旧型サラミスで生きる1年戦争   作:カズkaz

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先の話ではネルソン型の発展型というべきトラファルガー型やヴィクトリー型を登場させました。
そもそも、なぜこれらの航空搭載艦が増えたのか、についても紹介します。


18話 航空搭載艦試験運用計画

 先の哨戒作戦の後、ミカサ含む第1001巡洋艦戦隊は他の巡洋艦戦隊とローテーションを組みながら、2度の哨戒任務に出ている。ただ、その2回はジオン部隊との接触はなく、艦載機の運用についてクレッチマー司令の助言をもとに部隊の左右や後方へも少ない機数でも穴がないように哨戒機を出す運用方法を試す訓練航海のような状態だった。

他の巡洋艦戦隊の中にはジオン部隊に奇襲され、サラミスが沈んだ部隊もあったので、ジオンと出会わず損害を出さなかった我々はまだ運が良かったのだろう。

 

残念なことに連邦全体ではそこまで運は良くない。地上では3月中旬に軍の重要拠点キャリフォルニア・ベースとニューヤーク市が陥落し、ジオンの発表によればザビ家の末弟ガルマ﹦ザビが指揮官として入ったらしい。宇宙でも、損害なしでジオンを撃退することは少なく、連邦側も更にじわじわと損傷艦や撃沈艦を出しながらルナIIから地球軌道にかけての制宙権をなんとか確保している状態だ。(それとて万全ではないが)

 

『ジオンに兵なし』のレビル将軍の言葉に嘘はないようで、ジオン部隊の練度もそこまで高くはないようなのだが、それでも敗戦続きの連邦宇宙軍艦隊の士気はジワジワと落ちてきている、というのが最近の肌感覚だった。

 

その中で何故だか評価が上がっているのが第1001巡洋艦戦隊だ。

本来なら旧型サラミスに敗残艦の寄せ集め、しかも戦前は訓練艦紛いのことを任務としていた筈の我々が、何故?と疑問だったのだが、ハインライン中佐の言によると(何故か以前にヴィクトリーについて話して以来、オレと中佐は良く出くわしては会話する、ということが増えていた。行動様式似てるのか?)

旧式艦に新兵が半数を占めながら、ルウムでは多数の将兵を救助し、敵艦やMSを複数沈め、改装後初の哨戒任務でも戦果を出しながら戦死者出さなかったから、らしい。オレからすれば運が良かっただけだというのに。

 

「艦長、司令部からの定時連絡です。次の哨戒任務についての詳細が届きました!」

 

とはいえその評価のお陰でなのか、第1001巡洋艦戦隊の士気は高い。新兵の中にはやっと使い物になるようになると同時に他部隊へ転属となった者もいたが、それでも各艦の練度も高まってきている。ピッツバーグも新艦長となったオットー大尉が艦の運用に慣れてきたのか落ち着いて指揮を取れるようになってきている。

 

「ありがとう。確認しておく。・・・まぁ、ピッツバーグは通常型サラミスのレールガン運用テスト艦になってしまったから、そこでまたバタバタしそうだが。」

 

通信科員に返事しながら、考えていた内容を独りごちる。

そう。ヴィクトリーにも搭載されたレールガンだが、あの後、ルナIIに残されていた製造ラインが再開され、早速既存艦の中で搭載される艦が出始めている。中でもピッツバーグは戦隊の僚艦がレールガンを搭載しているからかいち早く搭載の改装工事が行われた。とはいえ、ジェネレーター出力の関係で一門だけだが。艦底部の中央に取り付けられたレールガンを使った射撃訓練にも取り組んでいるが、メガ粒子砲との射撃のクセの違いから砲術科もまだ慣れていないらしい。ミカサやヤハギ、ウィンチェスターからも砲術科員がピッツバーグへ出向して運用訓練に協力している。

 

「さて『第1001巡洋艦戦隊は翌一二三○をもってルナIIを出港。航空搭載艦運用の試験任務に付くべし』・・・?

なんだこれ、哨戒任務に付くのではなく試験任務?

いや哨戒任務をしつつ、試験も行え、ということか?」

 

任務の詳細を読み進めるうちにオレの頭の上にはハテナマークが飛び始める。明日出港というのは良い。航空運用艦というのはミカサのことだろうが、先の哨戒任務において行ったような観測射撃、進路哨戒、対艦・対MS攻撃などの様々な任務を何度も試験的に行うべし、ということか?だが、最大でも8機しか出せない我々だけで繰り返しそれら全ての試験を行う、というのは無理だろう?

 

「お、司令部からの通達を読んだかね、中佐?」

 

「はい、ちょうど今。って司令!?」

 

不意に艦長席の後方から掛けられた声に驚いて振り向くとニヤリと笑うクレッチマー司令がミカサの艦橋に入ってきたところだった。

 

「どうなさったのですか?司令?」

 

慌てて席から立ち上がり、左爪先を座席に引っ掻けながら敬礼をする。ニヤリと笑いながら答礼する司令。ホントに腰が軽いな、この人はっ!?

 

「本当にどうなさったのですか?急にいらっしゃるとは!?」

 

「すまんな。中佐。忙しいのは承知しているが、今読んだであろう命令に付随して伝えたいことがあってね。直接伝えにきたのだ。直接見てもらった方が早かろうと思ってな。」

 

「はぁ?了解しました。」

 

そのまま、クレッチマー司令とオレ、警護の士官2名で隣の第58ポートへ向かう。隣のポートに何の用事が?

と疑問に思いながらポート管理部横の休憩スペースへ入る。第58ポートも主に主力艦の係留用に使われているのだが・・・・。

 

「あれだ、中佐。第420巡洋艦戦隊、改め第12航空巡洋艦戦隊のネルソン型巡洋艦デトロイトとサンフランシスコだ。あれを貴官の指揮下に入れる。貴官のミカサと、あの2隻、合わせて3隻で20機のセイバーフィッシュを運用してもらう。それで航空搭載艦、いわゆる航空巡洋艦の運用試験を行ってほしい。」

 

まてまて、てことは巡洋艦6隻に航空機20機?それもう立派な艦隊じゃねえか。中佐如きが指揮する戦力越えてるぞ!?

 

「航空巡洋艦3隻、巡洋艦3隻ですか。確かにかなりの戦力になりますし、艦載機の数も充実しますね。ただ、あまりに戦力が増えますと一介の中佐である私が指揮をするのはいかがかと。司令官を任命していただく方が良いのではありませんか?」

 

「今さら別の士官を司令官に任命するなら貴官にこんな話をしには来んよ。それに人材が足りん。そこで、だ。中佐、いやコープ大佐。昇進だ。ミカサを旗艦として、司令部を設け、貴官はそのまま指揮官になってもらう。」

 

「小官が、ですか!?しかし、艦載機の運用は本官の専門ではありません。航空搭載艦運用であれば、航空専門の方が試験任務に付かれる方が・・・」

 

哨戒任務を3回行ったとはいえ、実戦は1度、しかもオレの専門は航空ではない。そんなオレが航空機運用の実験任務に付くのは畑違いだろう?

 

「そこだ、大佐。戦前の連邦艦隊であれば、航空機の運用はコロンブス改型空母から行っていた。多数の艦載機を搭載でき、効率的に運用できたからな。だがルウム戦役でコロンブス改型はあまりに脆く、個艦防空力・抗堪性に劣り、機動性も劣悪であることが判明した。分かってしまった。ましてミノフスキー粒子の散布下ではな。」

 

クレッチマー司令はデトロイトからオレの方へ視線を向けると、そのまま顎をしゃくって管理部横の会議室へ誘う。警護の士官共々、会議室へ入りながら司令は話し続けている。

 

「正直、ルウムでオレはもうダメだと感じていた。これまでなら多数の艦載機による数の力で圧倒することが出来ただろう。だがミノフスキー散布下でレーダーが、通信が効かない状況ではその数が多すぎることは混乱を招く。また、コロンブス改型は輸送艦由来の大容量と引き換えに鈍重だし、武装も少ない。だから、沈むゲッチンゲンから逃げ出しながら、オレはもう連邦艦隊で艦載機を運用することは無理なのではないか、と考えていた。だが、オレを救助してくれた貴官ら第1001巡洋艦戦隊の戦いぶりを見て、航空機の新しい運用方法があるのではないか、と考えるようになったのだ。」

 

「我々の、ですか?」

 

「そうだ。レールガンを利用し、長距離戦を主体にジオンのMSを近づけないように戦う貴官の戦術が、航空機を伴えば更に効率的に出来るのではないか、と考えたのだ。だからこそ、サラミスで艦載機を載せられるようになったネルソン型の改装案を聞いた私は、その大増産を繰り返し本部へ進言した。」

 

会議室のモニターを操作しながら、警護の士官に目配せする司令。すると警護の士官は会議室の外へ出た。司令の警護ではなく、この会議室で話している内容を聞かせないため、の警護役なのか?何故?

 

「ここからは極秘事項だ。大佐。ジャブローの本部では、ジオンへの対抗として既存戦力の再建を進めようとする一方で、どうやらMSの開発も考えているようなのだ。特にレビル将軍の一派は強力にMS開発を主張している。そこで、コロンブス改型の脆弱性と共に、既存戦力としてあるマゼラン、サラミスに艦載機運用能力を持たせること。そしてその艦はMSの運用も出来るように設計しておくことを、私はレビル将軍に進言したのだ。」

 

 

「連邦がMSを、ですか?まさか、そんな!?」

 

「何を驚く、大佐。君はその事をどこかで勘づいてたのではないかね?ミカサに改装を加えることを伝えた時もカーゴ・ベイの高さにかなり注目していたではないか。それ以外にも言動の端々からMS運用を考えているような気配はあったぞ?」

 

「それは、その。以前にスミス海に投入された鉄騎兵中隊の話を聞いておりましたので。ですがそれだけです。」

 

「なるほどな。確かにあの惨敗もあって、やはりMSが必要だ、と議論されたこともあったからな。というか、スミス海の1件も極秘の筈なのだが、やはり貴官は耳敏いな。だが、貴官のそれはそれだけではなかろう。まぁ、それは良い。ともかくMS開発と合わせ、マゼラン、サラミスにカーゴ・ベイを取り付けることは受け入れられ、少なくとも第4艦隊だけでも20隻は航空搭載艦となることが既に決まっている。」

 

もちろん、ヴィクトリーもな、とウキウキしながら言う司令。一方でオレはモニターに釘付けになっている。ネルソン型、トラファルガー型の設計図とスライドして映されたMSの概略図、どう見てもガンダムだよな。そうか、司令は単にネルソン型を作ろう、と考えたのではなく、今の時点でもうV作戦とリンクさせて戦力再建の提案をしていたのか。(そしてこれだけ大切な話していても乗艦が航空機搭載艦なのが嬉しいんだな、と少しあきれる。)

 

「更に、だ。連邦艦隊がMSを手に入れたとしても哨戒任務や観測任務であればセイバーフィッシュの方が最高速度に優れるので、MSと航空機を併用することも想定できる。たがらこそ、今から航空搭載艦の運用ノウハウを蓄積させたいのだ。MSを搭載できるようになった時、即戦力と出来るようにな。」

 

「打撃力は艦のレールガンやMS、哨戒や観測は航空機、ということですか?」

 

「そうだ。そのためには航空機の専門家ではなく、レールガンを含めた艦の運用に航空機を取り入れる、というスタンスの方が今後に繋がる。だから、貴官に運用実験を行ってほしいのだよ、大佐。」

 

そこまで言うと司令はジッとオレの方を見つめた。明らかに一介の中佐が知っていて良い範疇を越えた話を聞いてしまった。とはいえ、司令の話は確かに戦局を好転させるために今、出来る最善のことを考えた末の計画だろう。ならば、オレが出来ることは・・・

 

「了解しました。では微力ながら小官が持てる力を尽くし、哨戒を行いつつの試験任務、という理解でよろしいですね?」

 

「あぁ、そうだ。最も、陸軍出身のレビル将軍はMSを新型の強襲揚陸艦にまとめて搭載する案を推しているらしいがね。」

 

航空屋からすれば、ミノフスキー散布下なら多数の艦に分散する方が戦力の低下を防ぎ、かつ艦を沈みにくくする方法として有効だと思うのだがなぁ。陸軍は戦力を集中運用したがるもんなぁ。と呟くように司令が言う。新型の強襲揚陸艦ってまさか?

 

「あの、司令。その新型の強襲揚陸艦とは?」

 

「ん?ああ、ジャブローで建造中の新型艦だ。宇宙と地球の双方で運用できる艦として、ミノフスキー粒子を利用した新システムも搭載しているらしい。詳しくは知らんがな。」

 

まもなく1隻目が就役するらしいぞ?と話す司令だが、その艦、間違いなくペガサス型の二番艦ホワイトベースだよな!?主人公の艦も間もなく就役なのか。いよいよ原作開始も近い?ってことか?何月スタートか、ちゃんと知らないんだよな、オレ。

 

「ミノフスキー粒子を利用したシステム、ですか。粒子に関する基礎論文で以前に読んだIフィールドを利用した飛行システムの事でしょうか?まさかもう実用艦が就役するとは。」

 

「おー。大佐、本当に耳敏いというか、なんでも知っとるな、貴官は。そんな学術論文も読んでいるのか?」

 

半ば呆れたように言うが、訓練艦任務の時は新兵への教育に必要かも、ということで色々と読まされたからなぁ。まぁ、ホワイトベースについては原作でそんなことが書かれていたからだけど。

 

「あっ、いえ、訓練艦任務の際に目を通した中でたまたま大型の宇宙艦でも大気圏を飛行できるようになる、というのが印象に残っていたもので。しかし、論文だと開発に何年かかるか、と有ったのですがもう開発されたのですね。」

 

「ん?そこは知らんのか?開発したのは、ほれ、貴官が最近よく話しているというハインライン中佐だぞ。とはいえ、システムも含め建造費が高くなりすぎるから量産が難しいようでな。それもあってジャブロー本部はオレの提案を受け入れたのさ。新型1隻の値段でネルソン型やトラファルガー型なら3隻から4隻は作れるからな。」

 

「なるほど。彼がですか。なんだろう、すごい発明の筈なのに、彼が成したと聞くと『まぁ、それなら納得』としかなりませんね。『こんなこともあろうかと』とか言いながらささっと開発してそうです。」

 

うん、一瞬で納得してしまった。すごいな、ハインライン中佐。

 

「最も、その新型艦の推進機に関して責任者の技術将校と大喧嘩をして、ルナIIに来ることになったらしいがな。」

 

「えっ?」

 

もしかしなくても、それホワイトベースが原作で推進機の不調に泣かされた描写の原因なのでは・・・?

なんだか、とんでもないことを聞いた気がするが、今はともかく我が身の事を考えなくては。

 

「ともかく、任務については了解しました。しかし、大佐に昇進し司令部開設となりますと時間が足りませんね。明日には出撃しなくてはならないのですよね?」

 

「今回の出撃に間に合うよう、司令部の人選はこちらでしておいた。デトロイトとサンフランシスコの艦長も含め、出撃前のブリーフィングの際に紹介しよう。何時からするかね?」

 

「それでは、昼食後の一三○○からでよろしくお願いいたします。作戦指令には書いておりませんでしたが、第12航空巡洋艦戦隊との合同任務ですので、艦隊を組むための訓練もしたいのですが、それも任務中に行う、ということでしょうか?」

 

「そうなるな。ただし、今回は初めて合同する部隊同士での哨戒任務になるので、危険の少ないサイド7方面に出てもらう。そちらで航空機を運用しながら艦隊運動の訓練も行ってくれ。」

 

「アイサー!コープ中佐、了解しました!」

 

「もう大佐だぞ、貴官は。辞令もミカサに送っておこう。」

 

頑張ってくれ!という司令の言葉を背に受けつつ、急いでミカサへの帰途に付く。まさかいきなり大佐に小艦隊の司令って、まじかぁ。ともかく早く戻って艦長ブリーフィングの準備をしなければ。

 

会議室を出たところで見えたデトロイトとサンフランシスコが、オレの目には妙に大きく見えたのだった。




原作では戦争後期に作られたネルソン型とトラファルガー型が、今話の時点(4月初旬)で複数建造されている理由についての解説回でした。そして意外と先を見据えて改装を推進していたクレッチマー司令と、陸軍出身ならではのレビル将軍の考え方。今後、MSが登場した際には運用方針についても侃々諤々の議論をしそうです。
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