきている時に砲撃数を気にして手控えろ、と?それこそ艦の命運を握るものとしては容認できません。」

 

昨日の休戦条約の申し入れ以降、クレッチマー司令も司令部の要員も一層戦術の見直しに必死になっている。やはり第4艦隊司令部も戦争継続派か。(ちなみに、第4艦隊司令部は先のルウム戦役でクレッチマー司令と一緒に脱出したものの重症の参謀長を除いて戦死かM.I.Aだ。ここにいる要員のほとんどはルナIIに残留していた後方要員と新しく任命された参謀たちである。)

 

押し問答の末、緊急時は砲撃制限を解除し、ショットガン運用も可能、とすることで第4艦隊の教本をまず改訂することになった。

おいおい、砲身の寿命が短くなって交換もままならなくなるぞ?

 

ともあれ、採用できないと早々に判断した立体陣形とちがい、教本に載せることになったショットガン戦術のため、ミカサや第1001巡洋艦戦隊の戦闘記録をまとめなくてはならなくなったオレは司令部の出口に向かう。

 

「ああ、コープ少佐。もう少しいいかね?」

 

まさに今、司令部から退出しかけたオレを呼び止めたのは先程、基地司令との打ち合わせから戻ってきたクレッチマー司令だ。

 

我々が帰還したあの後、ルウムから撤退した第4艦隊所属のマゼラン型が、カニンガン司令の戦死を報告してきた。ルウムに出撃した艦隊司令のうち、レビル将軍は捕虜(これも、オレ以外の人にとってはジオンからの休戦条約の申し入れの際に判明したことだ。)

カニンガン司令は戦死、別戦線だったティアンム中将はジオンを牽制しながら帰還途中、第3艦隊司令もM.I.A、そしてクレッチマー司令は帰還、となる。現在のルナIIで健在の艦隊司令官はクレッチマー司令ただ1人なのだ。残存艦隊の指揮や運営について、基地司令と決めることが山のようにあるようでクレッチマー司令の目の下の隈もすごいことになっている。

 

「司令、かなりお疲れのようですが大丈夫ですか?少しは休まれた方が・・・」

 

「ありがとう、少佐。だが今の混乱状態を脱するまでは無理をしなくては連邦唯一となった宇宙拠点まで失うことになりかねないのでな。少佐も知っているだろう?ルウムの各バンチの惨状は。」

 

疲れた様子で、だが断固とした声でそう話すクレッチマー司令。確かにコロニー内での地上戦、という考えられないような悲劇が現在進行形で起こっているルウムでは、もはや無傷のコロニーは存在しないらしい。多くの市民とコロニーが失われ、辛うじて居住出来るバンチの中も他のバンチから避難した市民や怪我人と機能低下したコロニーに、早々に救援が必要な状態だという。

 

だが、連邦軍にその救援の余裕はなく、現在は中立を宣言している、サイド6リーアがジオンに通告の上で救難船をだそうとしているところだ。

(確か、この避難民を受け入れてサイド6は国力をのばすんだったか?)

 

頭の中で考えつつもクレッチマー司令に向き直るが、司令もお忙しいだろうにどうしたのだろうか?

 

「済まんな、少佐。早く乗艦に戻りたいところを呼び止めて。実はミカサの修理についてのことなのだ。」

 

 

「ミカサの、ですか?まさかレールガンを融通してもらえることになったのですか!?」

 

思わず大声を出したオレを苦笑しつつ、司令は首を振る。何だ違うのか?

 

「いや、済まん。レールガンはやはりルナII防衛のため外せないそうだ。代わりになんとかミカサの戦力を上げられないか、と基地の工廠部とも話していたのだが、先程面白い提案を受けてね。」

 

「・・・面白い、提案ですか?」

 

「あぁ、そんなに警戒しないでくれ。一応、私も良い案だと思って少佐に伝えることにしたんだ。実は一週間戦争の際に、コロニー迎撃に出ていたサラミス型で損傷した艦があってね。その艦の修理で行った改修をミカサにもどうだろうか、と提案されたんだよ。」

 

ごそごそと司令部の机上モニターに持っていた端末からデータを移しながら話すクレッチマー司令。

サラミス型の改修?そんな艦、一年戦争の序盤も序盤で出ていたか?

 

脳内の朧気なガンダム知識を振り替えるも思い付くものがなく、オレの頭の上にはハテナマークが乱れ飛ぶ。自艦が改修される、となれば命に関わる。一体どんな改修案だ?

 

疑問だらけで司令の写し出した概要図を見たオレは思わず叫んでしまった。

 

「ってこれ、ネルソン型軽空母じゃないかっ!?」

 

ドヤ、とした顔のクレッチマー司令がオレの叫び声を聞いてなぜ知っている!?と混乱した顔になるが、

 

オレもオレで混乱していた。

 




ということでルウム戦役から帰還した主人公たち。その後についての報告会とミカサの改装回です。
実は一年戦争の艦艇の中でも、無理矢理改装のネルソン型軽空母、大好きなんですよね。ということでミカサ先輩にもその姿になっていただこうと思います。
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