レールガンにて2隻を沈めましたが、ジオン側もMSを出撃させました。
今話では戦闘の後編をお届けします。
では、どうぞ。
リーア近傍で起こった遭遇戦、第一ラウンドはこちらのレールガンによる先制攻撃が功を奏し、ムサイとパプアを1隻ずつ沈め、ムサイ1隻を損傷させることが出来た。
残りのジオン側艦艇も沈めたかったが、レールガンでの攻撃に気付くと艦隊同士の距離が離れていても構わずに即座にMSを出撃させて来ている。ジオン側でも連邦艦隊が徐々にレールガンを装備してきていることに気付き、対策を考えてきているらしい。
現状、ジオン側はムサイ3隻とパプア1隻が健在、我々の艦隊左舷側から接近していたα群のうち、損傷したムサイ1隻はエンジンブロックを切り離しつつも艦内で火災が収まらないようで既に行き足が止まりつつある。あの様子なら沈んでくれるかも知れないがこちらも出撃したザクIIが22機、三方向から迫って来ている状態で余裕はないから追撃は出来ない。
「砲術長、メガ粒子砲のエネルギー充填率はどうか?」
「現在、エネルギーキャパシタは各艦とも8割以上を維持。レールガン射撃をしながらでもショットガン射撃なら50連射は問題なく出来ますぜ。レールガンの射撃ペースを落とすなら60連射も可能です。」
「ジオン側への圧迫となるので、敵艦への射撃は維持したい。ひとまずは50連射も出来るならそれでいこう。対空火器と併せ、指揮を頼む。」
「アイサー!」
砲術長はレールガンの射撃を砲術課員に任せるようで、自らは対空戦闘の指揮を取るようだ。航空参謀ことハイネ航空長を見ると指示した通り、艦載機の配置を調整している。レーザー通信での短文メッセージで17機を指揮するのは大変だろうが、音声指示ができない現状では致し方ない。
「航空長、整備中の3機だが、整備完了次第で直掩に出してくれ。それ以外の機体については先程の指示のまま。」
「アイサー!γ群を観測していたオウル03と04がパプア級への攻撃を提案してきていますが、指示はMSへの攻撃のままでよろしいですか?」
「オウル03と04には対艦兵装はなかったのではないか?」
「はい、通常の索敵兵装として対空ミサイル4発のみです。ただ、パプア級の装甲なら対空ミサイルでも撃ち抜ける、と。」
「航空参謀はどう思う?」
「攻撃させるべきかと。母艦がやられればMSへのプレッシャーとなりますし、護衛のムサイは対空火器がありません。今からMSを追いかけさせるより成功の可能性も高いと思料します。」
ハイネ大尉からの提案にしばし悩むが、餅は餅屋だ、任せてみよう。
「よし。オウル03と04のパプア級への攻撃を許可する。通信長、ヤハギとウィンチェスターに連絡を。レールガンの目標変更、ムサイ級を狙え、と。それと後方からのMSへの対処はリヒャルト艦長に一任する!」
「「アイサー!!」」
「司令、ピッツバーグとデトロイト、β群からのMSに対して対空射撃、開始しました。」
「よし、任務部隊進路を一二三○へ!下げ舵三。接近するMSを近付けさせるな!沈めなくても良い、損傷を与えて退避させろ!サンフランシスコもα群MSの迎撃に当た
れ。前方β群を撃破し、我々も撤退するぞ!」
適中突破からの撤退とはまるで関ケ原の島津の退き口だな。違うのは味方を見捨てて逃げるわけにはいかない、ということか。厳しいぜ。
「副長、万一の場合は応急指揮頼むぞ!」
「アイサー。お任せください。キノ参謀のお陰で補修物資もたんまりあります。ミカサは沈めさせませんよ!」
「頼もしいな。よし、対空戦闘はじめ。」
光学レーダーや目視監視によるMSの接近状況を確認したオレは戦闘開始を命令する。艦首、艦底部、そしてカーゴ・ベイの側面に装備するメガ粒子砲から眩い光が放たれ、幾条にも枝分かれする粒子の束がまるで宇宙に投網を放ったようだ。願わくば、ザクIIをからめ捕って欲しいがどうなるか。
奥の手は出来ればまだ使いたくないが、さすがにこれだけの数のザクII相手だと被害を抑える事を優先せざるを得ないかもしれん。
「司令、本艦のレールガン第7射はα群ムサイに対して直撃せず。続けて第8射撃ちます。」
「ピッツバーグ、対空火器の撃ち方始めました。β群MSとの距離、約7万メートル!」
「オウル11、α群MS1機に損傷を与えました!損傷機は引き続き我が方へ接近中!」
「本艦の対空火器、撃ち方始めます。目標、接近中のα群MS、仮名α1よりα4とします。」
次々と戦闘報告が上げられるのを聞きながら、オレ自身は全体の状況は常にメインモニターで確認しておく。前後左方のいずれかでMSが防御を抜いてくる事があれば直ぐに対処できるように。乗組員はみんな落ち着いて動いている。信じて任せればよいはずだ。ちなみに、レールガンの第8射はα群の健在なムサイに直撃したものの、さほどの損傷を与えることは出来なかった。ムサイは依然として接近しつつあり、乗組員達は必死に迎撃をしてくれている。
(だからこそ、オレがすべきは乗組員達が最善を尽くした上でもなお抜かれたときの対処を指示できるようにすること、だ。)
「司令、後方からのMSの圧がやはり強いようです。対応策を追加で講じるべきかと。」
「リューネブルク参謀長、具体案はあるか?」
「先ずは艦載機の追加、これは整備中の3機を完了次第で送り出せばよいでしょう。幸い、あと10分程で送り出せそうです。次にヤハギとウィンチェスターに新型弾頭の発射を許可されてはどうでしょうか?」
「やはりそこか。対空レールガン弾頭の初お目見えと言うわけだな。」
「初速が早い分、狙いをしっかりとつければMSに対しても有効打となりやすいのですから。出し惜しみをして沈んでは馬鹿を見るだけです。それにヤハギとウィンチェスターにはレールガンが4門ありますので、対艦と半々での射撃も出来ますから。」
だよなぁ。せっかくオレたちが試験任務の中で要望を出して開発と量産許可を勝ち得た弾頭なんだから『今使わずにいつ使うのだっ!!』って奴だ。
幸い、『まさかあれをっ!?まだ早すぎます。』とかいう参謀は居ないのだし。
「よし、通信長。部隊全艦にレーザー通信。『Open the jack in the box』」
「アイサー!」
「砲術長、只今よりType3弾頭の使用を許可する。必要であればムサイ級への射撃を中止し、レールガンも対MS射撃に振り分けてくれ。」
「いよいよですか!腕がなります!が、今のところは艦載機との連携でMSの接近を許していませんのでα群に対しては引き続き対艦弾頭のままでいきます。」
「うん、判断は任せる。砲術長の必要だと感じた時でよい。」
後方、γ群からのMSは距離5万メートル地点まで近付いてきた。α群のMSは母艦への攻撃が気になるようで、思いきった接近を出来ていない。β群も母艦からあまり離れたがらなかったようでピッツバーグは遠距離射撃中心の迎撃を行っている。こちらの思惑通り、上手く3部隊の連携を切り崩すことが出来そうだ。
「司令、Type3弾頭を使用したヤハギですが、さっそくMS1機を撃破したようです。ザクIIは頭部を損傷し、引き返したと。」
「鹵獲した機体の調査で頭部にはセンサーが集中していたのだったな?センサーがやられたらさすがに戦闘継続は無理か。」
6月も終わりに近付き、ルウムのデブリ帯や地上での戦闘からザクIIや旧式のザクIを鹵獲出来た連邦でも、徐々にそのカタログスペックを正確に知ることが出来るようになってきた。オレの前世知識にあるものとほとんど性能は同じなようで弱点も同じ。だからこそ、頭部センサーや関節部などの弱点を損傷させるために、多数の散弾を撒き散らすType3弾頭の開発も進言したのだ。
Type3弾頭は一言でいえばレールガン用の散弾だ。通常のレールガン弾頭には炸薬が無く、金属の塊を撃ち出している(と言うより、金属の塊でないとその猛烈な加速力に耐えきれず自壊してしまう)。
だがその加速力を活かし、弾頭を細かく破裂させて散弾のように使おう、というのがType3弾頭だ。弾頭の表面に溝を切り、更に内部に少量の火薬を仕込む。発射の際の衝撃と遅発信管で火薬が炸裂することで弾頭を100以上の破片に変える。ちょうどピッツバーグのレールガン試験も我々が行っていたのでその中で対空弾頭の必要性を報告したわけだ。名前は単純に前世で知っていた旧帝国海軍の対空弾頭の名前にあやかった。
仕組み自体は簡単な物なのでルナII工廠でも直ぐに量産にかかることが出来た。(ちなみに、副次的な効果として対艦戦闘で使うと敵艦の気密をズタズタにして戦闘能力を奪える可能性もある。ただ、弾頭が炸裂するという性格上、有効射程が短いためそこまで接近するとレールガンの意味がない。)
「先ずは1機、幸先は良いが敵も同じ手をそう何度も喰わないだろう。なんとかMSを撃退しなくては今度はこちらが沈められてしまうな。」
更に言えば対艦射撃と違ってMSへの射撃を行う際は艦載機からの観測情報を使えないので、MSへの射撃は艦からの光学照準で行っている。その為に命中率も低くなってしまうのだ。なんとかあと数機は撃退したいが。
「司令、追加の艦載機3機の出撃を完了しました。全てγ群のMS迎撃に向かわせています。」
「了解した。これで観測任務が各群に1機ずつの3機。γ群の迎撃で7機、α群とβ群迎撃に各5機か。」
「いえ、γ群の迎撃機のうちパプアに攻撃した2機とα群迎撃機のうち1機、β群迎撃機のうち2機はミサイルと弾薬を撃ちきり先程から帰還してきていますので、それぞれγ群迎撃には5機、α群迎撃には4機、β群迎撃には3機となっています。」
オレの独り言に訂正を入れてくるハイネ大尉。だがそれだとβ群迎撃が手薄すぎるのでは?ちなみに、対空ミサイルでパプアに攻撃した2機は命中1を与えたものの有効打とはならなかったようだ。悔しい。
「β群迎撃が3機では早晩、抜かれてしまうのではないか?帰還機に補給して直ぐに出せるか?」
「補給には3隻で手分けしても2~30分は必要です。迎撃継続中の機体も交代で帰還させねばミサイルが無くなります。航空隊だけでは持ちません。」
「了解した。パイロット達には無理をしすぎないように伝えてくれ。参謀長、砲術、艦の直接防御に頼ることになる。全艦で連携するぞ。β群への攻撃を強化だ。なんとしても前方へ逃げきる。」
「アイサー!」
「アイサー!そして後方、ウィンチェスターが今度は2機のMSを撃退してくれました。うち1機は爆発四散したと。」
「ありがたい。これで後方からは9機か。いや、先ずは前方か。砲術長。α群ムサイへの攻撃は中止。左舷レールガンはMS迎撃に充ててくれ。α群も寄せ付けるわけにはいかん。それと右舷側レールガンをβ群への攻撃に使う。ピッツバーグと連携してβ群の残ったムサイを落とすぞ。
航海長、艦の位置を少し天底方面へ。ピッツバーグと射線をズラし、射撃可能位置へ。それと艦隊速度を第2戦速まで上げてくれ。」
「「アイサー!」」
現在までに撃退したMSは計3機、全て後方だ。それとは別にα群β群からのMS各1機が撤退中のムサイ(α群の停止していたムサイもダメージコントロールが上手く行ったのかよろよろと撤退を始めている。)の護衛に戻ってくれたので任務部隊に向かってくるザクIIは2機減った。それでも残り17機。(後方9機、左方3機、前方5機)
またα群のもう1隻のムサイは損傷すれど未だ戦闘可能。β群ムサイも1隻は無傷。γ群はパプア級が損傷を受けたため、無傷のムサイも距離は開けたままで追尾するに留めている。
ジオン側も有力な我々の艦隊をなんとか沈めたいのだろう。諦めた様子はない。当初の作戦通り、サラミス型の脚の早さを活かして前方突破を図るしかない。
「α群MSが進路変更!前方のβ群MSに合流する動きを見せています!」
「マズい、こちらが増速したのを見て前方突破に気付いたか!?」
「構いません。側面を見せているのでレールガンで狙いやすくなりました。合流前に叩き落としてやります!」
オレは焦るが砲術長はレールガン射撃に自信を見せている。少なくなったレールガンで効果的な射撃をしたい、と訓練に励んでいたからこそだろうが、さすがに3機全てを撃ち落とすのは現実的ではないだろう。
「ヤハギより通信。γ群MSに対してメガ粒子砲の射撃開始。距離四万!」
「ピッツバーグより、前方β群MSとの距離一万!近接防空火器射撃始めました!」
「本艦、並びにデトロイトとサンフランシスコも対空火器の射撃はじめ!目標はβ群MS!」
艦の近くまでβ群MSが近付いてきた。やはり艦載機の数が少ないと一気に突破されてしまうか!
「あ、MS3機よりミサイルパンツァー発射を確認!更に3機がピッツバーグに向かいます!」
「なに!?ミサイルの迎撃急げ!ピッツバーグの援護もだ!右舷レールガンも対空射撃へ!」
ミサイルパンツァーで沈められたミンスクの事が脳裏によぎるが対空火器はあの時の倍近い。なんとか迎撃したいが・・・
「ミサイル迎撃、1発間に合いません!?サンフランシスコに直撃します!!?」
その言葉と同時に、艦橋窓から見えていた右舷上方の艦影(サンフランシスコ)に爆炎が見えた。
「サンフランシスコ左舷カーゴ・ベイに直撃弾!爆発確認!」
「損害確認急げ!砲術長、本艦の火器でピッツバーグとサンフランシスコの援護を!」
「アイサー!それとβ群ムサイへの対艦射撃ですが、最終射撃で命中弾1を確認。敵艦に損傷を与えました。右舷レールガンでもα群MS1機に損傷を与えた模様!」
サンフランシスコの損害と前方の敵β群の残り1隻のムサイの損傷がトレードか。割に合わない!これ以上の損害を出さないようにせねば!
「司令、γ群MSに対してメガ粒子砲での砲撃でMS2機に損傷を与えたと報告が。健全な1機も一緒に撤退しつつあるとの事です。後方はMS残り6機です!」
朗報をリューネブルク参謀長が伝えてくれるがその声が聞こえないくらいの大きな爆発が目に飛び込んできた。
「司令、大変です。サンフランシスコより報告。左舷カーゴ・ベイで補給中だったセイバーフィッシュが誘爆、消火困難で総員退艦を命令したと!」
「なっ!?直ぐに艦載艇で支援を!?いや、これだけ高速では無理か。サンフランシスコに命令!脱出した艦載艇は直ちにリーア宙域へ向かえ!救助してもらうように、と!」
「は、はい!了解!」
「砲術より報告!ピッツバーグに接近していたβ群MSに対してメガ粒子ショットガンで直撃1を確認!爆発させました!ただ、残り2機がミサイルパンツァーをピッツバーグへ発射!」
続けても朗報と悲報が同時に飛び込んでくる。今度はピッツバーグか!?
だが、幸いと言うべきか2発のミサイルパンツァーはどちらもピッツバーグに届く前に爆発した。迎撃が成功したのだ。
「ピッツバーグより報告!ミサイルパンツァーの迎撃に成功。ただし至近弾によりメガ粒子砲2門と対空火器を損傷せり、死傷者若干名とのことです!」
「了解した!ピッツバーグには艦の保全に努めつつ戦闘を継続せよ、と返信。それとデトロイト、本艦でピッツバーグの援護を!」
β群の残りのMS5機はα群から合流しようとする2機のMSと合流するため一度任務部隊から離れる機動を取っている。(先程、ミカサのレールガンで損傷を与えた1機は当たりどころがよかったのか爆発はしないものの漂流を始めている。)そこに本艦、デトロイト、ピッツバーグからレールガン、メガ粒子砲(のショットガン射撃)、対空火器が攻撃を加える。艦載機部隊もα群β群の迎撃に当たっていた残存機の4機が攻撃を加える。(迎撃機のうち3機は弾薬を使い果たし帰還の途上にある。)
「司令、サンフランシスコの艦載艇がリーア宙域に向かいます。カワベ艦長も怪我をされたものの避難できたと。」
「ありがとう、参謀長。今のところ、あとはリーア政府に任せるしかないな。」
参謀長からの報告を受けるも、任務部隊自体の危機はまだ差し迫ったままだ。カワベ艦長達の無事を祈りつつも、思考は全てを戦闘指揮に向けるしかない。カワベ艦長の乗った艦載艇は不関旗信号を発しつつ、リーア管制宙域のすぐ内側でこちらの戦闘を監視するレパント級ソコトラに救助してもらえるだろう。
「航空より司令へ!サンフランシスコ撃沈にともない、補給中の帰還機2機を喪失、現在帰還途中の4機についてはデトロイトと本艦で受け入れます。ただ、展開中の機体全てを2隻では収容出来ません。艦載機のうち、収容出来ないものは機体を破棄します!」
「了解した。仕方ないな。ただ、パイロットは必ず救助してくれ!」
「はい、勿論です。それと現在補給作業中の艦載機4機を無人機としてα群とβ群のムサイに突撃させたいと思いますがよろしいですか?」
航空参謀としてのハイネ大尉からの報告に頷くと、続けてなんだか変な提案をされた。え、無人機の突撃!?
迎撃指揮をしていたのにポカンとしてしまうオレ。それを見てリューネブルク参謀長がすかさず指示を引き継いでくれた。ありがとう。
「ハイネ大尉、どういうことだ?無人機の突撃とは!?」
「まだα群とβ群のムサイには観測機が張り付いています。それぞれのMS隊は両方のムサイのほぼ中間で合流しつつありますが、今ならMSに迎撃されずセイバーフィッシュをムサイに突っ込ませることが出来ます。細かな進路の修正も観測機からのコントロールが効きます。損傷している両群のムサイを沈めることが出来れば、部隊が逃げきる可能性が高まるかと。それに先ほども申し上げた通り、艦載機全ての収容は不可能です。この無人機4機を使い捨てにしても問題はありません。」
「よし、分かった。航空参謀の進言を取り入れる。デトロイトにも下命!直ちに準備に取りかかれ!」
「アイサー!あと10分で準備します!」
航空参謀の返事に頷く。β群ムサイさえ撃退出来れば、部隊の帰還可能性は高くなる。なんとか出来るかもしれない。
「よし、砲術長。敵α群とβ群のMSに集中攻撃。無人機の攻撃の邪魔をさせるな!」
「アイサー!レールガンは全門、Type3弾頭を使用します。」
合同した両群のMS部隊は新たにΔ群とする。Δ群はザクIIが7機。距離はニ万五千まで開いている。今のうちに対空迎撃でなんとか沈めたい。それと後方からの6機もジワジワと距離を詰めてきた。任務部隊の速度を上げたとはいえ、やはりMSの加速力には負けるからだ。
「ヤハギより報告。ウィンチェスターと共に後方のMSに対して対空火器による迎撃を開始しました。」
「了解した。砲術長、本艦の対空火器も後方のものはγ群MSの迎撃に加わってくれ。」
「アイサー!副砲術長に後方迎撃の指揮を任せます。私は引き続きΔ群への迎撃を行います。」
サンフランシスコが沈められたが、乗組員は多数助かっている。本艦も含め、それ以外の艦の乗組員も落ち着いて対応を続けている。ムサイを沈めるか撃退出来れば生き残ることが出来る可能性も高まる。なんとかやってやる。
「司令、無人機運用のセイバーフィッシュ準備完了しました。ホーク01からホーク04と仮称します。01と02をα群へ。管制はスティンガー01が行います。03と04をβ群へ向かわせます。こちらの管制はスティンガー02です。」
「航空参謀、すまないがホーク02もβ群のムサイへ向かわせてくれ。今は前方の敵を確実に仕留めたい。ホーク01はα群ムサイへの牽制目的で良い。なまじ分散させてどちらも沈められなかった、では目も当てられん。」
「アイサー!目標変更します。β群を3機としますと、観測機のみでの誘導は難しいのでΔ群への迎撃を行っていたうちの1機をβ群へ向かわせます。ホーク08を新たにスティンガー03と呼称します。」
「よし、よろしく頼む。直ちに出撃を行ってくれ。」
「アイサー!」
航空参謀の作戦が始まると艦橋の雰囲気はまた変わってくる。敵を打ち破り、帰還してやる、という闘志が沸き上がってきているのを感じる。
「砲術より司令へ!Δ群MS1機にレールガン直撃!敵機爆発しました!ただ、残りの6機が再度接近してきます!」
「迎撃だ!レールガン、メガ粒子砲、対空火器を総動員!」
「ヤハギより報告!後方MSよりミサイルパンツァーによる攻撃を受けるも、メガ粒子砲とレールガンでの迎撃で全弾の撃破に成功とのこと!MS部隊は再度突入の構えを見せていると!」
後方からの一度目のMSによる対艦攻撃はなんとか凌いだか!また攻撃されるまでに更にMSを撃退したい。
「ヤハギに返信!引き続き敵MSの撃退を行うように、と!損傷を与えて引き返させるだけでも構わん!」
「アイサー!」
「航空より司令。ホーク全機、出撃しました!」
「よし、なんとしてもβ群のムサイを撃退するぞ!よろしく頼む。」
希望をのせた4機の無人機運用のセイバーフィッシュが飛び立つ。1機はα群へ。こちらは観測機の交代のように見えるだろう。そして3機はβ群へ。こちらは前方突破のための増援と見られるか?Δ群が迎撃に動いてはマズい。対空射撃で足止めをしなければ。
「Δ群全機、突入してきました!距離は一万五千!」
「全艦、迎撃はじめ!」
Δ群MSがホーク3機の迎撃に動かないが不安だったが、どうやらこちらを沈めることを優先させたらしい。さすがに観測機のトップスピードには追い付けないと考えたのかもしれないな。とはいえ、こちらにとってはありがたいことだ。
「レールガン、連続射撃に移ります。対空火器も全力射撃!砲身が焼き付いても構わん、撃ちまくれ!」
砲術長から砲術課員への指示も熱を帯びている。そうだ、今を切り抜けばなんとかなる。全力だ!
「司令、γ群MSより再度のミサイルパンツァーの攻撃です。ウィンチェスターに至近弾あり、と! ただ、損傷は軽微で引き続き迎撃を行うとのことです!」
「了解した。行き足は大丈夫か?速力が落ちては逃げられんぞ!?ウィンチェスターに無理をしないよう伝えてくれ!」
「推進機は無傷のようですのでついてくることは問題ないかと!」
「よし!」
第1001巡洋艦戦隊はまだまだ闘える、そう言っているかのような、ウィンチェスターの姿がサブスクリーンに写っているのを見て、オレは大きく頷く。そうだ、オレたちはまだ闘える!
「ホーク02から04、β群ムサイに接近、突入します!」
そこに航空参謀の声が聞こえ、慌ててメインスクリーンを見る。拡大されやや不鮮明なムサイが急激に方向を変えようとしているのが分かる。おそらくとんでもない速度で突っ込んでくるセイバーフィッシュに不審感を持ったのだろう。主砲も撃ちはじめた!だがもう遅い!
「ホーク02、撃墜されました!ホーク03被弾、ですが、突入成功!続けてホーク04もエンジンブロックに突入!」
航空参謀の報告と同時にメインスクリーンのムサイから爆発光が見える。一度、二度、三度目はひときわ大きい!!よし、撃沈した!
「β群ムサイ撃沈!」
「よし!第41任務部隊全艦、最大戦速!艦載機全機も引き返させろ!砲術、全ての火器で敵MSを牽制!近付けさせるな!!」
「「アイサー!!」」
更に速度を上げた我々にγ群、Δ群のMSは慌てたように挙動がおかしくなる。
だがそこで更にα群ムサイへホーク01が突入したことが伝わったのだろう。Δ群MSはα群へ。γ群MSも二度目の攻撃が不調だったことが分かるとそのまま後退し、第41任務部隊のリーア近傍での戦闘は終結したのだった。
リーア近傍での戦闘、後編をお送りしました。
サンフランシスコが沈み、艦載機も無人機として使用したものを含め6機が失われました。また本編には書いていませんが帰還した艦載機にも被弾や損傷機が多くあります。
ピッツバーグも至近弾による被弾損傷を受けました。被害を被った第41任務部隊ですが、ルナIIに帰還することは出来ました。次の任務がどうなるか、お楽しみになさってください。
ただ、前話の後書きにも書きましたが、仕事が忙しく更新が遅くなってしまいそうです。申し訳ありません。
○追伸
リーア近傍における第41任務部隊の戦果
撃沈ムサイ2隻、パプア1隻、損傷ムサイ3隻、パプア1隻
MS撃墜4機、撃破・損傷4機