それでも良ければどうぞ、お楽しみください。
副長に勧められ、ひとまず艦長室で休息をとることにしたオレことコープ少佐だが、休んでなんかはいられない。
前世?の記憶があるとはいえ、もとはガンダムを多少嗜むだけの一般人であったのだ。軍事知識なんぞ持ってはいない。幸いに今世のコープ少佐としてなら軍の士官学校や任官後に学んだ知識を持っているのだから、前世でのこれからの未来の知識と今世の軍事知識を合わせてなんとか生き延びる方策を立てねばならない。
「とはいえ、MSに出くわしてしまえばサラミス如きでは一捻りにされてしまうからなぁ。おまけにこのミカサはまだ戦時改装をされていない旧式艦だ」
そう、サラミス型というだけで不安があるのに、オレの指揮するサラミス型ミカサは現時点でも旧式艦の烙印を捺されているのだ。
どういうことだ、と思う方もいらっしゃるだろう。
本来、サラミス型宇宙巡洋艦はU.C.0070年代の軍備増強計画で建艦された新鋭艦だ。まだ艦齢10年に満たないはずで旧式だなどど言われる筈は無いのだ。本来は。
だが、ここで建艦当初、というより計画時に想定していなかった新技術がある。ミノフスキー粒子の戦闘利用だ。
前世での記憶ではこんな設定や記載は見た覚えが無かったのだが、コープ少佐としての知識によればサラミス型には計画当初、艦の左右舷に突き出した予備艦橋などは無かった。ミノフスキー粒子はあくまで新型の核融合機関やメガ粒子砲に利用する粒子であってレーダーを妨害する、等という効果は想定されていなかったのだ。
そうした中で建艦が始まったサラミス型、更に大型のマゼラン型戦艦だが、就役間近になってミノフスキー粒子がレーダーを妨害する、というとんでもない効果が確認されてしまった。
慌てたのは連邦軍の新型艦建造を推し進めていたジャブロー本部だ。レーダー戦闘前提の世になって数百年経っていたのに急に有視界戦闘をする必要がある、となったのだからある意味当然と言えば当然である。
半狂乱になってマゼラン、サラミスの改装計画を立てた。
左右舷の予備艦橋や追加された対空砲火等もその一つだ。
ところがここで一つ、問題が起きた。その改装計画を立てる前に先行量産としてルナツーで建艦されていた艦があったのだ。マゼラン型戦艦4隻、サラミス型巡洋艦12隻、本来は先行生産をしたこれらの艦は建造の手順や、完成後に各種試験を行って不具合の洗い出しや後の建造への改善点を探し出すことが目的だった。ところがほとんど建造が完了し、就役5分前という時点で大きな改装が必要となってしまったのだ。
ジャブローからすればほぼ完成しているこれらの先行量産艦を手直しするより、まだ建造が進んでいない艦に改装を施す方がはるかにやりやすい、ということでこれら16隻はひとまずの完成後、主砲の威力や耐弾性の試験などにほとんど使い潰すかのように供されることになる。
それでもマゼラン型はその絶大な防御力(皮肉なことだが、先行量産艦は改装艦のマゼランよりも装甲が厚く作られていたのだ。これは長距離からのレールガンでの攻撃なども想定していたからだ)を見出だされ、2番艦がレビル提督の乗艦アナンケに、3番艦がティアンム提督の乗艦タイタンに、4番艦もカニンガン提督の乗艦ネレイドへと改装されたのだ。(ただし、1番艦のみは耐弾性試験によりメガ粒子砲で滅多打ちにされ、廃艦処分となっている。しかも艦名もマゼラン、だったのが改められゴリアテになっていた)
一方、サラミス型巡洋艦はそこまで幸運には恵まれなかった。もともとマゼランに比べれば補助艦であり、わざわざ手間隙かけて手直しするより、最初から改装点を取り入れた艦を建造する方が早い、と判断されたのだ。
そこで先行量産艦12隻の内、実に9隻が既に試験によってスクラップとされてしまった。おまけにその試験結果を元に更にダメコン能力の向上などの戦時改装が新造サラミスには施されることになったのだ。
そして残った3隻だが、ここまで言えばもうお分かりだろう。その3隻のうちの1隻がこのサラミス型巡洋艦ミカサなのだ。ついでに言えば残り2隻もすぐ近くにいる。ミカサと戦隊を組む同僚艦のヤハギとウィンチェスターだ。
つまり、オレの指揮艦であるミカサはサラミス型巡洋艦の先行量産艦として産まれ、戦時改装による左右舷側への予備艦橋の取り付けやら、対空砲の増備やらをされない状態でルウムへ送り込まれることになったのだ。
実を言えば、オレが何度も司令部に呼び出され、副長から心配される程に疲れはてていたのも、こうしたミカサの出自に理由がある。言ってしまえばミカサは通常のサラミスと比べてもミノフスキー粒子下での戦闘では脆弱になり得る艦なのだ。
だから司令部は何度も戦隊の最先任の艦長であるオレを呼び出し、ミカサやヤハギ、ウィンチェスターの戦力化状況を問い質し、更に対空砲の少ないこれら3隻を艦隊のどこに配置するか(つまりはどんな役どころを担わせるか)を検討するためにオレをこき使ったわけだ。
通常ならこうした検討に呼ばれるのはたいていは戦隊司令だろう。
通常、サラミス型巡洋艦で構成される巡洋艦戦隊はサラミス型4隻から構成され、司令には中佐が充てられる。
では、なぜ一艦長にすぎないオレが司令部に何度も呼び出されたかと言えば、俺たち先行量産サラミスの戦隊、第1001巡洋艦戦隊には司令部が設置されず、先任艦長がその代理を担っていたからだ。これも改装されていない旧型サラミス故の扱いだ。どうせ近々スクラップになるだろう艦を率いたい中佐等いない、ということもあったのかもしれない。
実際に開戦にならなければ俺たちの乗艦は新兵訓練用として使われつつ、早期に退役することになっていただろう。
全く人生とは儘ならないものだ。
ところが、実際にはジオンの馬鹿どもが戦争を引き起こし、コロニー落としをやり、艦隊司令部は一週間戦争でコロニー迎撃の艦隊が大きな被害を出したことで少しでも手元の艦をかき集め、出撃させることにしたらしい。
結果として戦時改装をされないままに俺たちのミカサは僚艦と出撃している。
まぁ、整備途中だった艦やらレパント型フリゲートのように最早戦力にはなりようも無いような艦まで根こそぎ動員されているのだから仕方ないかもしれないが。
オレたちは配置場所が第2連合艦隊(レビル大将指揮下)の後陣、コロンブス型改装母艦の近くってのがまだ救いだが、ここだってMSに狙われたら一溜りもないだろう。
「愚痴を言いたくなるのは仕方ないが・・・」
艦長室で無重力対応のベッドに身を投げ出しながら独りごちる。
「今はともかく死なないための算段を立てなきゃならんか」
オレは必ず、1年戦争を生き延びて退役してやる。
決意を胸に、オレは戦術コンピューターを呼び出すのだった。
サラミス型やマゼラン型は上部だけでなく、左右舷側にも艦橋が配置されています。あれはミノフスキー粒子下での有視界戦闘のために増設された、と昔何かの雑誌で読んだことがあったため、そこから増設される前の旧型艦がもしルウム戦役に出撃したら、という妄想をしたのが本作の産まれるきっかけです。
今回は長々とでしたが、その増設(戦時改装)に至る経緯を自分なりに考えてみました。レビル提督の乗艦アナンケが他のマゼランよりもやけに打たれ強い、というのも初期建造で装甲が厚かったのでは?と前々から考えていたのでこのような設定となりました。
とはいえ、にわか知識なので正しい情報をご存知の方は是非、ご教示いただければ幸いです。