旧型サラミスで生きる1年戦争   作:カズkaz

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仕事が忙しく、なかなか執筆することが出来ずに遅くなってしまいました。申し訳ありません。

前話で登場した第12航空巡洋艦戦隊を戦力に加えた主人公たち。今話からは再び前線での戦いに戻ります。3隻に増えた航空巡洋艦でどう戦っていくか。
では、どうぞ。


19話 航空巡洋艦の戦い方

航空巡洋艦2隻を加えた我々、第1001巡洋艦戦隊は第12航空巡洋艦戦隊と第41任務部隊を編成することになった。

本来ならミカサも第12航空巡洋艦戦隊に所属を移し、第12航空巡洋艦戦隊が3隻、第1001巡洋艦戦隊も3隻とする方がバランスが良いのだろうが、任務部隊編成の翌日には試験目的とはいえ出撃する、ということで現状の戦隊のままで出撃することになった。

 

とはいえ、巡洋艦3隻、航空巡洋艦3隻という大部隊だ。いきなり大佐に昇進したこともそうだが、オレがこんな部隊指揮して良いのだろうか。と考えてしまう。

つい3ヶ月前までは少佐だったというのに。

そう思いつつも、第41任務部隊の艦長6人+αでの幹部会議を行う。

第1001巡洋艦戦隊からはオレ、リヒャルト少佐、リューデッツ少佐、オットー少佐、そしてオレが任務部隊の司令も兼務するための補佐役としてミカサのオットー副長。

第12航空巡洋艦戦隊からはデトロイトのヘルツ少佐とサンフランシスコのカワベ少佐。

更に第4艦隊司令部からの推挙で第41任務部隊の司令部参謀長を務めるリューネブルク少佐と航空参謀兼務となったミカサ航空長のハイネ大尉、任務部隊の艦にとって生命線となる物資を司る補給参謀にキノ大尉が参加している。他の職掌の参謀については、ミカサの幹部要員が手分けして任務部隊の分も仕事を担うこととなった。

 

リューネブルク少佐は砲術科出身だが航空隊とも関わりのある稀有な人物で、自身もパイロット資格を持っているらしい。補給参謀のキノ大尉が司令部要員に推挙されていたことには驚いたが、航空機を運用する以上、消耗品が多くなるから、という理由らしい。クレッチマー司令の配慮だろう。会議参加者が簡潔に自己紹介や経歴を述べた後、オレが話す順になった。

 

「オレが今回、任務部隊の司令を務めることになったコープちゅ、いや大佐だ。よろしく頼む。出撃まで時間がないので早速、本題に移ろうと思う。我々の巡洋艦6隻で第4艦隊隷下の任務部隊、つまり第41任務部隊を結成することになった。目的は連邦宇宙軍にて目下、建造・改装が大車輪で進められている航空搭載艦の運用試験だ。更に所属するピッツバーグに対しては、通常型サラミスへのレールガン搭載の評価試験も併せて行うことになっている。」

 

 

「失礼ですが、レールガン、ですか?」

 

おずおずと手を挙げながら質問してきたのはデトロイト艦長のヘルツ少佐だ。経歴によると航空科出身だが事故でパイロット資格を失い、そこから艦隊勤務に転向してルウム戦役前にはサラミス型の副長にまでなった苦労人だ。ただ、専門が航空戦、ということもありいまいちピンときていないのだろう。

 

「そうです。本艦は通常型サラミスとして初めてレールガンを搭載された艦となりました。ミカサ等と比べジェネレーター出力が低い中で効率的な運用法を試験せよ、と命じられています。第1001巡洋艦戦隊の3隻はもともとレールガン搭載の先行試作艦のサラミスですから、試験するにも効率が良い、と判断されたのです。」

 

答えたのはオレではなくオットー少佐だ。ルウム戦役での退避行や、戦隊訓練、哨戒任務の時にもミカサたちのレールガンの運用法を見てきたからか、レールガンでの戦いの距離感や各艦での情報連携にも慣れている。試験任務にも不安が無いのだろう。堂々としたものだ。

最も、艦長就任の直後から生やし始めたちょび髭のためにいささか貧相な印象を受けてしまうのは勿体ないが。

 

「なるほど。では今回の試験任務はレールガンと航空巡洋艦のそれぞれを試験評価する、ということですか。」

 

「むしろ統合運用について。例えば航空隊によるレールガンの観測支援、というのも目的となっているのでは?」

 

頷きながら言ったのがサンフランシスコのカワベ少佐で、こちらを確認するように見ながら話すのが参謀長のリューネブルク少佐だ。カワベ少佐は航海科出身であまりピンと来なかったようだが、リューネブルク少佐はさすがパイロット資格を持つだけあって、観測支援の可能性に気付いたらしい。

 

「リューネブルク少佐の言う通り、今回の我々の試験任務は航空機を含めた統合運用と、その中での航空搭載艦が担うべき役割についての確認、というものだ。哨戒、観測、攻撃支援、対艦任務から対MS、対地任務までさまざまな場合について試験をしていくことになる。」

 

「これまで連邦艦隊ではコロンブス改装のアンティータム型からの集中運用がメインでしたからな。あぁ、少数の露天係止した機体による運用例もありましたが。しかしルウム戦役でアンティータム型が一気に沈められた事で分散配備に切り替える、ということでしょうね。」

 

リューネブルク参謀長がしみじみと話している。確かに効率面から長年に渡って地球連邦軍は大型輸送艦の改装空母を使用してきた。今般のコロンブス改型(アンティータム型)にしてもその流れで先代のカンチェンジュンガ型軽空母に代わって建造されてきたからだ。

 

「それがな、参謀長。どうもクレッチマー司令の話によるとジャブローではそういう訳でもないようなんだ。」

 

「とおっしゃいますと?」

 

ヘルツ艦長が問い返してくる。さすが、航空隊の話になると食い付きが違うな。

 

「これはオフレコだが、ジャブローでは新型の強襲揚陸艦に大量に搭載する案も出ているらしい。戦闘能力も高く、防御にも秀でており、しかも戦闘機やそれ以外も運用できる艦。ミノフスキー粒子を利用した大気圏内の飛行能力もあるとか。」

 

「飛行能力!?」

 

「強襲揚陸艦に、ですか?」

 

おお、ハイネ大尉も食い付いてきた。目キラキラさせてるじゃねぇか。

 

「お待ちください。司令。戦闘機やそれ以外も?ですか。まさか、MSも、という事ですか?」

 

再びリューネブルク参謀長が鋭い。今の発言だけで気付くか!?普通なら気にもとめないだろうに。

 

「・・・参謀長、するどいな。各自、これから話すことは絶対に漏らさないようにな。連邦軍でも確かにMSの開発を始めている。ネルソン型やトラファルガー型のカーゴ・ベイ寸法もそこで開発予定のMSの運用を視野に設計されたらしい。そしてジャブローはこれまで通り、集中運用の方針のまま、だ。クレッチマー司令の方では分散運用して全艦に搭載するくらいにしたいようだがな。」

 

ざわざわとする幹部会議の場だが、気にせず続ける。

 

「とはいえ、開発は端緒についたところだし先ずは航空隊の運用のみだ。私としてはヤハギ、ウィンチェスターが前衛、ミカサ、デトロイト、サンフランシスコが中衛、ピッツバーグが後衛でどうか、と考えているのだが。」

 

「ヤハギ、ウィンチェスターはレールガンの数も多いですし、対空砲が増備されましたからね。後衛のピッツバーグはレールガンが一門ですから集中して運用できるように、ですか?」

 

リューデッツ艦長が質問してくるが、それに頷きつつ付け加える。

 

「それも大きいが、ピッツバーグは通常型サラミスであり、レールガンを搭載した今でも左右の副艦橋が残っている。ミノフスキー散布下では目視による監視は重要だからな。」

 

「なるほど、確かに第12航巡戦隊もカーゴ・ベイで副艦橋が隠れてしまっていますからね。目視による情報は確かに重要です。」

 

カワベ艦長がうんうんと頷いている。

 

「もちろん、目視による監視には限界があるから、まずは艦載機による哨戒を重点的に行う。だが万が一それを抜けられた時に保険として目視による監視もしっかりと行っておきたい。第1001巡洋艦戦隊の哨戒任務でもこのフォーメーションは取っていたから、ピッツバーグ乗員には今さらだろうがね。」

 

頷きながら親指をグッと上げるオットー少佐。哨戒任務でも繰り返し確認していくことなのでお任せあれ、といったところか。

 

「次に航空搭載艦の試験についてだが、現時点で考えているのは大きく分けて4点。

まずは哨戒任務だ。1隻での運用については既にミカサでのデータがある程度蓄積してきているので、今後は宙域の危険度に応じて複数隻での艦載機ルーティンについても様々な運用を試していきたい。次が弾着観測。レールガン搭載艦が4隻に増えたので観測も複雑になるレーザー通信や観測機の交代タイミングも含めて効果的な運用体制を組み立てたい。最後が艦隊戦に於ける運用だな。正直、これは実戦ではなく哨戒任務中の模擬戦闘で全ての試験が出来る、というものでもない。今後、地球の低軌道帯への哨戒任務を行うことになった際、実戦を経ながら試験を重ねていくことになるだろう。」

 

クレッチマー司令の講義にて聞いていたポイントをまとめた資料もホロディスプレイに提示しながら説明する。

長々と話すが、最後の実戦を経て、というところで全員が無言になる。そう、実戦だ。たまたまこれまでの戦いでは大きな被害を受けること無く(無論、ルウムで沈んだミンスクや、戦死した乗員の事は忘れてはいない)これたオレたちだが、ザクのパイロットも戦い慣れした奴が増えてきている今、今後も無事に済むとは限らない。戦力が充実しても沈むときは沈むのだから。

 

「勿論、いきなり戦闘とならないように司令部も今回の哨戒任務はサイド7方面としてくれている。だからこそ、今のうちに少しでも練度をあげ、運用についてのノウハウも身に付けておきたい。サラミス型で航空機を運用すること自体が貴重なデータだ。よろしく頼む!」

 

空気を変えるように意気込むオレの声に、艦長たちや参謀長も含めた全員が頷く。そこからは細かな確認事項や既に第1001巡洋艦戦隊の蓄積していたデータを共有するための打ち合わせへと突入していくのだった。

 

翌日、U.C.0079年4月23日一二三○ちょうど、2つのポートから各々出港した6隻は打ち合わせ通りの陣形を組むと、サイド7ノア方面へと哨戒に赴いた。

 

ルナII管制を出たところから哨戒機をミカサ、デトロイト、サンフランシスコそれぞれ1機ずつ出し、前方と左右後方にかけて哨戒線を構築していく。レーダー・通信どちらも今のところは機能しているが、ミノフスキー散布下を想定してレーザー通信を主とした索敵哨戒の報告や連絡体制を取る。

このあたりも昨日の打ち合わせの際に出た意見をもとに行っていることだ。

 

「参謀長、ルナII管制を出て警戒宙域も抜けた。そろそろ試験を始めようと思うがどうかね?」

 

「はい、既に哨戒ローテーションは始めていますので試験も開始してよろしいかと。」

 

艦橋で横に立つリューネブルク参謀長に問いかけると即座に返答しながら、サブスクリーンに試験工程表を映し出した。昨日の打ち合わせや第4艦隊司令部から届いていた(というかクレッチマー司令がウキウキしながら書いたと思われる)試験に関する要諦を落とし込んで作った計画書だ。

 

「戦隊の連携や練度にもまだ課題がありますので、予定どおり個艦試験から始めましょう。ピッツバーグのレールガンはいささか危険ですのでノア近傍の資源衛星を標的にすることにして、まずは航空搭載艦のタッチアンドゴーからですかね。」

 

工程表の第一段階に書かれているいくつかの項目から参謀長が選んだのは航空搭載艦、もとい空母にとっては必須のもの。着艦しようとする艦載機が上手く着艦出来ないときにやり直すための手順を訓練するものだ。

洋上空母なら飛行甲板に降りてきた艦載機が一度着陸脚を甲板につけ、そこから再びエンジンを吹かせて飛び立つ、と言うもの。上手く甲板に進入できなかった時や何らかのトラブルが起きた時に甲板に突っ込む危険を回避するために必ず行わなくてはならない訓練だ。

 

宇宙艦たるネルソン型やトラファルガー型であればタッチアンドゴーは以下のような手順になる。

まずは発艦、こちらはカタパルトを用いてカーゴ・ベイ前方の気密隔壁と防御扉を開け放ち、行われる。コロンブス改型軽空母(アンティータム型)でも行われていた方法で既に運用法も十分に確立されている。

 

一方でこれから行うタッチアンドゴーについては広大な艦内容積を誇るコロンブス型とネルソン型では自ずと異なる。コロンブスなら、艦内の一部スペースを着艦ゾーンとして、幾重にも重ねた着艦ネットにより確実に艦載機を受け止めるようになっている。

一方でカーゴ・ベイに余裕の無いネルソン型でそんな贅沢な運用は望むべくもない。

そのためにネルソン型ではカーゴ・ベイの舷側部に着艦ネットを展開し、そこに前方、または後方から艦載機を進入させて受け止める、という方法を取っている。

 

現にミカサでも過去3度の降下軌道への哨戒任務では基本的に艦載機の収容はこの方法で行っていた。

 

現時点である程度確立されている方法であるのだが、これには1つ、いや2つの欠点がある。

それはパイロットの腕に依るところが大きい、ということとどうしても機体に負荷や損傷が起こりうる、ということだ。

 

まずはパイロットの腕に依る、という点。これはコロンブス改型に比べネルソン型だと着艦ネットの展開面積が狭く、尚且つ舷側から展開しているために速度などを誤ると勢い余って艦にぶつかりかねないのだ。

 

更に複数枚の着艦ネットによって受け止めていたコロンブス改型に比べ、ネルソン型では右舷で1枚、左舷で1枚と2枚の着艦ネットしかない。おまけにこれは別々の着艦コースとして設定されており、1機のセイバーフィッシュを受け止めるのは1枚のネットのみなのだ。当然、ネットと触れる機体の一部には大きな荷重が掛かってしまう。

 

そこで第41任務部隊として試験を行うに当たり、新方式の着艦を試すことになったのだ。

 

「しかし、艦隊司令も無茶なアイディアを出されますね。母艦がサラミス型であることを利用した高速巡航中に、艦載機の相対速度を殺して着艦アームで捕まえる、とは。確かに機体に掛ける負担は減るかもしれませんが航海科に要求される技量はかなりのものでしょう。」

 

「確かにそうだな。だが、例えばパイロットが細かな操作をしなくてもとりあえず飛んでいれば母艦がなんとか出来る方法でもある。おまけに危なくなればすぐに艦載機側が艦との距離を取ることも出来る。」

 

そう、クレッチマー司令の考えたもう1つの着艦方法というのがこれだ。等速運動を取る2つの物体がお互いを見れば、静止しているように見える。それを着艦アームで掴み取る。

危険だが、着艦ネットを使わない新しい方法として試験を命じられたのは、保険として小型艦でも可能な様々な方法を試しておきたいからだろう。

 

「それに従来の着艦ネット方式も使わないわけではない。様々な方法を試して艦載機を確実に回収できるようにしたい、という事だろう。コロンブス型のように作業用ポッドを積めるわけでもないんだから。」

 

呆れたような参謀長にそう返しつつも、その作業用ポッド(ボール)を積んだサラミスが戦争後期には投入されていたことも原作知識として持っていたオレは表情が歪む。あんなもの(ボール)に搭乗して戦闘に出ろと命じるのも命じられるのもオレは嫌だ。それを無くせるかもしれないなら、こうした試験にも価値はあるはずだ。

 

「確かにそうですな。おまけにネルソン型は戦闘機動を取って急な加減速や転舵も多いですからカーゴ・ベイの強度をあげるために開口部は前方の1つだけになりました。そこでコロンブス改型でしたような着艦方法はとても出来ませんからね。失敗したときにカーゴ・ベイの中の戦力が使えなくなってしまう。その点から見てもこの試験の価値は大きいのかもしれません。」

 

そう言いつつ、試験の準備を進めるためにデトロイトやサンフランシスコとの通信を確立させていく参謀長。

仕事が早い。

 

「そういうことだな。直接ジオンと干戈を交えていなくとも、戦力としてネルソン型を確立するための試験、これも立派な戦い方という奴なんだろう。だからこそ、頼むぞ参謀長。」

 

第41任務部隊の新たな戦いが始まる。

 




航空搭載艦3隻による新たな戦い。それは前話でも書いた試験任務でした。
応急的に改装して、とりあえず戦力としていたルウム直後から、少しずつ連邦軍が立て直しを図っていくなかでこうした任務に従事する部隊もいたのではないか、そして元々新兵の訓練を行っていた第1001巡洋艦戦隊ならこうした任務につく可能性もあるのでは、ということで書いてみました。

勿論、通常の任務にもこれから駆り出される事になるのでしょうが、まずはこうした試験を行う日々が主人公達に訪れます。
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