ではどうぞ。
4月から5月にかけて、地球上で少しずつジオンの占領地域が広がりつつあるのを横目に、宇宙では戦線の膠着状態が続いていた。
地球連邦の拠点がルナII(とその近くであるサイド7)だけであり、ジオン側も地球侵攻に注力しているため、お互い積極的に相手を攻撃しようとはせず、哨戒部隊同士の戦闘やジオン降下部隊への補給線への攻撃など、小規模戦闘が起こっているに留まっている。
そんな中で我々第41任務部隊の試験任務は6日から10日程度の任務と、2日程の補給整備を1つのスパンとして試験を行っていた。最初の3回はサイド7方面だったがその次からはサイド5ルウム宙域や地球降下軌道にも試験をしつつ哨戒を行っている。今回もサイド5宙域を8日掛けて哨戒し、ルナIIに戻ってきたところだ。
「しかし、サイド5は惨いものですね。まともに残っているコロニーですらあの状態とは。」
ルナIIの管制宙域に間もなく入る安心感からか、リューネブルク参謀長が言う。
今回の任務前にはコロニー公社の仲介で連邦とジオンとの間でサイド5宙域は非交戦宙域とすることが決定し、両軍の部隊は仮に出会っても戦闘しないことになった。そのため前回の哨戒任務よりもコロニーの近くへ出向いたのだが、戦前は40基近くもあったルウムのコロニーで今も機能しているものは首都バンチのミランダ含めわずか数基しかない。
大半はコロニー内部での戦闘で居住が不可能になり、10基は戦闘の影響でコロニー自体が崩壊してしまっていたのだ。
「一番ましなテキサスコロニーでも内部の乾燥に歯止めが効かなくなっているからな。ミランダも半ばスラム状態だ。リーア政府が何度か救援を行っているようだが、さすがに本格的な修理やコロニー再建は戦争が終わらねば不可能だろう。」
今回の哨戒任務では、ミランダに辛うじて残っているルウム政府からの要請でテキサスコロニーで発生していた急病人を第41任務部隊でルナIIへ搬送することになった。ミランダ中央病院も戦闘の影響で医療機械の多くが使えなくなっており、テキサスコロニーにあった個人宅の医療設備(これ、たぶんマス家の事だよな。テオドロ・マスの為の医療設備だったのだろう。)でなんとか治療をしていたらしい。
ジオンの哨戒部隊にも連絡を行った上で8名の急病人とその家族、合わせて20人をミカサとデトロイトで収容、ルナIIへ運ぶことになったのだ。(距離から言えばジオン本国であるサイド3ムンゾの方が近いが、ジオン側は受け入れを拒否したらしい。)
サラミス・ネルソン両型は勿論、セイバーフィッシュも戦闘機のため、非交戦宙域に侵入させることは出来ない。ミカサとデトロイトの連絡艇で何往復かして急病人らを艦に収容した。
ムサイが遠距離から監視している中で、ネルソン型の情報をジオンに与えることになってしまったが仕方ないだろう。(まぁ降下軌道での戦闘でミカサの情報は既に知られているし、他のネルソン型の中には沈められた艦もあるから今さらかも知れないが。)
「ルウムの事もなんとかしてやりたいが、今は戦争中だ。連邦にも出来ることは限られている。それよりも、次の哨戒任務ではリーア方面に向かうことになるはずだ。ルウムと違ってリーア管制宙域の外側ではジオンと戦闘になることもある。気を引き締めなくてはな。」
ルナII管制へ急病人をルナIIの病院へ収容するよう依頼しながら、参謀長とオレは次の任務について打ち合わせを始める。
クレッチマー司令からの話ではおそらく次はリーアだろう。最近はリーアから連邦とジオンへの農・工業品の輸出も本格化してきている。リーアの民間船に連邦軍、ジオン軍の哨戒部隊と、リーア近傍は艦船の密度が上がってきている。
「ジオン側はあからさまに連邦への輸出を妨害しようとしていますからね。友軍の哨戒部隊への攻撃も頻発していますし、我々も他人事ではありません。」
「そうだな。第41任務部隊の編成替えも行って、練度も上がってきているとはいえ、戦闘となるとまだ不安が残る。艦長会議でも艦載機の発進や長距離戦闘の手順を改めて確認しておきたい。」
そう、第41任務部隊を構成する第1001巡洋艦戦隊と第12航空巡洋艦戦隊だが、第12航巡戦隊にミカサが編入され旗艦に(オレは任務部隊司令兼務で第12航巡戦隊司令になっている。)、第1001巡戦の旗艦としてヤハギが指定されリヒャルト少佐が艦長兼務で戦隊司令となった。
対空火器の増設も任務の合間に各艦で随時行われており、ミカサも通常型サラミスに劣らぬ防空能力を手に入れている。
「艦長会議は明日の○九○○からで宜しいですか?」
「ああ、そうしよう。すまないが参謀長、入港次第で艦隊司令部にも今回の試験報告と合わせて艦長会議の時刻もあげておいてくれるか?」
航空機の運用についてのノウハウは確実に蓄積させることが出来ており、航空巡洋艦の運用も軌道に乗りつつある。非交戦宙域になる前のルウム近傍でも一度ムサイ1隻の哨戒部隊と出くわし、航空機で牽制しながらレールガンで攻撃する、という第41任務部隊の利点を活かした戦法も試すことが出来た。そうした航空機の運用について、艦長会議では哨戒任務の度に検討や反省会を行っているのだがいつからかクレッチマー司令がそこに参加されるようになっていた。
第4艦隊所属の航空機搭載艦は今回の哨戒任務に出撃する時点でトラファルガー型3隻(ヴィクトリーも含む)とネルソン型12隻(第12航巡戦隊含む)の合計15隻にまで増え、哨戒や偵察の任務にも積極的に投入されている。それらの部隊での航空機運用も我々の試験結果を元にマニュアルを作成しているのだが、クレッチマー司令もそのマニュアルに多くの意見を出している。最初はオレ達が艦長会議で検討してからあげた報告について個別に質問や意見を出して、そこからマニュアルに反映して、という流れだったのだが、クレッチマー司令の質問がかなり微に入り細を穿つものだったため、いっそ艦長会議での検討段階から参加してもらおう、となったのだ。
(間もなく少将に昇進される、と噂なのに相変わらずアクティブだよなぁ。まぁさすがにヴィクトリーで出撃しようとした時には参謀長に止められたらしいけど。)
「艦長、ルナII管制より通信です。急病人の収容準備は完了すれど、現在第57ポートより出港中の艦あり、とのことで入港を少し待ってほしいそうです。」
「了解した、と返信してくれ。通信長。少し時間が出来たか。医務室に入港が遅れることも通達しておいてくれるか?」
「アイサー。」
「参謀長、少し時間が出来た。報告書は急がなくても大丈夫そうだぞ。」
「有難い事ですが、残念なことに昨日までの段階でほぼまとめ終わっていますよ。司令もほとんど確認を終えておられましたよね。」
ニヤニヤと笑いながら返してくるリューネブルク参謀長。
「まぁそうだったな。だが、余裕が出来たのは事実だ。ついでに補給リストの確認もしておいてくれるか。キノ参謀?」
「補給物資についても、既に管制経由でポート補給部に伝達済みですよ、艦長。艦載機の運用もルーティンが組めるようになってから消費物資が予測しやすくなってきて助かります。」
話を振った補給参謀からの返事にオレは小さく頷く。ドタバタだった第41任務部隊の初出撃に比べ、部隊として連携や運用に慣れてきた昨今の出撃では、消費する物資や航空機の運用も計画した範疇で収まるようになっている。お陰で部隊運用も余裕をもって行えるようになってきた。何より、司令部と各艦の連携が取れるようになってきたことが大きい。
「うちの司令部メンバーはみんな優秀で有難いよ。何せ司令のオレがまだまだ航空戦に不慣れだからなぁ。」
「コープ司令も航空機を搭載した緒戦から航空戦の指揮をしっかり執られていたじゃないですか。」
「航空参謀、その緒戦の後にクレッチマー司令からありがた~い指導のお言葉を戴くとな。そんな達成感は霧散してしまうんだよ。」
航空隊の取り纏めをしながら口を挟んできたハイネ大尉に応えると、苦笑しながら『そうでしたね~』と言いやがった。おい、あの時に逃げたこと忘れてないぞ、オレは!
「クレッチマー司令に言わせたら、私やハイネ大尉だってまだまた至らぬ点ばかりですよ。コープ司令はよく指揮をなさっておいでです。まぁ、不慣れな部分は追々、慣れていただけるように私もご助力いたしますので。」
「有り難う、参謀長。しかし、お手柔らかに頼むよ?いや、ほんとに。」
2ヶ月の実戦を経て、第41任務部隊は連携を取れるようになってきた。幹部の人間関係も深まってきて、戦闘となっても落ち着いて対処する事が出来るだろう。
リーア方面への哨戒任務では、どの哨戒部隊でも大かれ小かれ様々な戦闘が起きている。
リーア政府への無言の圧力ともなり得るのだから、連邦もジオンも部隊の派遣を辞めることはないだろう。
「願わくば、任務部隊の損害がないようにしたいものだが。」
第57ポートから出撃していくトラファルガー型とサラミス型からなる哨戒部隊を眺めつつ、オレはいつの間にかそう独りごちていた。
3日後、補給と小規模の補修工事を終えた第41任務部隊の6隻はルナIIを発し、リーア方面へと出撃した。
「航海長。任務部隊の進路固定、速力第2巡航速度へ。リーア管制宙域から100キロ地点を通過し、しかる後にルナIIへの帰還コースに遷移する。」
「アイサー。現在の速度を維持すればリーア管制宙域への最接近は4日後、二三三○の予定です。」
「司令、第1001巡洋艦戦隊より報告。進路、速度について了解信号を繰り返しています。」
「第1001巡洋艦戦隊へ受領信号を応答せよ。」
航海長、通信長がそれぞれ報告すると、オレが応えるまでもなくリューネブルク参謀長が指示を出す。オレは静かに頷いて指示を追認し、続けて航空参謀へ指示を出した。
「航空参謀。航空隊の先行偵察のルーティンを始めてくれ。偵察種別は二重偵察。リーアに近づくほどジオンと邂敵の可能性は高くなる。念入りに偵察を頼む。」
「アイサー。ミカサ、デトロイト、それぞれ2機を発艦させます。」
ルナII管制の宙域内にいるうちに、部隊の陣形をしっかりと整え、先行偵察用の機体も発艦させるように指示を出す。リーア近傍まで行けばほぼ確実に戦闘になるとはいえ、今はまだジオンにとっても危険なルナIIのすぐ近くだ。乗組員達もまだまだ落ち着いたものだ。
(ルウムの時は右往左往していた新兵達もすっかり戦闘慣れして来たな。そろそろ再建された連邦艦の中堅として転属になる者も出てくる筈だ。その為にもまずはこの哨戒任務を生き残らせてやらねばな。)
なんだかんだ、ミカサで新兵を訓練するようになってから数年が経つオレにとっては成長していく新兵は可愛い後輩たち。叶うなら全員生き残らせてやりたい。原作でのサラミスやマゼランの沈み方を知っている身からすれば難しいことだとわかっていても、だ。
「参謀長、副長。地球外縁軌道に着くまでは三交代制を取る。各艦にも指示を出してくれるか。」
「了解しました。司令も最初にお休みなさってください。艦橋はお私が預かりしますよ。」
「アイサー、『艦橋よりミカサ全艦へ。これより三交代制の当直とする。A班は当直となせ。』私はキノ参謀と物資の件で確認したいことがありますので、少しばかり残業とさせていただきます。」
「よろしく頼む、参謀長。副長はあまり根を詰めるなよ?」
リューネブルク参謀長とオットー副長がそれぞれ返事をするのを聞いてから艦橋を出て、司令官室へと退室する。サイド6リーア近傍までは4日、となれば・・・
「3日後からは重点警戒を取るべきだろうな。サラミス6隻となればジオン側も警戒するだろう。待ち構えられられていてもおかしくはない。」
リーアへ向けて第41任務部隊の加速は順調に行われている。3日後にはルナIIとジオン本国とのちょうど中間を越えるから、その辺りから敵の哨戒部隊と遭遇する可能性があがるだろう。接敵まではしなくても、こちらの存在に気付かれて対抗部隊を動かされる可能性だってある。
司令官室で今後の事を考えながらオレは浅い眠りについていた。
3日後、UC0079年6月4日
リーアが近づき、超望遠カメラでもその巨大なコロニーのシリンダーが確認できるようになった頃、第41任務部隊は2つの勢力からの接触を受けていた。
1つはリーア政府の管理下にあるリーア防衛軍(戦前はリーア治安維持部隊だったが、開戦に伴い組織が改編されたらしい)の哨戒艦ソコトラから。戦前に地球連邦から供与されていたレパント型のようだが、今はリーア所属であることを示すため艦側面にでかでかとリーア政府の徽章を描いている。
間もなく我々がリーア政府の管理宙域に入ることを警告し、その目的や進路変更について通信をしてきたが、開戦以来こうした任務についてきていたからだろう、相手側も慣れたもので我々がリーア領宙ギリギリで進路を変えるであろう事を前提に話してきていた。
そしてもう1つの勢力がやはりと言うべきか、ジオンの哨戒部隊から。こちらはムサイ2隻のようで、仕掛けてくる気はないようだが、念のため我々もセイバーフィッシュを2機、この哨戒部隊を監視するために派遣している。
「通信長、哨戒艦ソコトラに返信、『ワレ、地球連邦軍所属ノ第41任務部隊。リーア近傍ヘノ哨戒任務ヲ実施中。リーア接続宙域ヘノ進入許可ヲ求ム。』こちらの予定航路も添付してくれ。」
「アイサー、返信行います。」
「さて、リーア政府の方はこれで問題ないでしょうが、ジオンの方はどう動いてくるでしょうか。」
「ルウムの時にも我々が6隻で任務についていることは報告されているだろう。同じ部隊だと分かれば付近から増援を出して仕掛けてくるだろうな。」
「接敵しているムサイ2隻のような哨戒部隊が他にもいるでしょうから、それを差し向けてくるとすると多方向から襲われることにもなりかねませんね。」
「なんとか切り抜けたいところだな。戦闘は避けられないだろうが、第一の目的は哨戒であって敵の撃破は二の次だ。生き残ることを最優先とするぞ。哨戒は情報を持って帰らねば意味がない。」
「了解いたしました。部隊の警戒態勢は第2種まで引き上げますか?」
「そうしよう。通信長、全艦へ指示を頼む。」
「アイサー!」
第2種警戒態勢へ移行してから6時間後、やはりジオン側は増援を差し向けてきた。リーア管制宙域の外縁(管制宙域の外側にあるリーア接続宙域と呼ばれる一帯だ。)をなぞるように移動する第41任務部隊の前方、後方、そして左方の三方向からジオン部隊が接近してきたのだ。
左方の部隊は最初に接触していた哨戒部隊のムサイ2隻、前方も同じくムサイ2隻の部隊だ。
意外だったのは後方からの部隊だった。後方の索敵のために出していたセイバーフィッシュからレーザー通信が入ったのだが、
「パプア級輸送艦2隻とムサイ1隻?」
「はい、後方索敵に出していたオウル3とオウル4からの報告です。『敵はムサイ1隻を先頭にパプア級2隻を伴う』と。」
「確か、ジオンはパプア級からもMSを発進させていた
な?」
「はい、ルウムやその後の地球軌道での戦闘報告によれば、最大で6機搭載可能なはずです。」
「ムサイ5隻にパプア2隻とすれば最大でMS32機か。これはキツいな。直ぐに仕掛けるぞ!左方の敵をα群、前方の敵をβ群、後方の敵をγ群と呼称!!
任務部隊の陣形、輪形陣へ!後方にヤハギとウィンチェスター、前方にピッツバーグを配置!後方のパプア級を最優先で長距離狙撃する!本艦は左舷部隊に対応、艦の天地を90度倒し、左右のレールガンで敵部隊を狙撃する。全艦に指令送れ!!」
「「「アイサー!!」」」
オレの指示と同時に戦闘アラームが鳴り、一気に緊張感が増す。副長と通信長、航空参謀は直ちにCICへ移動し、航海長、砲術長、参謀長は艦橋に残った。
「砲術長、艦の姿勢を変更完了次第、α群に対して射撃を開始する!索敵機には精密観測を依頼している、出来るだけ早くムサイを沈めてくれ!」
「砲術了解です。ムサイはまだMSを出撃させていませんからその間に沈めたいですね。」
「頼むぞ!通信長、ヤハギのリヒャルト艦長へγ群へはパプア級をまず狙撃するよう念押しを!奴がMSを発進させると厄介だ。各艦、射撃準備出来次第撃ち方始めだ。」
そう指示を出すのとほぼ同時、艦橋の窓から見える宇宙空間がぐるっと向きを変える。ミカサが両舷のレールガンを使用するために艦の推進軸を90度倒すように回転したのだ。艦の動揺が収まると同時、ミカサのレールガンが第一斉射を行う。精密観測を艦載機にしてもらうことが出来る第41任務部隊では、初撃から全力斉射を行う方が敵に打撃を与えやすい、と考え観測データを用いることが出来る時には最初から斉射を行うことになっている。
「航空参謀!ミカサを含め第12航巡戦隊は艦載機の全力出撃開始!任務は想定通り、MSへの嫌がらせでいい!観測任務についていない機は全て出せ!」
「アイサー、まだ出撃していない艦載機を発艦させます。」
現在、哨戒と索敵のために艦載機は9機出している。リーア管制宙域である艦隊右舷側を除く各方向に2機ずつと、それぞれ交代機を1機ずつ発艦させたところだった。
少し前に着艦し整備中の3機は置いておくとして残り8機が即時発艦出来るので、それらを出撃してくるであろうザクII対策として対空ミサイル装備で発艦させるのだ。
対空ミサイル装備なのは、ザクIIの機動性に追随しようと距離を詰めてしまうとセイバーフィッシュでもあっさりやられてしまうため、距離を取って牽制をするためだ。(ミノフスキー散布下のため、誘導性能はお察しの通りだが、そもそも大体の方向に撃ちっぱなしにして、近接信管で破片を撒き散らすように設定された対空ミサイルを使用することにしている。)
「直掩は残さなくて良いから発艦させた8機は全て観測機の援護に向かわせてくれ。くれぐれもMSと距離を詰めないようにパイロットには念押ししてくれ。」
「アイサー、発艦完了は七分後の予定です。発艦できた機から順次援護に向かわせます。」
「司令、リヒャルト艦長とオットー艦長よりそれぞれレーザー通信入っています。γ群のパプア級に対してレールガン射撃を開始。ピッツバーグもβ群に対してレールガン射撃を開始しました。」
ハイネ航空参謀の返事とリューネブルク参謀長からの報告が重なる。頷きながらオレは気になっていることを通信長に確認した。
「了解した。ジオンの各群からMSの発艦は確認できたか?」
「α群、β群からはまだ発艦の確認できていません。γ群のムサイ級とパプア級からは発艦が始まったとの報告がオウル3より先程入ってきました。」
「α群、β群からはまだ出ていない?距離的には3群とも同じくらいなのにか?」
「γ群は加速中の我々に追い付かねばなりません。足の遅いパプアより、MSの方が追い付くのが早いと考えての事では?」
「なるほどな。襲撃タイミングを数的主力のγ群と合わせたいからα群、β群はMSの発艦を待っているのか。ならばその前にレールガンで撃沈したいな。砲術長、頼むぞ!」
「アイサー!そろそろ当てますよ!」
通信長からの報告を聞きながら参謀長と敵の戦術を予想し、砲術長に発破をかける。実際問題として、ザクIIが発艦する前に母艦を叩けるかどうかでこれからの戦闘の趨勢が決まる。こちらとしては一刻も早く沈めたいのが本音だ。
そんな待ち望んでいた直撃を最初にもたらしたのは意外なことにピッツバーグだった。
「β群ムサイ1隻に対して直撃弾!敵艦の砲塔を直撃の模様です!敵艦より爆発光確認!」
「おお!やったか!ピッツバーグが初撃とはやるな!オットー艦長!」
砲塔を撃ち抜かれたムサイ級はどうやらそのまま爆沈したようで、大きな爆発が艦橋の窓からも確認できた。
望ましい展開だが、どうやらこれでジオン側もレールガンでの射撃に気付いたらしい。(余談だが、レールガンの射撃は意外なほど気付かれにくい。砲弾は小さくかなりの高速で翔んでいくので、ミノフスキー散布下だとレーダーに映ることもない。発砲炎もないので当たらなければ気付けないのだ。)
慌てたように各群のムサイ達から一斉にメガ粒子砲の射撃が始まった。更にα群、β群からもザクIIの発艦が始まる。だが、距離はまだかなり遠く、メガ粒子砲の有効射程にはほど遠い。むしろメガ粒子砲の眩い光は格好の射撃目標になる。
「本艦の第4斉射、α群のムサイに対して直撃弾!2発とも当たりました!」
「おお、砲術やったな!」
報告を聞き急いでサイドモニターに映る望遠レンズのα群の様子を見れば2隻のムサイ級のうち、左に位置する敵艦から火が出ているのが見えた。どうやらエンジンブロックの1つを撃ち抜いたようでかなりの勢いだ。あれなら戦闘継続は不可能だろう。更に第5斉射も同じムサイを狙っているので更なる打撃を与えられるかもしれない。
「砲術、第6斉射から目標をもう1隻のムサイに変更してくれ!」
「アイサー!そちらも沈めてやりますよ!」
「司令、γ群のパプア級1隻にも直撃が出ました。ウィンチェスターの射撃です。パプア級は誘爆が激しく、間もなく沈むだろうとのことです。」
「了解した。さすがリューデッツ艦長だな。もう1隻のパプアはどうだ?」
「それが、ムサイ級の影に隠れて発艦を行っているようです。既にγ群からは12機のMSが発艦したと。」
朗報が続いていたが、うまい話ばかりとはいかないようだ。沈めるほどの打撃を与えたパプアからも既に何機かのザクIIが発艦していたらしい。それにしても12機か。4機は出撃させずに無力化ことが出来た、ということか。だとしてもキツいな。
「オウル6とオウル9からの報告です。α群からは4機、β群からは6機のMSの出撃を確認した、と。」
更に通信長からの報告を聞き、脳内で素早く計算をする。三方向から合計22機のザクII、更にムサイが3隻とパプア級が1隻。パプア級は戦力にはならないだろうから護衛のムサイと遠巻きにいるだろうが、それでもムサイ2隻。護衛のムサイもひょっとすると長距離砲撃はしてくるかもしれない。となると、
「各艦に指令。対空戦闘用意。コンバットボックス形成!メガ粒子砲は全門対空ショットガンモードへ。メガ粒子砲、対空砲、どちらも敵が射程に入り次第撃ち方始め。レールガンの射撃は継続するも、敵弾回避が必要な場合はそちらを優先せよ。」
数度の哨戒任務の合間に少しずつ換装することで、第41任務部隊のサラミス型は全艦に対空射撃対応型のメガ粒子砲を搭載している。もとより、砲身の換装だけで対応出来るので、短い任務間の整備中でも数門ずつなら換装ができたのだ。そして今回の任務前に辛うじて全艦の全門の換装が終わったのだ。(というか、むしろ換装を終えたから危険なリーア近傍への哨戒に満を持して出撃することになったとも言える。)
「砲術、アイアイサー!」
更に第二次世界大戦の頃のアメリカ軍爆撃機の戦訓を参考に、各艦の距離をギリギリまで詰めたコンバットボックス陣形も考案した。クレッチマー司令からは『よくそんな中世紀の事例を知っているな』と呆れられたが、これは転生前の20世紀末から生きる人間なら割と直ぐに思い付くことだろう。(B29の本土空襲などの事例があるから。)ただ、コンバットボックス陣形では艦同士の距離が近いので操艦が難しい。なのでミスをしないようにミカサも他艦と天地を揃えておかなければならない。
今までは両舷のレールガンを使ってα群に射撃していたが、これからは左舷側の一門での射撃になってしまうだらう。仕方ないが。
「航空、観測機を1機に減らし、残りの機体全てでMSの牽制をしてくれ。出来るだけ機体をバラけさせ、艦隊へ集中して攻撃出来ないように。」
「航空、了解です!」
リーア近傍での戦いは始まったばかりだった。
リーア近傍での戦い。前編をお送りしました。
第二次世界大戦でも中立国の周囲では交戦国同士の激しい鍔迫り合いが行われていました。スイスしかり、スウェーデンしかり。
今回の話でも一年戦争の中立勢力であるサイド6リーアにまつわる話を書けないか、と考えたところから今回の話となりました。
仕事が忙しくなり、個人的にも少しバタバタしているため更新がしばらく遅くなりそうです。気長にお待ちいただきますようお願いいたします。
また、誤字のご連絡ありがとうございます。