新たに戦力として加わった航空隊はうまく機能するのか。
ではご覧ください。
2週間の訓練期間はあっという間に過ぎ、第1001巡洋艦戦隊は今日、3月5日からルナIIから地球にかけての哨戒任務につくことになった。
連日の訓練で、改装による艦排水量や重心に大きな変化のあったミカサの新しい癖もなんとか把握できた。(ただし航海長はまだ癖の把握に納得がいっておらず、進路変更の度に転進のし始めが、などと呟いている。)
航空隊との連携も多少は取れるようになってきた。とはいえ、やはりまだまだ粗削りの部分は多い。もとがエキスパートと新兵の両方が乗り込んでいたところに航空要員まで加わったのだ。錬度的には戦隊内でミカサが一番下になってしまった。それでも旗艦に恥ずかしい真似はさせられない、と乗組員が奮起してくれたお陰でなんとか戦力化できたのだから部下には感謝しかない。
(それにしても、ネルソン型軽空母か。確かジムの搭載を前提にした改装艦で、一年戦争に間に合わなかった、と聞いたことがあったのだが。何故この世界だと開戦早々にこの艦種が出てきたんだ?しかもクレッチマー司令の勢いからして、他の損傷艦にも同じような改装を進めていそうだし)
ジオンの地球降下部隊への嫌がらせ、もとい補給降下部隊の撃沈(奴らHLVを降下させるのに原作と同じく民間輸送船まで徴発していやがる)のための哨戒部隊として第1001巡洋艦戦隊も4日間の作戦期間の予定でルナIIを出港している。
現状、3月1日に始まったジオンの第2次地球降下作戦は北米各地に対して行われ、既にキャニフォルニア近郊にまで攻め込まれている。ヨーロッパではオデーサ(オデッサ)が陥落し、基地化が進められているとの事だ。
これらの大量の地上部隊を維持するために、毎日多くのHLVが投下されており、それを少しでも撃ち落とす事が出来れば戦局に寄与できるだろう、というのが作戦目的である。
(この中でミカサの艦載機運用についても実地試験を行え、と言うことか。噂じゃ改装1番艦のネルソンも同じ様に哨戒任務に出ているらしいし。)
そう考えつつもルナIIの管制宙域を脱した我々4隻は輪形陣を取り、ミカサは哨戒のために艦載機の発進を始めた。
『こちらミカサコントロール、イーグル01へ、状況知らせ』
『こちらイーグル01、カタパルトへのドッキング完了、推力150にてアイドリング。発進準備完了しています。』
『よろしい、ミカサコントロールよりイーグル01へ。発進を許可する。ユーハブコントロール。』
『アイハブコントロール。イーグル01、イツキ少尉、発進します。』
艦橋に新設された航空無線用のスピーカーからパイロットとハイネ大尉のやり取りが聞こえる。ハイネ大尉自身も艦橋にいるが、カーゴ・ベイの状況モニターを見ながらヘッドセットのマイクに話しかけているので、本来なら艦長席からははっきりと聞こえないのだ。そのため、このスピーカーから指向性の高い音波でやり取りを流し、艦長や他の幹部士官が航空隊の状況を把握しやすいようにしている。(ちなみに、ノーマルスーツ着用時はスーツのスピーカーから聞こえるように設定した。)
ハイネ大尉こと航空長がカタパルトの発進権限をパイロットに委譲すると即座に左舷第一カーゴ・ベイ前方のカタパルトからドォン、という微かな音と艦全体に伝わる震えと同時にセイバーフィッシュが飛び出していく。
戦隊前方の宙域を哨戒するための艦載機だ。
2週間の訓練のなか、ミカサが最も苦労したのはどのように艦載機の数を配分して運用するか、という点だった。
言うまでもなく、艦載機は超がつく精密機械の塊だ。日々、整備をしていても不調になることもあるし、一度飛べば整備をしっかりと行わなくてはならない。
コロンブス改型のように数十機を運用できるならともかく、ミカサにあるのはたった8機の艦載機でしかない。
しかもカーゴ・ベイの容積には、新たに乗り込んだ航空要員のための物資(酸素や水は言うに及ばず、食料や医薬品、福利厚生の品々などもだ)や無理を言って残してもらったレールガンへの給弾機構のスペースなども含まれている。
カーゴ・ベイ前方の約20パーセントはカタパルトの展開場所にもなっているので、8機の艦載機を積むだけでもかなり無理をしているのだ。実際、ミカサやネルソンでは機体の駐機スペースが2機縦に並べる分(セイバーフィッシュ1機の全長は19.9m、これに固定用のスペースやら安全マージンも含め2機並べて駐機させる全長約56mを確保するのが精一杯だった)しか取れなかったのだ。設計段階で頭を捻って無重力を利用して天井側も床として使うことでセイバーフィッシュを背中合わせに駐機させ、片側4機、両舷で計8機の艦載機をどうにか搭載させている。
そのために天井側のセイバーフィッシュはカタパルトにドッキングする際、180度天地をひっくり返さねばならなくなっている。これが発進間隔が遅くなる要因となってしまったのだ。
(まぁ、大尉はその間隔の長さを猛訓練でなんとか縮めてきているのだが。それにしても2機のセイバーフィッシュを背中合わせに駐機するためにカーゴ・ベイの天井高さはかなりのものだ。20m以上あるから仮にジムがロールアウトしたらそのまま積めるんじゃないか?これ。)
などと一人頭のなかでいつものごとく考えていると、発進したイーグル01、セイバーフィッシュ1号機はもうノズル光も見えなくなってしまっていた。
数少ない艦載機のやりくりとして考え出した運用が、この哨戒機を艦の進行方向のみに出す、というものだった。
基本的に宇宙では艦艇は常に何らかのベクトルの力が働いている。静止する、というのはほぼ不可能なのだ。そのため、航行するミカサに後方や上下左右から近づいてくるものがあればそれは加速していることが多い。その場合は熱探知などでかなり長距離から艦側でも把握することができるのだ。(無論、例外もあり例えばデブリ帯などで小惑星に艦を固定して奇襲してくれば気付くことは困難だ。だがとりあえず現在の任務ならそんな状況に赴く可能性がまずない。)
唯一、把握することが難しいのが正対する前方から艦が移動してきた場合だ。ルウムでも正にこの方法でレビル将軍の本隊はジオンの艦隊に奇襲を許した。
だからこそ、前方に艦載機を哨戒に出せば、そうした敵艦を早くに見出だせる可能性が高いのだ。
これはルウムで救助されたカモノハシ(偵察機仕様のセイバーフィッシュ)パイロットによる証言で、奇襲前にジオンの艦隊に出くわした機体がいたことが分かっていることからも明らかだ。(なんと原作に出てくるネームドキャラのリュウ・ホセイだったらしい。)
そこで第1001巡洋艦戦隊では常に1機もしくは2機のセイバーフィッシュを戦隊前方に繰り出し、哨戒を行わせつつ進軍する、という戦術を基本とすることにした。
もし敵艦を発見し、レーザー通信なり発光通信なりで我々と連絡ができれば、哨戒機はそのまま観測機に早変わりしてサラミス型3隻からのレールガンを御見舞いする、というところまで出来れば理想だな。
(まぁ、そうは言ってもルナIIの管制宙域を出てすぐに敵艦がいるわけもなく、しばらくは訓練同様の航海になるか。)
「航空長、ご苦労だった。発進の手順はどうかね?かなりスムーズになってきているように感じるが。」
「ありがとうございます、艦長。しかしまだ満足できる規準とは申せませんね。やはり格納庫がギリギリで取り回しに細心の注意が必要な分、時間が余分にかかってしまいます。皆、頑張ってくれてはいるのですが。」
左舷カタパルトの収納を目視確認していた大尉に話しかけると、ハイネ大尉もどこかほっとした様子で答える。
「コロンブス改型の広々とした格納庫と同様とはいかないだろうな。だが航空隊が上手く機能してくれれば、戦隊の生存率も勝率も大きく上がる。無理はしなくていいが、努力はたっぷりしてくれ。まぁ艦載機運用については釈迦に説法だとは思うがな。」
「はい。航空隊一同、努力いたします!・・・しかし、艦長は仏教徒なのですか?」
「・・・っは?いや何でそうなるんだ?」
突拍子もないこと言い出したぞ、この子!?
「いえ、釈迦、と仰いましたので。違いましたか?」
「ああ、なんだそういうことか。、釈迦に説法っていうのは慣用句だよ。俺は初任官がサセボだったんだ。日本だよ。そこで覚えたのさ。」
「そうでしたか。これは失礼いたしました。」
ビシッ、と音がしそうな敬礼をして航空管制席に戻る大尉だが、そう、実は彼女こういう風に急に変わった事を言い出す時がある。天然、というかなんと言うか、少し感性が独特なようだ。
訓練を始めてしばらく、彼女の独特さに気付いてそれとなくクレッチマー司令に尋ねたこともあったのだが、前の乗艦でもこうだったらしい。(訓練から戻ったらほぼ毎回、司令がミカサに突撃してきていたのだがその時聞いた。いや司令、忙しいでしょうから突撃してこなくていいです。オレたちの精神衛生的にもしてこないで下さい!)
ともかく、変わったところはあるが、彼女は航空機の運用については正確そのもの。突発的な対応であってもその指示は的確で本当に助かっている。
オレ自身も艦載機の運用について勉強し始めたのだが宇宙だと必要とされる要素が多く、まだまだ難しい。そのオレの不足を彼女はすぐに指示してくれている。今のところはその指示を信じ、そして出来るだけ早くオレ自身も指示を出せるようにしなくてはな。
「司令より達する。艦隊全艦へ。ルナII管制宙域を脱し、しばらくは接敵の可能性が低い宙域を進むことになる。第2種警戒態勢へ移行するので今のうちに交替で休息を取っておくように。」
「航海長、進路・速度はこのまま。当直を頼めるかね。」
「アイサー。艦の指揮をお預かりします。」
「よろしく頼む。艦長室にいるので、変化があればすぐに連絡してくれ。」
結局、第1001巡洋艦戦隊はジオンの部隊と出会うこともなく、2日後に地球の低軌道付近までたどり着くことができた。
恐らくだが、ジオン側も降下作戦の実施に伴って部隊に余裕が無いのだろう。
だが、ここから先は確実にジオン部隊がいる。降下させる補給用のHLVを守るために確実にムサイ、ひょっとするとチベ級もいるかも知れない。
「艦長、艦隊全艦、第一種戦闘配備につきました。」
原作でもよく聞いた独特のアラームとともに副長から報告があがる。
「了解だ、副長。なんとかここまでは無事に来れたな。」
「そうですが、ここからも無事でいられるようにしませんと意味がありませんよ。ジオンの奴ら、蹴散らしてやりましょう。」
CICの副長とモニター越しに軽口を叩き合うが艦橋の雰囲気は悪くない。復帰後最初の戦闘だ。損害無く切り抜けたいものだ。
「航海、くれぐれも高度に注意を。降下部隊に釣られて我々まで低高度に落ちては脱出が出来なくなるからな。」
「アイサー。高度150キロ以下には入らぬように致します。」
「よろしくな。航空、セイバーフィッシュの追加発進を開始してくれ。4機体制でかかりたい。」
「あ、アイサー!ただ、重力井戸に引き寄せられやすくなっています。限界にくる前に引き揚げさせたいのですがタイミングはどうしますか?」
さすが航海長は落ち着いているな。一方で航空長はガチガチじゃないか。まぁコロンブス改型やルナIIのような拠点からはこんな重力下での航空機の運用経験など積むことはないからなぁ。
「落ち着け、航空長。セイバーフィッシュの目的は敵の観測だ。ジオンの降下部隊と同高度まで降りる必要はない。高度は維持して、無理の無いようにしてくれればいい。ただ、厳しいようだが作戦が完了するまで引き揚げは出来ん。そのつもりでいてくれ。必要なら武装を減らしてプロペラントタンクを追加してもいい。そこは航空長の判断で頼む。」
「あ、アイサー。こちらミカサコントロール。イーグル02・・・・・・」
なんとか指示を出せてるがまだ慣れてないな。航空運用はピカイチでもこうした状況での戦闘度胸はついてないか。まぁここから慣れてくれるだろう。
「艦長、光学レーダーに感あり。大気の揺らぎが酷いですが、恐らくジオンの降下部隊です。数は・・・約15。方位290。ムサイらしきもの2、輸送艦もしくは輸送船10、詳細不明3、こちらより高度は低い。約120キロ地点を方位56へ向け移動中。」
「さっそくおいでなすったな。こちらより低高度とはありがたい。方位からして月面、グラナダからか?通信、別動隊、特にジオンの本国からの部隊がいる可能性もある。全方位警戒を厳としてくれ。航空、追加発進を更に1機頼む。本隊の上空を押さえられたくない。監視任務で高度200キロまであげてくれ。」
「「アイサー!」」
既に発進していたセイバーフィッシュからも敵の部隊についての情報がレーザー通信で入り始めている。ムサイはやはり2隻、民間輸送船の徴用らしきものを含めてHLVを抱えた船が12。残り1隻が・・・マジか、チベ級もいるじゃないか。
「通信、航空、チベ級の詳細は分かるか?奴の砲火力はマゼラン並みだと言う情報がある。出来れば最優先で叩きたい。」
「レーザー通信でチベ級の位置情報を送らせます。少しお待ちを。」
「追加発進させたイーグル02と03にも観測を指示しています。精密観測可能地点まではあと5分、お待ちください!イーグル04は観測開始まで発進後、7分必要です!」
「よろしい。砲術、3隻からの統制射撃を行う。まずはチベ級だ。恐らく、奴らもそろそろこちらに気付くはずだ。それまでにチベだけでも沈めたい。」
こちらは宇宙の暗闇を背景にしているから、地球を背景にするジオンよりも見つかりにくいとはいえ、ここまで近づけばそろそろ限界だ。観測情報が揃うのをじりじりと待つ。
「砲術長、セイバーフィッシュからの観測情報を送ります。僚艦にも共有済み。しっかり当ててください。」
「おぅ、砲術科の腕がなる。本艦は2門に半減とはいえ、3隻合計でレールガン10門の砲撃だ。しっかり当ててやる。」
通信長と砲術長のやり取りを聞きつつ、航空部隊の様子を確認する。追加発進は現在で4機目に取りかかるところ。よく頑張ってくれているがやはり訓練よりは時間が掛かるな。
「艦長、レールガン射撃準備完了しました。いつでも行けます。」
「よし、戦闘開始、射撃はじめ。」
「第1射、統制射撃はじめ。次弾装填。」
体に響く鈍い振動。カーゴ・ベイの外側に取り付け直した2門のレールガンが射撃した証だ。直接艦体についていたときよりも小さく感じるのは艦橋と距離が離れたからだろうか?いや、門数が少なくなったこともあるか。
「艦長、追加発進のセイバーフィッシュ、全機の発進が完了しました。上空警戒のセイバーフィッシュも高度をあげつつ、既に監視任務を開始しています。申し訳ありません。かなり手間取りました。」
「了解した。構わんよ、確実に発進させることの方が大切だ。それより、観測機の交替タイミングを逃さないようにな。それとレーザー通信を密に。」
「ありがとうございます。了解いたしました。」
「砲術より艦長へ。第1射、命中なし。第2射、修正射を撃ちます。」
「通信より、敵艦隊に変化あり。こちらの射撃で気付いたようです。輸送艦が更に降下していきます。更にMS発進の模様。」
「いかん、チベ級への射撃は本艦のみ継続。ヤハギとウィンチェスターは輸送艦へ射撃目標を変更。ピッツバーグにはMSの対空迎撃準備を下命せよ。」
「副長、了解しました。」
「砲術、了解。次は当てます。通信長、航空長。ヤハギ、ウィンチェスターにも輸送艦の観測結果を再度まわしてくれるか?」
「既に観測結果は共有済みだ。ただ、観測機が全てチベ級を重点監視している。航空長、調整をしてください。輸送艦の詳細情報が欲しいです。」
「は、はい。イーグル03、04、観測目標の変更を・・・」
こちらに気付いたジオンはムサイとチベが高度を上げるために速度を増しつつあるようだ。一方で輸送艦は速度を落として高度を下げ、ムサイやチベの影に隠れようとしている。あわよくばHLV投下もしてしまうつもりだろう。
「砲術、チベに当てられなかったとしても、本艦も今より3射後に目標を輸送艦へ変更せよ。作戦の第一目標は敵降下作戦の妨害だ。戦闘艦を沈めてもHLVを逃せば意味がない。」
「砲術了解。なんとしても残り3射でチベ級を沈めてやります!っと、ヤハギ、ウィンチェスター、敵の輸送艦へ射撃開始します。自由射撃で実施!!」
「力むな、砲術長。チベは無理に沈めなくてもいい。損傷させればあの低高度だ。うまく行けば自沈に追い込める。それより、輸送艦からHLVが投下されてしまえば間に合わなくなる。遅れるなよ。」
全体として、我々の攻撃は相手の不意を突いた奇襲となった。敵の部隊はザクを発進させたが、高度差が50キロ、直線距離はそれ以上にあるとなれば上がってくるまでに攻撃を終え、避退することは充分に可能だ。チベ、そして輸送艦を上手く叩くことが出来れば、次はムサイにも打撃を与えたいが、欲をかくのは厳禁だな。
あとは敵の別動隊が居ないことを願うばかりだが。
ジオン側の投下タイミングを見ると複数の部隊がほぼ同時に投下することもあるようだから、警戒は怠らないようにしなければ。
「航空、上空警戒のセイバーフィッシュからなにか報告があれば即座に共有を。別動隊がいたら撤退しなければならんかもしれん。」
「はい、現在のイーグル05の高度は170キロ。今のところは敵の部隊は存在せず、とのことです。」
「砲術より、第4斉射にて敵チベ級に直撃1。どうやらプロペラントタンクを撃ち抜いたようです。姿勢乱れます。更にヤハギ、ウィンチェスターも命中弾あり。輸送艦2隻に損傷あり。あっ、更に1隻爆発!」
下方で大きな爆発が見える。どうやら輸送艦への攻撃も上手く行っているな。
「よし、更に攻撃を続けよ。接近しつつあるMSはどうか?」
「現在の高度130キロ、戦隊との直線距離で79000、まもなく対空迎撃の射程に入ります。」
「ピッツバーグに射程に入り次第、撃ちはじめるよう伝えてくれ。撃墜より接近を阻止させることが優先だ。ピッツバーグのみ、ショットガン射撃を許可する。」
「あ、艦長!イーグル05、上空のセイバーフィッシュより緊急!艦隊前方、ほぼ同高度にジオンの別動隊を確認!」
「なんだと!?数は!!?」
「ムサイ3、輸送艦20以上です!」
ハイネ大尉の報告に問い返すと、有り難くない報告が帰ってきた。
まじか、敵戦力がほぼ倍になったじゃねぇか。
「となると長居は無用だ。下方の敵をα群、前方の敵をβ群と呼称する。α群に可能な限り打撃を与えたら、我々は撤退する。僚艦にも伝え!砲術、頼むぞ!それと航空長、セイバーフィッシュを下がらせろ。高度を上げてMSにかち合わないようにしてだ。プロペラントタンクがあれば可能だろう。」
「アイサー!せめてαだけでもチベと輸送艦を全て沈めてやりますよ。」
「航空、了解しました!ただ、最初から監視を行っていたイーグル01のみ、航続距離が足りなくなるかもしれません。」
歯切れ良い砲術長と、焦る航空長。確かに先行させていたセイバーフィッシュ1号機はプロペラントタンクの分を既に使いきっていても可笑しくない頃か。
「最悪、セイバーフィッシュ1号機は破棄しても構わん。パイロットだけでも他のセイバーフィッシュで拾えないか?」
「2機で等速飛行させて飛び移れとでも!?そんな、無茶です!?」
「済まないがパイロット1人のために艦隊を危険にさらすわけにはいかんのだ。オレだって可能なら助けてやりたいが」
まして航空隊は初陣なんだ。それでいきなり見捨てるだなんて士気にも影響するのは間違いない。
だが、だからといって艦隊将兵を合わせれば数百人になるのだ。その全員に死ぬも知れないが堪えろ、とは言えないだろう。
「っっ!了解しました!イーグル01へ、現時刻をもって母艦へ引き揚げる。燃料が足りない場合はイーグル02とランデブーし、機体を放棄せよ。イーグル02は・・・」
航空長も不満はあるだろうが指示を出し始めた。すまんな。
「砲術、チベへの射撃は次で終わりだな。輸送艦を狙いつつ、進路を変針させる。射撃時に注意せよ。航海、戦隊針路、1025時へ。速度を第ニ戦速まで上げる。高度を取りつつβ群とすれ違うぞ。変針が遅れると敵の射程距離に入りかねん。タイミングを調整してくれ。」
「「アイサー!戦隊全艦に伝えます!」」
航海長がすぐに他艦へ戦隊進路を伝えていく。進路を変えつつの増速だ。タイミングがズレれば戦隊がバラバラになったり、下手をすれば衝突事故など起こしかねない。ここは航海科の手腕に期待するしかないな。砲術科も出来るだけα群の輸送艦を叩こうとしてくれている。既にチベは被弾箇所から煙を引き、輸送艦も4隻が沈んだ。もう少し損害を与えたいところだが。
「艦長、ピッツバーグが対空射撃を開始しました。本艦、ウィンチェスターもピッツバーグ統制下で射撃を開始します。ヤハギのみ、射界が本艦で遮られていますのでもう少し、射撃開始をお待ちください。」
「了解した。副長、万が一の被弾時の対応、よろしく頼むぞ。」
「縁起でもないこと仰らないでください。が、応急修理の指揮、了解しました。」
「ピッツバーグ指揮の目標へ、メガ粒子砲撃ち方始めます。」
モニター越しのオットー副長が嫌そうな顔をしながら返答してくる。その顔に思わず笑みがこぼれる。なんだ、随分と余裕じゃないか、オレも。戦闘に対する感覚が麻痺してきたか?
ミカサも艦下部のメガ粒子砲が撃ち始めた。第1001巡洋艦戦隊では砲撃能力の維持のため、1度の戦闘でショットガン射撃を行う艦を2隻までに抑えることにした。今回は迎撃射撃を指揮するピッツバーグとウィンチェスターが担当だ。そのため、ミカサとヤハギは通常のメガ粒子砲としての運用にとどめている。
「艦長、レールガンは第6射を発射しましたので、チベ級への射撃は終了します。直撃弾は3発。前部砲塔も破壊していますので、しばらくは脅威にはならないでしょう。中破から大破といったところですね。またヤハギ、ウィンチェスターで輸送艦計7隻、撃沈破しました。残り5隻にも射撃を継続します。」
「了解した。砲術、良くやってくれた!このまま頼むぞ!」
観測機を引き揚げさせたため、まもなく精密観測の情報が見れなくなるが、避退中のセイバーフィッシュは可能な範囲で観測情報をまだ届けてくれている。そのお陰でもうしばらくは射撃を出来そうだ。とはいえ、ジオンの輸送艦はもうまもなく高度を100キロまで下げようとしている。HLVの投下高度だ。残り5隻でHLVは恐らく30程か、このまま投下されてしまうか?
「航海より艦長へ、変針まもなく。同時に速度も上げます。」
「了解した。砲術と連携して可能な限り、攻撃が続けられるようにしたい。変針、増速の情報は逐一共有してくれ。」
「艦長、敵の輸送艦更に1隻を撃沈。ただし変針のため、次の射撃からまた試射に戻ります。」
砲術長からの報告。やはりここらが潮時になりそうだな。
「了解した。レールガンでの砲撃は継続。ただし、戦果としては現時点で充分だ。第1001巡洋艦戦隊はこれより、避退行動に移る。下方から接近中のα群MSに注意!ピッツバーグの指揮のもと、統制迎撃を行う。」
「航空長、残存3機を発進させよ。敵の迎撃時に牽制役をさせたい。」
「は、はい!了解です。2機は即座に発進させられますが右舷側8号機のみまだ機体が天井側のため、発進に10分ほどかかります。」
「それでいい。出せるものから出してくれ。それと引き揚げてきた観測任務のセイバーフィッシュについても、航続距離が充分あって牽制役を任せられる場合は着艦させずに牽制へまわしてくれ。」
「戦隊針路、1025時へ変針します。発動、いま!」
航海長の言葉と同時、艦橋の窓の景色が大きくぶれる。正面に見据えていた地球が右へとずれ、宇宙空間が占める割合が大きく増えた。同時に加速度も身体に掛かり、戦隊が増速したことが伝わってくる。
「航海長、敵β群とは交戦距離に入らぬよう、微調整をしてくれ。砲術長、敵α群への攻撃はHLVの投下を確認した段階で中止。以後はβ群に対してレールガンでの砲撃が可能な場合のみ、許可することにする。」
「「アイサー!」」
左右のサブモニターにそれぞれ映るジオンの2部隊、メインモニターに映している上がってくるα群のザクの姿、それぞれを見ながら指揮を取る。ザクは8機がまだ上がってこようとしているが、我々も高度を取り始めたのでなんとか追い付かれずにすみそうだな。航空隊は上手く遠距離からの牽制射撃も行ってくれてあるようだ。
「航空より艦長へ。イーグル01とイーグル02がランデブー。なんとかイーグル01のパイロットは移乗出来たようです。それと、イーグル04着艦します。」
「艦長了解。そうか、移乗できたか!良かった。着艦した艦載機についても、補給を急がせてくれ。追加で牽制役を出さねばならないかもしれん。」
「アイサー!補給を急がせます。」
「艦長、α群の残存輸送艦4隻からHLVの投下を確認。α群へのレールガン射撃は終了します。続いて、β群への射撃準備を開始。照準合い次第、撃ち方を始めてよろしいですか?」
「許可する、ムサイは捨て置け。輸送艦を優先だ。」
「アイサー!」
β群のムサイはこちらとの交戦を避けたいのか、徐々に高度を下げながら輸送艦を庇うような針路を取っている。更にザクも発進させつつあるようだが、こちらへは向かわせては来ずに、輸送艦の直掩をさせるようだ。
高度差を無視してこちらを襲わせに来たα群とは大違いだが、我々はレールガンという長槍があるので一方的に攻撃することが出来る。悪く思うなよ。
結局、β群に対するレールガンの射撃は3隻で各門4射ずつ、計80発を発射した。成果は輸送艦3隻撃沈、4隻に中破から大破の損害を与えたこと。またムサイ級2隻にも被弾させ多少の損傷を与えたに留まった。
第1001巡洋艦戦隊の被害はピッツバーグとウィンチェスターがα群のザクからマシンガン射撃を受け、対空砲の損傷が出たこと。そして航空機セイバーフィッシュの放棄1機とザクへの牽制を行っていた機体のうち2機が損傷を負ったことのみ。負傷者も5名に抑えることができた。
こうして、俺たちのルウム後初の戦闘は幕を閉じたのだった。
はい、なんとかGWに間に合いましたので第15話を投稿します。にしても始めて1万文字を越えてしまいました。短くまとめることが出来ず、ダラダラと長文になってしまっている気がします。作者の能力のせいで読みにくくなってしまっていたら、申し訳ありません。
ミカサたちの航空機を利用した戦闘、まだまだ不慣れな部分が書けていれば良いのですが。